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宇宙コンビニ

光と闇を内包した音の煌きが月の反射で遥か彼方まで届いていく

PH_uchucon平均年齢21才とは思えない卓越した演奏力と、不可思議かつ親しみやすい楽曲で多くのリスナーを驚かせた1stミニアルバム『染まる音を確認したら』から10ヶ月。京都発“プログレッシブ・ポップ”バンド、宇宙コンビニが2ndミニアルバム『月の反射でみてた』を8/6にリリースする。海外からも高い評価を得た前作から、スケール感をさらに増した今作。超絶技巧に支えられた演奏の表現力はもちろん、今作で軸となる“歌“も深みと情感を増している。その名のとおり、宇宙まで届きそうなポピュラリティとオリジナリティを持った新たな名盤の誕生だ。

 

「前作は宇宙コンビニの色んな面を凝縮した感じやったんですけど、今回は明るい部分と暗い部分っていう相対しているものを出せたんじゃないかな」

●前作の1stミニアルバム『染まる音を確認したら』リリース後は、海外からの反響も多かったみたいですね。

なずお:こういう音が好きな人は(海外にも)おるんやろうなとは思っていました。YouTubeのコメントを見ながら、1人でニヤニヤしています(笑)。

えみちょこ:まずコメントをしてもらえること自体が嬉しくて。MVの再生回数も見る度に上がっていたので、素直に嬉しかったですね。

だいじろー:各方面から良い評価を頂きました。カナダへライブにも行けたりして、前作をキッカケに色んなことができるようになったんです。自分が思っていた以上に、できることの幅が広がったなと思います。

●前作は初の流通作品だったわけですが、自分たちでも充実感はあったんでしょうか?

だいじろー:“やりきった”という感じでしたね。個人的に、やれることはやったという感覚があって。

●曲のストックも前作で出し切った?

だいじろー:実は今回も3曲は元からあったもので、それぞれのクオリティを高めてレコーディングしたという感じなんですよ。M-1「origin」とM-3「セピア色の車窓から」、M-6「成仏してしまった男」は既存曲ですね。

●前作を作り終えた後に、次の作品のビジョンも見えていたんですか?

だいじろー:自分としては、新たなことに挑戦している感じは出したいなと思っていて。特にM-2「EverythingChanges」やM-5「闇には祝福を」にはリズムの面で、そういう要素が入っていますね。

●リズムの面で新しい挑戦をしている。

なずお:だいじろーさんが持ってきたデモを聴いた時に、「何や、これは…?」となりましたね。打ち込みで聴いた時点では、意味がわからなかったです(笑)。

だいじろー:自分でも「叩けるかな?」と思いながらデモを渡しました(笑)。「EverythingChanges」とM-7「足跡」に関しては時間がなくて、ドラムは最初に僕が打ち込みで入れちゃったんです。

●打ち込みで作ったことで、物理的に再現できないものもあったのでは?

なずお:何ヶ所かは腕が3本ないと叩けないような物理的に無理な部分があったので(笑)、そこは自分なりに解釈してやりました。「EverythingChanges」と「足跡」に関してはガチっと決められているものがあって、それを僕なりにやりやすいように変えていった感じですね。自分の手クセからは絶対に出てこないようなフレーズもあったので、後につながるような1曲になったんじゃないかな。

だいじろー:「EverythingChanges」に関しては自分自身でも最初はリズムがなかなか身体に付かない感じだったので、すごく難しかったですね。でも何回も演奏する中でリズムを身体に入れられる感覚が欲しかったので、良かったかなと思います。

●ベースはどうだったんですか?

えみちょこ:ベースは元々のデモに全く入っていなくて、特に「EverythingChanges」はどうしようかと悩みました…。まずリズムを取るために打ち込みのドラムを聴いて、自分なりに解釈して(ベースラインを)付けてみましたね。

だいじろー:ベースに関してはあんまり指示を出していないんですよ。そこまでベースに強いこだわりがあるわけでもないし、えみちょこのベースは「これはないやろ!」と思うことがあまりなくて。基本的にちゃんとしているので、ベースはわりと任せていますね。

●えみちょこさんのベースは、ちゃんとしている(笑)。

えみちょこ:自分以外の2人がわりと変なことをしているので…。私はポップスが一番好きなので、そういう要素を出せたら良いなと思っています。

●歌に関してはどうやって作っていくんでしょうか?

だいじろー:いつもは最初に僕がスタジオで(仮歌を)伝えて、次回のスタジオでえみちょこが実際に歌ってみるという感じですね。

えみちょこ:最初の時点ではまだ曖昧な部分や歌詞がない部分もあるので、そこは自分なりに変えたりしています。

●自分なりの解釈も加えていると。

だいじろー:えみちょこ自身のイメージで歌ってもらっているので、僕からは特にイメージを伝えていなくて。でも(自分と)感覚やイメージが遠いわけではないと思うから。そこが違っていたら、歌っていても違和感が出るはずですからね。

えみちょこ:自分なりの解釈もしているんですけど、だいじろーさんが作ってきてくれたメロディと歌詞にできるだけ合わせるようにはしています。今作の歌ものは感情を込めないと、薄っぺらい感じになっちゃうなという気がして。前作よりも感情を出せるように、歌はレコーディングしました。

●今回はより“歌”が前面に出ている気がします。

えみちょこ:ミックスの時も、どうやったら歌が立つかを考えていて。特にM-4「光の加減で話した」は自分なりに考えましたね。

●歌録りは順調だった?

えみちょこ:だいぶ苦戦しました…。特に「EverythingChanges」は最初のデモの時点ではキーの高さ的にもきついし、リズム的にも息継ぎが上手くできないところがあったので、「これ、歌われへん!」と思って(笑)。メロディを変えたりキーを調整したりしたんですけど、結局はデモのままのメロディで歌えるようにめっちゃ練習したんです。

だいじろー:色んな部分のバランスを取りつつ、いけるかいけないかギリギリの部分でのメロディラインやキーの高さやと思うんですよ。最初は本当に歌えるのか、僕自身も心配でしたね。

●技術的に表現できるかどうかギリギリのラインを突くのが好き?

だいじろー:あまり良くないのかもしれないけど、そういうことをやらないと音楽で新しい部分に挑戦はできないと思うから。色々と様子を見ながらやっていますね。

●そうすることで似通っていない曲が生まれる。

なずお:そこは意識していますね。僕は今回、自分の手クセを封印するようにしたんですよ。だから今作には基本的に自分が得意なフレーズが出てこなくて、苦労したんですけど…(笑)。なるべく同じパターンに陥りたくないし、曲が似ていると言われたくないから。新しいことをどんどんやろうとしています。

●でもこの3人でやることで、どんな曲をやっても“宇宙コンビニ”らしくなるというのはあるのでは?

だいじろー:それは確実にあると思います。何をやっても“宇宙コンビニ”感は出せているかもしれないですね。今作を作ってみて、特にそう思いました。

●今作は曲同士のイメージが一部つながっている感じがしました。

えみちょこ:前作は1曲1曲が別々の感じやったんですけど、今回はだいじろーさんの中で曲同士のつながりがあったみたいで。歌詞でも(別々の曲で)同じフレーズが出てきたりするのを自分なりに解釈して、表現したつもりです。

だいじろー:特に「EverythingChanges」と「光の加減で話した」「闇には祝福を」「足跡」に関しては自分なりにイメージや感覚的なところでつながりを持たせましたね。この4曲は新曲なので、書いた時期も近いんですよ。そういう世界観的な部分も、聴いてくれた人に感じてもらえたら良いなと思います。

●作品全体に通じるテーマは何かあったんですか?

だいじろー:”光と闇”みたいに、相反するものってあるじゃないですか。そういうものについて自分の中で思うところがあったので、今回の歌詞の中に織り交ぜたりもしましたね。

なずお:元々だいじろーさんから「“陰と陽”的なところがある感じで」という話があったので、そのイメージは僕らの中でも強くありました。

えみちょこ:前作は最初の作品ということで宇宙コンビニの色んな面を凝縮した感じやったんですけど、今回は明るい部分と暗い部分っていう相対しているものを出せたんじゃないかなと思っています。

●二面性というか。

えみちょこ:そうですね。前は中間みたいな感じやったと思うんですけど、今回は“こういう部分もある”というのが出せたんじゃないかなと。

だいじろー:最初は自分の中で“光”(「光の加減で話した」)と“闇”(「闇には祝福を」)の2曲でシングル的なものを出せたら良いなという願望があって。実現はしなかったんですけど、“光と闇”というテーマで自分の中にある感覚とイメージで書いてみようとは思っていたんです。今回のミニアルバムを作ることになった時に、そこから感覚と視野をさらに広げて書いてみたのがこの2曲ですね。

●「光の加減で話した」と「闇には祝福を」の2曲が、世界観的には今作の軸になっている?

だいじろー:個人的には歌もの4曲が今回のメインというくらいに考えていて。「origin」も加えても良いかもしれないけど、それだけで今回のアルバムのイメージは十分に成立しているかなと思うんですよ。全部がコンセプトアルバム的な感じにはなっていないんですけどね。

●インストの3曲は、そこまで全体の世界観とリンクしているわけではない?

なずお:そのあたりはあまり意識していないかもしれない。M-6「成仏してしまった男」に関しては、前作収録の「裁判にかけられた男」の延長線上みたいなところで。これは完全に遊びの曲です(笑)。でも「origin」は曲名の意味的にも、1曲目にしようと思っていましたね。

だいじろー:“始まり”な感じのインストにしたいという話はしていて。SE的な意味合いもあるので、これを1曲目にしようと思いました。

●元々はインストがメインのバンドだったところから今作では歌ものがメインになっているわけですが、自分たちのバンドに対する意識も変わってきた?

だいじろー:最初はそういう考え方やったんですけど、メンバーと色々話している中で「歌ものを軸でやっていこう」という方向に変わってきたんです。その中でインストも「セピア色の車窓から」みたいにメロディがはっきり立っている感じではなくて、3人の演奏主体の感じに変わりつつあるのかもしれないですね。

●インストの感じも変わってきている。

だいじろー:最初からインストを意識して作っている感じは、「セピア色の車窓から」に出ていて。この曲はギター1本だけでも成立するんですよ。

なずお:この曲は1st E.P.『廻る景色のなかに』に入っていたんですけど、もう一度録り直したいなと思っていたんです。(最近の曲は)歌が入っていない状態のデモを聴くと、「これってインストかな?」と思うことが結構あるんですよ。インストとしても成立する感じなんですけど、実は歌ものだったりもして。

●メンバーでも予測不能なんですね。

なずお:僕の中で今作はちょっと挑戦的な感じになったので、聴いてくれる人の層も変わるんじゃないかなと思っているんです。前作よりもちょっと変態チックになっているんじゃないかなって(笑)。

●変態チックなんだ(笑)。これからも自分たちの音楽をもっと広げていきたいという意識もあるのでは?

だいじろー:今後の動きはまだ考えていないんですけど、自分たちの音楽が広がっていけば良いなという想いは強いですね。

●『月の反射でみてた』というタイトルには、そういう意味も込められているのかなと。

だいじろー:自分たちの音を月に託して、その光で色んなところに広がっていったら良いなというイメージですね。

●自分たちの放った音が、月に反射して色んな場所に届いていくイメージというか。

だいじろー:その様子を自分たちでまた見られたらなと思います。…って、何かまた“染まる”感が出ているんですけど(笑)。

●前作の『染まる音を確認したら』も「リスナー1人1人が自分たちの音に染まってくれているのをメンバー3人が“確信”している」という意味でしたからね。それにニュアンスは近い気がします。

だいじろー:そうですね。色んな人に聴いてもらいたいという気持ちは、あんまり変わっていないから。

なずお:ちょっとスケールが大きくなった感じですね。“宇宙”感が出てきたなって思います(笑)。

Interview:IMAI

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