2014年7月、今年も2万人があの丘に帰ってきた。7回目の開催となった“京都大作戦”、緑に包まれた太陽が丘で起こるたくさんの感動と奇跡を体験するために、そして心を素っ裸にしてライブを楽しむために、朝早くから色とりどりのバンドTやフェスTに身を包んだキッズたちがぞろぞろと列を成す。出演者とオーディエンスとスタッフが同じ気持ちになってライブを楽しむ2日間。今年も素晴らしいライブと感動がたくさんありました。
源氏ノ舞台
2万人の期待と想いが充満する独特な雰囲気の中でスタートした“京都大作戦2014”、幕開けは「早朝ロックいきますか?」というVo.JESSEの言葉。100人を超える観客をステージに上げるという伝説を作った2012年の記憶も新しい彼らがトップバッターを飾る今回、1曲目「GET THE MIC」の音が耳に届いた瞬間に、ものすごい2日間になるということが確信できた。「SUCKER」「LOVE HATE」と超攻撃的な新曲2曲で観客の気持ちを最大限にまで熱した後、「カミナリ」ではステージに上げた黄色いTシャツの観客にマイクを託してJESSEがクラウドに突入、黄色いTシャツの観客はラップパートも完璧で会場は更に興奮。痛感した。やはりRIZEは最強のロックバンドだ。
「自己責任で遊べよ」という言葉の後、「THE LIGHTNING」でライブをスタートさせたのはHAWAIIAN6。ライブ前からパラパラと降り始めた雨をもろともせず、興奮を露わにした観客がステージ前に殺到し、まるでエンジンをふかすように3人が音を合わせた「IN THE DEEP FOREST」が始まれば会場はサークルモッシュの嵐。振り上げられた無数の腕、飛び跳ねて踊る観客、宙を舞うダイバーの笑顔…最高の時間は「RAIBOW RAINBOW」の際に超巨大なサークルモッシュでピークを迎え、「ありがとう京都の人たち!」と3人は極限のテンションで全9曲をやり遂げる。ステージの上と下が一緒になってライブを作っていく不思議な一体感に身体が打ち震える。
源氏ノ舞台に初登場したcoldrain。ライブ前から会場全体のテンションがヤバい。Vo.Masatoが「京都!!」とシャウトして「The Revolution」で狂宴がスタート。のっけから激重&激厚な音が太陽が丘を包み込み、しかもそれを2万人がシンガロングしながら暴れるという有り得ない現実。テンションを振り切らせた鬼神の如き形相のMasatoが早々と客席エリアに突入したことがオーディエンスの魂を更に焚きつけ、「少しだけ頭が悪くなっていい1日の、最も頭が悪くなっていい時間が来ました!」という言葉に、キッズたちは狂ったように暴れまくる。「助け合ってください! 俺が言うのもなんだけど骨を折るな!(※注:Masatoは昨年、出演していないにも関わらず“京都大作戦”の会場で足の骨を折った) イカれてください!」というMasatoの言葉はまさに火に油を注ぐように我々のテンションを上げ、おもしろいように人が宙を舞い、客席エリアはぐちゃぐちゃに。その勢いは最後の「Final destination」まで一瞬も弱まることなく、いや、むしろ限界を超えてどんどん強くなっていった。
毎年出演してきたdustboxとDragon Ash。この2組が出演を続けているのは、単に10-FEETと仲が良いからという理由だけで説明できない。その皆勤出演1組目・dustboxの3人がステージに姿を現した途端に地響きのような歓声が至るところから沸き起こり、源氏ノ舞台は前から後ろまでびっしりと興奮が埋め尽くす。dustboxがライブハウスで培ってきたすべての力を振り絞って展開される極上のひととき。「Riot」でいきなりピークに到達した幕開けの後、Vo./G.SUGAが「今日という日は二度と来ないぞ! 思いっきり来い!!」と叫んで「Try My Luck」。両腕を天に突き上げ、同曲のメロディを全員で歌い、暴れ、サークルを作って走り回り、人の渦の中に身を投げる最高の光景。幾度となく体験してきたことだが、今年もやっぱりdustboxは最高だ。KOUICHI(10-FEET)乱入の「Jupiter」の後、眩しいほどのメロディが響き渡る「Tomorrow」で締め括った彼らのライブは、全員が汗だくで、笑顔で、歌いながら暴れるという“京都大作戦”には欠かせない至福の瞬間なのだ。
「また今年も来ました! 青春してますかー!?」。完全な晴天が現れると、空と同じように爽やかなパンクバンド、NAMBA69が登場。「TRUE ROMANCE」で早速サークルができあがり、「FIGHT IT OUT」「ETERNAL GOLD」「MY WAY」と、ノンストップで駆け抜けるキラーチューンラッシュ! いくつになってもキラッキラな瑞々しい音の塊が飛び交えば、京都の空を突き抜けパンクロックが響き渡った。吹き抜ける風さえも、どこか爽やかで涼しげだ。「イメージはひとつ。でかいサークルが見たいな」とBa./Vo.難波が求めれば「ONE MORE TIME」で人波がうねり大きな渦ができあがる。さらに「京都の3人組が、ハイスタの曲をカバーしてたよね。あれヤバいよね!」と言った後、まさかの「Stay Gold」! 尋常じゃない熱量と歓声に包まれた。
尋常じゃないと言えば、マキシマム ザ ホルモンのライブを語らないわけにはいかないだろう。メタルポーズで出迎える腹ペコたちに、「恋のメガラバ」「便所サンダルダンス」「ビューティー殺シアム」といった芳醇な肉々しい楽曲を放り込んでいく彼ら。ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)が「あり得へん光景を見せてくれよ!」と求めた通り、数万人規模のヘドバンや辺り一帯を覆う数万本の腕が目の前に広がる様子、そして両手を使い頭の上で三角を作りジャンプする“膣ジャンプ”など、そのどれもが非現実的な光景で、異世界に迷い込んだような錯覚に陥るほどだ。まさにここでしか見られない“あり得へん光景”といくつも出会えた、最高の時間。
「純恋歌」のイントロが流れ出すと、会場がにわかにざわめき出す。そして「目を閉じ……てると終わっちゃうよ~!」と遊び心たっぷりのオープニングで湘南乃風がスタート。「ジャンルなんか関係ねぇ! 音楽好きは手挙げろ!」とHAN-KUNが煽れば、それに応えて誰もが腕を高く突き上げる。さらに「曖歌」ではメンバーと共に歌うファンたちの姿も数多く見受けられた。究極のサマーチューン「睡蓮花」に入ると、オーディエンスはおもむろにタオルを取り出し、サビに合わせて勢いよく回し出す。これぞ湘南乃風の十八番! さらに若旦那とHAN-KUNがステージから降りて、スタンディングエリアの柵越しにお客さんと触れ合い、走り回る。確かに本日出演したアーティストたちとはまったくカラーの違う彼らだが、本人たちの言う通り、音楽好きにジャンルなんて関係ない。音の上で、アーティストとオーディエンスがひとつになった瞬間を目にした。
牛若ノ舞台
初日、牛若ノ舞台一番手を務めたのはDizzy Sunfist。「夢が叶った! 京都大作戦!」と、Vo./G.あやぺたが思いの丈をぶつけたのちライブがスタート! 突き抜けるようなギターサウンドが心地よく、自然と腕が突き挙がる、ライブの勢いや迫力はバツグンで、HEY-SMITHやSUNSET BUSといった、大阪の先輩たちに続く存在として台頭するバンドになるのではないか、と思う程の気概を感じた。堂々たるステージを見せつけた彼らは、「絶対また出てやる!」と誓いを交わして去っていく。
出だしから美しい男女コーラスを響かせたのは、滋賀のSCOTLAND GIRL。メロディックという言葉がぴったりとハマるような濡れた音は、どことなく哀愁を帯び心の琴線に触れていく。ウェットな声質とも相まって、よりいっそう曲世界に惹き込まれていくようだ。スピーディーな部分もあり、かつしっとり聴かせる部分もある絶妙なバランス感には、溢れ出るセンスを感じる。これぞ日本人の感性に訴えかける、次代のメロディック・スタンダード!
徐々に晴れ間が見え始めた頃、SKA FREAKSが勢いよく飛び出してきた。登場早々「遊べる? 遊ぼうぜ!」と呼びかけた彼らの音楽は、一聴で踊り出したくなってしまうほどグルーヴィ。リズミカルなオフビートに誘われるまま、自然と体が動き出す。フロア一帯が、端から端までもれなくスカダンスをしている様はまさに圧巻だ。また、日本詞の「Ichigo Ichie」や、初めて聴いた人でも歌えるほどキャッチーなサビの「Live Freaky! Die Freaky!」では全員がシンガロングし、すさまじい一体感が生まれる。最後にはスタッフ、バンド、すべての人への感謝を告げて去った彼ら。音楽も人も実に気持ちのよいバンドだ。
横浜から登場のツインヴォーカルバンド、T.C.Lは1曲目の「BURST & RISE」から攻めに攻める。Vo.KYONOとVo.YAMADAが矢継ぎ早に繰り出す切れ味鋭いリリック、超絶なテクニックとスピードが生み出す圧倒的な音数、腹の奥底まで響く強靭なグルーヴにオーディエンスは大熱狂し、力強く拳を振り上げたかと思えば、ハーコーモッシュで暴れまくり。ステージから放出される圧倒的な熱量は一切とどまることを知らず、最後の「WEAPON OF THE PEOPLE」ではシンガロングの一体感からモッシュ&ダイブのカオスへと落とし込む離れ技。とにかく凄まじいステージに圧倒された。
ダイナミックなリズムと突き抜けるキャッチーさを兼ね備えた「J.C」で盛大に幕を開けたGOOD4NOTHING。全員がステージの4人と一緒に歌い、飛び跳ねる。ダイバーの数は曲を重ねる毎にどんどん増え、ピークでは10人以上が同時に宙を舞うというエグい状態。シーン最前線を突っ走ってきた彼らのアンサンブルとライブ力は強靭で、30人以上が肩車からダイブした「STICK WITH YOURSELF」や全員がジャンプした「BE FREE」を経て、会場はGOOD4NOTHINGが生み出した極上の空気で満たされた。
Vo.川さんがいきなりスピーカーの上に登るという暴挙で始まったPAN。ロックスターと化した川さんは「こめかみ」で客を煽りに煽り、限界まで熱せられたテンションは「心のバッティングセンター」で大合唱を作り出し、ダイバーの嵐を生み出し、無数の笑顔へとつながっていく。4人全員が点取り屋の如く客席方向へと気合を放出し、ポップかつ楽しい彼らの楽曲が、客席エリアをライブハウスのような壮絶な状態へと変化させる。どのようなベクトルであろうが、魂のこもった表現は心を震えさせる。最後の「直感ベイベー」では数えきれないほどの肩車からのダイブ、そしてモッシュと大合唱と汗まみれの笑顔。川さんの「今日は夢みたいな現実やぞ! それ忘れんな!!」という言葉が胸を打った。
いよいよ“京都大作戦2014”初日も残すところあと2組。牛若ノ舞台のトリを飾るのはアルカラ。バイタリティあふれるVo./G.稲村のステージ支配力、そしてタフなアンサンブルはさすがのひと言。「踊れやフリーダ」で聴く者を存分に踊り狂わせまくった彼らのライブは、レゲエやタオル回しという源氏ノ舞台出演者たちのお株を奪う、型破りな瞬間の連続でもはやお祭り状態。「10-FEET観に行ってくださいね」という稲村の冗談に反し、観客はアルカラのライブに釘付け。最後の「半径30cmの中を知らない」で湧きに沸かせ、4人がステージを去った後、牛若ノ舞台にはアルカラを呼ぶアンコールがいつまでも響いていた。
源氏ノ舞台(トリ)
トリはもちろんこのバンド! 壮大なSEが辺りに流れ出し、期待を一身に受けながら10-FEETが現れる。3人が向かい合って円陣を組み、1曲目「JUNGLES」へ! 誰もが待ちわびていたかのように前へと詰め寄せ、続いては「RIVER」…かと思いきや、イントロだけを弾いたところで、Vo./G.TAKUMAが「間違えた」と軽くはにかんでストップ(笑)。その後「VIBES BY VIBES」「focus」と間髪入れずに繰り出していく。Ba./Vo.NAOKIのハイトーンボイスとTAKUMAのハスキーな声との絡み合いは何度聴いても気持ちいい。そこにDr./Cho.KOUICHIがバツグンの安定感でリズムを刻めば、とんでもないグルーヴが生まれるのだ。TAKUMAが「大作戦に何回も来とるやつもおると思う。“初期の頃はようダイブしてたけどなぁ”ってやつを引きずり出したるさかいな!」と宣言したところで「hammer ska」へ。「Freedom」では大阪籠球会と、「2%」では湘南乃風と、そして「4REST」ではドクター長谷川とのコラボを見せた。仲間を大切にし、誇らしげに盟友たちの話をする彼らの姿を見て、なぜ10-FEETがこんなにも愛されるのかを理解できた気がする。
初日にも関わらずすさまじいアンコールが巻き起こり、再び舞い戻った10-FEET。「あんたの未来を変えるのは、恥ずかしげを越えた勇気ある一言や。行動や。束になってかかってこい!」。そう言って「その向こうへ」「風」と次々に名曲を繰り出し、ラストは「RIVER」で初日を締めくくる! 知らない人同士が入り乱れ、ハイタッチを繰り返す姿に感動を覚えたのだった。
源氏ノ舞台
会場の空気が一気に南国色に染まったMONGOL800。いきなりの名曲「あなたに」に、昨日暴れまくったはずのオーディエンスは一片の疲れも見せぬ笑顔で大合唱&ダイブの嵐。Ba./Vo.上江洌清作が「太陽が丘にたくさんの花を咲かせてちょうだい」と笑って「愛する花」がスタート。全員が一緒に歌い、踊り、自然と笑顔になる。MONGOL800にしか作ることができない最高にハッピーな瞬間。同曲の“太陽の下で笑い/正直な心 素直な言葉”という歌詞はまさに“京都大作戦”そのもの。「京都が沖縄よりも暑い(熱い)ところを見せてもらおうか!」と上江洌清作が煽って始まった「小さな恋のうた」は、観客1人1人がまるで自分の歌のように気持ちを込めて歌う大合唱。太陽が丘がたくさんの歓声と拍手と笑顔に包まれた。
FIRE BALL with HOME GROWNが出てきた途端、会場の空気がどことなくアダルティになったような気がする。彼らのことを思わず“兄さん”と呼びたくなるのは私だけだろうか? ヨコノリのリズムに合わせ手を上げるオーディエンスの元へ極上のミュージックを差し込めば、爆音とともに京都に夏がやってくる! ボブ・マーリーの「SIMMER DOWN」カバーなども見せつつ「CALL THIS LOVE」ではピースフルな暖かい空間ができあがっていく。さすが日本を代表するレゲエ・グループ、ジャパニーズ・レゲエ界にこの人あり! 会場の空気を自在に操る彼らはまさに“遊びの達人”だろう。
続く東京スカパラオーケストラで、さらに大人っぽい空気(スカパラの事は“先輩”と呼びたくなる)が濃くなっていった。イベント名にちなんで「Mission Impossible Theme」から始まり「ルパン三世のテーマ」へ繋げていく。血湧き肉踊る音に関して、彼らの右に出るものはない! 夏らしさ全開の「DOWN BEAT STOMP」、ロシア民謡を華麗なブラスサウンドにアレンジした「ペドラーズ2014」で、瞬く間に観客を踊らせてしまった。さらにB-Sax.谷中が「スカパラだけでも9人いて多いのに、さらにコラボセッションするという企画をやっています」と言うと、スカパラとお揃いのスーツを着た10-FEETが登場! 「hammer ska」「閃光」と、互いに音源化したコラボ曲を立て続けに披露。お客さん同士が肩を組んで、楽しげに体を揺らしていたのが印象的だった。
Ken Yokoyamaを迎える会場では、至る所で日の丸が掲げられ、パンクロックコールが沸き上がる。その期待に応えるように、ドアタマから極上のパンクロックを放り込む! 膝を突きながらギターをかき鳴らし歌うVo./G.Ken Yokoyamaの姿に、彼が“永遠のパンクヒーロー”と呼ばれる所以を見た気がする。雨の野外はミラクルが起きると言うが、「Raindrops Keep Falling On My Head」が繰り出された際にはなるほどその通りだと思わず唸ってしまった。そして「日本代表10-FEETのカバー曲をやるわ!」と、昨日のNAMBA69に続きここでも「Stay Gold」!! 圧巻のライブパフォーマンスでオーディエンスの心を鷲掴みに。
1曲目が「フラッシュバック」という、予想外の選曲からスタートしたASIAN KUNG-FU GENERATION。ここからすぐさま「リライト」へと繋ぎ「ループ&ループ」ではイントロがなった瞬間会場から歓声が起こる。客席の反応から、どの曲も音楽好きの間で広く知られていることが見て取れた。さらにここで新曲「スタンダード」。歌と音とがぶつかり合うことなく、しっかりと耳に飛び込んでくるバランスはさすがの一言。降りしきる雨も、心を洗い流すような歌を歌う彼らの前では、まるで演出のひとつかのように輝いている。ラストは「君という花」でフィニッシュ。たった6曲で圧倒的なまでの存在感を示したのだった。
“京都大作戦”の常連ならなおさらビシビシと肌で感じたであろう。この2日間、もっとも気合いを表に出していたのはROTTENGRAFFTYだったということを。どしゃ降りの雨の中、Vo.NOBUYAが2万人を睨みつけ「10-FEETだけが京都のバンドじゃないことを証明しに来ました」と言って「その向こうへ」から始まったステージは壮絶だった。「This World」ではヴォーカル2人&G.KAZUOMIがクラウドに身を投げ入れ、激ヘヴィなサウンドからの極上メロディで意識を奪う「世界の終わり」で源氏ノ舞台は狂乱の祭典に。サークルモッシュ、ダイブ、ぐちゃぐちゃの中でほころぶ無数の笑顔。盟友たちが見守る中、Vo.N∀OKIが「輝いて輝き狂え!!」と叫んで「金色グラフティー」で締め括ったずぶ濡れの35分間、心と身体のすべての毛穴は開きっぱなしだ。
昨日のdustboxに続き、“京都大作戦”毎年出演のマストアクト・Dragon Ashはまさかの「under the umber shine」(10-FEETカヴァー)でライブスタート。10-FEETメンバーも乱入したサプライズにオーディエンスは大興奮、雨とドロの中ではしゃぎまくる。「7年間10-FEETとずっと一緒にいろんな感動を見てきて、いちばんいいライブだと思ったのがさっきのROTTENGRAFFTYでした」というKjの言葉は、常にライブバンドたらんとし、常に完全燃焼しようとする彼らのマインドの発露だろう。Ba.KenKenの超絶プレイやATSUSHIとDRI-Vのダンスで魅せつつ、最後に鳴らされた「Fantasista」「Lily」は素っ裸になったDragon Ashの想いが溢れていた。やっぱりDragon Ash、最高だ。
牛若ノ舞台
2日目。牛若ノ舞台のトップバッターFOUR GET ME A NOTSが、BONNIE PINKの「Forget Me Not」をSEに登場。Vo./Ba.石坪が「拳上げていこうぜ!」と煽り、のっけからガンガンに飛ばしていく。観るたびによりエモーショナルに、かつアグレッシブになっていくライブスタイルに思わず鳥肌が立つ。Dr./Vo.阿部によるタイトなドラミングに目を奪われ、Vo./G.高橋と石坪の男女ボーカルに耳を奪われ、そのバンドアンサンブルに心を奪われる。朝からもみくちゃになりながら、幾多のダイバーが続出した!
テンション高くステージに飛び出してきたフーイナム。シンガロング&どキャッチーな「音速ドライブ」のメロディと、Vo.アヅマック タキオーライがいきなり客席エリアに突入するという熱いパフォーマンスにキッズたちは大喜び。「10-FEET、ROTTENGRAFFTY以外では唯一の京都出身!!」と叫んだ彼らのステージは、まさに全力。どポップでダンサンブルなキラーチューンで畳み掛けつつ、曲の合間合間でオーディエンスとコミュニケイトする強引な一体感がたまらない。“俺たちがいちばん盛り上がってやろう!”という気迫がビシビシと伝わってくる、熱くて楽しいステージだった。
ボーカルとギターという超シンプルな構成で作り上げるMOROHAのライブは、牛若ノ舞台に居合わせた全員…客はもちろん、関係者やステージ袖で観ていた他の出演者たちも含めて全員…の心を一瞬で鷲掴みにした。1曲目「革命」から最後の「三文銭」まで目を離せなかったが、特にシビれたのは自然発生的に起こった手拍子をMC.アフロが「俺は相方のギターを信じてここまできたから、超嬉しいけどそんなの要らないんだ」と言ってやめさせたこと。おそらく、心を打たれるとはこういうことなんだろう。歪でありながら圧倒的な想いがほとばしるMOROHAのステージに心を打たれてしまったのだ。個人的には、彼らがこの日のベストアクト。
雨と「SAコール」が降りしきる中で始まったSAのライブ。牛若ノ舞台はおそらくこの2日間でいちばんパンクス密度が高くなっており、1曲目「YOUTH ON YOUR FEET」が始まった瞬間に客席エリアはカオス状態に。オーディエンスのテンションを煽りまくるVo.タイセイに、パンクスたちは拳とモッシュとダイブで応える強烈な一体感。「パンク、メロコア、スカ、全部まとめて面倒みてやる!」というタイセイの言葉の後に放たれた「俺は俺」、曲の途中で客席エリアに超デカいサークルが出来上がった「GO BARMY KIDS」と続き、最後は「DELIGHT」で大団円。観る者全員を巻き込むエネルギッシュなステージは流石だった。
本降りになってきた雨を気にすることなく、Northern19のライブを待ちわびるオーディエンスが柵前から後方までびっしりと客席エリアを埋め尽くす。3人が登場すると大歓声、1曲目の「GO」がソリッドに鳴り響けば一気にダイバーが乱発。ステージの上と下、双方が凄まじい熱量を発しながら作り上げるライブは、この場所で瞬間にしか味わえないかけがえのないもの。ずぶ濡れの中で暴れまくるオーディエンスを幸せそうに見ながらG./Vo.笠原が「思い切りやっちゃおうぜ!」と更にテンションを煽る。最後の「STAY YOUTH FOREVER」まで全力疾走で駆け抜けたNorthern19とオーディエンス。まぎれもなく全員がライブを楽しんでいた。
SUPER BEAVERの出番は、どしゃ降りの雨の最中に始まった。だがそんな逆境をものともせず、彼らは水滴を蒸発させるがごとく熱を発し、オーディエンスも始終手を挙げて騒いでいる。1曲1曲に強いメッセージが込められた楽曲を、しっかりとエモーショナルに歌い上げる。そこからは“大切なものへ感謝の気持ちを伝えたい”、“誰かの背中を押せるような言葉を届けたい”という強い気持ちが伝わってくるようだ。「ありがとう」を聴き終えたとき、私は彼らに出会えたことを感謝したくなった。
牛若ノ舞台のトリを務めたのは、HOTSQUALL。奇しくも千葉バンドに始まり千葉バンドに終わるというドラマチックなタイムテーブル。「最高の天気。俺たちはHOTSQUALLだからね!」と、本来悪天候であるはずのロケーションさえもプラスに変えてしまうMCに、全員のテンションが上がりに上がっていく。歌詞がはっきりと聴き取れるほどのシンガロングが響いた「LAUGH AT LIFE」を皮切りに、「Won't」「WITH THE SEABREEZE」「DARLIN' DARLIN'」と、惜しげもなくキラーチューンを放出していけば、絶え間なくダイバーが発生し、モッシュピットができあがる。ライブ中、「昨日TAKUMAさんが言ってた。“7回もやると飽きちゃう”って。だから雨が降ったんじゃないか? 伝説の日にするために」と語っていたVo./Ba.アカマ。今日この日、私はHOTSQUALLとオーディエンスが伝説を残した瞬間を確かに目に焼き付けた。
源氏ノ舞台(トリ)
そしてまた、今年もいよいよこの時が訪れる。“京都大作戦”の2日目、トリを飾る10-FEETのライブが始まる瞬間はなんとも言えない想いが会場と我が胸に充満する。降りしきる雨の中「super stomper」で幕を開けたそのライブは、FIRE BALLとの「STONE COLD BREAK」やKjとの「RIVER」で魅せ、「このテンションがあったらいけるんちゃうか? やったろうや!!」とTAKUMAが更に煽って「シガードッグ」、爆発的な歓声と興奮と熱気と想いがぶつかり合って火花を散らした「その向こうへ」を経て、会場の興奮が熱となって水蒸気が立ち込める中で暴れまくった「goes on」で本編終了、アンコールでは「2%」、Hi-STANDARDの「Stay Gold」で沸かせた後、たくさんのタオルと熱気が宙を舞う「CHERRY BLOSSOM」で終幕。
春のワンマンツアーもそうだったが、ここ最近の10-FEETのライブはあーだこーだと説明する言葉が見つからない。熱くて、楽しくて、おもしろくて、感動する瞬間が連続する、他では絶対に味わえないライブ。タフな経験を積み、人間として大きく成長したからこそ成し得る、音と心がぶつかり合う最高のステージ。この日も当然ながら、10-FEETのライブは最高だった。 しかしそれに満足することなく、アンコールでVo./G.TAKUMAは「今年で7回目、慣れたくない! 慣れたくない! 毎ライブ毎ライブ、初めてのライブのドキドキに負けたくない!」と泣くように叫んだ。そういう彼らの想いや姿勢こそが、“京都大作戦”を最高のフェスへと押し上げてきたのだろう。一秒一秒を常に全力で、1点の濁りもない澄み切った気持ちで燃え尽きようとする想いが溢れる3人の姿に、来年の“京都大作戦”への期待が更に強くなった。
今年もたくさんの感動があった。1日目、牛若ノ舞台の最後3組はそれぞれ関西で大型イベントを主催しているバンドだったこと。2日目の牛若ノ舞台は千葉のバンドでスタートして千葉のバンドがトリを務めたこと。ROTTENGRAFFTY渾身のステージの背景に込められた想いとこれまでの道程、たくさんの出会いが積み重なったラインナップで多幸感に包まれた源氏ノ舞台、“誰にも負けたくない”という強い想いが充満するライブハウス・牛若ノ舞台。今年も“京都大作戦”で観ることができた“TRIPLE AXE”。2万人という非現実的な人数の人たち全員が全力で参戦する“京都大作戦”、きっと嫌な思いをした人もいただろうし、雨がひどかったことによって体調をくずしたり怪我をした人もいただろうし、きっと新たな課題も出てきただろう。しかし、あんなにたくさんの笑顔と涙を流す顔を同時に見ることができる場所を、僕はここ以外に知らない。来年も太陽が丘で2万人と再会し、心を素っ裸にして、全身で音楽と笑いと感動を浴びまくる2日間を味わいたい。アンコールのTAKUMAの言葉を噛み締めつつ、今から1年間、ドキドキしながら来年の“京都大作戦”を楽しみにしようと思う。みなさん、また太陽が丘で会いましょう。
TEXT:山中 毅 / 森下恭子