音楽メディア・フリーマガジン

BURGER NUDS

“奇跡”の存在を誰もが信じずにはいられなかった10年ぶりの復活ライブ

BURGER NUDSワンマンライブ 「2014.6.21」
2014/6/21@LIQUIDROOM ebisu

SONY DSC“奇跡”という言葉は、こんな瞬間のためにあるのだろう。新年の始まりと同時に届けられた2014年で最初にして、もしかしたら最大になるかもしれないニュース。BURGER NUDSが10年の時を経て復活を果たし、ワンマンライブを行う。その知らせを目にした時、冒頭に書いた言葉を心の中で(いや、もしかしたら口に出して)呟いたファンは数知れないはずだ。まさかこんなことが本当に起こりうるとは思えない。解散からちょうど10年後の全く同じ日、超満員のオーディエンスで埋め尽くされた恵比寿LIQUIDROOMのフロア。そこにはまだ現実のことなのか信じ切れないような不安と緊張感、10年間ずっと彼らの音楽を渇望してきたことで熟成された期待感が入り混じり、かつて感じたことのない不思議な空気が漂っていた。

3人がステージに現れた時、“奇跡”は本当に起こったのだと誰もが知った。大歓声と共に迎え入れられた門田匡陽(Vo./G.)、内田武瑠(Dr.)、そして丸山潤(Ba.)。トライアングル上にこの3人が並び立つ姿は、まさしくBURGER NUDSだ。1音目が鳴った瞬間に上がった歓声には、歓喜と共に安堵感も含まれていた気がする。最初に奏でられたのは、1stシングル『LOW NAME』の1曲目「ミナソコ」。まるで“ここから新たに始まるのだ”という宣言するかのごとく、神々しい光をまとった音のきらめきが会場全体をゆっくりと包み込んでいく。「逆光」「ANALYZE」と続く間も、じっと聴き入るオーディエンス。それは観客1人1人が彼らの1音1音を心の奥底へと大切に注ぎ込んでいく様なのかもしれない。

一転、4曲目の「BRAVE GIRL IN HELL」までで1つのブロックが終わったことを感じ取ると、空気を揺らすような大きな拍手と歓声が沸き起こる。「ただいま」という門田の素っ気ないMCは、この特別な空間であっても本人たちは動じていないことの表れだろうか。その後も「タネリ」や「空気清浄機」「自己暗示の日」といった楽曲たちを確かなバンドアンサンブルに乗せて、次々と披露していく3人。「何か言うことあるんじゃないの?」という門田からのフリに、他の2人がそれぞれ一言ずつ程度答えるが、そのやりとりはどこかぎこちない。しかし不思議と変な堅さや違和感を感じさせないのは、これこそが彼らの本来持つ空気感だからではないかとふと思う。10年ぶりの復活ライブだからといって、特別に着飾ろうとはしていないからなのではと。

中学・高校の同級生だった3人が集まって、手に手に楽器を持ってバンドを始めた。10代の少年たちは、その時その瞬間にしか鳴らせない音を鳴らしていただけだったのかもしれない。でもだからこそ彼らの音は尊いほどに蒼く、同世代を中心に聴く者たちの胸をどうしようもなく揺らしたのではないか。まさかの披露となった新曲「LESSON」では、“無駄にはしゃがないで良い 無理に喋らないで良い 嘘を唄わないで良い 誰も頼らないで良い 君は独りで良い”と唄った門田。今もその軸にある心性は、あの頃ときっと変わっていないのだろう。だが、3人の目は確実に未来へと向けられている。「Candle for minority」から「プリズム」へと終幕に向かう流れは比類なき蒼さと共に、開いた扉から射し込むような強い光も感じさせた。

本編とは打って変わって、3人が多くの会話を交わしたアンコール前のMC。“解散前は世界で一番仲が悪いバンドだった”というエピソードを明かしながらも、今の本人たちはとても楽しそうだ。“週に1回くらいスタジオに入って新曲を作っている”という話や“年内にもう1回くらいは東京でもやりたい”という言葉からもポジティブな機運を感じずにはいられない。19歳の時に最初に作った曲にして、“BURGER NUDSがBURGER NUDSになった曲”という「cold burn」で締めくくった一夜。…いや、“締めくくった”と言ってしまうにはあまりにもほとばしっていた演奏は、再び“奇跡”がもたらされることを期待するには十分すぎるものだっただろう。

TEXT:IMAI

SONY DSC SONY DSC

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj