2013年12月にアルバム『くだまき男の飽き足らん生活』をリリースし、ツアーでは全国でくだをまきまくった我らがガガガSP。事件性のある熱いステージング、リアリティのある言葉、キャリアで培ってきたブレないアンサンブルでたくさんの心を素手で鷲掴みにするライブにはますます磨きがかかり、もはやバンド的悟りの境地へと足を踏み入れた、シーンを代表する現場至上主義ライブバンドだ。そんな彼らの2014年初のリリースは、祭りの要素を採り入れた日本人ならではのガガガSP流ダンスロックチューンと、30代の女々しさ全開リアリティ満載のカップリングという、前傾姿勢の意欲的シングル。今年もガガガSPは若い芽を摘みつつ暴れまくるのだ。
コザック前田(以下、コザック):今日、めっちゃ屁が出るんですよ。
●絶好の取材日和じゃないですか。
コザック:さっきまで他誌の取材を受けていたんですが、さすがに音は出せませんでしたね。音を出して屁ができるのはJUNGLE☆LIFEだけです。
●今日もバンバンお願いします。ところで今日の前田さんはオリックスTシャツを着ていますけど、最近のオリックスは調子いいみたいですね。
コザック:そうですね。オリックス−広島戦でチケット売り切れますからね。どっちも今首位ですから(※取材は5月末)。今日も横浜スタジアムでオリックス−横浜戦があるんですけど、この取材が早く終わったら観に行こうと思ってるんですよ。
●音楽そっちのけで。
コザック:いやいや、野球は音楽に通じるものがありますからね。応援歌に合わせて3万人以上の人が一緒に踊るわけですよ。音楽でも3万人集めるフェスなんてなかなかないじゃないですか。小学校のときから応援歌をずっと聴いてきているわけで、あれから影響を受けてるんやなって最近気づきました。だからガガガSPは野球ロックです。フォークとか以前に、小学校の頃から聴いているトランペットの応援歌が染み付いているんでしょうね。
●そういうところからも貪欲に音楽のヒントを得ているんですね。
コザック:あと、最近はTheサードっていう別のバンドも始めたんですけど、そこで僕はエレキも弾いてるんですよ。それをやることによって、創作意欲が出てきますよね。野球観戦に行って応援歌を聴いて、Theサードで練習して、ガガガSPはライブをして。音楽漬けの毎日を送ってますね。観るのとやるののバランスがすごく取れている。
●インプットとアウトプットのバランスがいいと。
コザック:そうそう。でも最近はめちゃくちゃ忙しいんですよ。5月なんて1ヶ月で11試合観てますからね。なんでこんなに時間がないんやろうって。
●それ自業自得ですよ。
コザック:僕は僕で音楽漬けの毎日を送ってますし、山もっちゃんはパソコンを駆使して曲を作ったりプロデュースをしたり、音楽漬けの日々を送ってるよね。
山本:はい。
コザック:だから山もっちゃんは最近の若いバンドのことめっちゃ知ってるんです。アンテナを張ってるんですよね。僕は全12球団の応援歌にアンテナを張ってます。
●ハハハ(笑)。ところで今回ニューシングル『こんちきしょうめ』がリリースとなったわけですが、M-1「こんちきしょうめ」はアニメ『デュエルマスターズ』の主題歌ということで。
コザック:なんかすごく人気なアニメらしいんですよ。最初にオープニングテーマの話が来て、僕と旦那(桑原)と山もっちゃんの3人で候補曲を書いたんです。それで山もっちゃんの書いた「こんちきしょうめ」が選ばれたと。M-2「別に、いや別に…」は僕が書いてきた曲なんですけど、『デュエルマスターズ』の主題歌にはならなかったので、歌詞を全部変えました。
●あ、なるほど。旦那が作ってきた曲は形にはならなかったと。
コザック:いい曲なんですけどね。「男は行く」っていうタイトルなんですけど。
山本:うん、いい曲ですよね。
●曲の作り手が3人もいるし、実はすごくクリエイティブな集団なんですね。
コザック:そうなんです。旦那の場合は曲がすごく素直で、山もっちゃんの場合は色々と駆使して曲を作ってくる場合が多くて、そういう感じでバラエティが出るようになりましたね。
●その「こんちきしょうめ」を聴いてびっくりしたんですけど、すごくダンサブルというか、最近よくあるダンスロックに物申すような楽曲ですよね。
山本:はい。完全に狙って書きました。
コザック:最初聴かせてもらったとき、僕も“まさかの四つ打ちか!”とびっくりしたんです。歌ったことなかったですから。でも実際にやってみたら全然問題なかったんですけど。
山本:ダンスロックバンドって、割と洋楽を根源にしているというか、メロディの作り方とかが洋楽的で英語の歌詞がハマりやすくなっているものが多いと思うんです。そこで、日本人が四つ打ちでダンスロックをやるんやったらこの路線やろうと思って。
●ああ〜、ちょっと日本の祭り囃子的な。
山本:そうそう。
コザック:気持ち的には日本人の祭りの要素っていうか。洋楽のダンスロックからシンプルに影響を受けましたということではない。
山本:そこはやりたかったことですね。『デュエルマスターズ』のオープニングテーマとかは別にして、前のアルバムでもちょっとやろうかなと思ってたんですけど、その路線で突き詰めつつ、ガガガSPらしいものに仕上げたかったんです。なんせ、日本人が踊るんやったらこれやろ! と。ガガガSPってどんくさい日本人の要素があるから、それをやりたいなと。
●この曲を聴いて思ったのは、サウンド的には新境地だと思うんですけど、前田さんが歌ったらどんなものでもガガガSPになるなと。それを確信した曲でもあったんですよね。
コザック:それは嬉しいですね。僕が影響を受けた真心ブラザーズがそうやったんですよね。『KING OF ROCK』とか『GREAT ADVENTURE』のとき、フォークの曲を歌ってもハードコアの曲を歌っても、サウンドがファンクであっても、結局真心ブラザーズになってるんですよね。あれを目標として僕はヴォーカルを始めたので。それがアリになるヴォーカル。清志郎さんにしてもウルフルズにしても、CMで1回聴いたら誰が歌っているかがわかるっていうか。
●はいはい。
コザック:最近はそういう歌い手がなかなかいないじゃないですか。僕はやっぱりそういう風になりたいと思って始めたところがあるので、そういう歌い手になれて来ているのかなって思うと嬉しいですよね。
●うん、そう感じます。どんな曲調でも前田さんは前田さんだなと。それにこの曲、楽器陣の絡みが絶妙ですよね。さっきおっしゃっていたように、聴けば踊らざるを得ないアンサンブルのエネルギーがあるというか。
山本:その辺はシビアにやりました。旦那もたぁじん(田嶋)もあまりやったことがないリズムだったので。「ここスネア何回やったっけ?」「ここや5回やで」みたいなやりとりもありましたね。
●ハハハ(笑)。あとカップリングの「別に、いや別に…」は前田さんの作詞・作曲ですが、こんなこと言うと申し訳ないですけど、とても女々しい曲ですね。
コザック:僕、女々しいというのが最近のテーマになっていて。
●お。
コザック:“女々しい”って“女”という文字が2つ並ぶ言葉ですけど、男にしか使わないんですよね。女の人に「あなた女々しいですね」って言うと、もしかしたら褒め言葉になり得るというか。でも男にしか使わなくて、しかもちょっと蔑んでいるニュアンスがあって。
●はい。
コザック:大概の男って女々しいと思うんですよ、男は肉体的に強いだけであって。ストーカーして捕まるのも男が多いじゃないですか。あれも“女々しい”の最たる例やと思うんですよね。そういうことを考えるようになったというか。
●男が持つ女々しさを否定することはないと。
コザック:そうですね。ストーカーとか犯罪になるようなことをするのは良くないですけど、ガガガSPは女々しさとかそういう弱さみたいなものを書くところから始まったバンドだったんですよね。だから「別に、いや別に…」は、自分的には30代なりの女々しさを書いたわけであって、スタンスとして原点に立ち返っている曲ではありますよね。
●ベクトルは同じだと。
コザック:はい。ただ、10代の女々しさと30代の女々しさはまた別やと思うんです。そういうことでしかないというか。
●そういう意味でいうと、自分の弱い部分をかなりさらけ出していると。
コザック:そうですね。最近はお客さんも30代の人が多くなってきて。自分が自由に使えるお金とかも増えてくるかもしれないけど、その分だけ、抱えるものも大きくなってくるじゃないですか。例えば家庭や子供も含めて、背負っていかなくてはいけないものも増えていくわけで。その中での生活のリアリティというんですかね。そういうものを書いてみたいなと。
●なるほどね。確かにそういう生々しさがある。
コザック:「線香花火」(2001年リリースシングル)には10代の生々しさがあると思うんですけど、30代になったら30代なりの生々しい曲を書きたくなったというか。だから今後は結婚をする直前になってマリッジブルーになった男の曲とか書きたいです。結婚しようと思っているけど自分の時間が欲しいからどうしよう? と思っている男の歌とか。
●確かに生々しい(笑)。
コザック:それも女々しさのひとつじゃないですか。30代は30代の恋愛とか結婚とかをリアルに考えたりとか、そういうことを題材にした曲を作ってみたいなというのはありますね。
●「別に、いや別に…」はそういう中でできた曲なのか。確かにこういうところに焦点を当てた曲ってなかなかないですね。
コザック:そうなんですよ。「生まれてきてくれてありがとう」とか「君のために僕はがんばっていくよ」みたいな歌は世の中にいっぱいあるからもういいんですよね。人のを聴いとけばいいなと。対して僕らは、人間のちょっとした迷いとかを歌にするのがおもしろいんじゃないかと思っているんです。
●おもしろいと思います。なかなか人に見せない弱い部分だけど、「ああ! わかる!」みたいな共感がある。
コザック:やっぱり身を削っていく作業なのかなって思います。ものを作るって、身を削る作業やなと思うんですよね。それは本を書いている方も絵を描いている方も役者で演技をしている方も、身を削っていることに変わりはないと思うんですよね。肉体的でも精神的でも。
●もう慣れたもんですか?
コザック:うーん、慣れる慣れないというか、そういうものかなって。リアリティを追求するという部分もそうだし、架空のものでも絶対にどこかにモチーフがあると思うし。だからどこかで自分を削っている部分はどのミュージシャンにもあると思うんです。
●そう考えると、ライブや制作とか音楽をやっているときだけじゃなくて、普段の生活とか思っていること自体も音楽にリンクしていくんでしょうね。
コザック:そうでしょうね。やっぱりライブをいちばん先に考えてて、そこはずっと変わっていないんですよ。だから基本的には“ライブでどう映えるか?”ということが根底にあるんですよね。そういうところで、削れる部分は削っていくという。かつおぶしみたいなもんです。
●なるほど。リリース後はガガガSP主催興行がありますね。7/26は“音楽戦線異常アリ!!”で、8/30は“爆裂都市〜2014最終章〜”。
コザック:“爆裂都市”は楽しみですね。メガッタという山もっちゃんとメガマサヒデのDJユニットも出るんですけど、これがもう最高ですね。
山本:曲を流して、僕とメガさんが2人でめちゃめちゃ歌うんです。
コザック:2人で踊る狂っているという。
●それカラオケですね。
コザック:ハハハ(笑)。そういえばこないだJUNGLE☆LIFEのワタナベフラワーと四星球の対談読んでて思ったんですけど、ワタナベフラワーは吉本新喜劇で四星球はドリフだと言っていたじゃないですか。
●はい。
コザック:あの記事を読んだ後に四星球の康雄とメールしていたんですけど、ガガガSPはひょうきん族じゃないかという話になって。ある程度の枠はあるけど、その中で自由にやってるから事件が頻繁に起こるという。
●確かに。ガガガSPは事件性がある。事件というか事故というか。
コザック:そうなんです。だから僕らは基本的に事故バンドなんです。存在自体が事故ですから。
●言われてみればそうかも。
コザック:康雄にも「まさにその通りだ」と言われて。
●“爆裂都市”はそういう意味でも目が離せないですね。“最終章”ということは、“爆裂都市”はこれが最後なんですか?
コザック:そうなんです。だから昔よく出てもらっていた人たちに出てもらおうと思っています。まあ思い出話に花が咲くじゃないですけど、そういうイベントにできたらなって思ってます。
●ちなみに“音楽戦線異常アリ!!”は定期的にやっていくつもりなんですか?
コザック:そうですね。“長田行進曲”とはまた別の主旨でイベントを立ちあげて、今までやっていない人たちとやろうじゃないかと思っていて。やっぱり若い芽はどんどん摘んでいかないといけないですからね。
●ハハハ(笑)。
コザック:泉谷さん(泉谷しげる)も未だに「若い芽は摘む」と言ってますからね。
山本:空席は少ないですからね。今のうちに摘んでおかないと。
●将来有望な若手の芽を摘むと。
コザック:ひとつの挑戦でもありますよね。“長田行進曲”はずっと一緒にやっていた仲間とやるというスタンスで続けるつもりですけど、“音楽戦線異常アリ!!”ではどんどん挑戦していくつもりです。完全にタイトルは『就職戦線異状なし』のパクリなんですけど、イベントの最後は「どんなときも。」を流そうと思ってます。
一同:アハハハ(笑)。