2014年5月末で営業を終了する、SHIBUYA-AX。これまでにも葉月(Vo.)が「一番好きなライブハウス」だと公言してきた会場では最後となる、lynch.のワンマンライブが開催された。5/8からのTOUR'14「TO THE GALLOWS」に先駆け、-ABSOLUTE XANADU-というサブタイトルを掲げて行われた本公演。“完全なる桃源郷”という意味を想像するほどに、開演前から期待が高まらずにはいられない。
「INTRODUCTION」が荘厳に流れる中、ステージ前に張られた半透明の幕が上がってメンバーの姿が現れる。それに合わせて、ステージ後方には巨大なバンドロゴを白抜きした漆黒のバックドロップが登場。そしてニューアルバムのタイトル曲「GALLOWS」のイントロが鳴った瞬間は、鳥肌の立つような興奮が沸き起こった。続く「NIGHT」が始まると突如鳴り響いた爆発音は、このライブの衝撃度を象徴しているかのようだ。
最初のMCでは、葉月がAXについての想いを語る。営業終了までにまだ他のイベントもあるとはいえ、lynch.にとっては最後のAXでのワンマン。DVDにもノーカットで収録されるというこのライブで全てを出し尽くせと命じるかのように、オーディエンスに向かい「ブッ壊せ!」と叫ぶ。その想いに遺憾なく応えるフロアは、「EXODUS」からのヘヴィかつハードな楽曲の連発に熱狂の度合いを爆発的に高めていった。
「-273.15℃」や「ENVY」といったメロウなミドルテンポの楽曲では、後方に現れた白幕に細胞分裂のような映像が映し出され、妖しさを高める。「BE STRONG」では天から雪が客席に降り注ぎ、美しい情景を演出。映像化されることもあってか、様々な特殊効果が仕込まれていたこともこの日のスペシャル感を際立たせていただろう。本編ラストの「LIGHTNING」では多数の銀テープが宙空を舞うなど、最初から最後まで興奮を冷めさせない仕掛けが続く。
アンコールを呼ぶ声に応えて、ステージにメンバーが登場。まずは葉月がMCで再びAXと、ライブについての想いを語る。そこで話したとおり、映像では決して伝わらない、ライブの現場だけでしか味わえない感覚をオーディエンスは感じていたはずだ。アンコールが最高潮を迎えんとする「Adore」から「TIAMAT」への流れを、タイミングを誤って失敗したのもライブならでは…か(笑)。葉月が「昔からのコアなファンなら知っていると思うけど、これってlynch.らしいんですよ」と言ったように、同じライブは二度とないという唯一性を不測のトラブルすらも高めていた。
本当に全てを出し尽くしたような充実感に満ちた演奏の後も、まだ鳴り止まないアンコールの声。「やっぱり、もう1曲だけやりたい」と再度登場したステージで、「A GLEAM IN EYE」を聴かせてくれた。ライブ中にも語ったように、次なる目標として武道館を掲げている彼ら。数々の名演を見せてきたSHIBUYA-AXという会場はなくなるが、これから先もっとすごい景色をlynch.は見せてくれるはずだ。そして、そこへと向かう1本1本のライブにも、二度とない瞬間が待ち構えている。
TEXT:IMAI
PHOTO:尾形隆夫