2013年4月にアルバム『THE REVELATION』をリリースし、過去最大規模のツアーを大成功させたラウドロックシーンの担い手、coldrain。今年1月、新木場studio coastでのワンマンライブ“EVOLVE”のステージで更なる飛躍を宣言した彼らは、2月に自身初となるヨーロッパツアーを敢行。帰国後は盟友・Crossfaithとアメリカのメタルコアバンド・Miss May Iと共に“MONSTER ENERGY OUTBURN TOUR 2014”を大成功させたのも束の間、バンドの集大成にして更なる成長を感じさせる3rdミニアルバム『Until The End』を完成させた。リリース前後はヨーロッパでのフェス出演、そして過去最大規模の“TRIPLE AXE '14”が控えており、強い意志を持って貪欲なまでの挑戦をし続ける5人。進化は永遠に止まらない。彼らの行く先をその目と耳で見届けろ。
●昨年リリースしたアルバム『THE REVELATION』の制作はアメリカだったし、今年2月にはヨーロッパツアーも経験しましたが、そういった海外でのことが今作の制作にも影響しているんですか?
Y.K.C:少なからずは、という感じですかね。そこを目指して何かを作ったというわけではなくて、むしろ逆で。より何も考えず、coldrainらしく自分たちが好きな感じで作ってみたという感じが大きくて。
Masato:前作の方が世界をテーマに掲げていたなと思います。海外の活動が何も決まっていなかったのに(笑)。
●「今から世界へ飛び出していくぞ」という意識だけは強かったと(笑)。
Masato:でも実際に海外に行って活動をする中で「考えなくてもいいんじゃない?」みたいなことに気づいたというか。特にヨーロッパでライブをやっているときに思いました。意識したことが悪いんじゃなくて、勝手に意識できているというか。
●coldrainは“ラウドロック”というシーンで括られることが多いですが、単にラウドだけじゃなく、いろんな要素を作品ごとに詰め込んできましたよね。今作も例に漏れず、ひとつの曲の中にキャッチーな要素があると思ったら急にラウドになったり、かと思えばメロディアスになったり。「この音なんだろう?」みたいな音まで入っていて。前作からの流れもあるんでしょうけど、今作はいろんなものを凝縮している感じがすごくある。
Y.K.C:単純に、自分たちの表現の幅が少し大人になったんでしょうね。もう少し1曲1曲をちゃんとアートとして完結させられるところまで来たのかなっていうのは感じていて。例えば疾走感がある曲と言っても、ただの8ビートを感じさせるだけじゃなくて、意外と中身はその曲なりのことをやっていたりして。そういうところにようやく辿り着けた感じがあるんです。
●あ〜、なるほど。
Y.K.C:今まではもう少しパンキッシュな要素が絶対的にあったりして。例えば「サビはもうちょっと開けたら気持ちいいから8ビートにしよう」というところで止まっていたものを、もう一歩踏み込んでやっている部分があるんです。1曲の中で全てが深くなった分、自分たちは今までと同じように構築しているつもりなんですけど、セクションの差という部分で上手くコントラストが描けているのかなと思います。
Masato:今まで以上に1曲に対してたくさんの要素を盛り込んではいるんですけど、たぶん今までよりも1曲に聴こえるっていうか。
●そうそう。よく聴いたら絶対にシンプルじゃないんですけど、不思議とシンプルに聴こえるんですよね。
Masato:今までいろんなものをやりまくってきたから、何をやっても意外性はそんなにないんですけど、純度を高めていくことはできるので、同じことにはならない。“らしさ”は今まで以上に感じるというか。
●候補曲は6曲以外にあったんですか?
Masato:いや、バンド全員で触ったのは6曲だけです。
Y.K.C:実は結構制作期間はあったんですよ。最初の段階から今回はセルフプロデュースでやるということも決めていたから、自分で設けたハードルを超えていないと、今まで以上に到達しないということはわかっていて。プロデューサーがいないからって「日本で録ったらこういう感じなんだ」と思われるのはすっげえ癪だったんですよね。なので、バンドで合わせる前に1人で作っている段階から“これは絶対に前作を超えた”と思えないと、出してもしょうがないなと。そういう楽曲がようやく形になってきたのが去年の11月くらいだったんです。
●『THE REVELATION』のツアーが終わった1ヶ月後くらい。
Masato:Y.K.Cの時点でそういう感じだったので、残りのメンバーはたぶん…特にリズム隊なんて…ファンみたいなものなんですよ。デモが上がってくるときなんて、リリース日を知っているファンと同じ気持ち。
●「新作聴ける!」みたいな(笑)。
Masato:メールで“デモを送りました”って来ると、早く家に帰りたくなる。下手したらストリーミングで聴きますからね。
●ハハハハ(笑)。
Masato:今回は特に、俺らは完成系に近いものをデモで聴いたんです。そこで何も違和感がなかったから、より作り込む必要もなかった。いじった部分はないわけではないんですけど、最初に来たときのブレてなさというか「これだよね」っていう感じがあったんです。
●Y.K.Cくんが作ってきたデモが、今のバンドの最大限のポテンシャルを引き出すようなレベルだった。
Y.K.C:今までは、俺は敢えて色を付けなかった部分や、楽曲に余白を残していたこともあったんです。でもそこは作ってきた側がどうしたいかを提示していないと、みんながアプローチできないんですよね。前作でプロデューサーのDavidがいたときも、自分が提示していないところって最後まで触られずに終わってしまうことがあったんですよ。それはちょっと嫌だなと思ったので、今回はなおさら詰めて。自分で「この方向性で間違いないよ」というものを出したときに、みんながどう反応するか。今のバンドの段階だったらそういう方法でいいのかなと。
Masato:そういうときこそいい違和感が生まれたりするんです。そこまで考え抜いて、それでも違うアプローチが来ると、もちろん軌道修正する場合もあるけど、「そう来るか!」と新しいアイディアが生まれたりする。
●印象的だったのはM-2「Evolve」なんですけど、この曲は1月の新木場studio coastワンマンでMasatoくんが言っていたことと近いというか、そのままの想いが詰まっていますよね。現時点の、ネクストステージに飛び立とうとしているcoldrainの心境がそのままストレートに入っている。リスナーに向けたメッセージでもあるし。
Masato:studio coastでやる前から曲の構想はほとんどできていたんですけど、“この日に影響されて曲ができたとしてもおかしくないな”と思えるライブだったんです。だからレコーディングをする前に加えていったり変えていったりした部分が最終的に活かされた感じ。最初は曲のタイトルにもちょっと迷いがあったんですけど、あの日のライブを経たことによって確信できたっていうか。アンセムソングっていうか、ライブで活きる曲にしたかった。ライブによって得られた力が入ったなという感じです。
●活動自体が曲になるっていいことですよね。バンドの想いがリアルに伝わってくるし、それがライブにも反映されるというか。
Masato:ワンマンとか特にそうなんですけど、“たくさんの曲をやんないとcoldrainを表現できない”と思っていた部分が、今回の6曲には含まれている気がするんです。今まではアルバム単位だったものが、今回は1曲でそうなのかもしれないです。しかもそれが必ずしも「重いリフとメロディ」みたいな感覚じゃなくて、“なんかいいよね”みたいな。
●そうそう。今作の曲はジャンルで説明し辛い。
Masato:そういうところが増えたなと思います。デモに歌を乗っけているときからずっと不思議な感覚で、“今までとなにか違うな”と感じていたんです。最初は自分たちの曲じゃない感じもしたんですよね。でもやっぱり録ってみるとcoldrainだと思ったし。まったくこれがどう聴こえるのか、今回がいちばん今まで以上に想像できない。作り方が改めて昔の感覚に近い気はします。作っていたとき、やっぱりわかってなかったので。わかっている上で、わかっていなかったときの感覚を持てている。変な言い方ですけど。
●チャレンジしているということなんでしょうね。coldrainはもう充分人気があると思うんですよ。だからこのタイミングで出す作品としては、もっとイージーでゴリッとしたシンプルなものだけでも全然評価されると思うんですよね。でも実際はそうじゃなくて、敢えて前作の先に行こうとしている。
Y.K.C:やっぱりそれがないと。前回は本当に絞って作ったという感覚があったんですけど、そういう苦しみがないと自分たちで納得できない状況になってきているんですよね。
Masato:だから今回が次のスタートのような気がするんですよね。前までは1枚作ったら限界を感じていたんですけど、今回は…まあ元を作ってないから俺が言うのもアレなんですけど(笑)…全然イケるっていう新しい感覚。
Y.K.C:それを見つけるのにすごく時間を割いたんです。coldrainというバンドをやっていく中で、モチベーションが上がるような先を見つけていかないと、成長がなくなっちゃうと思うんですよね。きっとそれを見つけるための制作でもあった。
●アルバムのタイトルもそうだし、「Evolve」という曲が入っていることも、新たなところに進もうと挑戦していることもそうだし、バンドの“今”がリアルに聴こえてくる作品ですよね。リアルタイム感というのは、今まででいちばん強い気がする。
Masato:先に進もうとしている現時点で作った作品だから、みんなが聴きたいなと思う要素は絶対あると思うし、予想外な部分もある。だから楽しみなんですよね。
●そして、6月にはヨーロッパでフェスがあるという。
Y.K.C:4本フェスがあって、Crossfaithとのライブが2本あります。
●帰ってきたら“TRIPLE AXE TOUR'14”があって、“京都大作戦”があって…めっちゃ忙しいやん!
Masato:海外のフェスとか、本当に夢の舞台なんですよ。でも正直なところ、フェスどうこうでテンションが上がるのはなくなったんです。“そういう目標って間違ってる”と気づいたんです。
●というと?
Masato:“○○に出たい”みたいな感覚って、すっげえくだらないなと思ったんです。大事なのはライブだから、どこでやっていても一緒っていうのは年々強くなっていて。Bullet For My Valentineと1ヶ月まわったとき、ロンドンで200人の前でやった感覚と、ドイツで1500人の前でやった感覚はどう違ったかと考えたら、変わんないんですよね。人数によって良くなるのかっていったら、そういう話じゃないので。
interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子