2013年1月に発表した1stアルバム『Imagined Scenery/心象風景』は、BAD ATTACKにとって結成以来10年にわたる活動の集大成とも言える作品だった。リリース後は全国各地をツアーでまわり、作品の反響と自分たちの世界の広がりを肌で感じてきた彼ら。その中でバンドの状態はより活性化し、新たな楽曲が自然と生まれていったという。そして約1年の時を経て、2ndアルバム『DANCE』が完成。より深く感情を掘り下げながらキレイごとではない前向きなメッセージを投げかける歌詞が、この3人でしか出し得ない音に乗り、聴く者全ての胸を躍らせる。
●前作の1stアルバム『Imagined Scenery/心象風景』から1年後に、次のアルバムを出そうと決めていたそうですね。
野村:「1年後に次のアルバムを出そう」っていう話は、最初からしていました。最初は本当に目標みたいな感じだったんですけど、始めてみたら意外と曲もできてきたので“これはイケるんじゃないか”と。最後はかなりしんどかったですけど(笑)。
●曲作りもスムーズにいったと。
野村:前作のリリース後に初めて大々的な全国ツアーをやったんですけど、それが楽しくてしょうがなかったんですよ。すごく色んな経験ができて、バンドとして成長できたという実感もあったから。あとは単純に、バンドをやっていること自体がどんどん楽しくなって。バンドの状態が良くなったことが、曲がどんどんスムーズにできることにつながった感じですね。
●ツアーに出たことが大きかった。
野村:自分たちは元々ライブの本数がかなり多いんですけど、どうしても狭いコミュニティの中でやっている部分があって。でも前回の音源を初めて流通に乗せて出せたことで、そこもかなり広がったんですよ。ツアーで遠い土地へ行った時に、知らない人が自分たちの音源を聴いてライブに来てくれるっていうのは今までになかったことだから。色んなことにやりがいを感じられるようになったというか、前向きな気持ちになれたんです。音源を作ることによって世界が広がるんだなということを知って、“また早く作りたい”という気持ちになったところもありますね。
●今回は最初からアルバムに入れることを想定して、曲作りを始めたんでしょうか?
野村:最初から完全にアルバムを意識して曲を作りましたね。それも初めてのことというか。今までは基本的に新しい曲ができたら、それをライブで演奏して…という繰り返しだったんですよ。でも今回はまだライブで1回も演奏していない曲もあるし、逆に今後もライブでは演奏しないかもしれない曲もあって。
●音源ならではの曲というのもある。
野村:以前なら表現の場はライブしかなかったので、そこでどんなふうにやれるかということが全てだったんです。昔だったらライブでやれないからボツにしていた曲やバンドでやる感じじゃないような曲も、今回は音源を想定していることでどんどん入れられましたね。
●ライブでやれなくても、アルバムの中で活きる曲は収録したというか。
野村:歌詞についてもそうなんですけど、1曲1曲というよりはアルバムとして1つにするという気持ちがありましたね。言ってしまえば、同じようなことばかりをずっと歌っているわけですよ(笑)。それもある意味、狙いというか。短期間で全ての歌詞を書いたので、その期間に思っていたことをギュッと凝縮したようなところがあって。
●確かにアルバムを通して、言いたいことは一貫している印象があります。
野村:言いたいことであり、その時期の気分というか。前作は3年くらいの間にできた曲を集めたんですけど、今回は実質半年くらいで全部の歌詞を書いたので曲ごとに違うことを言いようがないんですよ(笑)。自分なりに詞の書き方にもある程度の変化をつけたい気持ちはありつつ、基本的には思ったことをどれだけそのまま出せるかっていう部分は変わらないですね。
●自分の気持ちに嘘をつくようなことは歌っていないわけですよね。
野村:それがパンクバンドの良いところだと思うので、そのままで良いというか。もちろん後ろ向きな気分の時もあるけど、最終的には前向きな方向を向いて書こうというのはありますね。やっぱり、そういう曲じゃないとライブで歌いたいと思わないから。何より曲を作ったり、それをライブで思いっきりやったりすることに自分自身が励まされているところがあって。そういう意味でも、前を向いた曲を作りたいっていうのはあります。
●自分の曲に励まされる部分が大きい。
野村:もし自分たちの曲で誰かが励まされたり楽しくなってくれたりするのなら、そういう曲を作れたことに何よりも自分たち自身が励まされるというか。自分の気持ちを歌った曲を作れたということに、誰よりも先に励まされているんだと思います。
●今回は歌詞を書く作業もスムーズだったんですか?
野村:基本的に曲作りは楽しいし、メンバーとの共同作業なのでそんなに嫌な感じには煮詰まらないんですけど、歌詞を書くのは1人の作業なので追い詰められる部分はありますね(笑)。歌詞を見た時に“ここはいい加減に書いたな”とか、自分でもわかっちゃうんですよ。だから最終的に全て納得するまで煮詰めざるを得ないというか。〆切までに納得いくものが書けなかったら、ごまかしたようなものをそのままレコーディングしなきゃいけなくなるという恐怖感やプレッシャーはありました。
●中途半端なものを出して後悔したくない。
野村:極端に言えば1行でも適当な歌詞があったら、そのアルバムに対する自分の愛情が一気に薄まってしまうと思うんですよ。でも今回はギリギリのところで全て納得いくものにできたので、できあがった時の安心感は本当にハンパなかったです。ずっとタバコを吸っていなかったんですけど、歌詞に追い詰められている時は吸いまくりましたね(笑)。
●ハハハ(笑)。歌詞を書く上で自分の内面を掘り下げて、さらけ出すのがつらかったりはしない?
野村:さらけ出すことはつらくないというか、むしろ楽になる作業かもしれないですね。色々と思っていることを言葉にして、人に言えるということなので。元々はギタリストなので、文章家ではないんですよ。歌詞を書く必要に迫られて書き始めて、ようやく自分なりの書き方をわかってきたというか。
●自分なりの書き方というのは?
野村:自分の歌詞は、ロックサウンドありきで存在している言葉なんですよね。言葉だけならあまり前向きにならないようなものも音に乗ることによってすごく力を持ったりするし、それによって人に聴いてもらう価値のあるものになるのかなと思うから。自分には純粋に言葉だけで伝える能力があるわけでもないので、どちらかだけじゃ存在しないものでもあって。曲によって詞を書かされている部分もたくさんあるし、歌詞によって曲が変わる部分もあるんです。
●そういう意味では、このバンドで歌っているからこそ出てくる歌詞もあるわけですよね。
野村:本当にそうですね。歌詞は自分が書いているし、曲も自分がメインになって作る部分はあるんですけど、たとえばドラムが昇太(Dr./Cho.吉田)じゃなくなったら作る曲も全然変わってくるだろうなって。みんなで作っているという意識が強いんですよ。
●この3人だからこそという部分もある。
野村:もちろん純粋にプレイヤーとしてだけなら、もっと上手い人もいるかもしれないわけで。自分たちは決して個人個人の技術が突出しているわけじゃないんですけど、お互いがお互いじゃないと成り立たないくらい長くこの3人でやってきているから。自分1人で作った曲や歌詞というよりは、BAD ATTACKが作ったものという意識がすごくあります。これだけ長いことやっているから自然とオリジナリティも出てきていると思うし、3人の音楽っていう感じがしますね。
●そんな3人で完成させた今作を『DANCE』と名付けた理由とは?
野村:自分で今回の歌詞を見た時に、“踊る”という言葉がやたらと多いなと思って。『DANCE』っていうタイトルが“BAD ATTACKっぽくない”と周りに言われたりもしたけど、自分にとってはすごく自然でしたね。理由を付けるなら“胸躍るようなもの”とか具体的に言えたりもするけど、漠然とした“ダンスを踊る”みたいなイメージがピッタリきたんです。
●音楽を聴いていて、自然と心や身体が踊りだす感覚というか。
野村:自然に身体が動くというのもそうだし、音楽をやっている以上は胸躍ったり心が震えるということを起こさなきゃなと。ライブであれば身体を揺らしたくなるような、そういう気持ちは自分自身が音楽を聴く時にも求める部分でもあるし、やりたいなと思っているところでもあるから。聴いてくれた人がダンスしてくれたら良いなと思いますね。
●自分自身も胸躍る作品になったわけですよね。
野村:自分の音源を聴くのは楽しいですね。良い音源ができると、イヤホンで聴きながら街を歩くのが楽しくてしょうがない(笑)。何よりも自分が胸躍るというか。落ち込んでいる時に聴くのは、自分たちの音源だったりするんですよ。ちょっと恥ずかしいくらい、自分たちの音源に励まされているところがあって。この1年間は曲を作ることやライブに励まされつつ、やってこられたのが良かったです。
●目標のとおりに1年で新作を出せたことが、自信や達成感にもつながったのでは?
野村:この1年間を何とかギリギリで走りきった感じだったので、最初は達成感がすごくあったんですよ。でもやっぱり前向きな目標がないとバンドも面白くないので、気付いたらまた曲作りしていましたね。活動や生活に関して多少は迷いみたいなものもあるんですけど、結局は何を考えているかと言ったら“次のアルバムはどんなふうにしようかな”ということだったりする。
●次のアルバムもイメージが見えている?
野村:“ロックバンドは3枚目が集大成”みたいな勝手なイメージが自分にはあって。次のアルバムには15曲くらい入れて、昔で言えば2枚組くらいのボリュームで作れたらなという漠然とした野望はありますね。3枚作った後にどうなるかはわからないですけど、仮に「燃え尽きた」みたいなことを言っても格好はつくかなと(笑)。
●自分たちでもまた次を想像して、胸躍る感覚になれているのが良いなと思います。
野村:このアルバムができた後もすぐに曲作りをしていたというのは、“結局、まだやりたいことがあるんだな”ということだから。何よりも自分たちが今やっている音楽や、これからやれるかもしれないものに対して期待している部分があって。自分たちの音楽が好きで、もっと好きなものを作れる気がしているからやっているんです。きっとそういうものが好きになってくれる人もいると思うので、ぜひ聴いてもらいですね。
Interview:IMAI
Assistant:森下恭子