結成10周年を迎えたギルガメッシュが、初のベストアルバム『LIVE BEST』をリリースする。デジタル・サウンドと強力なバンド・グルーヴが有機的に結合した唯一無二のライヴスタイルで、日本のみならず海外のオーディエンスをも凄まじい熱狂と一体感で飲み込んできた彼ら。その最大の魅力であるライヴを通じて10年間で磨き上げてきた、キラーチューンの数々が今作には溢れかえっている。音に対して徹底的なこだわりを持つ彼ら自身がReMixという形で最新サウンドに変換した楽曲たちは、紛れもなく“今”のギルガメッシュのライヴを想起させる仕上がりだ。今回のリリースを記念して、JUNGLE☆LIFEでは初となるインタビューが実現! 結成から現在に至るまで紆余曲折を経つつも絶えず進化を遂げてきたバンドの歴史を、初めて明かされる秘話も含めて紐解いていく。左迅(Vo.)とЯyo(Dr.)の2人が赤裸々に語る、濃厚にしてディープな1万字インタビューをじっくりと味わって欲しい。
●結成10周年ということで今までの歩みを振り返ってみたいのですが、まず2004年に幼なじみだった愁(Ba.)くんと弐(G.)くんの2人が偶然再会したのが結成のキッカケだったと公式プロフィールにはありますよね。
Яyo:…実は10年間黙ってきたことがあって。弐と僕は兄弟なんですよ。言い出すタイミングを逃して、そのまま10年経ってしまったという…(笑)。
●隠し通してきた(笑)。
Яyo:しかも顔も似ていないのでバレなくて、せっかくだから10周年でバラしたら面白いんじゃないかっていう(笑)。弐と愁は本当に幼なじみで、小さい頃から(自分も含めた)3人で遊んだりしていたんですよ。そこから高校生の頃にたまたま駅で2人が再会した時に近況を話したら、それぞれギターとベースをやっているとわかって。さらに僕もドラムをやっていたので、3人で一緒にバンドをやろうということになったんです。そこからギルガメッシュの母体になるバンドが始まりました。
●つまり、結成当初からЯyoくんはメンバーだったと。
Яyo:最初からいました(笑)。
●左迅くんは後から入ったんですよね?
左迅:後から入りました。最初は別のボーカルと4人で活動していたらしいんですけど、そのボーカルが抜けることになって。その時は俺も当時やっていたバンドをやめて、新しいバンドをやりたいなと思っていたところだったんですよ。お互いにタイミングが重なったので「じゃあ、一緒にやろう」となったのが、2004年なんです。その時から数えて10年ということになります。
Яyo:近隣のライヴハウスのライバルバンド同士という感じだったんですよ。「同じくらいの歳のバンドがいるらしいよ」という噂は聞いていて。それが良きタイミングで一緒になったという感じですね。
●お互いのバンドの音楽性も近かったんでしょうか?
左迅:音楽性は全然違いましたね。ギルガメッシュ自体も、音楽性がガラッと変わった時期があって。その時は今も基軸になっているヘヴィなサウンドをやり始めていた時期で、ちょうどその時は俺もそういうバンドをやりたいなと思っていたんですよ。そこがリンクしたので、一緒にやりたいなと思ったんです。
●最初は音楽性も今とは違っていた?
Яyo:全然違いましたね。最初はまだ右も左もわからないような状態でライヴハウスに出始めたので、音楽性がどうこうというレベルではなかったんですよ。そういう状況で活動を続けていく中で色んな音楽も知っていって、ボーカルが入れ替わるタイミングで変わったというか。「もっとしっかりやろう」という感じでした。
●ちなみに2人が最初に会った時の印象は?
左迅:最初に(Яyoと)会った印象は…最低でした(笑)。金髪のヤンキーでネイキッドの単車に乗っていて、完全にヤンチャなヤツという感じで。最初に会った時はボコられるんじゃないかと思って、完全にビビっていましたね(笑)。
Яyo:みんなで顔合わせをしようとなってファミレスに集まった時も、僕はバイクのエンジン音を派手に鳴らしながら登場して「おまたせ」みたいな…。左迅は硬直していましたね(笑)。
●見た目がヤバかったと笑)。
Яyo:バンドをしながら、ヤンチャもしていたんですよ。
左迅:古き良きバンドという感じですね。“悪いヤツがバンドをやる”というイメージの象徴みたいな(笑)。
●何はともあれ(笑)、そこで出会って今の4人になったのが2004年だったと。
左迅:この4人で初めて地元の本八幡ルート14というライヴハウスのステージに立ったところから数えて、10年という感じですね。
●2007年には早くもアメリカやドイツでライヴをしているわけですが、海外志向みたいなものは元々あったんですか?
Яyo:自分たちのルーツになっているのはそういう音楽なので。マリリン・マンソンやスリップノット、リンプ・ビズキットやリンキン・パークみたいなニューメタル(Nu Metal)が熱かった時代に、そういう音楽をずっと聴いて育ってきたんです。だから海外にも行ってみたいなと思ってはいて。「できるわけないよな」とも思っていたんですけど…、やれちゃいましたね。
左迅:2004年から2年間は自主でやってきたんですけど、事務所に入ってからすぐに海外でやれるようなキッカケが訪れて。2008年にはヨーロッパ・ツアーにも行きましたね。結成当初からずっと海外でやりたいとは言っていたのが、事務所に入ってみたらすぐに夢が叶ったという感じでした。
●バンドとしては順調な流れだった?
左迅:順調だったのかな…? 自分たちとしては苦しかったんですけど(笑)。
Яyo:結成から事務所に所属するまでが早かったんですよね。今の事務所に所属して8年くらいになるんですけど、そこまでの2年間のほうが自分としては長く感じていて。それだけ必死にやっていたというか。
●2004年の結成から事務所に所属するまでが大変だったと。
左迅:バイトもしながらバンドをやっていたので、時間もお金もなくて…。その2年間は濃厚で、つらい時期でした。
Яyo:でもそれはそれで楽しかったですけどね。
●現在の事務所に入って最初のアルバムが『13's reborn』(2006年9月)なわけですが、そこからも今回の『LIVE BEST』には1曲(M-14「遮断」)収録されていますね。
左迅:10周年を記念してリリースすることになったので、ライヴでよくやっている曲を収録したんですよ。「遮断」もワンマンの時だったり、今でもたまにライヴで演奏していて。好きなバンドのライヴを観に行った時に、昔の曲をやってくれたら自分も嬉しいですからね。たとえば「この曲がキッカケでギルガメッシュを好きになった」という曲をライヴでやってもらえたら、それだけで「今日は来て良かったな」と思えるんじゃないかなと。そういう部分を大事にしたいという気持ちがあるんです。
●収録曲の中で発表年が一番古いのは、M-2「お前に捧げる醜い声」(2006年4月)ですよね。
左迅:この曲は一番ライヴで映える曲というか、音源で聴くよりもライヴで観たほうがパワー感や一体感が全然違うと思うんですよ。特に一体感がすごくて、ライヴの醍醐味を味わえる曲だと思うので収録しました。普通のベストアルバムは作りたくないという気持ちがあって。この1枚を聴いてもらえれば、初めてライヴに行くという人でも楽しんでもらえる作品にしたかったんです。ライヴバンドならではのベストアルバムの作り方ということを今回は意識しましたね。
●自分たちでも過去の曲を聴いてみると、当時のことを思い出したりするんじゃないですか?
左迅:M-18「evolution」は作った当時に思っていたことや状況を歌詞に書いたんですけど、今歌っていても「自分は当時と同じ気持ちのままバンドをやっているな」と感じられて。『MUSIC』(2008年11月)というアルバムに入っているんですけど、その当時は「自分たちの音楽って何だろう?」とか「今からやりたいこととは?」みたいな部分を模索してきた中でそこが固まってきた時期だったんです。
●バンドの過渡期ならではの悩みや迷いがあった。
左迅:「evolution」ではそういうことを歌っているんですけど、ちょうど最近も10周年を迎える前にして色々と悩んでいた時期で。「自分たちの音楽って何なんだろう?」と探して、「やっぱりこれだよね」というものが見つかった時期にできあがったのが6thアルバム『MONSTER』(2013年11月)だった。その時の想いが蘇ったというか。自分たちが今思っていることを「evolution」の歌詞は歌ってくれていたので、すごく初期衝動を思い出すような感覚がありましたね。
●『MUSIC』は大幅にデジタル・サウンドを導入したりと、バンドとして1つの転機的な作品でもあったんですよね?
Яyo:その時は振りきっていましたね。「全員、敵だ!」みたいな感じで(笑)。
●すごくトガッていたと(笑)。
Яyo:その時期は本当にトガッていましたね(笑)。勢いもハンパじゃなかったし、その時の気持ちに『MONSTER』は近かったのかな。そういう気持ちって、やっぱり大事だなと再確認できました。
●その翌年の2009年からは、ライヴの雰囲気も変わっていったんですよね。
左迅:結成当初からずっと自分の中にある“毒”を吐き続けていたんですよ。でもそれを吐き出しきった時期があって、そこからライヴを観に来てくれる人たちに向けて歌詞を書くようになったんです。そしたらファンレターの内容も変わってきて。それまでは“毒”の部分に共感するという内容が多かったんですけど、「この曲の歌詞に助けられました」とか「力が湧いてきました」という声が多くなったんですよね。それを見た時に「音楽には人を前向きにする力があるんだな」と思って、そこからどんどん変わっていきました。
●音楽に対する認識が変わったことで、歌詞やライヴも変わっていった。
左迅:“人を変える”ってすごいことだと思うし、それができる音楽っていうものは本当にすごいんだなと再認識できた時期があって。そこから「人を変えられるような歌詞を書いていこう」という方向に移行していった時期なので、自分にとってはすごく大きな転機でしたね。
●その変化は以降にリリースした『NOW』(2009年12月)や『GO』(2011年1月)というアルバムにも出ているわけですよね。
Яyo:攻撃的なサウンドもやりきって、「J-POP的な要素も取り入れたギルガメッシュって、どういうふうに見えるのかな?」という挑戦をしたのがそのあたりの作品なんですよ。
●広がりを意識した作品というか。
Яyo:『MUSIC』以降の数年間で色んなことを経験したんです。その頃から、関わるスタッフの数が増えてきたことが一番デカくて。色んな人が関わることによって、メンバーそれぞれの見る方向もズレてきちゃって、「何を信じてやれば良いのかわからない」という時期だったんですよ。「どういう音楽を作ったら良いんだろう?」という状態にも陥ったけど、その時期があっての今なのでそこも大事だったなと思います。
●そういう模索期間は長かったんですか?
Яyo:長かったですね。ヘヴィミュージックをやり続けてきたギルガメッシュで、J-POP的なメロディをどう活かそうかという悩みもあって。一番煮詰まっちゃったのは、曲ですね。でもそういう中でもすごく良い作品が作れたとは思っています。
●J-POP的な要素を入れたくなかったわけではない?
Яyo:嫌ではないんですよ。ギルガメッシュの曲ってヘヴィミュージックだけど、歌謡曲に近いところがあると思うから。ただ、それをたとえばTVを見ているような人のところにまで届かせるにはどうしたら良いのかという部分で悩んで、すごく苦しみましたね。ヘヴィで聴きやすくてカッコ良いギルガメッシュというものをどう表現したら良いのかわからなくて、ずっと模索していました。
●トガッていた時期も「わかるやつだけわかれば良い」という感じではなかった?
Яyo:そういう時期もあったかもしれない。人間って、変わるものですよね…。
●昔はヤンキーだったわけですからね(笑)。
Яyo:バンドのおかげで歯止めがかかったというか…。バンドに色々と救われた部分がありますね(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
●そして2012年は活動的に“攻め”の時期だったと思うんですが、2013年に入ってから一時的に活動休止していたのは何があったんですか?
Яyo:2012年は攻めまくった年だったんですけど、バンドとしてどこに向かうのかという答えが出せないまま突っ走っていたんですよ。本気で突っ走ってはいても、みんなが見ている方向はバラバラだった。そこで「このままではダメだな」と思って、現実を受け止めようという感じでの活動休止でしたね。2008年以降にモヤモヤしていたものが積み重なって、ちょうどそこでバーストしたというか(笑)。
左迅:とりあえず攻めまくってみたんですけど、大きな節目を前に…崩壊したんです(笑)。
●崩壊したんだ(笑)。そこでメンバーの仲が悪くなったり、解散の危機を迎えたりもした?
左迅:まさにそういう感じでした。
Яyo:あと、事務所への不信感が強くなっていましたね。曲を作って行っても「こんな曲じゃお茶の間受けしない」と言われたりして、「知らねえよ!」っていう気持ちが積み重なった結果、曲が書けなくなっちゃって。でも新しい曲を書けなければ、バンドとしても前に進めないじゃないですか。メンバーと顔を合わせることもないし、ライヴを組んでいないからリハーサルもない。そういう状態が半年くらい続いて「このままだとヤバいぞ」となった時に、自分は何をやりたいのかということを根本的に考え直したんです。「音楽を好きなはずなのに、なんでこんなに嫌いになったんだろう?」というくらいだったんですよ。
●音楽自体を嫌いになってしまっていた。
Яyo:本当は好きなんですけど、嫌いになっちゃっていて。そこまで落ちた時に「もう事務所をクビになっても良いから、好きな曲を作ろう」となって、そこから吹っ切れましたね。
●それで作ったのが『MONSTER』だった?
Яyo:そうですね。本当に自分たちがカッコ良いと思うものだけを作ろうと思って。「お茶の間受けする曲なんて知らねえよ!」みたいな感じで、そこでまた『MUSIC』を作っていた頃の感覚に戻ってきたんです。1周して、色んなことがわかりましたね。色んな人からの意見に左右されたりもしたけど、結局は自分たち自身のコアになるものがしっかりしていないと何をやってもダメなんだと気付いたというか。そこからのバーストでしたね(笑)。
●自分たち自身が定まっていないことに原因があると気付けた。
左迅:人に掻きまわされる時点でバンドとして弱いわけだし、そこを見つめ直した時期でしたね。
●メンバー同士でも話し合ったりした?
Яyo:話し合いはしたんですけど、ギクシャクしていましたね。ちゃんと腹を割っていない感じがしたし、腹を割って話したとしてもそこで終わりというか。僕が『MONSTER』の曲を書いてきてから、みんなの気持ちがまた1つになれたのかなと思います。
左迅:やっぱりバンドなので、曲がないと話も進まないから。曲が生まれてからはすごく早かったですね。
●その時点ではバンドとしてやりたいことの答えは出ていたんですか?
Яyo:出ていましたね。海外ツアーでも大きな反響をもらっていて、世界中にギルガメッシュのことを好きだと言ってくれる人がたくさんいる。その人たちを裏切りたくないなという気持ちが強くて。
左迅:バンド結成当初に大事にしていたものを忘れてしまっていたから、解散の危機も迎えたわけで。そこで筋を1本通していかないと今後15年、20年と活動していくのは絶対に無理だなと思ったんです。曲ができてからメンバー同士もちゃんと腹を割って話せるようになったので、そこからミーティングを重ねていって。「魂を売らずに自分たちのやりたいことをやっていきたい」という答えを出して、今に至るという感じなんですよ。本当に大事なものを思い出せた時期だったので、今思えば必要な時間だったなと感じますね。
●今年10周年を迎えたわけですが、この先も15年、20年と長く活動していくというビジョンを持っている。
左迅:メンバー全員、音楽しかないので。やっぱり音楽をずっと続けていきたい。俺なんて特に歌しかないし、歌がなくなったら生きていく意味のない人間だから(笑)。
Яyo:そんな悲しいこと言うなよ!
一同:ハハハ(笑)。
●それくらいの覚悟でやっていると。
左迅:本当にどうしようもない人間なので、ずっと音楽をやっていたいんです。バンドマンって、みんな音楽に救われている人間ばかりだと思うんですよ。それ以外できないからこそバンドをやっていると思うし、そういう人間だからこそ歌えるメッセージがあると思うから。
●そういう部分を改めて感じたわけですね。
左迅:感じましたね。でも別にそこに甘えているわけじゃなくて、命をかけてやっているわけだから。そこは誇りに思っているし、ずっと大事にしてバンドをやっていきたいなと思っています。
Яyo:自分はもしこのバンドをやめたとしても、ずっと音楽をやっているだろうなと思っていて。バンドも好きですけど、やっぱり音楽が好きなんですよ。『MONSTER』のレコーディングも全て自分でエンジニアリングをやったんですけど、そういうところの技術もどんどん高めていきたいと思っていて。…本当に、音楽に救われていますね。
●解散の危機を乗り越えられたのは、このメンバーだからこそという想いもあったからでは?
Яyo:そうでしょうね。10年一緒にやってきて、お互いのムカつくところも見てきたし(笑)、本当に右も左もまだわからないゼロの状態から一緒にバンドをやってきたわけだから。
左迅:寄せ集めのバンドじゃないというところが本当に大きくて。みんなが同じ市内で育って、兄弟もいれば幼なじみもいる中で育んできた絆というのは大きいと思います。
●今はもう明確な方向性が見えている?
Яyo:『MONSTER』では溜まったものを全て吐き出せたし、また新たな方向性やバンドの進んでいく道というものが見えたんです。もうブレることはないと思います。売れるためだけにバンドをやっているわけじゃないし、本当に自分たちの信じる音楽をやっていこうという気持ちになれました。
●そういう心境になった先に今回の『LIVE BEST』というベスト盤を出すのは、自分たちの大きな魅力であるライヴというものを観て欲しいという想いがあったのかなと。
左迅:まさにそうですね。「この10年で磨き上げてきたものを聴いてくれ」という気持ちで、今回の収録曲を選んだので。
●最新作の『MONSTER』は除いて、過去の作品から満遍なく収録している感じですよね。
Яyo:そうですね。でもReMixという形で全体的にイジっているんですよ。ただ過去の音源から曲を集めて並べただけのベストアルバムというのが、個人的にはすごく嫌で。全ての作品を持っているようなリスナーも楽しめるように作りたいなというのが大前提にあったんです。その時代の雰囲気も残しつつ「あ、変わっている!」って思われるような形になっていたら面白いだろうなと。今のサウンドに近付けるような改造をしたというか、ライヴ・バージョンみたいなものかな。
左迅:この10年間のライヴでやってきた中でも曲は育っているし、どんどんレベルアップするものだと思うから。実際に今のライヴでやっている形に近付けた感じです。
●収録曲は全員で選んだんですか?
Яyo:基本的にライヴのセットリストを考えるのは、左迅なんですよ。
左迅:各作品の収録曲を見ながらライヴでよくやるものを選び出していったので、すぐに決まりましたね。
●M-1「patchwork」はライヴでも1曲目にやることが多い?
左迅:1曲目だったり、(セットリスト中の)ブロックの頭にやることが多いですね。
●疾走感のあるオープニングというよりも、ダークでヘヴィな幕開けになっていますよね。
Яyo:ドロっとしている(笑)。
左迅:初期のギルガメッシュのライヴでは、そういう始まり方も多かったんですよ。ズッシリした曲から始まって、そこから一気に加速していくっていう流れが多くて。そういう意味でも、セットリストっぽく曲を並べた感じですね。「ライヴでこの曲たちをやるなら、こういう流れだろうな」ということを考えながら並べました。
●実際のライヴがイメージできる流れになっている。
Яyo:2曲目から加速していく感じもライヴそのままの印象なので、イメージしやすいんじゃないかなと思います。
●ライヴでの盛り上がりも、バンドの進化と共に増してきているのでは?
左迅:自分たちのライヴでの表現の仕方も、どんどんレベルアップしていて。曲間を大事にするようになってから、お客さんを飲み込めるようになったというか。盛り上げるところは盛り上げるし、聴かせるところはちゃんと聴かせるっていう部分は結成当初から意識していたことなので、そこはすごく進化していると思います。
●バンドとしての方向性を模索していた時期も、ライヴは進化し続けていた?
左迅:そういう時期も、ライヴはバッチリだったんですよ。活動休止する前の2012年末のライヴはメチャクチャ盛り上がったし、すごく良いライヴだったんです。
Яyo:ステージに立てば、もう何も関係なしに楽しめちゃうというか。やっぱりお金を払って観に来ているお客さんに、へこたれている姿は見せられないじゃないですか。そこに関しては、プロ意識が大きいかもしれませんね。
●自分たちの状況がどうであれ、ステージに立つ以上は最高のものを見せる。
Яyo:そこは常に100%の気持ちで出られるようにしています。
左迅:貴重な時間を割いて自分たちのライヴを観に来てくれている人たちに、生半可なものは見せられないという気持ちはあって。歳を重ねるごとに、そういう責任感みたいなものは強くなっていますね。
●今回の作品をReMixという形にしたのも、生半可なものを出したくないという責任感からなのでは?
Яyo:そうなんですよ。やっぱり音へのこだわりが強いから。エンジニアリングも全て自分でやっているので、今作を作っているときは本当に死にそうでしたね(笑)。
●19曲もありますからね(笑)。
Яyo:自宅を改造してスタジオにしちゃったので、時間を気にしないでやれちゃうんですよ。ライヴでは自分が演者なのでPA卓をイジれないんですけど、音源に関してはそこもできるわけだから。技術的なものは必要だけど、愛情もより一層かけられるんですよね。あとはやっぱり、それ自体が好きなんだと思います。
左迅:本気で音楽が好きなんですよ。ちょうど昨日話していたんですけど、たとえ10億もらったとしてもЯyoは絶対に音楽をやめないと思うんです。金よりも音楽を取る人間なんだろうなというのは感じますね。
●お金のためじゃなく、本当に音楽が好きだからやっている。
Яyo:そこは自分でも自信があります。たとえ大金をもらったとしても、すぐに消えると思うんですよ。いつの間にか全部、機材になっていると思います(笑)。
●音楽のために全てがあるというか。
Яyo:それくらい音楽が好きなんです。
左迅:俺も本当に歌しかない人間なので、そんなにお金があっても使うことがないんですよね。歌っていることが本当に楽しくて、生き甲斐で…。
Яyo:じゃあ、お金ちょうだい。
左迅:フザけんな! 俺だって生活があるんだ!
一同:ハハハ(笑)。
●本当に音楽が好きなメンバーが集まっている。
左迅:音楽バカのヤツらが揃っているバンドなんだなっていうのは、改めて感じましたね。
Яyo:エンジニアリングについてはもっと勉強しなくちゃいけない部分もあると思っているけど、そこを任せてもらえるくらいメンバーから信頼を得ていることが一番嬉しいですね。
●結成10年を迎えて、ここから先のことも見据えているわけですよね?
左迅:見据えているからこそ、「これからギルガメッシュのライヴに行きたいな」と思っている人のためにこのアルバムを作ったという部分はすごくあるので。これをキッカケにライヴへ来てくれる人の数がもっと増えて、さらに15年、20年と活動していけたら良いなという想いが強いですね。
●今まで応援してくれたファンだけじゃなく、新しい人たちへも向けられている。
Яyo:離れていく人がいても引き留めはしないけど、今は常にオープン状態でいるから。気軽に「遊びに来なよ」っていう感じですね。
●4月からはまず国内をまわって、その後はヨーロッパ・ツアーも予定されています。
Яyo:海外はやっぱり楽しみですね。
●しかも初日はなぜかウクライナという…。
左迅:ウクライナは今回が初めてなんですよ。
Яyo:かわいい娘が多いらしいですからね。
●そんな理由!? (笑)。ウクライナの次はロシアですが。
Яyo:ロシアって、SHIBUYA-AXくらいの規模以上しかライヴ会場がないんですよ。日本みたいな小さめのライヴハウスがほとんどないので、たとえ動員が200人しかなくてもそこでやるしかないんです。
左迅:ロシアのお客さんは激アツですね。北のほうは熱狂的なお客さんが特に多い気がします。歓声が大きすぎて同期の音とかも聴き取れないので、曲の入りがどこかわからなくなるくらいで。最初から最後まで同じデシベルで歓声を上げている感じで(笑)、本当にエネルギーがすごいんですよ。
●それくらい求められているということですよね。
左迅:本当に何十時間も飛行機に乗って移動してきた甲斐があったなと思うくらい、すごく歓迎してくれるんです。やっぱり活動休止していたこともあって長く待たせてしまっていたので、全身全霊で「ただいま!」という気持ちを込めて1本1本大事にライヴをしていきたいなと思います。
●活動休止期間中も海外から、ギルガメッシュを求める声が届いていた?
左迅:Twitterとかですごく来ましたね。「なぜリリースをしないんだ?」とか「早く来いよ!」みたいなツイートをたくさんもらっていたところで、今回ようやく行けることになって。今回のツアーでは日本もヨーロッパも『MONSTER』と『LIVE BEST』の2枚を基軸にやっていくので両方を聴き込んできてもらえたらなと思います。今のギルガメッシュとこの10年間で磨き上げてきた曲たちが合わさったセットリストになると思うので、楽しみにしていて欲しい。
●ツアー全体で言えば初日が渋谷CLUB QUATTROで、ファイナルがヘルシンキになるわけですが…。
Яyo:最高じゃないですか?
一同:ハハハ(笑)。
左迅:その先にも色々考えていることがあって。10周年イヤーとして、1年間盛り上げていくイメージなんです。
●そこから先への期待も膨らみます。
Яyo:色々と変わっていく部分もあると思うんですけど、気持ちはもうブレないので。さらなる高みを求めて、突っ走るだけですね。
左迅:色んなフィールドに足を踏み入れて、自分たちの音楽をどんどん聴いてもらいたいし、色んな人にライヴを観てもらいたいと思っています。凝り固まる活動ではなく、別け隔てなく広げていきたいんです。自分たちの音楽をどれだけ多くの人に発信できるかということをすごく大事にしていきたい。今までは自分たち自身がブレてしまっていた時期もあったけど、今はちゃんと軸があるのでそれを1人でも多くの人に見せつけたいという気持ちが強いですね。
Interview:IMAI
ギルガメッシュ(girugamesh)「evolution」SPOT
ギルガメッシュ(girugamesh)3/26 Release「LIVE BEST」試聴動画