あなたはSUNSET BUSの前身バンド、“3.6MILK(通称サブロク)”をご存知だろうか? 現在SUNSET BUSで精力的に演奏されている「My My Mine」「San Francisco」は、元々3.6MILKの楽曲。ファンからの反応もすこぶる良く、各方面から再録の声が上がる中、全曲サブロクのセルフカバーアルバムが遂に実現! 彼らならではのすばらしい魔法がかけられて現代に蘇った名曲たち、必聴です!
●昨年リリースのミニアルバム『HAPPY HOUR』から1年経ちましたが…SUNSET BUSのジャケットってほとんどビールばっかりじゃないですか。よっぽどビール好きなんやな!
SATOBOY:はい(笑)。
●今作の話を聞く前に、まずは前身バンドである3.6MILKについてちょっと語って頂ければ。
SATOBOY:18歳の時に専門学校に入ったんですけど、そこで知り合ったメンバーと学校のイベントでライブをやっていたんです。3.6MILKという名前は卒業してから付いた名前で、元々は「ザ・スターズ」とか「戦前パイロッツ」とか、イベントごとに名前を変えていました。遊びのようなものだったんで、そこまで真剣にやるという感じでもなく。
●学園祭的なノリのバンドが母体だったんだ。
SATOBOY:そうですね。3.6MILKっていう名前も、“なんか数字が付いてんのってカッコいいな”くらいの感じで。人に由来を聞かれたときには「3人でロックして飛び出すっていう意味がある」みたいなことを言っていましたけど、完全に後付けです(笑)。
●ハハハ(笑)。でも、いみじくも日本のビッグメジャーであるソニーと契約するわけですね。
SATOBOY:僕らはアメリカのSublimeっていうバンドが大好きで、曲調やアルバムタイトルもそのバンドを意識してやっていたんです。そしたら、ちょうどソニーさんがSublimeっぽいバンドを探していたらしくて“大阪にめちゃくちゃSublimeが大好きで崇拝しているバンドがおるらしいぞ”と聞きつけて、観に来てくれたみたいなんですよね。
●そこから3.6MILKは、大阪のパンク・スカ系シーンの筆頭になっていくんだよな。メジャーにいたのは3.6MILKだけだったし“俺たちイケてるんじゃね”的な空気が出ていましたよね。
SATOBOY:いやいや! 全然ですよ。あ、でもヨウちゃん(元3.6MILKのMC YO→1)は出てたかも(笑)。
●(笑)。でも、当時から海外で録音をしたり、憧れのロングビーチに行ったりしていましたよね。それがキッカケで今の人脈やルートができたわけ?
SATOBOY:実はインディーズの頃から直接CDを渡しに行ったりしていたんです。だからメジャーに行く前から繋がりはあって、そこからSublimeのジャケットを描いている人に絵を描いてもらったりしました。
●すごい行動力! 今考えたら、無謀っちゃ無謀やね。
SATOBOY:いざバンドの事務所の住所を調べて行ったら、郵便ポストしかなかったってこともあって(笑)。とりあえず手紙だけ入れといたら、向こうから「今度日本に行くから、一緒に遊ぼうぜ」みたいなメールが来たんです。
●それ以来SATOBOYと呼ばれて可愛がられているわけや。そこからSUNSET BUSに移っていくわけですが、その経緯というのは?
SATOBOY:ドラムが辞めて解散ライブがあったんですけど、その2週間後には現EGG BRAINのうっちー(UCHIDA)に手伝ってもらいながら活動していって。3ヶ月目くらいでライブをやり始めた感じですね。
●バンド活動自体は切れることがなく。
SATOBOY:僕ら的には切れた感覚は全然ないですね。“とりあえずライブをやりたいな”という感じやったんで、自分らの好きなスタンスでやっていました。
●意外と新しいバンドがすっと立ち上がったイメージやね。SUNSET BUSになってから数年は大人しい時期があって、その間に続々と後輩が頭角を現してきて…例えばHEY-SMITHやTHE SKIPPERSとか後輩たちがどんどんシーンの中核を担ってくる状況になってきたよね。そことの関わりはどう?
SATOBOY:HEY-SMITHに関しては、昔僕らのイベントによく呼んでいたんですよ。彼らはずっと豊中で活動していたんですけど、「アメ村で俺らのイベント出てや!」って言うと「ありがとうございます」って言って快く出てくれたんです。その頃から結構チケットを売ってくれたから、正直ありがたい話でした(笑)。「一緒に九州ツアー行ってくれませんか?」って言われたこともありましたね。THE SKIPPERSも、ジャガーが会うたびに「あの曲が好きやった」とか言うてくれるんですよ。「もうええって、わかったから!」って言いたくなるくらい(笑)。
●ジャガーは本当に人懐っこくて可愛らしいもんな。そんな中SUNSET BUSがゆっくり始動するわけだけど、ここ2年くらいはリリースも重なっているし、“京都大作戦”や“COMIN'KOBE”といった大型イベントにもよく出演しているよね。その要因ってなんやと思う?
SATOBOY:やっぱりちゃんと音源を出したこと。新作のアルバムを出してツアーに回っている姿や音作りを見て僕らをわかってくれたから、誘ってくれたんやろうなと思います。その上で、昔からの繋がりというのもあって。10-FEETは「最近どうなん?」って感じで気にかけてくれていたんです。だから“これはええのんできたな”っていう作品があると「ちょっと聴いて」って感じで、こっちからもちゃんと発信できました。
●確かに前作『HAPPY HOUR』は今までにないアプローチも実験的にやったし、「すごく納得のできるもんができた」って言ってたもんな。2014年にはもう1枚アルバムが出ると聞きましたが、何でここでセルフカバーアルバムを出そうと思ったの?
SATOBOY:2、3年くらい前から“セルフカバーを出したいな”と思っていたんです。昔から関わりのある人たちからも「あの曲出してや」っていう声があったし、僕がもうすぐ37歳になるんで“出すんやったら36歳のうちに出そう”と。
●語呂あわせやね(笑)。
SATOBOY:TEPPEIはもう37ですけど(笑)。割と軽いノリでした。
●インディー時代のアルバム『イェ〜イ』の曲まで入っているのもすごいね。あのジャケットは今でも忘れへんもん。ナスビが敷き詰められた写真の上に、ゴシック体のカタカナで「イェ〜イ」って書いてあるやつ! 自分たちとしても思い入れの強いアルバム?
SATOBOY:強いですね。自然とそのアルバムからの曲が多くなってしまいました。
●『イェ〜イ』をリリースした頃は、まだまだ子どもだったもんね。ただ、キャピキャピしていたけど、その頃からちゃんと音楽的なところを見せていた感じはあった。自分の夢を確実に歩んできているよね。
SATOBOY:やりたいことは絶対にやりきりたいというか、形に残したいんです。
●SATOBOYって着々と自分の音楽人生を希望通りに進めているように思うけど、座右の銘というか、目標を達成するための秘訣があるのかな。
SATOBOY:“有言実行”って感じですね。自分が何かをやりたいと思っていても、ちゃんと形になるまでは人に言わないけど、自信が付いて“イケる”ってなったら人に言って必ず実行する。どんなに失敗しようが、そこは男としてやりきる。Sublimeと友達になれたっていうのもそうですけど、“あ、イケんねや”と思ったらグイグイ攻めていったんで。自分がほんまにやりたいことをやっていくって感じですかね。
●本当に“好きでやっている”って話やもんね。
SATOBOY:やっぱり、そうじゃないとできないです。“夢は必ず叶う”とは思ってはいないんですけど、“必ず叶える”という気持ちがあるし、今は言っていたことが現実になって、仕事にもなってる。
●最初にアメリカに行ったときも、好きっていう気持ちだけでロングビーチに行ったわけやもんね。後先考えないエネルギーみたいなものが必要なんやな。
SATOBOY:それは本当に思いますね。好きすぎてアメリカに行って、24歳くらいの頃に“一緒に日本ツアーをやってみたい”というだけで、自分でお金を用意してアメリカからバンドを呼んで。考えてみると、なかなかそういう子はいないと思いますね。ただ単に好きでやってきたことだけど、そのときはすごく斬新なことだったし、振り返ってみると“オモロいことをやってきたな”と思います。
●そうやって音楽人生を謳歌しているけど、バンドマン・レーベルオーナー・服飾ブランド経営者・イベントオーガナイザーと、今挙げただけでも4つの顔があるんですよね、SATOBOYは。
SATOBOY:レーベルについては、今はヨンバルカンっていうバンドが所属しているんですけど、成長を見届けるのが面白いです。今時なかなかいないタイプのバンドで、すごくカッコいいですね。
●“オーナーとして惚れ込んでいるから出そう”、って感じだね。服屋さんとしてはどうですか?
SATOBOY:LOUDOGはもう4年目に突入するところです。バンドマンがPVやアー写で知らない間に着てくれたりしているのを見ると、やっぱり嬉しいです。
●そのLOUDOGっていう名前も、Sublimeのブラッドが飼っていた愛犬から取っているんだよね。最近はイベントのオーガナイズも活発になっていますが。
SATOBOY:SHANKにしろHAKAIHAYABUSAにしろG-FREAK FACTORYにしろNUBOにしろ、“このバンドとやりたいな、楽しそうやな”っていう相手と一緒に、自分を奮い立たせるイベントを仕切っているというか。
●付き合いが幅広いね。
SATOBOY:若いバンドとも、もっともっと繋がって広げていきたいなと思っていますね。
●今若手で特に注目しているバンドっている?
SATOBOY:最近はAT-FIELD、POT、GIZMO、Dizzy Sunfist辺りのバンドが楽しいですね。「そんなにも回るの!?」ってくらいツアーをしていて勢いもあるし、そういう話を聞くと応援したくなる。
●そしてバンドマンとしてのSATOBOYだけど、詩の世界観など最近は精神的なところに若干傾倒しているように見えますが。
SATOBOY:そうですね。SUNSET BUSをやりだして、より“自分の好きな音楽って何なんだろう”って考えるようになって。その結果、誰にどう思われようが、自分が好きで“この曲を歌いたい”って思えるような曲をやることにしたんです。自由にやりたいって気持ちがいっそう強くなったというか。バンド人生の中では悩むときもあるし、違うところに足を踏み入れることもあるかもしれないけど、今は続けていくことによってより説得力も出てくるのかなという気持ちです。
●自分の中で変化というか、自分の興味をかき立てるものや刺激されるものってある?
SATOBOY:やっぱり、いくつになってもバンドやライブを見ていると刺激になりますね。
●本当にバンドが好きなんや。
SATOBOY:好きですね。先輩バンドのライブでも“今日はしんどいな”と思って行きたくないときもあるじゃないですか。でも、そう思いつつも行ってみると“やっぱりいいな、来てよかった”ってなるんですよね。ライブハウスに観に行ったときにいろいろ刺激になる。
●好きなことを続けているSATOBOYの生き方は、ある意味人間の理想やね。SUNSET BUSになったからこそ、3.6MILKを客観的に振り返れると思う。そこで、今回のカバーアルバムについてはどんな思い入れがありますか。
SATOBOY:レコーディング中もめっちゃ楽しかったんで、“今のお客さんに聴いてもらっても、絶対に受け入れられる”と思っていて。録りながらずっと「これはイケる!」って言ってました。昔のアルバムというより新譜くらいの気持ちで思っているんで、前のアルバムも聴いてくれたらいっそう面白いと思います。3.6MILKのときみたいな勢いはないけど、落ち着いた感じというか、違った楽しさがありますよ。
●最後に、今年発売になるであろう次期アルバムについて、読者にメッセージをいただければと思います。
SATOBOY:次のフルアルバムは9月末中には出したいなと思っています。やっぱり『3.6MILK』はある意味遊び感覚でもあったんで、オリジナルフルアルバムをぜひ楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
●これからのSUNSET BUSに期待ですね。秋以降のライブはどうですか?
SATOBOY:ツアーも今までにないくらい多めに組んでいるところなんで、県外にもしっかり行けるようにしています。無理かもしれないですけど、昔みたいに“もうええやろ、こんな回らんでも”っていうのをやってみたいなと思っているんで(笑)。
●ぜひとも、それができるということを証明してほしいなと思います。
Interview:PJ
Edit:森下恭子