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POP DISASTER

誰の真似でもなく、誰にも真似できない。真に発見されるべき音がここにある

AP_POPDISASTER日本国内のみならず海外の有名バンドからも、突出して高い評価を受けてきた不世出の旋律奇才バンド、POP DISASTER。2003年の結成から昨年までに彼らが歩いてきた10年間という道のりは、“結成10周年”という言葉だけで簡単に片付けられるような平坦なものではなかった。常に新たな挑戦も取り入れつつ、当然のように毎回ハイクオリティな楽曲と作品を作り上げてきたが、その音は未だ世の“主流”とはなり得ていない。そこから生じる苦悩と葛藤も、度重なるメンバーチェンジも乗り越えて完成させたニューアルバム『DIS:COVER』。誰の真似でもない、誰にも真似できないサウンドがここには鳴り響いている。それを発見するのが他の誰でもなく、あなたであって欲しいと願う。

 

「今までも新しいことには挑戦しつつ、自分たちらしさも出してきたから。ある意味では“いつもどおり”やったし、それによって前作をきちんと超えられた」

●前作の『CALLING』からは、1年4ヶ月ほど空いたわけですが。

Takayuki:最初は前作から1年後に新作をリリースするつもりだったんですけど、諸事情で発売が延びてしまったんですよ。とは言え、その間にもカバー・ミニアルバム(『Flashback To Memories2』)を出してはいて。

●最初は1年で新作を出す予定だったと。

Takayuki:去年の8月〜9月頃には一度、アルバム1枚分のRECを終えてはいたんです。年末には出す予定だったんですけど、今後のスケジュールも色々と考えた結果としてリリースを延期することになって。

●カバー・ミニアルバムは、当初から出す予定だったんですか?

Ebi:いや、急遽でしたね。ただ単に1年に1枚アルバムを出すよりも、結成10周年と絡めて企画物でカバーをやってみたら面白いんじゃないかということで僕が言い出しました。でもそれに手こずりすぎて新作の曲作りにまで全然辿り着けず、最終的に11曲を1ヶ月半くらいで作らないといけないくらいにまで追い込まれて…。それでも何とか8月〜9月でフルアルバム1枚分のRECを終わらせたのに、延期っていう(笑)。

●制作自体は早めに終わっていたんですね。

Ebi:ただ、そこから新たに3曲ほど作って、当初予定していた収録曲と一部入れ替えたんですよ。入れ替えたことでアルバムから漏れた内の2曲は、“maximum10 tour”の会場限定シングルに入っています。トータルでは16曲くらい作りましたね。

●時間がなかったわりにたくさん曲が作れたということは、難産ではなかった?

Ebi:難産とか言っているヒマもなかったんです(笑)。1ヶ月半後にRECも決まっている段階で、まだ2曲しかできていなかったから。明らかに良くないものはボツにしたけど、本当に良いのかどうかはわからないままでとにかく曲を作っていくという感じで。曲を先に作って、メロディは後から乗せていきましたね。

●ストックもなかったんですか?

Ebi:ストックは一切なかったですね。

Hossy:前作の時点で全部出しきったんです。

Takayuki:制作当初からあったのは、コンピで発表済みの2曲(M-11「Misery」とM-13「Shadows Fall」)だけでした。

●曲を作るにあたって、方向性を話し合ったりはしたんでしょうか?

Takayuki:方針は特になかったですね。何とか絞り出してきたものが、これだったという感じです。

Ebi:とにかく時間がなかったのでネタをどんどん出して、それをバンドで広げていく感じで。そこから使えるか、使えないかを判断していきました。でもカバーで手こずったのもあって、やっぱりオリジナルの曲作りは楽しいなと思いましたね。

●ブログを見ていると、今回の制作にあたっては色々と苦悩や葛藤もあったようですが。

Ebi:自分らのやっている音が今の時代に求められているような主流のものじゃないっていうことは、10年も活動してきたらわかるわけで。それをわかった上で自分らのやりたいことを貫き通すのか、それとも主流なものに寄せていくべきなのかというところで色んな人にアドバイスを求めたりして。今回の制作前から色んなことを実際に試してみたけど、もう「どうしたらいいねん?」っていうくらいにまでなってしまっていましたね。

●本当に方向性を迷っていたわけですね。

Ebi:実際に「方向性がブレているな」と自分で思うような曲も作ってはみたけど、結局そういうものは残らなかったんですよ。俺らはそういうものができないとわかったし、だからこそ今回は本当に“POP DISASTER”という感じのアルバムになったんだと思いますね。

●無理して主流なものに合わせたりはしなかった。

Ebi:そんな曲をやっても、自分らがアガらないから。売れる/売れないじゃなく、自分らが本当に良いと思えるものを作りました。

●自分たちがアガれる曲ということを最も重視した。

Ebi:基本はそこですね。ただ、ライブでお客さんと一緒に楽しむことを意識したアレンジはいっぱいありますよ。そういう部分はありつつ、自分らが好きなようにやったというか。時間もなかったので最初は良いか悪いかも判断できていなかったけど、しばらく経ってから聴いてみたらメッチャ良いものが作れていたことに気付けたんです。今までで一番気に入っているし、前作は余裕で超えられたと思っています。だから結果がどうであっても、俺らとしては問題ないですね。

●コーラス部分は特にライブでの盛り上がりが見えやすいかなと。

Takayuki:そこはもちろん意識しました。前作からは制作中もライブを止めないようにしてきたので、今回はそういう部分がより顕著に出ているんじゃないかな。

●去年は10周年というのはありつつ、その間もずっとライブや制作をしていたわけですよね?

Takayuki:そういう感じでした。

Ebi:本当は10周年ということで、大々的な動きをやりたかったんですよ。でもアルバムが延期になったり、Junko(Ba.)の脱退が決まったりと色んなアクシデントが起こったことで、中途半端になってしまったことは悔いが残っていますね。本当は今回のアルバムも10周年の間に出したかったわけで。

●ブログではEbiさんがバンドの歴史を書かれていましたが、自分たちでもこの10年の道のりを振り返ったりしたのでは?

Ebi:本当に平坦な道のりの10年じゃなかったんですよ。ただ書き連ねても面白くないのでブッ込みも入れつつブログは書いたんですけど、ちょっとブッ込みすぎたかなって(笑)。

●かなり率直な内容だと思いました(笑)。

Takayuki:10周年と言っても、ガッツリ10年間やっていたわけじゃないですからね。途中で活動が止まっていた時期もあったし、色んなことがあって…。

Ebi:でもメンバーチェンジも多かった中で、10年間もバンドを保ってこれたのはすごいことですよ。

●ある意味、10周年で予定通り新作を出せなかったこともPOP DISASTERらしいというか。

Ebi:そういう運命には逆らえないですね(笑)。

●ハハハ(笑)。今回の作品では打ち込みを導入した曲があったりと、新たな挑戦も感じられました。

Takayuki:M-5「Here We Go Now」ですよね。あれはただのEbiの思い付きです(笑)。

Ebi:打ち込みというか、シンセが入っているだけですね。Takayukiが作ってきた曲を聴いた時に、ああいう音を入れたら良いんじゃないかというイメージが浮かんで。ディレクターにお願いして、シンセで弾いてもらったんですよ。

●Ebiさんの中で浮かんだイメージを形にしたと。

Ebi:ギターのリード部分を考えている時に、この曲はギターじゃないなと思って。シンセで弾いたほうが良くなりそうだと思ったので試しに入れてもらったら、すごく気に入ったんですよ。Takayukiは最後まで「要らんのちゃう?」と言っていましたけど(笑)。

Takayuki:もちろん今は良いと思っていますよ。しかもディレクターに弾いてもらったので、今さら却下したら怒るやろうなと思って(笑)。

●そんな理由!? (笑)。1曲目にもそれっぽい音が入っていませんか?

Takayuki:あれはギターで弾いています。基本的には人力じゃない音は入れたくないんですよ。

Ebi:同期が好きじゃないんです。だから「Here We Go Now」のシンセ部分も、ライブではギターで弾きます。

●「Misery」みたいなヘヴィな曲調も新しい気がしたんですが。

Takayuki:これは僕が作ったんですけど、完全にライブを意識した曲ですね。

Ebi:こういうシンガロング的なコーラスは初めてじゃないかな。

Hossy:一緒にツアーをまわっていたwaterweedのボーカル(Ba./Vo.Tomohiro Ohga)にコーラスで参加してもらいました。

●すごく男くさいというか、ハードコア的な匂いがカッコ良いですよね。

Takayuki:そこは彼(Ohga)の色が出ていますね。

Ebi:最初は抑え目でやっていたらしいんですけど、本人から「本気を出しても良いですか?」と言ってきて(笑)。

Hossy:「本気で行きます!」と(笑)。

●それであれほど熱いコーラスが生まれたと(笑)。

Hossy:持ち上げられましたね。

●こういうヘヴィな曲調も、引き出しとして持っていたんですね。

Takayuki:意外と引き出しの中にありましたね。

Ebi:自分らとしては、そんなにヘヴィというイメージはないんですよ。

Hossy:イントロのリフ以外は結構ポップかなと。

●そういう意味ではM-7「Let's Go」なんて、洋楽のポップスでありそうな感じというか。

Ebi:パンクバンドがやる、ちょっとシャレオツな曲というか(笑)。最初はあんな感じにするつもりはなかったんです。でもギターのリフができてしまったので、そっちの方向に寄せようとしたら…かなり苦戦しましたね。

Takayuki:8〜9月に1回RECが終わってから12月にも新たに3曲録ったんですけど、その中の1曲なんですよ。この曲とM-2「Don't Be Afraid」は、最初にRECした段階では入っていなかったんです。

●この13曲に決まったのはいつ頃?

Takayuki:去年の12月末くらいでしたね。

●そこで完成したアルバムに、『DIS:COVER』というタイトルを付けた理由とは?

Takayuki:前回のリリースがカバー作品だったので「今回はカバーじゃないよ(DIS-COVER)」という意味も込めつつ、「新しい発見(DISCOVER)もあったよ」という意味も込めたダブルミーニングになっています。自分としては「こんな引き出しもあったんや!」っていう発見があった制作だったから。

●他のメンバーも個々に新たな発見はあった?

Hossy:自分の中では「カバーじゃない」という意味合いのほうが強いかな。自分たちらしいものができたなと。「誰かっぽい」曲を作りたいとは思わないので、そういう意味での『DIS:COVER』でもあるなと思います。

Ebi:自分も「POP DISASTERらしいアルバムやな」と思っているので、特に新しい発見はなかったですね。今までも新しいことには挑戦しつつ、自分たちらしさも出してきたから。ある意味では“いつもどおり”やったし、それによって前作をきちんと超えられたアルバムです。

●今作を作ったことで、次への意欲も湧いている?

Takayuki:自分としては基本的にアルバムを1枚作る度に燃え尽きているので正直、次のこととかは全く何も考えていないんですよ。ただ、今回で追い込まれた時に「まだ俺はこんなにやれるんやな」っていうことを再確認できたのは良かったですね。

Ebi:正直、(前作のタイトル曲)「Calling」が僕の中ではメチャクチャ大きくて。バンドとしてあの曲を作れたことで、制作面では満足してしまった部分があったんです。だから「次はどうしよう?」という想いは正直あったけど、今回は『CALLING』とはまた別の良さがあるアルバムになったと思っているんですよ。歌だけじゃなく、全部の楽器の音が利いているアルバムになったというか。今はもう、このアルバムの曲を早くライブでやりたくて仕方がないですね。

●ツアーが待ち遠しいと。

Takayuki:早く発売日を迎えて、色んな人に聴いてもらいたいですね。そこでの反応もやっぱり見てみたいんですよ。音源を聴いてきてもらって、みんなで一緒にライブを楽しみたいです!

Hossy:バンド史上で最高の傑作ができたと思うので、ぜひ聴いてライブにも来て欲しいですね。全ロックファンに聴いてもらいたい1枚です!

Interview:IMAI

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