音楽メディア・フリーマガジン

ラックライフ Vo./G. PON ソロインタビュー

音のひとつひとつ、言葉のひとつひとつには、確かな想いが溢れている

PHOTO_ラックライフ01

気持ちを飾らない言葉にし、メロディにのせ、感情を音にして鳴らしてきたラックライフ。2012年7月にアルバム『キミノコト』をリリースし、たくさんのライブを重ねて成長してきた彼らが、3rdアルバム『my contents』を完成させた。飾らずに感情を爆発させる彼らのステージは、人と繋がりたいという想いが形になったもの。人生のいろんな場面で生まれた想いや後悔、新たな気づきを綴ったその音楽は、ライブハウスでたくさんの人の心に響き、共鳴していくことだろう。リリース後はなんばHatchでの自主企画イベント“GOOD LUCK vol.25”開催が決定。挫けても悔やんでも歩を前に進めてきた彼らの音楽は、確かな想いが溢れている。

 

「挫けそうなときに思い出す言葉をくれたことが嬉しくて、そういう人に僕もなりたいなって。
重みのある言葉を誰かにプレゼントできるような人になりたい」

●つい先日ライブを拝見したんですけど、雰囲気がちょっと変わったという印象があって。それは今回の作品にも影響していると思うんですが、ライブハウスで培ってきたものがステージや楽曲に現れていると感じたんですよね。

PON:とりあえずひたすらライブをやって、それで今作を作ったという感じなんです。前作の2ndアルバム『キミノコト』を2012年7月にリリースしてからの1年半くらいは、ライブに集中してバンドをやってきた感じです。

●『キミノコト』以前もラックライフはひたすらライブをやってきたバンドですけど、この1年半も変わらずライブを重ねてきたと。

PON:そうですね。きっとこれからもしっかりライブをやっていきます。結局、やっぱりライブが好きなんですよ。ライブじゃないと言えへんこともあるし、CDだけでは伝わりきらないこともあるし。そういう気持ちはずっとありますね。その日によって伝える言葉も違うし、鳴らす音も違う。ライブがいちばんリアリティがあって、嘘のない瞬間やと思うんです。

●前作のインタビューのとき、PONくんは「自分は嘘をつけなくて、ライブ中に悲しい曲を歌ったら入り込みすぎてテンションを上げられなくなる」と言っていて。

PON:言ってましたね(笑)。歌っている最中にその曲についてのことを色々と思い出すし、景色が見えるし、その曲で歌っている人も思い出す。となったら、悲しくなって当たり前やと思うんですよ。

●でも曲を作ったときの鮮度とは違いますよね?

PON:もちろん違います。でも、曲にしている物事が起きてからそれまでの経緯も含めて、思い出し方や曲に込めた想いも変わってくるんですよね。だからこそ、その日だけの歌っていう感じになるんだと思います。

●なるほど。自分が理想とするライブはできるようになってきました?

PON:できるようになってきたと思います。理想のライブは…とりあえず自分が嘘をつくのがいちばん良くないし、観ている人のことはわからないですけど、でも観ている人に色んな感情を出して欲しいと思っているから、まずは自分がライブでそうするべきだと思ってやってます。

●「嘘をつくのがいちばん良くない」というのは?

PON:おもしろくなくなりますよね。完璧に作り込むことができるのならいいと思うんです。完璧に作って、それが芸術にまでなっているのならいいんですけど、僕にはそれができないと思ったんです。それなら全部出す方が自分にとっても気持ちいいし、誰かがそれを気持ちいいと思ってくれるのなら、そういうライブがいちばん理想かなと。

●その発言からすると、過去に作り込もうとしたことがあったんですか?

PON:めちゃくちゃありました。僕らが歌モノになったのは20歳くらいで、前身バンドは音楽性も違っていてもうちょっと激しいバンドだったんです。で、音楽性が変わってラックライフになり、初めてツアーをまわったとき…全国40箇所くらいまわったんですけど…そのときに色んなライブハウスの人から「真面目な音楽をやっているんだから、もうちょっと真面目にライブした方がいい」って言われて。おちゃらけていたというか、MCではぐだぐだとちゃらけたことを言って、真面目に歌を歌う、みたいな感じだったんですけど。

●あ、そうなんだ。

PON:たぶん、上手く切り替えられてなかったんですね。そのツアーで色んな人に言われて、スタイルを変えて。でも真面目な感じでやっていたらやっていたで「普通のバンドだね」と言われ、またふざけた感じでやったら「真面目にやった方がいい」と言われ。“どないやねん!”と思いつつ試行錯誤を経て、結局は“自分の好きにやったらいい”ということに気づいて、今のような感じになったんです。

●ありのままを出すのがいちばんだと。

PON:そうですね。思ったことを言って、思ったことを歌って。それでも「駄目だ」と言われても、自分が本物だと思っていたらそれは本物だと思うし、「あなたには響かなかったんだね」ってなるし。自分に誇りを持ってやらなかったら、周りの意見に潰されてしまうなと。

●そういう意味での自信の現れがステージに出ているんでしょうね。ラックライフのライブは、自由な印象が強くて。

PON:自由を売りにしているわけではないですけど(笑)、でも何が起きるかわからへんくらいワクワクするようなライブをしたいと思ってますね。

●今作は、そういう試行錯誤を経た中で生まれてきた楽曲たちなんでしょうか?

PON:そうですね。今作は“my contents”というアルバムタイトル通り、自分自身の中身をさらけ出したんです。「こんな風に見えているけど俺にもこんなところがあるよ」っていう感じ。

●以前、PONくんは「ネガティブ発信のポジティブ思考」と自分のことを言っていましたけど、今作はその陰影がよりはっきりしたような印象があるんですが。

PON:前作『キミノコト』は人のことを歌った楽曲が多かったんですけど、人のことを歌っているときはポジティブな発想が多くなれるんです。でも自分のことを歌っているときは、元々ネガティブな要素が大きすぎて、がんばって少しだけポジティブになってる。今作の曲を作り終わったとき、曲を並べて聴いてみたら自分でも“暗いな〜”と思いました(笑)。

●ハハハ(笑)。でもおそらく、ライブでやることを前提に作ったであろう曲たちなので、例えネガティブな気持ちが綴られていたとしても曲調がそうではないから、暗いとは思わないんですよね。

PON:ああ〜。

●それが顕著なのはM-2「チキンボーイ」だと思うんです。この曲はライブですごく映えると思うんですけど、歌詞は結構ネガティブというか、かなりささくれ立っていて。こういう楽曲で盛り上がるのは、ライブバンドだからこそだと思うんです。

PON:言い方だと思うんですよね。「チキンボーイ」は「口うるさい大人は静かにしてくれ」ということを歌った曲なんですけど、昔ライブハウスの人に色々と言われたことも含めて、「あーだこーだ言いなさんな」と。今度なんばHatchで自主企画をやりますけど、あれについても「ちょっと危なくない?」とか「やめた方がいいんじゃない?」みたいなことを言ってくる人っていつまで経っても居るんですよね。そういう人たちに対して「静かにしてください」という気持ちで作ったんです(笑)。

●生々しい感情をそのまま曲に出したと。

PON:でもそれを暗い感じで歌ったらただの悪口になるじゃないですか。だから「チキンボーイ」ではポップに言ったろうと。そこまでダークな気持ちを綴ったわけでもないし、“見とけよ!”みたいな気持ちっていうか。

●なるほど。ちなみに、作詞/作曲はPONくんですけど、バンドに持っていったときにアレンジでガラっと雰囲気が変わることはあるんですか?

PON:あ、結構ありますね。最初と比べて全然変わることとか。

●例えばライブだとG./Cho.イコマくんの主張がすごくおもしろいんですよね。歌とは別の次元で、すごく耳を持っていかれるプレイをするギタリストだと感じたんですけど、アレンジを詰める段階でもメンバーそれぞれのアイディアや主張が入ってくる?

PON:そうですね。僕もイコマの感性はおもしろいと感じているんですけど、曲を持っていったとき、想像していたこととはまったく違うアプローチのギターをいつも弾いてくるんです。“マジかよ!”って思うんですけど、それがめちゃくちゃ良かったりするんですよね。

●ああ〜。

PON:イコマは特にそうです。自分では考えたこともなかったフレーズを弾く人ですね。そういう感じで、各メンバーの個性は作品を重ねるごとにどんどん濃くなってきていると思います。「それめっちゃおもしろいから、そっちに寄せてみようか」って、アレンジの段階で曲が変わっていくことはよくあります。

●ライブからも楽曲からもそういう雰囲気が伝わってくるんですよね。ワンマンバンドになる要素がまったくないというか、バンドだなって。

PON:そう感じてもらえて嬉しいです。

●あと、今作はライブ会場限定盤として出していたものに新録2曲を加えたということですが、その新録1曲M-8「タイムライト」についてちょっと訊きたかったんです。1stアルバム『World is you』(2011年8月)に収録されていた「君と世界を」という曲は、亡くなったPONくんのお祖母さんや友人のことを“忘れたくない”という想いで書いた曲でしたよね。

PON:はい、そうでした。

●で、2ndアルバム『キミノコト』に収録されている「この空の下で」は、亡くなったお祖母さんや友人のことについて“忘れるわけがないから大丈夫だ”と思えたからできた曲で。

PON:よく覚えてますね(笑)。

●で、今作の「タイムライト」では“そこから見渡す僕らの世界は 何色に見えるのかな”と歌っている。要するに「タイムライト」は、「君と世界を」「この空の下で」に続く楽曲ですよね。

PON:あ、そうですね! 言われて気づきました!

●自覚なかったんか!

PON:そんな気で書いてなかったけど、確かにおばあちゃんのことを想って書いた曲です。続いてた…。

●今気づいた(笑)。

PON:ラックライフになって最初のデモCDをおばあちゃんに聴かせたら「あんた歌上手やね。歌好きやね」って言ってくれたことがあったんです。

●はい。

PON:それで最近、“もうバンドなんかやってられへんかもしれん”って心が折れかけたことがあったんですけど、そのときにおばあちゃんの言葉を思い出したんですよ。“そうやった!”って。“俺は歌が好きやったからもうちょっとがんばろう!”って。それで作ったのが「タイムライト」なんです。

●なるほど。心が折れそうになったのは最近なんですか?

PON:めっちゃ最近です。なんばHatchのイベントとか今回のCDのリリースとか、いろんなことが決まってきて、いろんな重圧があって。“これが一生続くと思ったら俺はもう無理かもしれん”って。

●どれだけ弱いねん!

PON:ハハハハ(笑)。そういう感じで心が折れそうになったんですよ。そんなときにおばあちゃんの言葉を思い出して、立ち直れたっていう。おばあちゃんに対して後悔していることもたくさんあるから、この曲では“走って知れ止まって知れ 悔やんで歩き出せ”って歌っているんです。“後悔をもう繰り返すなよ”っていう意味で。

●うんうん。

PON:でも、そんな不孝者でも、挫けそうなときに思い出す言葉をくれたことが嬉しくて、そういう人に僕もなりたいなって。重みのある言葉を誰かにプレゼントできるような人になりたいなって。

●なるほど。毎回思いますけど、ラックライフの楽曲は生きていく上での気付きや感情がそのまま詰め込まれていますね(笑)。

PON:本当にそうですね(笑)。

●ところでリリース後は、心が折れそうになった原因の1つである(笑)、なんばHatchの自主企画が待っていますね。

PON:はい。毎年3月にはイベントをやっているんですけど、去年の3月に自主企画をやったあと「来年はどうしようか?」と考えて、ノリで「なんばHatchでやったらおもろいんちゃうか」と。でも考えたら地獄ですね。あと1ヶ月、眠れない日々です(苦笑)。

●自分で決めたくせに(笑)。

PON:ノリで決めましたけど、ノリじゃないと決められない場所っていうか。無名な駆け出しのラックライフっていうバンドがなんばHatchでイベントやったらみんなびっくりするやろうなって。あと、普段ライブハウスに来れないような人も、なんばHatchだったら来れるんちゃうかなと思って、僕らの好きな人たちや一緒にやってみたいと思った人たちばかりを集めたイベントなんです。当日のことを考えたら不安で仕方がないけど(笑)。

●でもステージの上のPONくんは、そういうビクビクした感じはまったくないですよね。極端に言えば、MCでスベっても全然平気な無敵感がある。

PON:なんか、ステージに立ったら大丈夫なんですよね。それまではめっちゃ不安だったり怖かったりするけど、ステージに出たら平気なんです。だからなんばHatchも、ステージに上がってしまえばこっちのもんだと思っているんですよ。でも上がるまでは無敵じゃないので、それまでがめちゃくちゃ怖いです(笑)。

●ハハハ(笑)。

PON:最初に言いましたけど、“自分の好きにやったらいい”と思えるようになってから、ステージでは大丈夫になれたんですよね。作り込んだライブをしなくなってから、ステージでは何をしてもいいんだっていう気持ちになれた。

●そういう風になってから、ライブが楽しくなった?

PON:めっちゃ楽しいですね。「なんでも来いよ!」「トラブルカモン!」くらいに思ってます。

●あ、そこまで(笑)。

PON:他のメンバーはそこまで思ってないと思いますけど(笑)、トラブルとかもめっちゃおもしろいです。ライブ自体が楽しい。

●なんばHatch楽しみですね。今回自分のことをさらけ出した『my contents』というアルバムが完成して、今後作りたい楽曲はどういうものですか?

PON:次はお客さんに対して歌いたいですね。やっぱり、ライブにお金を手間をかけて来てくれるっていうことはすごいことやなって改めて思うんです。しかもライブって手元になにも残らないじゃないですか。それでも何度も何度も来てくれる。その人たちに対して、俺はなにを言えるかな? って。その人たちに救われているのも事実やし、その人たちが居るから歌えているのも事実やし…すごく特殊な関係性だと思うんですけど、そういうことを歌いたいです。

●特殊な関係性?

PON:僕らが歌って、それをお金を払って観に来て、そういうお客さんたちを見て僕らが幸せな気持ちになれる…お互い幸せになれる特殊な関係だと思うんです。お金とか音楽じゃなくて、人と人としてどうありたいか。そういうことを歌いたいですね。そういう想いがこのバンドの原点っていうか、いちばん根っこにあるので、改めて歌いたいなって。

●なるほど。

PON:結局、音楽が好きやからバンドをやってるんじゃなくて、人が好きやから音楽をやっているんでしょうね。

PHOTO_ラックライフ02

 

 

 

 

 

 

 

 

interview:Takeshi.Yamanaka

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj