昨年9月16日のシングル『ハッピー・バースデー』発売を皮切りに、結成25周年のアニバーサリーイヤーに突入したthe pillows。長きにわたる活動の中で着実に支持を広げながら、常に自分たちらしい進化を遂げ続けてきた唯一無二の“今”が最も輝いているバンドだ。そんな彼らをリスペクトしているアーティストは当然、現在の音楽シーンにおいても枚挙にいとまがない。15周年記念時に発売された『シンクロナイズド・ロッカーズ』に続く、2作目のトリビュート・アルバムとなる今回の『ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-』が実現したのはその証明と言えるだろう。WHITE ASHやグッドモーニングアメリカなど旬のアーティストから、9mm Parabellum Bulletや髭といった現在のシーンを最前線で引っ張る猛者たちまで、いずれ劣らぬ強烈な個性を持った全14組が集結。永遠の輝きを放つ名曲たちに、新たな角度から光を当てるような素晴らしいトリビュート作品を完成させた。この発売を記念して、JUNGLE☆LIFEではVo./G.山中さわおのスペシャルインタビューが実現。今作についてはもちろんのこと、1年以上の活動休止期間を経てバンドが再び動き出すまでの経緯から現在の心境に至るまで、率直な言葉で語ってもらった。
●the pillows(以下、ピロウズ)の結成25周年ということで、1つの“節目”に特別な何かを感じられているんでしょうか?
山中:うーん…。元々、僕は記念日っていうものを全く気にしないので、特にそういう感覚はないんですよ。毎年カウントダウンイベント(“COUNTDOWN BUMP SHOW!!”)をやっているんだけど、もし自分がバンドをやっていなかったら家で寝ていると思うんですよね。だから誰かがそういう話を言い出したところに乗っかるという感じかな…。
●“記念日”的なものには特に感慨がない。
山中:もちろん僕はバンドが好きで、“新曲を作って、レコーディングをして、ライブをやる”っていうことだけを繰り返しているわけで。それだけを25年間やっているので、何か普段とは違うような楽しいイベントに乗っかるのはすごくワクワクするんですよ。だからもしカウントダウンライブがなければ寂しいなと思うし、ピロウズが絡んで何か特別な日を作っていくこと自体は好きなんだと思います。
●そういう意味で、今回の25周年企画のイベントやトリビュート自体にはワクワクしてるんですよね?
山中:そうですね。最初はそんなに思い入れもなく、軽い扉をスッと開いたくらいの感覚だと思うんです。アニバーサリーにまつわる楽しい扉をスッと開いて、どんどん進んでいくうちに気持ちが変わっていくというか、自己催眠にかかっていくような…。現時点では、今回のトリビュートを聴いてワクワクしたということ以外にはまだ何も起こっていないんですよ。今週末(取材は1月前半)には上田健司と一緒に第1期のメンバーで22年ぶりにライブをやって、その後、第2期のツアーもやる予定で。だから、僕はこれから盛り上がっていくんです。
●実際のイベントや出来事を通して、徐々に自分の気持ちも盛り上がっていく。
山中:そんな感じです。ステージで大きな声で20年前の曲を歌った時に、ちょっと心に何か思うものがあるんだろうなと思います。
●昨年11月〜12月の“TOUR 2013 LOSTMAN GO TO CITY”で普段はあまり演奏しないレアな楽曲をあえてやった時も、何か湧き上がってくるものがあったのでは?
山中:それはありましたね。でもあの時はアニバーサリーだからというよりも、活動休止明けというところが僕の中では大きくて。まだ半信半疑な部分を抱えつつも再び動き始めたんですけど、あのツアーでは15年ぶりとか10年ぶりに歌うような曲も結構あったんです。そしたら音楽はやはり記憶も連れてくるもので、当時その曲を作っていたリハーサル風景やツアーのことも浮かんできたんですよ。そこで「色んな時期を乗り越えて、俺たちはやってきたんだな」という気持ちになれたのが良かった。活動再開のリハビリになったような感覚もありましたね。悪い時もあるけど良い時もあったし、これからもあるに違いないっていう…熟年夫婦みたいな(笑)。
●活動休止したというのも、長く連れ添った熟年夫婦的な関係性からのマンネリを解消するためという意味合いもあったんですよね?
山中:まあ、別居(みたいなもの)ですからね(笑)。
●ハハハ(笑)。活動休止をした効果は、実際に感じましたか?
山中:それは感じました。特にレコーディング中のスタジオでは、(他のメンバー2人が)音楽だけじゃなく人間関係も含めて色んなことをサボらないで上手くやっていこうとしているなっていう空気は感じたので。活動を休んだことにもソロアルバムを出してカンフル剤を打ったことにも、とても意味はあったんじゃないかな。
●そもそも1年以上も活動休止をするということ自体が、ピロウズの歴史上では珍しいですよね。
山中:表立っては、似たようなことがありましたけどね。1992〜1993年頃、上田健司が抜けた後にサポートで鹿島達也さんが入って復活するまで、1年くらいライブを1本しかやってない期間があって。(周りからは)休んでいるかのように見えたんでしょうけど、実際はスタジオで新曲を作ってレコーディングもしていたから、メンバーの感覚としては全然違うというか。でも(今回の活動休止で)1年間、何もないっていうのは(メンバーにとって)これまでとは全然違う生活だったと思うんですよ。何か1つの物事を考えて結論を出すには十分すぎる時間だろうと思ったので、そのくらい空けたほうが良いかなと。
●それだけ期間が空いたことで、久々に3人でスタジオへ入った時はワクワクしたのでは?
山中:いや、別にそんな感じでもなかったですね。正直、1年ぶりのスタジオにも僕自身は別に何も思わなかったんですよ。1年ぶりにそこへ行ったならもう少し何か思うかもしれないんですけど、THE PREDATORSでもソロでも同じスタジオを使っているので…。でも、新曲を作っている時はワクワクしましたね。『ハッピー・バースデー』に収録されている3曲をやっている時はワクワクしたし、何かしら緊張感もあったかな。
●活動休止を経て、メンバーの意識変化も感じられたわけですよね。
山中:そこは具体的に変化を感じました。ちゃんとアイデアを持ってきた…って当たり前のことだから、口にするとバカバカしい話なんですけど(笑)。ただ、ここ数年は(メンバーが)アイデアを出さなくなっていたという異常事態だったので、久しぶりにあるべき姿に戻ったなっていう。…ややこしいんですよ。僕のソロアルバムのほうが参加したアーティストのアイデアがふんだんに溢れていて、全然ソロっぽくないというか。逆にここ何年間かのピロウズの作品は完全に僕のソロみたいになっていて、そこが不思議な感じになっていたんです。
●そういう不思議な逆転現象が起きていたことで、さわおさんとしてはピロウズの状況に危機感を抱いていたんでしょうか?
山中:危機感…というより、“失望”かな。音楽を好きじゃなくなった人と一緒にやっているような感覚があったので、「そんなのミュージシャンじゃない。おかしいよ!」と思っていて。“危機感”だったらまだ余地があるんですけど、“失望した”っていう答えがハッキリ出ていたので(そのまま続けても)ダメだった。
●かといって、解散するという決断はしなかったわけですが。
山中:その(活動休止を決めた)時点で、23年もやってしまっていますからね。23年間の自分の人生を捨てるっていうのは、なかなかできないですよ…。自分にとって一番良い時期を共に過ごしてきたわけですから。でも僕の不満は積もりに積もっていて、今振り返るとその期間が7年くらいあったんです。逆に言えば、15年くらいは最高だったんですよね。
●ここ最近は不満があったとはいえ、それ以上に最高の時間を共にしてきたことが大きい。
山中:15年間も“良い”バンドって、なかなかいないと思うんですよ。そもそも15年も続かないバンドのほうが多いわけですから。バンドらしい“良い”時期が15年もあって、能力が足りない僕のことを支えてくれた時代もあったわけで。そこを冷静に考えると、バンドのあるべき姿というものに(戻ることに)賭けたいなと。復活して何も変わっていなかったら、その時はどんなに悲しくても「僕らはもう終わるしかなかったんだな」と思うんでしょうけど、さすがにそれはないですよ。それは本当に(音楽を)やめたほうがいい人だと思いますね。
●でも、“万が一そういうことがあれば”という覚悟も一応はあったわけですね。
山中:覚悟はあったけど、「そんなわけない。大丈夫だ」と思っていましたよ。たとえば久々に会ったら(メンバーが)すごく太っていて、「俺、音楽をやめて、ラーメン屋をやろうと思うんだよね」と急に言われたとして。それで食べさせてもらったらメチャクチャ美味い…とかだったら、「じゃあ、しょうがないな。俺も店に通うわ」ってなるかもしれないけど(笑)。
●新しい生き方を見つけてしまったんだなと(笑)。
山中:その時はもうしょうがないから、笑顔でサヨナラだよ(笑)。
●でも実際はちゃんと笑顔で、音楽の道に戻ってこれたというわけですね。
山中:まあ、そりゃそうさ(笑)。
●バンドとしての“良い”時代が15年あったからこその信頼感もあるんじゃないですか?
山中:基本的にピロウズの中でみんなが「好き」って挙げる名曲は、ほとんどがその“良い”時代に作った曲じゃないかな。そこに価値はあるだろうと。
●トリビュート盤は、そういう面をより実感できるものでもありますよね。2004年にも結成15周年で『シンクロナイズド・ロッカーズ』というトリビュート盤をリリースされていますが、その時はピロウズ側から各アーティストにオファーして実現したんですよね。
山中:基本的には今回もピロウズからオフィシャルでオファーしているんですけど、前回は本当に僕個人が事務所も通さずに友だちと飲みに行って直接「15周年の誕生日プレゼントとして参加してよ」と誘った感じなんです。そこにみんなが「面白そう」と言って乗っかってくれたという、一風変わったトリビュートだった。“友情の証”みたいな、不思議な感じの作品でしたね。でも今回はいわゆる普通のトリビュートアルバムなので、ちゃんと(参加者から)尊敬されている感じが出ているっていう(笑)。同年代はいないし、みんな後輩なんですよ。
●前回参加した方々もリスペクトはあったかと…(笑)。
山中:ストレイテナーやELLEGARDENは後輩だけど、普段からよく飲んだり一緒に遊んだりしていたんですよ。ただ仲良くしていたっていうだけで、そんなに尊敬されている感じはなかったな(笑)。
●『シンクロナイズド・ロッカーズ』を当時聴いた時は、どんな印象だったんですか?
山中:一番最初にMr.Childrenの「ストレンジ カメレオン」が届いて、それを聴いた時は涙が出ましたね。「ストレンジ カメレオン」という曲には、自分たちが音楽業界に絶望して“もう終わるだろう”と思った時に生まれたという背景があって。そんな曲を日本の全国民が好きなMr.Childrenというバンドが愛情を注いでアレンジして歌ってくれたということに、“こういう曲の報われ方もあるんだな”と思ったんです。最高の評価をしてもらった感じですね。
●だからこそ涙が出るくらい感動したというか。
山中:Mr.Childrenも活動休止していた時期があったんですよね。そこから復活した時のラジオで最初に自分たちの曲をかけるわけじゃなく、「数字を動かす音楽じゃなくて、これからは心を動かす音楽をやりたいんだ」と言って「ストレンジ カメレオン」をかけてくれたそうなんです。その後もBank Bandで「ストレンジ カメレオン」をカバーしてくれていたりもして。
●元々、「ストレンジ カメレオン」にすごく思い入れを抱いてくれていた。
山中:そういう経緯があったから前回のトリビュート盤を出すことになった時にも他の人には曲指定をしていないんですけど、Mr.Childrenだけは「ストレンジ カメレオン」をやってくれないかとお願いしたんです。そこで彼らも「もちろん」と言ってくれたという流れもあって、実際に聴いた時は熱いものが込み上げてきましたね。
●そして今回、10年ぶりに2枚目のトリビュート盤が出るわけですが。
山中:その時点では(トリビュート盤のリリースは)一生に一度のことだと思っていたから、こんなことありえないなって(笑)。前回は「あの人が(ピロウズの曲を)歌うのを聴いてみたい」っていうところからの、すごくワガママな発想だったんですよ。だから相手からやりたいと言ってきたのを断ったりもしていて。よくあるような大人の事情が炸裂した感じの、変なトリビュートにはしたくなかった。
●今回の参加アーティストはどんな基準で選んだんですか?
山中:今回に関してはスタッフにお任せしました。でもピロウズが好きだと直接言ってもらうことも多いし、そう言っている人もよく見かけるので、誰に声をかけるかというのは自ずと決まってくるというか。もちろん仲の良い人や既に出会っちゃっている人たちもいるんですけど、一度も会ったことがないバンドもいて。トリビュートって、(本人と参加者の)面識がないほうが多いと思うんですよ。僕らもザ・ルースターズのトリビュートに参加させてもらった時は、お会いしたことがなかったですから。
●リスペクトの気持ちが強いからこそ、距離感もある程度はあって当然というか。その点、WHITE ASHはピロウズの曲名がそのままバンド名になっているあたりにリスペクトが顕著に見えますよね。
山中:しかもやっぱり「White Ash」をやるんだっていう…、それしかないよなって(笑)。生意気にもVo./G.のび太が「1曲目が良いです!」とか言ってきたから、「曲順まで受け付けてねぇよ!」って言ったんですよ。でも聴いてみたら本当に1曲目にピッタリだったので、「ちくしょう、しょうがねぇな。じゃあ1曲目だ」と。
●納得の仕上がりだったと。WHITE ASHとは元々、知り合いだったんですか?
山中:元々はふくろうずが好きでライブを観に行ったら、そこにWHITE ASHも出ていたんですよ。SEでピロウズの「White Ash」が急にかかって、すごくソワソワしましたね(笑)。それで終演後に挨拶に行ったふくろうずにはわりと冷たくされ、その帰り道でWHITE ASHのみんなが大歓迎してくれたっていう(笑)。
●そんなエピソードが…(笑)。
山中:今では仲が良いんですけど、ふくろうずは人見知りすぎたんですよ。最初の頃は「もしかして蝋人形なのかな?」っていうくらい動かないし、喋んない、眼も合わせない…みたいな(笑)。だから、ピロウズのことをあんまり好きじゃないのかなと思っていて。でも後で仲良くなったら、「ハイブリッド レインボウ」をいつもカラオケで歌っていたと言ってくれたりしたんです。
●単に人見知りなだけだったと(笑)。
山中:そういうのもあって今回、ふくろうずを誘ったのはわりと最後のほうだったんじゃないかな。自分から誘ったら断りづらいだろうなと思っていたので、今回はそれはしないようにしていて。後輩だからということで本当は嫌なのに「うん」って言われるのは、こっちも辛いので。だから飲みに行っても何も言わずにいたら、向こうは向こうで「誘ってもらえないのかな…?」とずっとモジモジしていたらしいです(笑)。
●しかも実際にやるとなっても、後輩だとすごくプレッシャーも感じそうですよね。とはいえ、原曲とは大きくイメージが変わった曲もあったりして…。
山中:めちゃくちゃありましたね。UNISON SQUARE GARDENの「Fool on the planet」なんて、ビートが全く違ったのでビックリしました。「お前ら、ちょっとくらいピロウズらしさが出ないの? 」って言いたくなるくらい、全然違うっていうか(笑)。でもBa./Cho.田淵(智也)くんはピロウズTシャツを着て、ライブ会場で汗だくになっているくらいの感じなんですよ。
●実際はすごく好きなんだけど、アレンジとしてはストレートな影響を感じさせないものになっている。
山中:僕で言えばRCサクセションも佐野元春さんも子どもの頃から大好きだったんですけど、そのどちらも(それぞれの音楽性とピロウズを比べてみて)「ちょっと違わない?」と思われるような感じに近いというか。その後で自分はオルタナの方にサウンドが行ったのもあって、「佐野さんが好き」って言うと意外に感じる人もいると思うんですよ。ちゃんと聴くと何となく佐野さんの影響は出ちゃっていると思うんですけど、そういうことなんじゃないかな。
●ピロウズの影響そのままじゃなくて、自分たちなりに解釈したカバーになっているわけですよね。
山中:だから、ピロウズっぽさを感じるもののほうが少ないというか。カミナリグモは自分がプロデュースもしていたから、それを感じる部分はあるかな。でも他はみんなスタイルが全然違う。たぶん、自分に合うものということを考えて、選曲もしたんじゃないかな。僕らもTHE COLLECTORSやbloodthirsty butchersとか色んなトリビュートに参加してきたけど、やっぱり「好き」っていうだけじゃできないから。自分たちに似合う曲を僕らも選んできたし、みんなもそうなんじゃないかなと。
●だからこそ、それぞれの“らしさ”が出ている。
山中:ただ、髭の「ストレンジ カメレオン」は意外だったな…。「嘘でしょ? 歌もので来るの?」っていう感じだったんだけど、聴いてみたらすごく良かった。この曲が一番最初に届いたというのもあって、最初の感動がありましたね。
●それぞれの選曲についてはどんな印象でしたか?
山中:今回で一番古いのはカミナリグモの「開かない扉の前で」(1994年)で、逆に一番新しいのがScars Boroughの「エネルギヤ」(2012年)なんですよ。「あの頃は良かったね」的なバンドじゃないと感じられるのは、ちょっと嬉しかったかな(笑)。どの時代にも愛情を注いでくれる人がいるっていうのは、嬉しかったですね。あと、14アーティストもいて、1曲もカブらなかったというのが嬉しかった。
●あ、曲が重複しないように調整したわけではないんですね。
山中:はい。カブったらカブったで良いと思っていたから。さすがに半分のアーティストが「ストレンジ カメレオン」で、残り半分が「Funny Bunny」だったりしたらキツかったけど(笑)。自然にバラけたのは嬉しかったですね。僕らは1998〜2000年くらいの曲が特に人気なんですけど、「ノンフィクション」(2006)あたりも最近の曲だし、バランスが良いなと。
●一番新しい「エネルギヤ」は、かなり大胆な解釈のアレンジが新鮮でした。
山中:曲にも合っているし、めちゃくちゃカッコ良いですよね。Scars Boroughには、ELLEGARDENのDr.高橋(宏貴)くんがいるじゃないですか。彼1人だけ2回もピロウズの曲をトリビュートしているっていうのが、個人的には面白いなと(笑)。でも意表を突くっていう意味では、ほとんどの曲が意表を突いてくれたと思っていて。それにあんまり個々に言うのは、ちょっと…。後で絶対、THE BOHEMIANSあたりに「あの記事で自分たちの話題が一度も出ていなかった」とか言われるから、キツいんですよ(笑)。だからもう参加してくれたみんなに「カッコ良かったよ! ありがとう! 」っていう感じですね。
●では個々の話はこれくらいにしつつ(笑)、色んなアーティストにカバーされたことで自分たちでも新たな発見があったのでは?
山中:それはオーディオ的な部分で一番感じましたね。自分のクセというか、レコーディングでは“こういう音色で録る”っていうものが何となくパターン化されてくるんですよ。今回参加してくれた人たちのオリジナル曲ももちろん聴いているんですけど、自分の曲をカバーされた時に「こんなにも違いを感じるのか!?」と。ピロウズのスタジオで真鍋くんが聴いたら「高音がキツすぎる!」って、絶対にダメ出しをしそうな音もあったりして。でもそれは全然“アリ”で「この曲って、こんなにブライトな感じで録っても全然イケるんだな」とか、そういう発見は多々あったかな。
●他人がやっているからこそ、素直に受け入れられるというか。
山中:自分の音楽がこんなにもダイレクトに入ってくるのは、脳が元のピロウズと比べるからというのはあるでしょうね。アレンジだけじゃなくて、オーディオ的な部分からの刺激を今回は一番感じたかな。
●ここで得た刺激がもしかしたら今後、ピロウズ作品に活かされる可能性もあるわけですよね。
山中:オーディオ的な部分ではあるでしょうね。既に影響を受けていると思います。
●ピロウズとして、もう新しい作品に向けての制作も始まっているんでしょうか?
山中:僕の中に曲はあるんですけど、他にやることが多すぎてバンドでは合わせられていないんです。まず第1期のイベントがあって、その次にある第2期のツアーに向けたリハーサルに今は追われている感じですね。“第2期”と僕らが呼んでいる頃のジャズやソウルといった要素って、今はもう身体からすっかり抜けちゃっているんですよ…。絶対に今では使わないコードなんかも山ほどあるので、自分でもどうやっていたのかよく思い出せないところもあって。
●第2期のほうが再現が大変なんですね。
山中:第1期と第2期とでは、だいぶ意味が違っていて。第1期のイベントでは一緒にピロウズを作った上田健司と22年ぶりにステージに立つっていうことに僕は一番ワクワクしているので、音楽的な面よりも感情的な面のほうが大きいんです。それに第1期の曲自体は、今でもたまにやっているんですよね。でも第2期については20周年の時にも全然触れていないくらい、わりと封印された時代だから…。音楽的なジャンルがあまりにも違うので今の曲とは混ざらないからやっていないんですけど、曲自体は好きなんですよ。それを「ここで一発やるか! 」っていう感じで、頑張るっていう。
●そういうものに改めて取り組むことで、今後の作品にも良い影響が出たりするのでは?
山中:うーん…それはないかな。第2期はあまりにも今と違いすぎるから。ピロウズの歴史の中でなかったことにされているような曲たちにも、こういう機会にもう一度スポットライトを当てたかったというだけですね。アニバーサリーとかのキッカケがないとできないことなので、「1回くらいやっておこうか」という感じかな。たとえばジャケット撮影の企画で女装したからといって、今後も女装をしていくかと言えばそういうことじゃない(笑)。この機会にフザけたり、普段はしないようなことをしたいっていうだけなんですよ。
Interview:IMAI
Assistant:馬渡司
『ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-』に寄せて。
参加した全14アーティストからthe pillowsへのリスペクト・コメント集
WHITE ASH「White Ash」
25周年おめでとうございます。誰の足跡もついていない道を選んで、恐れずに突き進んで行く。ぼくがthe pillowsから教わったことです。こんな夢のような機会をいただけて、大好きなバンドの大好きな曲をバンド名にして、本当によかった。(のび太)
グッドモーニングアメリカ「この世の果てまで」
the pillowsトリビュートに参加出来て光栄です。リスペクトの気持ちを込めて、僕らなりにリアレンジしました。the pillowsのファンの方にもグッドモーニングアメリカのファンの方にも気に入ってもらえると嬉しいです。
9mm Parabellum Bullet「インスタント ミュージック」
1996年にピロウズに出会っていなかったら、僕の人生はきっと色んなところがちがっていたと思う。そうじゃなくてよかった。ギターを弾くようになって、バンドをはじめてよかった。それが続いていてよかった。好きな曲ならキリがないけど、仲間とやるならこれだ! と、「インスタント ミュージック」にしました。結成25周年おめでとうございます。大好きなピロウズ、この世の果てまで付いていきます。(菅原卓郎)
Base Ball Bear「Funny Bunny」
めちゃくちゃシンプルな素材で、めちゃくちゃ美味しい料理を作るのって難しいですよね。the pillowsというバンドを何かに例えるならば、そんなすごい料理を作り続けてきた人たち、だと思います。今回カヴァーさせていただいた「FUNNY BUNNY」も、原曲はビックリするほど構成要素が少ないし、素材そのものも純朴で。一つ一つの音やリズムや言葉が、超絶妙に積み重なって出来た、まさに“シンプルでめちゃくちゃ美味しい料理”に他なりません。かなり試行錯誤はしましたが、“同じ別の料理”として、自分たちバージョンの「FUNNY BUNNY」を見出すことが出来ました。ファンのみなさんにとって、この楽曲の新たな魅力の発見に繋がればいいなぁと思っています。そして、初めてthe pillowsの楽曲を聴くというみなさんには、この曲やこのコンピを通して、the pillowsのヤバさを感じていただけたらと思います。(小出祐介)
WEAVER「スケアクロウ」
the pillows25周年おめでとうございます。仙台でのライブ打ち上げ会場で偶然出会ったさわおさん。優しくて最高にクールだった。まさかこんな素晴らしいカタチで再会出来るなんて…。the pillowsの楽曲の中でも際立って切な強い名曲。この曲なら僕たちピアノトリオというスタイルの持ち味を最大限に出し、the pillowsファンの皆さんにも楽しんで頂けるアレンジが出来たと確信しております。ぜひご賞味あれ!(杉本雄治)
Scars Borough「エネルギヤ」
メンバー一致の「エネルギヤ」! 今回のトリビュートアルバムに参加できて本当に幸せです。この曲はどうしても歌いたかった! それはこの曲を聞いてエネルギーをもらったからです。そのエネルギーをしっかり使い果たした作品になったと思います! みなさんにエネルギーが届きますように。(Kyoko)
東京カランコロン「ノンフィクション」
今回のお話をいただいて、心から尊敬しているバンドのカバーだったのでかなりの嬉しさとプレッシャーがあったのですが、カランコロンなりの持ち味を詰め込めたんじゃないかと思ってます。あと、改めて思い知ったのが原曲がカッコ良さ。だから僕らはあえてダサくさせてもらいました。それが僕らなりのリスペクトの心の現れだと思ってもらえると嬉しいです。(いちろー)
カミナリグモ「開かない扉の前で」
ピロウズの音楽に出会ったのは、高校生のとき。当時からよく弾き語りをしていた「開かない扉の前で」でトリビュートに参加させてもらえたのは、信じられない夢のような出来事です。あの頃からずっと「夢の中を行ったり来たり」、今の自分達にも重なってレコーディング中から泣けて仕方ありませんでした。遥か遠い背中に憧れて、追いかけて、夢を見続けていきたい、出来上がったトラックを何度も聞きながらそう思いました。25年間、たくさんの名曲を本当にありがとうございます!
UNISON SQUARE GARDEN「Fool on the planet」
15周年のトリビュートの時、プロになるつもりも無ければ、ユニゾンも結成してない僕は「俺がカバーするなら何かなー」と勝手に想像をめぐらせていたものでした。とはいえ実現するなどとは思ってなかったので、こんな夢の様な事もそうありませんでした。いかにバスターズ魂をアピールするかとか、いかに聴く人を驚かせつつも納得させるかとか、そんな想いをふんだんに詰めたカバーになりました。伊達に命を救われてないのです。twenty and five, congratulation! (田淵智也)
シュリスペイロフ「カーニバル」
幾つかの偶然が重なって、さわおさんと出会えて、こうやって25周年記念のトリビュートに参加出来た事を嬉しく思います。この曲の世界と向き合うことができて幸せでした。孤独で純粋な二人だけの世界がまぶしくて、泣いてしまった。(宮本英一)
a flood of circle「Blues Drive Monster」
「Blues Drive Monster」は、まるで俺のことみたいだなと思える大事な歌。最後のサビの佐々木流「アウイェー」に心からのリスペクトをぶち込みました。25周年おめでとうございます。(佐々木亮介)
ふくろうず「ハイブリッド レインボウ」
初めてハイブリッドレインボウを聴いた時、「I can feel.」と思いました。
また飲みに連れてってください。
髭「ストレンジ カメレオン」
VIVA! 25周年おめでとうございます! 来年は26周年で、再来年は27周年です。そんな毎日がアニバーサリーのピロウズのそばでいつも一緒に祝い続けることのできる一ファンとして、僕もあり続けたいです。(須藤寿)
THE BOHEMIANS「No Substance」
待ったぜベイベー! 十年待ったぜベイベーッ!! the pillowsの誇る数百種の世紀のメロディー。それを相手に繰り返したイメトレの日々。そしてついに選んだぜこの一曲! 命がけだぜベイベー! 命かけたぜベイベー!! え? なんだって? そんな想いを抱えた奴らが14バンドも集まっただって? そしておっぱじめちまっただって!? いかれてるぜ!こんな大パーティーの予感は十年はなかった! 待ったぜベイベー。。十年待ったぜベイベェェェェッ!!