CASCADEが約1年半ぶりに、ニューアルバム『Jam-packed Jam』をリリースする。結成20周年を迎えた昨年、これまでに発表した全てのアルバムを再演するという企画イベント“ALL ALBUM LIVE 2013〜カスケードの成人式〜”を5ヶ月にわたり実施した彼ら。7月はNATCHIN(SIAM SHADE)、8月は黒柳能生(SOPHIA)、9月はYUKKE(MUCC)、10月は人時(黒夢)、11月は白鳥松竹梅(氣志團)という豪華なゲストベーシストと共に各回のアンコールで披露した新曲が今作には収録されている。それぞれの所属バンドをイメージしてMASASHI(G.)が作ったという楽曲に、レコーディングにも各ベーシストが参加することで生まれた爆発的な化学変化。さらには5ヶ月間に及ぶイベントでの濃厚かつ刺激的な体験がバンド内に強烈なグルーヴを湧き起こし、ライブ感溢れるカラフルなアルバムをここに誕生させた。
「アルバムを意識したというよりも、ライブでやった瞬間に盛り上がるような曲をやりたいという気持ちのほうが先だったので。結果、全曲盛り上がる曲になっちゃったんですけど(笑)」
「いざレコーディングするとなったら、みんなが色んなフレーズを考えてきてくれていたのでビックリすると同時に“すごいな!”って思いました。今回で“化学変化を覚えちゃったな”っていう感じです」
●昨年は結成20周年ということで、ゲストベーシストを迎えて過去のアルバムを演奏する企画イベントをやったんですよね。
MASASHI:企画は去年の7月から11月までの5ヵ月間でやりました。元々はせっかくベースレスなので、僕らに馴染みのある人や一緒に演奏してみたい人とイベントをやろうというところから盛り上がって。そこで昔の曲を懐かしむだけじゃなくて、「ぜひ新曲もやろう!」ということで去年の3月くらいから準備を始めましたね。
●その時点では、次のアルバムについての構想はまだなかった?
MASASHI:3月に企画を考えた時点では、まだなかったですね。アルバムを意識したというよりも、ライブでやった瞬間に盛り上がるような曲をやりたいという気持ちのほうが先だったので。結果、全曲盛り上がる曲になっちゃったんですけど(笑)。
●だから、今作はライブ感溢れるアルバムになったわけですね。
MASASHI:アルバムを作ってからライブをするっていう流れが、ここ最近の定番。でもデビューするもっと以前はライブをするために新曲を作って、それがまとまってきたところでアルバムを作るという流れだった。今回はそれに近いような状況で、まずライブでやる曲を作って。そこで良い曲が集まってきたからアルバムを作る、という流れが自然にできた感じかな。
●本来のバンドらしい流れで制作できた。
MASASHI:そうですね。ゴールが見えていえるから、僕らも変に気負うことなくて。「こういう曲をやったらライブで盛り上がるよね」っていうのもわかっているから、本当に楽しくやれたんですよ。
●ゲストベーシストの方々との作業も楽しめた感じでしょうか?
MASASHI:久しぶりに会う方もいれば、初めて会う方もいたんですよ。だから最初はコミュニケーションを取るのもドキドキしていたけど、フタを開けてみたら「え? バーベキューの資格を持ってるの?」みたいな話で盛り上がって(笑)。そういう感じで徐々に雰囲気が柔らかくなっていきましたね。でも一緒にやり始めたら「みんなベースすごいな!」って思ったんですけど。
●初めて会った方というのは?
MASASHI:氣志團の白鳥松竹梅くんですね。氣志團のライブはみんなで何度か観に行っているんですけど、お会いするのは初めてでした。一緒にやってみたら、やっぱりすごく熱い人だなというのがわかって。ライブ中はもちろん、レコーディング中もずっとリーゼントでしたから(笑)。
●そこはイメージを徹底されていらっしゃると(笑)。
MASASHI:そういうところでも1本筋が通ったところが、音にも出ているなと。“漢(おとこ)”を感じましたね。あとはSOPHIAの黒柳(能生)くんも、一緒にやるのは初めてで。
●SOPHIAは、世代や活動時期的には近いんじゃないんですか?
MASASHI:同じくらいの時期に活動はしていたんですけど、なかなか接点がなかったんですよね。
TAMA:僕は前にやっていたバンドの頃から、実は接点がありまして…。SOPHIAとCASCADEってちょうど同じくらいにデビューしたのもあって、同じようなスタート地点から一緒に駆け抜けてきたというところで縁を感じる方ですね。今、SOPHIAは活動休止中なんですけど、僕たちも活動休止や色んな経験をしてきたから他人とは思えない気がして。勝手に同志だと思っているので、彼と一緒にステージに立てて嬉しかったです。
●黒夢の人時さんも同世代だそうですが。
TAMA:僕は前にやっていたバンドの頃に、黒夢と2マンをやったことがあるんですよ。ちょうど僕はその時が脱退ライブで、それを人時くんに言ったら覚えてくれていて。バンドとしては黒夢のほうが先輩なんですけど、長いこと活動していると色んな縁があるんだなと思いますね。そして今回一緒にステージに立ってみると、人時くんのベースは本当にすごかったです。どこかギターみたいなベースというか…。
●どの方も特徴のあるベーシストですよね。SIAM SHADEのNATCHINさんが弾かれているM-10「カナリアROMANTIX」は、スラップが特徴的で…。
MASASHI:NATCHINのベースはロックな感じで、男っぽいフレーズが多いので、「5弦(ベース)でしかもスラップもやるんだろうな」というイメージで曲を作っていって。できあがった曲を送ったら、Twitter上でNATCHINが「これ、5弦(ベース)で弾けってこと?」ってつぶやいていたらしいんですよ。そこで「あれっ?」と。こっちのイメージとしてはそうだったんですけど、実は5弦ベースは弾かないんだと知ったんです。
●勝手にそんなイメージがあっただけという(笑)。
MASASHI:ライブをやる前にリハーサルをした時、NATCHINから「MASASHIくん、ごめん。そういうイメージがあるのかもしれないけど、俺はスラップってやったことないんだよね…」と言われました(笑)。でもNATCHINはそこからスラップを練習してきてくれて、結果的にすごくカッコ良いものになりましたね。
●結果としては良かったと。
HIROSHI:そのために5弦ベースを1本作ったらしいですからね。
MASASHI:「持っていないから作るわ」と言ってくれた時は「マジか!?」って思いました(笑)。「SIAM SHADEでも使える時があれば使おうと思う」とは言っていましたけど、ちょっとビックリしましたね。
●MUCCのYUKKEさんとの作業はどうでしたか?
MASASHI:YUKKEくんは9月にライブを一緒にやったんです。7月のNATCHINから始まって、8月に黒柳くんとやって、僕らも色んなベーシストとコラボすることに慣れてきて…。
HIROSHI:楽しくなってきたんだよね。YUKKEくんはすごく先輩想いで、良い接し方をしてくれたのでスムーズに作業に入れたところがあって。でも本人はメチャクチャ緊張していたみたいで、リハーサルの時に履いていた草履が左右で違っていたんですよ。こっちは「オシャレでそうしているのかな?」くらいに思っていたんですけど、あとで誰かが訊いてみたら「えっ!? 本当だ…恥ずかしい!」と言っていたそうで(笑)。
●そのくらい緊張していたと(笑)。
TAMA:前日は眠れなかったと言っていましたね。あんなに緊張しなくてもいいのに…(笑)。
●緊張はしつつも演奏が始まれば、プレイは素晴らしいわけですよね。
MASASHI:みんな全然悩むことなく、迷うこともなく一直線に弾いてくれましたね。
●曲を渡す時点で、ある程度のイメージは伝えているんですか?
MASASHI:ざっくりですけどね。あんまり「これでお願いします」っていう感じにしちゃうと、(予想を)飛び越えないと思うから。デモを渡す段階ではルート系のベースが多くて、そんなにトリッキーなことはしていないんですよ。「あとはご自由にお願いします」くらいの感じが良いかなと思っていて。いざレコーディングするとなったら、みんなが色んなフレーズを考えてきてくれていたのでビックリすると同時に「すごいな!」って思いました。今回で「化学変化を覚えちゃったな」っていう感じです。
TAMA:やっている側はすごく楽しいんですよ。自分たちがベースレスだからできることですから。「こういう企画もアリなんだ」と思いましたね。
●アルバム全体で見ると、JUNさんとMeguさんがベースを弾いている曲が多いですよね。
MASASHI:それぞれ3曲ずつですね。Meguちゃんに関しては、(CASCADEの復活以降は)レコーディングもライブもずっと一緒にやってくれていて。JUNくんは今回のレコーディングが初めてだったんですけど、ライブでも既にフィーリングを合わせているのでスムーズにやれました。企画イベントのゲストベーシストについては全員がアンコールのみでの演奏だったので、それ以外はJUNくんにベース弾いてもらったんですよ。
●この2人に関しては一緒にライブをやり慣れているから、特にレコーディングもやりやすかったのでは?
MASASHI:逆に言えば、JUNくんとMeguちゃんは(企画イベント用に作った)新曲をライブでやってないんです。それで今回アルバムを作る中で他にも曲を作ろうとなった時に、「じゃあ、JUNくんとMeguちゃんにお願いしよう」ということになったんですよね。だから、(2人が今作で弾いている曲は)ライブではまだ1回もやっていない曲なんです。
●ゲストベーシストと一緒に披露した新曲以外は、企画イベントが全部終わった後に作ったんですか?
MASASHI:その前から温存していた曲もあったと思うけど、実際に磨き始めたのは企画が終わってからかな。企画を通してライブ映えする曲がたくさん集まったので、それを支えていくような曲も必要だなとなって。テンポが少し違う曲や、短いハチャメチャな曲とかはそれ以降にできた曲ですね。
●全体的なバランスを見て、他の曲を新たに作っていったと。
MASASHI:そうですね。作っている時は気付かなかったんですけど、企画でやった新曲がどれも濃すぎて…。並べて聴いてみると全部「速いな」って感じるような、ノリノリの曲ばかりだったんですよ。自然にそういうアルバムになったのは、僕らとしては嬉しいことなんですけど。
●12曲入りですが、あっという間に終わる感じがします。
HIROSHI:実際、36分くらいですからね。
MASASHI:ゲストベーシストの方々が豪華メンツなので、聴き応えは1曲1曲あるんですよ。でも通して聴いてみると、すごくサクッと聴けるアルバムにはなりました。
●M-6「Party Shocking Broadband」はインストですが、アルバム全体のバランスを考えて作った曲でしょうか?
MASASHI:曲自体は結構前に作ってあったんですよ。僕らはライブでもインストをやったりするんですけど、やっぱりスラップを活かしたインストが良いなと思って。そこでMeguちゃんを誘って、暴れて頂きました(笑)。こういう曲がアルバム全体のバランスとして、フックになると良いかなと。
●M-8「神ノ杖」とM-9「国境の涙」もMeguさんがベースを弾かれていますが、この2曲はつながっているような流れになっていますよね。
MASASHI:元々はそれぞれ単体で作っていたんですけど、「神ノ杖」の最後のディレイで延びている部分を活かせるような曲順を考えている時に「国境の涙」が合うんじゃないかとなって。HIROSHIくんがそこに銃撃戦の音をSEとして入れたらどうかというアイデアを出してくれて、やってみたら上手くハマった感じかな。歌詞の内容的にもリンクしている部分はありますね。
●「国境の涙」は、歌詞がちょっとシリアスな感じというか。
MASASHI:CASCADEってハチャメチャだったりパーティーっぽい曲が多いんですけど、こういうところも僕個人としては出していきたいなと思っていたものが少し出ましたね。
●今まであまり出してこなかった部分が出ている?
MASASHI:そんなにマジな感じではないんですけど、今までも反骨的な部分はちょこちょこ歌詞に登場しているんです。でもマジすぎなくて、ちょっとドキッとさせるところがカッコ良いんじゃないかな。「やっぱりCASCADEだな」っていうものにはなっていると思います。
●M-12「Reunion」はタイトルだけ見ると、活動休止から復活したというバンドの歴史を想起させつつ、直接的にはそういう内容ではないですよね。
TAMA:「出会いあれば、別れあり」という言葉もありますけど、そこ(別れ)で終わってしまうのは切ないじゃないですか。「いつかどこかで再会できれば」という意味で、「Reunion」というタイトルにしました。自分の中では“輪廻転生”というか、色んなことがクルクル回っているんじゃないかなと思っているので、「ここでお別れではないんだよ」ということですね。
●この曲をラストにしたのは、そういうイメージがあったから?
HIROSHI:レコーディングを始めた当初から「最後にしたい」と言っていた気がします。
MASASHI:「こういう曲を最後にやると良いんじゃないか」というイメージが、僕らのコアの部分にあるんですよ。まだ歌詞はできていなくて、曲だけをレコーディングした段階でこの曲を最後にしようとは何となく思っていて。TAMAちゃんの歌詞が上がってきて、歌入れした時に「やっぱりこの曲が最後だな」と思いましたね。
●M-3「無限の翼」もTAMAさん作詞ですが、この曲はどういうイメージで?
TAMA:若い歌詞だと思われるかもしれないけど、自分の中に持っているものではあって。「立ち止まって考えることもあるけど、走り続けることが大事なんじゃないのか?」という想いを込めて書きました。
●結成20周年ということで、自分たちの心境を重ねる部分もあるのでは?
TAMA:「自分の限界はここで終わりだ」と思わなければ、若いかどうかは全然関係ないと思うんですよ。「無限の翼なんだ」と自分が思えば、無限に走り続けられるんじゃないかということを信じて頑張っている今日この頃です。最初に曲を聴いた時に“羽ばたく”というフレーズが入ると面白いなと思ったので、「やる気になればどこまでも羽ばたけるんだよ」っていうストレートな想いを込めた歌詞にしました。
●去年の企画イベントシリーズで過去の全アルバムを再演したことが、自分たちの歴史を振り返って見つめ直す機会にもなったのでは?
MASASHI:リリースした当時のライブでやっただけで、その後は全くやっていないような曲が結構あったんですよ。「こんな曲もあったんだな」って思い出しながら今やってみると、意外と気持ちよく感じられる曲もあって。自分たちがやってきた軌跡というものは感じましたね。僕は当時のレコーディング風景なんかも思い出しながらやっていました。でも全曲やったので、どれがどれだったかっていうのはもう忘れちゃいましたけど(笑)。
●アルバム13枚分ということは相当な曲数ですから、覚えるだけでも大変そうな気が…。
MASASHI:毎月2日間ずつ企画をやっていたんですけど、1日目は思い出しながら楽しもうとしている感じで。やっぱり2日目のほうが圧倒的に慣れているし、楽しんでいる感覚がまたちょっと違うんですよ。ツアーだったらその感覚がどんどん増していくんですけど、2日で終わってまた来月用の曲を覚えなくちゃいけないっていう…。自分たちで考えた企画とはいえ、すごいことをやっているなと思いました。
TAMA:いやぁ、大変でしたね。でも「MASASHIはこんなに素晴らしい曲をいっぱい書いてるんだな」というのも実感して。
HIROSHI:200曲以上あるからね。
●それを作ってきたというすごさも実感できた。
TAMA:しかもまた新譜が出るわけで、「尽きることがないんだろうな」と思います。彼をリスペクトしつつ、「何だよ、もう…」とかブツブツ言いながら覚えていましたけど(笑)。改めて「歌い甲斐のある良い曲だな」とは思いましたね。そこに強力なベーシストたちも参加してくれて、ありがたいことこの上ないなと。とても充実した5ヶ月間でした…、これからも頑張ろうと思います。
●そうですね…って、勝手にインタビューを終わらせないで下さいよ(笑)。
HIROSHI:終わっちゃった(笑)。
MASASHI:200曲以上やってきた中で、個人的にはそんなにカブっているテーマがないなと思っていて。同じようなことばかりを言っていないというか、そういう発見もあったんですよ。常に新しいものを作っているという感覚はあるし、今回もそんな1枚がまたできたかなと思います。
●そういう充実感は、今作にも投影されているように思います。
MASASHI:作業的には短い期間だったんですけど、すごく長い間やっていたような気もしていて。それだけ充実してたのかなという感じはしますね。だからジャケットも、“狼もお腹いっぱい”みたいなイラストになっているんです。
●今の心境がジャケットにも出ている。
MASASHI:特にコンセプチュアルなものではないんですけど、ジャケットのイメージは頂いた段階で「これだろう!」という感じだったんです。何となく音とジャケットの雰囲気がリンクしていたのかな。今回は素敵なコラボもできたし、新曲もいっぱいできたので、今は期待に胸が膨らんでいます。
●リリース後のツアーも楽しみなのでは?
HIROSHI:もう僕は『Jam-packed Jam』を100回以上聴いているんですよ。それくらい良いアルバムができたので、ぜひ聴き込んで来てライブで盛り上がってもらえればと思いますね。去年は東京以外でライブをやれていなかったので、やっとツアーにまわれることを僕らも楽しみにしているんですよ。
MASASHI:久しぶりに行く場所もあるので、楽しみにしていてほしいですね。
TAMA:去年は結成20周年ということで色んなベーシストの方と素晴らしい経験をさせて頂きましたし、5ヶ月間でCASCADEのアルバムを全曲網羅して歴史を振り返ってきました。その経験は2014年のツアーに向けても、大きな糧になると思っていて。ここも1つの通過点として、これからも“無限の翼”を持って羽ばたいていきたいですね。そして、CASCADEのライブは非常にメチャクチャです。楽しいライブをやって僕らもはっちゃけたいと思っているので、ぜひぜひライブにも遊びに来て下さい!
Interview:IMAI
Assistant:馬渡司