2012年9月19日、自身7枚目のアルバム『thread』をリリースし、バンド史上最多となる全72公演のツアー“thread” TOUR 2012-2013を5/12@沖縄桜坂セントラルで締め括った10-FEET。全国各地でたくさんのキッズたちが汗と涙と想いをほとばしらせたあの時間をぎゅっと凝縮したLIVE & DOCUMENTARY DVD『OF THE KIDS,BY THE KIDS,FOR THE KIDS!Ⅵ』がリリースされた。同ツアーに行った人も行けなかった人も、10-FEETの濃厚なライブと3人のありのままの姿に触れてほしい。
●今回のツアーはZepp Namba(2012/10/12)とZepp Tokyo(2012/10/25)を拝見したんですが、ライブの印象としてすごくリラックスしている感じがしたんです。
TAKUMA:あ、そうですか。
●それは今回のDVDの映像を観てもそう感じたし。いい意味で力が抜けている気がしたんです。一皮むけたというか、心持ちが今までとちょっと違うのかなと。
TAKUMA:その通りやと思います。でも一皮むけたというより、メンバーとの関係性も、自分の心のコンディションも良かったんやろなと。
●ツアーを通して?
TAKUMA:そうですね。ただ、そういういいコンディションの中でも、“前のツアーやったらもうちょっとストイックなところもあったかな”っていうのは、ずっと感じていて。
●前回のツアーとはモードが違うということ?
TAKUMA:そうですね。それをやろうとしてやっていたわけじゃないんですけど、そういう風にするのが今の自分にとって自然だなと思ってやってました。
●なるほど。
TAKUMA:が、ほんまはもっとこう…おもしろさよりは、“熱い”とか“濃い”とか、それが全部じゃなくてもいいんですけど、エモーショナルでストイックで、嘘じゃないところで、too muchなくらいやりたいんです。そういう気持ちがいつもあったんです。
●ああ〜。
TAKUMA:それをやろうとしてやったときってあまり良くないし、ただ重いだけになるんです。そういう自分の中にある本心の気持ちを燃料にしてやってました。もちろんそうじゃないときというか、ツアーの中では違う時期もあったし。
●それはどっちが良い/悪いという話ではないと思うんですよね。
TAKUMA:おもしろいライブと、眉間にしわを寄せて観てしまうけど悪いライブじゃない…それをどっちも出せたら、僕らの楽曲とか僕らが伝えようとしていることと重なるから、やっぱりそういうライブに常々したいという気持ちはありますね。
●今回のDOCUMENTARY DVDに収録されているTAKUMAくんの話で、「目標を立てたり、“バンドをこういう風にしたい”と考えたり、リスクも挑戦もチャンスも自分たち次第になってきている時期に入った」と言ってましたよね。そういう意識あるからこそ、より自分たちの中から湧き出る想い…さっき言っていたエモーショナルでストイックで嘘じゃないもの…を自身のライブに求めていたんでしょうか?
TAKUMA:それはその通りですね。わけがわからないような衝動を常に求めていた感じはあります。
●この長いツアーで印象に残っている箇所とかありますか?
TAKUMA:うーん…印象に残っているのは青森Quarter(2013/3/20)かな。覚悟を決めてやってましたね。その前の盛岡Club Change WAVE(2012/3/18)でメンバーと大喧嘩したんです。
●あ、そうなんだ。
TAKUMA:ライブの持って行き方というか、気持ちの部分というか。毎回ツアーでは1回や2回そういうことがあるんですけど、運が悪ければ解散するかどうかっていうくらいのレベルなんです。それくらい結構思いっ切りぶつかってるから。
●髪の毛むしるくらい?
TAKUMA:髪の毛むしるくらい。鼻の下舐めて乾くまで放っておくくらい。
●うわっ! 臭っ!
TAKUMA:自分らが理想とする“いいライブ”をすること…そこに対する話し合いの中でそうなったんです。各自がこだわりと想い入れを持ってやってるからこそぶつかるんですけど。
●もちろんそうでしょうね。
TAKUMA:そういうことがあって、青森Quarterのライブは覚悟していましたね。“これでアカンかったらしゃあないわ”くらいの覚悟でライブをやっていました。そういうことは毎回ありますね。
●でもそれは“いい方向に向かおう”というベクトルの中での衝突ですもんね。
TAKUMA:そうですね。変な話ですけど、それがなくなってくると終わりやとちょっと思いますからね。
●今回のツアーで印象的だったアルバム収録曲は「淋しさに火をくべ」なんです。音源で聴いたときの印象とライブで聴いたときの印象が違うというか、音源ではちょっとファニーな感じがするけど、ライブではお客さんを巻き込んで色んな感情が溢れる感じになる。あのギャップがいいなと。
TAKUMA:ああ〜。
●6thアルバム『Life is sweet』に収録されていた「under the umber shine」もそういう感じがあったんですよね。「淋しさに火をくべ」とはタイプが違うけど、ライブでめっちゃ映える。
TAKUMA:どっちもライブの方がエモくなりますよね。
●そうそう。「淋しさに火をくべ」はそもそも14thシングル『その向こうへ』(2011年11月)のカップリングとして発表された曲ですけど、ライブで結構重要な位置になっているし。
TAKUMA:そうですね。曲がああいう変わり方をするの、僕はめっちゃ好きなんですよ。『Life is sweet』で言うと「back to the sunset」もそんな感じがしていて。「back to the sunset」のライブの感じは音源と同じ種類ですけど、でもライブの方がいい意味で湿っぽい部分がグッと前に出てきて。
●そうですよね。
TAKUMA:湿っぽいまま、すごいスピードと衝動感で表現されるっていうか。音源はもうちょっと童謡みたいな感じがありますよね。ライブでのああいう変わり方は好きやな〜。
●10-FEETのライブっぽい感じがするんですよね。ところで今回のDVDにはお客さんの表情もいっぱい映っているじゃないですか。そういうお客さんの表情を見ていて思ったんですけど、10-FEETってすごい環境でやっていますね。お客さん全員が汗まみれでぐちゃぐちゃになりながら、キラキラした目をして、全力で暴れたり、泣いたり笑ったりしていて。そういう人たちの前でライブをするというのはすごいことだなと改めて思ったんです。なあなあでは絶対にできない。だからすごくしんどいだろうけど、でも自分にとっていい環境でバンドをやっているんだなって。
TAKUMA:うん。そうですね。自分にとってすごくいい環境だと思います。僕が憧れてきた周りの先輩たちはそういう環境でやってきたと思うから、僕もその真似じゃなくて、全身全霊で対峙しようと思ってやっているというか。
●すごくタフな環境に身を置いていますよね。そういう立場になることは初めてライブをしたときに覚悟したことかもしれないけど、それでもすごくタフだなって。バンドってすごいなと思いました。僕だったら絶対に泣いてしまうというか、普通では居られないだろうなぁ…。
TAKUMA:僕は泣かんようにしてます。人前では。
●それは意識的に?
TAKUMA:そうですね。たまに「うっ…」ってなってしまうときもありますけど、そう簡単には出さへんもんっていうか、反射的に、嘘をついてでもケロッとかわすというか、隠すというか。
●それはなぜですか?
TAKUMA:基本的に「これや!」って伝えたいものがあるんやったら、泣いてええのは誰かのお祝いのときだけやと思ってるんです。お葬式とか、別れのときでも泣いたらあかん。それでも泣いてしまうことはもちろんありますけど、それはやっぱりあかん。悲しい気持ちで伝えようとしていることを超えて、全部持っていく力が涙にはあると思うんですよ。目がいくじゃないですか。「あ、泣いてはる」って。
●そうですね。
TAKUMA:でも「泣いている」ということを伝えたいわけではないんですよ。色々経験しているからこそ泣きそうになることもありますけど、“そういう自分である”という自覚も覚悟に込めていなくては、ほんまに自分の気持ちを表現したり残さなあかんときに、きっとできなくなる。涙をいっぱい流した後ではできひんようになる気がしたんです。やっぱり気持ちをもらったら応えたいし、返したいんですよね。
●“涙を流す”という方法だけで済ませたくない?
TAKUMA:うん、涙を流すのは応えてないと思うんです。反応しているところを見せているだけで。
●確かに。
TAKUMA:“応える”ということは、涙を超えて伝えることやと思う。伝えている最中に涙がこぼれるのは別にいいと思うんですけど、泣くことに自分がグッと入ってしまうと、歌うことや伝えることを忘れてしまうような気がする。
●なるほど。
TAKUMA:祝うときだけは別やと思うんですどね。
interview:Takeshi.Yamanaka