毎年数々のドラマを生み出している“RUSH BALL”。今年は15回目のアニバーサリーイヤーということで、なんと8/31、9/1の2days開催! 今回はイベントの生まれたキッカケや15周年目の意気込みなどを、“RUSH BALL”のプロデューサー・力竹氏に伺った。華やかな表舞台だけがイベントのすべてではない。開催までの会場準備やブッキング、また当日の運営やバックヤード、そしてお客さんの反応までの全てを含めて、イベントは形成されている。関西が誇る大型ロックイベント“RUSH BALL”のすべてに迫る!
RUSH BALL
GREENS主催の野外ロックイベント。1999年に舞洲にて第一回が行われ、2001年には神戸に、2005年からは泉大津へと場所を移し、昨今は毎年2万人を越える動員を記録。また、毎年春には“RUSH BALL☆R”と銘打たれたプレイベントも行っている。
●まずは“RUSH BALL”の沿革や、開催に至った経緯を教えて頂けますか。
力竹:“RUSH BALL”は、1999年から始まった野外音楽イベントで、今年で15年目を迎えました。コンセプトは“音規制のない大きな会場で、多くの人にまだ知らない音楽も含めて聴いてもらう、ロックなイベント”です。ずばりそれだけですね。
●GREENS自体が20数年の歴史がある中15年目ということは、結構早いうちから立ち上げているんですね。
力竹:1998年に“FUJI ROCK FESTIVAL”があったんですけど、それを観て“ああいうことをやってみたい”と思って。一流のアーティストが一気に集まって、野外でみんなで肩を組みながら楽しんでいる姿が良いなと思いましたね。
●特に、関西には大型のイベントがなかなかないですからね。
力竹:やっぱり音の規制が厳しいですしね。1回目は舞洲で、3回目以降は神戸のポートアイランドでやっていたんですが、ポートアイランドの会社誘致の都合で2004年で終了になってしまって。新しい場所を探していたら、音楽好きの人に泉大津を紹介してもらったんです。実は、泉大津フェニックスは音の規制が一切ないんですよ。
●広大なスペースでロケーションも良いですよね。
力竹:いちばん良いのはアーティストかもしれませんね。目の前にたくさんのお客さんがいて、ステージの向こう側は海が広がっていて、演奏しながら飛行機が飛んでいるのが見えて…演奏しながら“あー、野外に来たんだな”って思える。気持ちよくなると演奏も高まって、お客さんにもさらにパワーアップして伝わってる。良い相乗効果が生まれてますね。
●そうなんや。
力竹:“RUSH BALL”は関西の人にいちばん知ってもらいたいです。関西から音楽を発信して、“あの時のライブが良かったから、ワンマンを観に行こう”って思ってくれたら最高です。僕らはこのイベントをただの通過点としか思ってないんですよ。だから出演者はお互いお客さんを取り合って、次のワンマンに来てもらうっていう意志を持ってやっているし、ステージ上は戦いみたいなもの。僕らはそういうステージと客席を作るだけ。それ以上でもそれ以下でもない。
●アーティストの意識や気合いがバトル的な雰囲気があると。
力竹:バックヤードでは笑顔ですけど、本番前とかはピリピリしてますね。むしろ、そう感じてもらえるような環境にしたいっていう気持ちです。単に動員に繋がるようなブッキングをするんじゃなくて、軸がブレないよう、かつ振り幅も考えながらシーンの中で戦っている人を呼んでいるんで。そこがブレないから、アーティストも真剣にやってくれる。
●“RUSH BALL”はライブハウスで活動していても、大阪城ホールくらいまでいけるアーティストが出演しているイメージが強いですよね。
力竹:そこが目標ですね。単純にその舞台でやるだけなら簡単ですけど、真剣に考えれば一筋縄ではいかないのはみんなわかっているし、常日頃からそういうことを考えているアーティストばっかりだから。
●数あるイベントの中でも、“RUSH BALL”は何か特出して違うんですか?
力竹:チケット代が安いですよね。もともと4000円でやってたんですけど、やりきれない部分も出てきて。今は“これがMAXかな”という金額なんですけど、結構ギリギリのラインなんですよね。
●本当に安いよね。
力竹:今はワンマンで1万くらいかかるコンサートもあるじゃないですか。その感覚でいくと、これはすごく安いと思うんです。今から音楽の環境を担っていく若い世代に来てもらえるような値段で観てほしいなと。もちろん“AIR JAM”世代のファミリーもいますが、お客さんは20代前半が多いですよ。
●それにはどういう要因があると思います?
力竹:出演者が戦う感じの中、重鎮もいれば中堅もいるし、新人もいるから、その見え方が若い子に響くんじゃないでしょうか。
●本気度が伝わっている。
力竹:もともとお兄ちゃんやお姉ちゃんが遊びに来て、“お姉ちゃんが楽しそうに帰ってきたけど、何だろう?”って思っていたら、3年後には自分が行っている、みたいな。毎年アパレルブランドとコラボしていますけど、それも“若い子が来やすくしよう”っていう意図はありますね。
●売れているアーティストがたくさん出ているイメージだけど、新人も発掘しているんでしょ?
力竹:ATMCは頑張っている新人バンドの枠ですね。もうひとつのステージとはギリギリ被らないよう、転換中に交互にライブをやってるんで、お客さんが両ステージを走って行き来してますよ。僕らは両ステージを全員観てほしいと思っています。
●観ないともったいないよね。今年のATMCの面白いバンドは?
力竹:手前味噌かもしれないけど、KANA-BOONじゃないですかね。
●“RUSH BALL☆R”でも、物販の列が尋常じゃなかった。大阪から新しいバンドが出てきたって感じ。
力竹:奈良のTHE ORAL CIGARETTESとか、大阪のKidori Kidoriとか、関西のバンドが頑張っているのが誇りですよね。僕らで一緒に盛り上がって、一緒に作っていけるっていう。そういうキッカケ作りになればと思います。基本“RUSH BALL”は通過点だし、最終的にワンマンに行き着いてこそのイベンターなんで。そこが本末転倒にならないように、これが最終地点じゃないっていうのをミュージシャン側には伝えたいですよね。ワンマンでも「即完した」みたいな話を聞くと嬉しいです。そういう風に影響していってほしい。
●今年はSiMが業界を騒がしていますけど。
力竹:業界を騒がせる力もハンパないし、お客さんの反応もすごいです。お初でいきなり大きいステージというのも、伏線なくボンと出てくる目玉感を出したかったんですよ。“このバンド知ってる?”みたいな。まだ一部の人気だと思うんですけど、この速度感だったらもっと大きいところにいけるんじゃないかな。そういう期待も込めて、このステージへ出演をお願いしました。
●ブッキングについては、毎年どういうイメージを描いてやっているんですか。
力竹:あえてあんまり考えてないです。いろんなことを観ながら決めていますね。アンテナを張ることを辞めたら、いろんなことができなくなりますから。僕らも若者の情報がわかりにくいこともあるし、アルバイトスタッフに話を聞いたり、若いバンドを観に行ったりしています。それが次のブッキングに繋がっていくんです。
●“RUSH BALL”の楽しみ方を。
力竹:もちろん全バンド観てほしいですけど、無理はしないことですね。大型ビジョンをステージの上に置いているから、後ろの人も絶対にステージを観てくれるんですよ。座って休憩している時もステージ正面を向いてライブが観れるから、そこでハッと“あ、好きかも”っていうアーティストを見つけてほしい。
●なるほど。会場も含めてこだわったことは何ですか?
力竹:あんまりいろんなインフラを作ると、お客さんがラクしちゃうじゃないですか。ラクしたいのはわかるんですけど、こっちで何でも全部決めて用意するんじゃなくて、ルールは来たお客さんに作ってもらって、自由に楽しんでほしいんです。もちろん、最低限水道・電気・食べ物・客席はしっかり準備します。
●今年は2daysということなんで、楽しみも苦労もひとしおでしょう。
力竹:苦労ばっかりですね(笑)。
●(笑)。スタッフ的には、どれくらいの人数でやっているんですか?
力竹:総勢で一日600人くらいかな。そのうちGREENSのスタッフは十数人程度です。でも、ゴミはあんまり落ちてないですよ。今の若い子って、環境のことをすっごい気にしているんですよね。むしろ30代くらいの方が面倒くさがる人が多い。20代の子はゴミが落ちていたらお客さん同士で拾いあっていて、30〜50代の人がそれを見たら“若い子はできてるのに、俺らが捨てたらあかんやん”って相乗効果があって。“RUSH BALL”は下の世代がしっかりしているんで。大人も“ちゃんとせな!”って思うのかな?(笑)。
●へえ〜(笑)。
力竹:本当に感動しますね。2万人規模の祭りの後のゴミって、普通はえらい量になるじゃないですか。このイベントはすごく少ないです。街の人にもすごく助けてもらっていますし。今の場所になってから9回目なんですけど、街の人の協力なしでは開催できませんからね。
●毎年来てたら、会場までの店の名前も覚えてまうもん。
力竹:9年連続で参加している人もいるかもしれないですね。
●リッキー(力竹)にしても、このイベントは1年間のひとつの大きな山場だと思いますけど、新しく音楽を始める人にアドバイスはある? プレイヤーは“どうすれば出れるんだろう?”って思っているだろうし。
力竹:よく問い合わせで音源を送ってもらったりしますけど、すべては人の繋がりとタイミング。僕としてはやっぱり、オリジナリティに溢れていて、自分らの音楽の信念を持っている人が魅力的だと思います。心で演奏するような。
●“自分たちはここに行くんだ”という志が、はっきり見えるようなバンド!!
力竹:そうですね。想いが強ければ強いほど、すごいライブをすると思うんですよね。多くのバンドを観ていますけど、生き抜いて勝ち取っていくバンドって気持ちが強いアーティストが多い。アコースティックの弾き語りでもロックな人はいるし、ミュージシャンがどこまで気持ちを吐き出しているかですよね。
●2日間のために、かなりの人・想い・心を込めてやってるわけですね。ゴミの問題にしても、みんながひとつになって作り上げていくイメージがあります。
力竹:そうですね。作り上げてもらっている感がすごくします。それがミュージシャンに伝わっているみたいです。関西のお客さんはアツい人が多いって良く聞くんですけど、集まってくる人たちがすごく濃厚というか。そんな人たちが一塊に声援をくれると、やっているミュージシャンもいつも以上にアガるし。お客さんに助けられているのを僕らもすごく感じる。
●そのためにも、1年がかりでいろいろと準備しているわけですもんね。
力竹:終わった後は灰になってますね(笑)。
●アハハハ!
力竹:でも、僕が担当出来るのもあと5年くらいじゃないですかね。後は若い世代に引き継いでもらえる方法を模索しています。アンテナを張っているとは言っても、その感覚を、新しい感覚を持った若い子たちに引き継がないと。でも別に“RUSH BALL”がなくなっても良いと思うんですよ。また違うイベントが新たに出来上がっても良いですから。
●バンドも同じように年を取っていくわけやからね。
力竹:いつまでも30代じゃないですよ。
●年齢的にも15周年越えの出演者も多いと思うけど、クオリティーが高いのは当然として、活動を長く続けていける要因は何だと思う?
力竹:マインドでしょう。気持ちが折れないこと。第一線でやっている40代の先輩を見ていると、30代のバンドも“まだまだ負けられへんな”と思いますよね。そしたらそれを見る20代のバンドが“30代に負けてる”みたいな効果もあると思います。世代を越えた魂のぶつかり合いですよね。
●そうだね。リッキーもあと5年なんて言ってる場合じゃないでしょう! まだまだ走らなきゃ!
Interview:PJ
Edit:森下恭子
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