女子4名による“ポストポップバンド”、赤い公園。2010年に高校の軽音楽部の先輩後輩同士で結成されたという彼女たちが、メジャーデビュー作を2枚に分けてリリースする。
一見、真逆のような印象を持つ[黒盤]こと『透明なのか黒なのか』と、[白盤]こと『ランドリーで漂白を』だけでは、その正体はつかみどころがない。そんな彼女たちの実態に迫るべく、初のインタビューを敢行。
4人のキャラクターも含め、絶妙なバランスで成り立つ摩訶不思議な音楽性の魅力を探る特別企画・第2弾。
●元々は、高校の先輩・後輩だそうですね。
津野:私が先輩で、他の3人が後輩です。
歌川:私たちがやっていたバンドにサポートで入ってもらったのがキッカケで、(津野に)加入してもらいました。
●当時はどんな曲をやっていたんですか?
歌川:チャットモンチーや東京事変、GO!GO!7188とか女の子ボーカルのバンドをコピーしていました。
津野:オリジナル曲をやるようになったのは、私が加入してからですね。私は元々、趣味で曲を作ってはいたんです。
●音楽的な方向性とかは見えていた?
津野:私が勝手に作ってきた曲を勝手にやる感じで、方向性は特になかったですね。今の音を聴いてもわかると思いますけど、当初から方向性はとっ散らかっていました(笑)。
●最後に入った津野さんがいつの間にか曲作りの中心になっていたわけですが…。
津野:でも私は"姫"なので、申し訳ないなんて気持ちは1ミリもなかったです! (笑)。突然、乗っ取ったよね?
歌川:乗っ取られた感じもなかったです。
藤本:なかったねー。
佐藤:むしろ「指揮してくれて、ありがとう」っていうくらいでした(笑)。
●(笑)。今みたいな音になったのはいつ頃?
津野:赤い公園で最初に作った曲はすごくポップで、少しフュージョンっぽいコード感があって。その頃から薄々気付いていたんですけど、ひかり(藤本)はベースで物凄い音を出すんですよ! それを上手いこと活かせないかと思いつつ、みんなで気の向くままにアレンジをしていったら、こんな感じになってきました。
●フュージョンだったり、色んな音楽を聴いていたりする?
津野:私は音楽オタクなんですよ。ポップスが一番好きだけど、フュージョンやジャズとかも含めて色々と聴いていました。
佐藤:私は海外の10代の子が好みそうな洋楽と、ディズニーが好きですね。
歌川:私もポップスが好きで、最初はバンドなんて全然知らなかったです。あとはゲームが好きなので、ゲームミュージックかな。
藤本:私はメタルとか激しいのが好きですけど、日本の歌ものもすごく好きですね。
●ベースにはメタルの要素も出ている?
津野:それはあると思いますね。歌もののベースに、こんな歪み(エフェクター)を踏もうと思った人は過去にいないんじゃないかと。空気を読まないベースに、最初は衝撃を受けました。
藤本:エフェクターを踏んだときの変化が面白くて。最初は単純に面白がってやっていただけでしたね。今も空気は読めませんけど…(笑)。
●(笑)。それぞれが成長する中で、自然と今の音になったというか。
津野:最初の頃に比べると、みんな成長していると思います。たとえばドラムで「こういうフレーズを叩いて」と言ったら、そのイメージ通りに叩いてくれるようになってきて。なかなかの変なフレーズを叩いてくれるんです(笑)。
●"変なもの"を意識していたりはする?
津野:変なものにしようという意識は全くないんですけど、"こうやったらカッコ良いんじゃない?"と私が思うものを繰り出すと"変"だと言われます…。でもポップスとして"変"なのはきっと耳に新しいということだと、ポジティブに受け止めようと心に決めているんです(笑)。
●単なるポップスと違って、赤い公園はどの曲にもどこか耳に引っかかるフックがある。
津野:私は吹奏楽をやっていたのでクラシックや現代音楽のスコアも思い出したりしながら第2メロディーを入れたりとか、実は色んなことをやっています。でも、あとの3人は好きな音楽がハッキリしていて。音楽オタクな私が作った曲を、そのへんをよくわかっていない彼女たちがやることでやっとポップになるというか、人が聴ける感じになると思うんです。
●良い意味で歪(いびつ)というか、アンバランスだからこそ耳に引っかかるんでしょうね。
津野:バランスのいいものって、耳に新しくないと思うんですよ。これでちぃちゃん(Vo.佐藤千明)がロリ声だったら、絶対つまらないから。最近改めて気付いたんですけど、19歳なのに彼女(佐藤)の歌は全く安くないんですよね。
●"安くない"とは?
津野:たとえばピアノ1台の伴奏とかで聴くと、彼女はすごく高級なマイクで録っているのかと思うくらいの声をしているんですよ。もしかしたらポップには程遠いかもしれないけど、なかなかいない声だろうなと。女神系女子です!
佐藤:自分ではこの声がコンプレックスで、ポップな曲を歌えないからすごく嫌だったんです。最近は"まあいいや"と思っていますけど(笑)。
●この声だから、赤い公園になっているわけですからね。一聴しただけではルーツがわからないのも面白さかなと。
津野:今まで色んな音楽を聴いてきた中で、やりたい音楽がごちゃ混ぜになっているんですよね。一番好きなアーティストを訊かれたりすると困るし、"こういうバンドが好きなのかな?"と想像してくれるとうれしい。
●今回の[黒盤]と[白盤]も違いが大きいので、簡単に想像できないですよね。
津野:[黒盤]を聴いてから、[白盤]を聴いてほしいですね。[黒盤]はライブみたいな感じだけど、[白盤]はまさに"音源"っていう感じの音になっていて。歌もガラッと違うので、もし[白盤]を先に聴いた人もさかのぼって[黒盤]を聴いてもらえたら嬉しいです。
●最近のライブは、よりポップで明るい印象の[白盤]に近い感じがします。
津野:前は自分たちを見る人が持っているであろうイメージに、縛られてしまっていたんです。それにうんざりしていたし、自分たちは全然クールな人間じゃないから楽しくなくなっちゃって…何かが爆発しました。
佐藤:今回のアーティスト写真がその爆発現場です(笑)。そこからまた楽しくなりましたね。
●何か変わるキッカケがあったんですか?
佐藤:去年、カナダへツアーに行ったんですけど、帰ってきたら日本が愛おしすぎて全部どうでもよくなったんです(笑)。以前はライブでカッコつけていることが本当にカッコ良いのかもわからなくて不安だったんですけど、もうカッコつけなくていいじゃんと。
●[黒盤]のアーティスト写真では顔も見えなくて、神秘的な印象でした。
津野:私たち、全然不思議系じゃないんですよ。チャキチャキしているし。
佐藤:「しゃべくり007」とか大好きだしね(笑)。全然、謎めいていないんです。
●アハハ(笑)。意外と普通の女の子です、と。
津野:10分喋ったら全てがわかる(笑)。[黒盤]のタイミングでは音源の印象もあったので、あえて顔を伏せて謎めいた雰囲気を出していたんです。でも今は白盤が出て、顔も出たので…。
藤本:もう何も怖くない。
佐藤:顔を出せないのはちょっと寂しかったんですよ(笑)。
津野:本当は顔を出したくて仕方なかったんです! 心がパーッと晴れましたね。
●確かに歌詞を見ても[黒盤]は抽象的で謎めいているけど、[白盤]には日常が見えます。
津野:作った時期は混在しているんですけど、そういうふうにあえて分けたんです。でも私にとってはどちらも日常で、[黒盤]は家の中にいて、[白盤]は外に出ている感じですね。
●家の中でじっとしていたのが、[白盤]で明るいところに飛び出した。
津野:でも、いつまた戻るかわからないですけど(笑)。常に行ったり来たりしています。
●今回の2作で2つの面を見せたわけですが、その両方あっての赤い公園というか。
津野:しかもまだ、これだけじゃないですからね。これから色んな面を出していくし、もっと色んな面が出来ていくだろうから。次もその次もその次もどんどん意味のわからない感じになっていくと思うので、1つ1つの音に耳を傾けてもらえたらなと。赤い公園を聴く時間が、自分に正直になれる時間になったらいいなと思います。私たち4人はやりたいように自由にやりますので、応援よろしくお願いします!
Interview:IMAI
Assistant:Hirase.M