限界を超え、すべての境界線を無くすことを目的にしたライブハウスサーキットイベント・REDLINE TOUR。“Warped Tour”で目の当たりにした奇跡を日本のライブハウスで起こしたいという主催者の想いから2010年にスタートした同ツアーは、3回目となる今年、全国14公演の規模で開催される。今月号では、3回目の出演となるEGG BRAINの薬師ジョーイとSiMのMAH、そしてREDLINE主催スズキケンタロウ氏を迎え、REDLINE TOURの魅力を訊いた。
●REDLINE主催のスズキさんは株式会社ジャパンミュージックシステム(以下、JMS)という流通会社の方でもあるわけですが、ジョーイくんやMAHくんとの関係を教えてください。
ジョーイ:EGG BRAINとしては、スズキさんにはCDの流通でお世話になっているんですけど、彼に出会っていなかったら全国にCDを届けられなかった。
スズキ:古い付き合いなんですよね。
ジョーイ:2008年10月に1stアルバム『WHAT’S GONNA COME OUT』を出したんですけど、その少し前からの付き合いですよね。
スズキ:会ったのはその前で、デモの段階。神戸STARCLUBで出会ったんだもんね。僕の机の上にEGG BRAINのデモがまわってきたんですよ。たぶん1stデモかな? それを聴いたときにすごく掻き立てられるものがあって、「連絡先を紹介してくれ」と言って松原さん(現・太陽と虎店長)の連絡先をゲットして「明日行きます」と。
ジョーイ:すぐに話をしに来てくれて。
スズキ:たまたま次の日が神戸のライブで。僕はまだJMSのド新人だったんですけど、すぐに電話をかけて、ライブを観に行って。
●それで「一緒にやりたい」と声をかけたんですか?
スズキ:そうなんです。リスナーとしていちファンなので、どうしても掻き立てられちゃうんですよね。それは例え仕事でも、ライブを観ていてグッときたときには出ちゃう。歌っちゃう。好きだからです!
ジョーイ:そういう人がいるのは嬉しいですよ。
●関係者は、いつもライブハウスのいちばん後ろで腕組んで観ているイメージがありますよね。
スズキ:そういう大人見パターンももちろんありますよ。でもK点を越える瞬間が自分の中にあって。
●スズキさんがK点を越えるところ、EGG BRAINのライブで見たことがあります。最初は後ろの方で観ていたんですけど、我慢できなくなったのか客席の前の方へジャンプするように飛び込んで行って。「あ! 行った!」と思った。
スズキ:お恥ずかしい(笑)。
MAH:俺らが去年の“FUJI ROCK FESTIVAL”でROOKIE A GO-GOに出演したときも、深夜1時くらいだったんですけど、“うるさい奴がいるなあ”と思ったらスズキさんだったんです(笑)。
一同:ハハハハハハ(笑)。
●歌っていたんですか?
MAH:そうなんです。最前列で。
スズキ:嬉しくなっちゃって…。
MAH:超嬉しかったですけどね。JMSの人はちゃんと現場に来てくれるんです。そういうところが信用できるなと。
●僕はスズキさんが入社された頃くらいからJMSを知っているんですけど、昔は今ほどバンド系のCDを取り扱っていなくて。スズキさんの前任の方もスーツを着ていらっしゃったという記憶が。
スズキ:要するに全然チャラくないんですよね。
●そうそう。チャラくない。タンクトップとか着てなかったです。
一同:ハハハ(笑)。
●でもスズキさんが入ってから、一気にバンドが増えましたよね。
スズキ:ストリート寄りになりましたね。
●スズキさんは当時からREDLINEのような動きを思い描いていたんですか?
スズキ:僕自身がこういうスタイルのイベントツアーをしたいという想いがあって。2006年にアメリカの“Warped Tour”を観に行ったんですよ。どうしても行きたくて1人で客として。そのときに「このスタイルはすげえ! やべえな!」って。
●何ヵ所くらい観たんですか?
スズキ:10ヵ所くらい。
●結構な数をまわったんですね。
スズキ:移動とかもけっこう辛くて。でもこういうサーキットスタイルのイベントって、日本でやろうとしている人はいっぱいいるんだろうけど、なかなか難しいと思うんですよね。“だけど俺はやりたい!”と思ったのがきっかけですね。
●なるほど。
スズキ:それはJMSに入ってすぐのことだったんです。そこから何年間かは自分の中で企画みたいなものを温めて「こういう形だとできないのかな?」って知り合いに相談してみながら、3年前にようやく始めることができたんです。だからそもそもは、僕自身がすごくやりたかったツアーです。
ジョーイ&MAH:へぇ〜。
スズキ:異色というか普段は絶対に観れないような対バンとか、そういうイベントのコンセプトを決めて、ツアーでも全箇所を全く同じバンドでまわる形ではなくて、各会場で出演するバンドが違うというスタイルを取っていきたいなということもあって、今に至る。
●1つの大きな会場でやるという形ではなく、ツアー形式でやりたかったと。
スズキ:もともと僕も遊び場はライブハウスだったんですよ。僕自身がいつもライブハウスへ遊びに行っていたから、自分がイベントを企画させていただくことになっても、絶対にライブハウスでやりたいという気持ちがあって。野外とかビッグフェスも素晴らしいとは思うんですけど、REDLINEとしてはこの形式を続けていきたいんです。
●EGG BRAINとSiMは今回を含めて皆勤出演ですが、過去の2回はどうだったんですか?
MAH:俺らとしては、REDLINEの1回目は1stミニアルバム『LIVING IN PAiN』(2010年10月)をリリースする前だったんですよね。だから本当にまだ無名というか、知っている人は知っているくらいの知名度だったんです。
スズキ:そっかそっか。
MAH:1回目のREDLINEで共演したROTTENGRAFFTY、Fear, and Loathing in Las Vegas(以下、Las Vegas)とかは当時から勢いがすごくて、俺らはどうしても出たかったんです。要するにチャンスだったんですよ。いまだに「あのときの渋谷eggmanで初めて観たんです」と言う人もけっこう多いんです。それで2回目となる去年は新木場STUDIO COASTに出させてもらって。『LIVING IN PAiN』は出していましたけど、俺らがたくさんの人に知ってもらうきっかけになった2ndフルアルバム『SEEDS OF HOPE』を出す前だったので知っている人はそんなに多くなくて。それで共演するのがEGG BRAINやsmorgasという豪華なメンツだったから、どうしても出たかった。
●またチャンスだったと。
MAH:新木場STUDIO COASTでやる機会もあまりなかったから、俺らも1ステップ上がっていたけど、まだまだチャンスをもらった感じでした。この日のライブを観て、『SEEDS OF HOPE』のツアーをほとんど一緒に追いかけてくれたお客さんも多くて。だからREDLINEには本当にすごいチャンスをもらってきたと思っているんです。
●なるほど。
MAH:ちゃんと俺らもステップアップできて、今年は新木場STUDIO COASTでメインっぽくやらせてもらえるので、REDLINEに対する想い入れは強いですね。だから今回は少しでも恩返しができたらいいかなって。過去2回出演させてもらったということを経て、自分たちも以前よりお客さんを呼べるようになってきたので、今回は逆に俺らが恩返しをできたらいいなという気持ちは個人的にありますね。
●ジョーイくんは?
ジョーイ:「恩返し」という言葉が出ましたけど、僕らもデビューからいっぱい助けてもらって、サポートしてもらっている人が主催するイベントということで、僕らが返す瞬間ってこういう機会しかないんですよね。“お客さんに楽しいと言ってもらえたらいいな”という想いで1回目は出ていたんですけど、去年はメンツもすごくおもしろくて普段なかなかやれないようなバンドとやれたし。本当に「すべての境界線を無くす」ということをテーマにしているREDLINEならではだなと思う。
MAH:そうだよね。
ジョーイ:みんなよく言っていますけど、僕らも音楽には壁はないと思うし、かっこいい音楽はかっこいいし、かっこいいバンドはかっこいいし、そういう人と壁なく一緒にやれる機会があるのはすごく嬉しいので、今年も楽しみですね。しかも今年はやっと地元で出られるんです。
スズキ:嬉しいですね。今年、EGG BRAINにはツアー初日、9/28の神戸太陽と虎に出ていただくんです。
●「すべての境界線を無くす」というコンセプトは、当初から考えていたんですか?
スズキ:当初からですね。“Warped Tour”でも、場所によって全然違うジャンルの音楽を同じステージで演奏しているという対バンが多かったんですよ。そこでお客さんはジャンルとかシーンの違いとかに関係なく掘り下げる感覚というか。
MAH:ああ〜。
スズキ:特定のバンドを目当てに行ったけど他のバンドを観てCDまで買っているという構図を、直接目の当たりにしたんです。その瞬間“これしかないな”と思いました。いろんなファンにいろんなバンドを知ってほしい。その一心でやっているだけです。
●組み合わせは、どうやって考えているんですか?
スズキ:今のシーンを賑わせているアーティストとかも、普段から自分の中でディグったりしているので、常に“いい組み合わせがあればなぁ”と考えているんですよ。そこはもう感覚ですね。誰と誰を一緒にしたらどうなる? とかじゃなくて、感覚。
●ライブがいいということが共通点にあるんでしょうか?
スズキ:ライブバンドというのはまず前提であるんですけど、そこでケミストリーが生まれそうな予感というか。うまく言えないんですけど、それは俺の中にピンとくるものがあるんですよ。
●直感なんですか?
スズキ:直感に近いですね。
●スズキさんは何をもって“いいライブだ”と思ったり、ダイブをしたくなったりするんですか?
スズキ:うーん、緊張感とか。僕の中で“うわ〜緊張する!”っていう感じで、鳥肌が立つようなライブ。この前のSiMの韓国公演もそうだったし、すごく鳥肌が立って緊張している感じ。
MAH:それ、“緊張”とはちょっと違うんじゃないですか(笑)。
スズキ:ドキドキしちゃうんだって! 緊張感と高揚感! その具合というか!
●スズキさんって…本当に感覚の人ですね(笑)。
MAH:完全にそうですね(笑)。
スズキ:ドッキドキしちゃう! もっとライブを観たい! もう恥ずかしいくらい!
一同:ハハハハハハ(笑)。
●過去2年の開催で、スズキさん的に印象に残っていることは何ですか?
スズキ:俺がダイヴをしまくって激ギレされたことがありました。
●誰がキレたのかが気になるんですけど…。
スズキ:ライブハウスのスタッフさんにキレられたんです。「おまえ何やってんだよ!」みたいな。もうマジギレ。僕がただのキッズだと思ったらしくて。
●「なんでそんなにデカい体でダイヴしているんだ」って?
スズキ:去年の新木場STUDIO COASTだったと思います。たぶんEGG BRAINのとき。
ジョーイ&MAH:ハハハ(笑)。
スズキ:ダイヴをしまくっていたら「危ねえだろ!」って怒られて、後ろに連れて行かれて「おまえ誰なんだ?」と。それで「僕、スズキ」みたいな。
一同:アハハハハハハハハハハハ(爆笑)。
●「僕、スズキ」って(笑)。
スズキ:「一応このイベントを主催させていただいています…」って言ったら、「あっ…そうなんですね…」みたいな。ものすごく微妙な空気が流れちゃって。こっちは“やんちゃをしてごめん”っていう申し訳ない気持ちがあるんだけど、向こうは向こうで“主催されている人なんだ…”っていう微妙な感じのまま、無言で別れました。あれはすごく印象的でしたね。
●スズキさんはEGG BRAINとSiMのいちばんの真骨頂であるライブをずっと観てきているわけじゃないですか。彼らはどういうところが魅力だと思いますか?
スズキ:EGG BRAINに関しては、観ていて本当にハッピーな気持ちになれるところですね。お客さんのグルーヴとか、みんながすごくいい笑顔で笑っているところとか、みんなで輪になるとか。そういうスタイルのバンドは他にもいらっしゃいますけど、お客さんの顔をひとつ上に向かせられるパワーがいつもあるのが、EGG BRAINの最大の魅力だと思いますね。
ジョーイ:普通に嬉しいです。ちょっと泣きそうになった(笑)。
●普段はあまりそういう話はしないんですか?
スズキ:しないよね。打ち上げではちょっとするかもしれないけど、酔っ払っているから。こういうシラフのときにはしないです。
MAH:去年はEGG BRAINがトリだったんだっけ?
ジョーイ:そうだね。
スズキ:本当にお客さんの笑顔が違うんですよね。
●EGG BRAINにしかできないような。
スズキ:そう。あの表情はEGG BRAINでしか出せない。そういうライブの魅力はすごくありますね。
ジョーイ:嬉しい! キスしたい(笑)。
スズキ:してして!
●なんだこの2人(笑)。
MAH:ハハハ(笑)。
スズキ:SiMは毒々しさと痛々しさと高揚感の全部が大好き!
●EGG BRAINとは真逆ですね。それがたまらない?
スズキ:たまらない!
●緊張しちゃう?
スズキ:緊張しちゃう!
MAH:だからそれは“緊張”じゃないでしょう(笑)。
●きっと“緊迫感”と言いたいんでしょうね(笑)。
スズキ:でも全てが毒々しいライブというわけではなくて、曲によっての違いもありますし、すごくバラエティに富んでいて。すごく魅力的ですね。
●この2バンドは過去2回に出演して、そして今年も出るわけじゃないですか。スズキさん的にはマストな存在なんですか?
スズキ:はい、もちろんです。本当に毎年出てほしいですね。だから今後も、毎年出てもらえるようなイベントにしなきゃいけないとも思いますね。強制的に「出てよ」って言うのは嫌なんですよ。言葉は悪いかもしれないけど、何かしらのメリットを感じて出てほしいです。
●遊びでやるわけではないですもんね。
スズキ:もちろん。そこはプロ対プロですからね。そういうイベントを毎年リニューアルして作り出さなきゃいけないというプレッシャーもありますし…だけど毎年出てほしいです。
●それは定期的なイベントを企画する側として、いちばん難しい部分だと思うんですよね。バンドに出てもらいたいと思われるようなイベントにするために意識しているところはありますか?
スズキ:毎年ありますね。去年だったらいちばん大きかったのはポスターなんですけど、タワーレコードさんとコラボして、“NO MUSIC,NO LIFE.”ではなくて“NO REDLINE,NO LIFE”で出演バンド集合ポスターを作らせてもらったんです。その反響がすごく大きかったんですよ。タワーレコード的にもあそこまでアーティストを集めてやったのは初めてだと言ってくれましたし、お客さんに新しいバンドを知ってもらう入口になっていたみたいで。「このポスターが欲しいからCD買います」って。
●すごくいいことですね。
スズキ:そういうきっかけからまたライブに繋がっていけばいいと思っているし、ちょっとした仕掛けの部分を毎年何かしら変えてみたりして。今回だとやっぱり箇所数ですよね。北海道から沖縄まで行くのは初めてですからね。
●日本のいろんな所でやりたいという想いがあったんですか?
スズキ:当初から考えていました。でもいきなりドカンとやるよりも、ちゃんと地に足をつけてやっていこうと思っていたんです。今年は3回目になって、嬉しいことに少しずつRED LINEという名前を知ってくれている方も増えてきているので、開催する場所を拡げてみようということで。
●「バンド名は知っているけど観たことがない」とか「ジャンルが違うから観る機会がなかった」という人は多いと思うんです。ライブハウスに来るお客さんを見ているとすごくわかるんですけど、例えばパンクのライブには行くけどロック系には行かないという人は多いと思うし、その逆も多いと思うんです。そもそもライブハウスではジャンルやシーンで区切ったイベントが日常的だし。
スズキ:そうですよね。
●RED LINEは「すべての境界線を無くす」というテーマで開催されていますが、もともとスズキさんはジャンルやシーンで音楽を聴かないんでしょうか?
スズキ:そうですね。僕はジャンルに関係なくいろんな音楽が好きなんですけど、最近のリスナーは自分で掘り下げていく感覚が薄くなってきているように思うんです。
●ああ〜。
スズキ:このREDLINEがそういうことを提示するきっかけになって、普段も掘り下げていくようになってくれたら嬉しいなっていうところもありますね。例えば今年だと、HIP-HOPとか4つ打ちのクラブミュージックの方にも出ていただきますし、今まで以上の厚みでやれるかなと思っているんです。
MAH:イベントって結局は人と人で繋がっていなきゃ出られないじゃないですか。最終的には主催者との繋がりで決まるから。そういう意味で、ジャンルやシーンを飛び越えた人たちとできるREDLINEはすごいと思うんです。今年、俺らはMop of Headと対バンするんですよ。それって普通にやっていたら絶対に繋がらないですよ。たぶんJMSでCDを取り扱ってもらっているという共通点しかないですから。たぶんどのフェスでも当たらないであろう組み合わせじゃないですか。
スズキ:ツアーでもやらないだろうし。
●おそらくライブハウスブッキングでもやらないでしょうね。
MAH:去年もsmorgasみたいに、絶対にできないだろうと思っていた人たちとの組み合わせだったので、やっぱり嬉しいですよね。自分たちでツアーをやったり、他のバンドのイベントに出させてもらったり、フェスに出るっていうことにはどうしても限界があるので。お客さんを呼ぶ上では、やっぱりジャンルやシーンを固めた方が楽じゃないですか。
●“動員”という問題がありますからね。
MAH:俺たちも“DEAD POP FESTiVAL”っていうイベントをやっていますけど、そういうところでいろいろ悩みながら作ったイベントなんです。それをこの規模でできるというのは、すごく勇気が要ることだと思うんですよ。動員とかの面を考えると。そこをJMSがやってくださるっていうのは、すごくありがたいですね。バンド発信だとリスクもデカい。実際にRED LINEは、お客さんからは誰がやっているイベントなのかはわからないじゃないですか。それが逆にいいと思うんですよね。
ジョーイ:僕らはよくメロコアって言われるんですけど、別に“僕らはメロコアやな”と思ってやっていないんですよ。ただメロコアって言われるだけで聴いてくれない人もいるわけで、ジャンルの壁は今でもあると感じるし、それを壊したいですね。聴いてくれる人も壁をなくして聴いてくれたら“もっと音楽を知るきっかけになるんじゃないかな”とも思うし。ジャンルの壁を壊したいというか、もっとフラットに、純粋に音楽が好きだという気持ちだけでいろいろ聴いてほしいかな。
MAH:今の言葉を聞いて思ったのが、“バンドから受けるイメージで聴かない”という壁がまずあるじゃないですか。それが、他のバンドを観に来たけど、今まで興味がなかったとかむしろマイナスイメージだったバンドを観て「意外にSiMって聴きやすい」とか「意外とEGG BRAINって楽しい」とか思ってもらえるかもしれない。そういう機会はすごくありがたいです。ライブは音楽に人間性もプラスされるし、いきなりライブから入って来てもらえるのがすごくいい。俺らはライブバンドだからCDだけだと伝わらない部分もあるかもしれないんですけど、REDLINEとかでいきなりライブを観てもらえるとすごくありがたいんですよね。
●逆に、境界が無いということは初見の人が居るという前提があるわけですよね。しかも、フェスじゃなくてライブハウスで。フェスとかだと会場全体がお祭り騒ぎだし、みんなが楽しんで当然というノリもあると思うんですけど、ライブハウスでジャンルレスのイベントだと極論ですけどドン引きされる可能性もあるわけで。
MAH:そうなんですよね。さっき言った良い側面とは逆に、何個もあるステージの中で選んで観に来ているわけじゃないから、言い方は悪いけど観るしかないという。
スズキ:まあ、そういう強制力はあるよね。
MAH:だからハードルは高いですよね。自分たちの味方がどれ程いるのか全く予想がつかない。
ジョーイ:確かにステージに立ってみるまではわからへんもんなぁ。でも、最初はじっとしている人が居たとしても、最後は腕を上げて楽しんでくれていれば“伝わったんだな”と目に見えて分かるから。そういうのは純粋に嬉しいですよ。
MAH:去年の新木場STUDIO COASTのトリで、EGG BRAINのときに最終的に全体がワーッと盛り上がったよね。観ていて“すげえな”と思いました。
スズキ:あれ良かったよね。
MAH:あのハッピーな感じはSiMには絶対にできないから…。本当に観ていて“すげえな”って思いました。
スズキ:今年SiMが出る新木場STUDIO COASTは、ROTTENGRAFFTYとMop of HeadとSIMI LABだよ。
MAH:マジですか? SIMI LABは超好きなんですよ!
●どんなアーティストなんですか?
スズキ:僕も超好きなんだけど、アンダーグラウンドHIP-HOPを背負う奴らが神奈川から現れたんですよ。超かっこよくて。そういうアンダーグラウンドなストリートシーンとSiMは絶対に合うと思ったんです。
MAH:それは、俺も合いたいです!
●「合いたいです」って(笑)。
スズキ:個人的にもすごく観たい組み合わせなんですよ。
MAH:超やばい! アガる!
●“REDLINE TOUR”を通じて、次のシーンを作っていきたいという気持ちも強いんですか?
スズキ:そうですね。今回はHIP-HOP勢とかも入ってくるので、音楽エンターテインメントというところで提示したいなと思っているんです。それに各公演でオープニングアクトの枠も作って、デモしか出していないようなアーティストもブッキングしていっているんです。さっきMAHが言っていましたけど、“ここに出ることができる”というチャンスを感じてほしいと思います。
●ところでスズキさんはJMSに入って何年になるんですか?
スズキ:今年で8年目です。
●音楽業界で働きたかったんですか?
スズキ:それしかないと思っていましたね。ライブハウスが大好きなキッズだったんですけど、入り口は歌謡曲なんですよ。8インチCDを毎週のチャートを見て買っていました。それをチャート通りにカセットテープに入れて。とにかくチャートものが好きでしたね。何が売れているのかを全部メモして。
ジョーイ&MAH:へぇ〜!
スズキ:オリコンチャートの雑誌を買ってきて、全部チェックするんです。「うわ! これのランクが上がったのか!」とか言いながら。小4から高1までずっとメモしていたからノートは100冊くらいありましたよ。
MAH:すっげえ(笑)。
●なんでそんなことをしていたんですか?
スズキ:分からないです! チャートが好きなんです! 中学生になってからは洋楽チャートも気にするようになって。中1のときに、Green Dayの『Dookie』が1位だったんですけど、そこからメロディックパンクと呼ばれるシーンに出会うんです。でも、邦楽ではヴィジュアル系のLUNA SEAとかX JAPANとかが流行っていたので、ヴィジュアル系のことも掘り下げて。常に何かを掘り下げていましたね。
●自分でバンドやろうとは思わなかったんですか?
スズキ:なかったですね。最初から裏方をやりたいという意識しかなかったです。中学生の頃から、将来は自分でアーティストを見つけて世の中に出していきたいと思っていました。だから友達にも「これいいから聴いてみろよ」って渡していたし。
●自分がいいと思うものを人に勧めるのが好きだったんですね。
スズキ:好きです。すっごく好きです。
●ということは、今の仕事は天職ですね。
スズキ:天職です! ありがとうございます!
●アハハ(笑)。中学生の頃から思い描いていたことを形にできているんですね。
スズキ:そうですね。あ、僕は小学生のときからラジオも好きだったんですよ。AM! 文化放送!
●文化放送ですか。
スズキ:『斉藤一美のとんかつワイド』という番組があったんですよ。その中で、22時になると“イントロボム!”っていうイントロクイズのコーナーが始まるんです。リスナーが電話で参加するんですけど、3週勝ち抜くと1万円もらえる。それに毎回出ていましたね。だからイントロは超強いです! 超聴いているから! 何回も出ていたら殿堂入りになっちゃって。
●有名リスナーだったのか(笑)。
スズキ:ハガキとかも送っていて、『オールナイトニッポン』にもよく投稿していました。
●ハガキ職人でもあったんですか(笑)。
スズキ:はい。ハガキを送るのもすごく好きですね。だから…気持ち悪いですよね。
●気持ち悪いですね(笑)。
スズキ:僕の世代だとパーソナリティーはとんねるずじゃなくてナインティナインなんですけど、『ナインティナインのオールナイトニッポン』は、毎週木曜日の1時から全部録音していました。
●そうですか…ちなみに今、ジョーイくんもMAHくんもちょっと引いていますけど。
ジョーイ&MAH:こんな人だったとは…(苦笑)。
●“REDLINE TOUR”を含めて、今後やっていきたいと思っていることはあるんですか?
スズキ:たくさんあります。でも今は言わないで、ちゃんと形になったときに出したいです。
●夢は先に語らないと。
スズキ:口だけになるのはダサいじゃないですか(笑)。だから、まずは自分の中の想いで留めておきます。でも、いろいろ考えてはいます。
●今後もタンクトップで攻め続けると。
スズキ:もちろん攻めますけど、この服は時期的なものです!
ジョーイ&MAH:アハハハハハ(笑)。
Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Hirase.M