●このライブハウス激戦の時代に、しかも心斎橋の一等地にハコを作ってしまうとは…。恐ろしい暴挙に出ましたね(笑)。
永野:暴挙(笑)。ベースオントップの新しい試みとして、ライブハウスとスタジオを併設するっていうのは前々からやりたかった事でもあって。それに僕はずっとCLUB DROPというハコで店長をやっていたんですけど、スケジュールの関係で「こういうイベントをやりたいんです」って相談されても、どうしてもフォローしきれない部分が多少なりとも有りました。それらの公演もやっぱりサポートしたいっていう気持ちが強いと言う事もあって、新店オープンに踏み切った感じになります。
●なぜライブハウスとスタジオを併設したかったんですか?
永野:スタジオの横にあると、直接練習した時の気持ちで話ができると思います。やっぱり練習しに来ている時とオフの時とでは、気持ちが多少なりとも違う時があると思うんですよ。ダイレクトにバンドマンと会話できるっていうのは大きいなと。しかも併設するスタジオはギターのメンテも出来る方がいますので、急遽ギターが故障した、とかなってもすぐに修理に出せたり、アンプがNGとかでも色々と対応出来たりとか、非常に利便性が高いと思います。
●ベースオントップグループは、一般の企業と変わらないような組織立った運営感覚がありますよね。ひとりひとりが“一国一城の主としてやってやる”という気概のある人たちが集まっている気がします。
永野:そういう“夢”を実現できる会社なので。やりたいと思ったことをやれる環境なんですね。僕はいちからライブハウスを作っていくという経験がなかったので、ずっと“立ち上げをやってみたい”という気持ちがあって。このタイミングでやれる機会を得てめちゃめちゃ楽しみです。
●建設中のVARONさんの店舗を見させて頂いたんですけど、すごく機能的で綺麗なイメージの店舗ですよね。
小山:おしゃれな良い感じのレイアウトになってますよ。僕たち図面の段階から店の造りを話させてもらったんですけど、楽しいなというのが一番の気持ちで。お客さん目線で見て“こういう風にしたいな”と思っていたことを出来る限り取り込んでもらってるんで、そこが出来たのはすごく嬉しいなと思います。本当にいろいろと要望を言っているから、工事して頂いてる人たちに迷惑かけまくりながらも“こうしたい、ああしたい”ってどんどん変えるんで(笑)。
永野:他の店舗にはない感じで、且つハイエンドな雰囲気を出したいなと。すごい横幅が広くて、オーディエンスとの距離もかなり近いと思います。
●横広だからステージもすごく広いですよね。それに、社長の方針で“アーティストのために楽屋を充実させている”っていう話を訊いたんですけど。
永野:そうですね。色々なタイプの演者さんがおられますので、色々な場合を想定して、出来るだけ演者さんがストレスなく演奏、パフォーマンスに集中出来るよう、そういうところはすごく意識しています。
●今回この3人がチョイスされたわけですが、3人とも見た目も中身もバラバラですよね。妹尾くんは完全にラウドを地で行くような風貌ですし。
妹尾:このメンバーの中では一番浮いてますよね(笑)。初対面の方には「ハードコアが好きなんでしょ?」って言われるんですけど、昔ちょっとだけ組んでいたバンドでは見た目とまったく違うジャンルをやっていて。結構雑食なタイプなのでクラブミュージックも好きだし、実は『カウントダウンTV』を見ながらベスト5 を楽しみにしているくらい(笑)。DROPを中心にやらせてもらっている“夜☆スタ”ってDJイベントがあるんですが、J-POPや歌謡曲をフィーチャーしたりして、僕の趣味は見た目な感じではない…と、自分では思っているんですけどね(笑)。
●そうなんや。
妹尾:僕の出身地でもある岡山で住んでる頃は、音楽の情報がほとんど届かない地域だったので、“どんなジャンルの音楽でも自分だけが知ってたら、オレはイケてるっ”って感覚で、いろいろ発掘してましたね(笑)これからはVARONのブッキング・制作を担当させて頂くんですけど、今までDROPでやってきた事も活かしつつ、さらに一歩上に登った新しいイベント創りをしたいなと考えています。
永野:見た目にそぐわず、すごくキャッチーな人柄なんですよね。何かに特化したという感じではなくて、いろんなジャンルのアーティストさん・イベントを受けて行きたいので、その点で彼は合ってるんじゃないかと思います。
●自分の好きな音楽で、人生がこんな風になるというのは想像してました?
永野:まったく考えてなかったですね。ただ、バンドをやってる時からバンドのブッキング担当をやったりはしていたんですけど、“これをずっと続けていけば、この業界でやっていけるかな”というのは感じてました。だからこそ今があると思っています。
●みなさんは、この仕事を始めてから何年くらい経つんですか?
妹尾:僕は3年ちょいですね。現場でスタッフをやっていた時期も長かったんで、実質ブッキング業務は2年くらいの駆け出しです(爆)。バンドを抜けてから、アパレルショップで6年ほど店長をやっていて、お店には全国各地からバンドマン達がよく遊びに来てくれてました。DROPに入ったと時には、そういう繋がりのおかげで出演してもらったりしていましたね。
永野:彼が来たから新しい風が吹いたっていうのはありますね。もともとラウド色の強いハコではあったと思いますけど、オールジャンルでイベントを行っていました。そこにメロディック系とかアンダーグラウンドなジャンルとか増えた気がします。
●ブッキングって、全然知らない人同士を自分が繋ぐわけじゃないですか。そこから生まれる化学反応って面白いですよね。
永野:そうなんです。それでバンド同士が繋がって一緒に何かやるようになったら、ライブハウス冥利に尽きますね。
妹尾:ブッキングをやっている上で、一番の喜びでもありますよ。
小山:うんうん。なによりバンド同士がお互い成長出来るんじゃないかと。そういう形でお互いを刺激し合って伸びたバンドっていっぱいいると思うので、そういう素敵な出会いのお手伝いをしていきたいです。
●特に大阪アメリカ村近辺はいくつものライブハウスが混在していて、カオス状態じゃないですか。あえてそこで勝負するというのは、確固たる自信の現れなんでしょうか?
永野:やってみないとわかんないところはありますけど、オープン時は有名なアーティストから、学生さん、インディーズで頑張っているバンド含め今までお世話になった人に祝って頂けるような1ヶ月にしたいと思います。
妹尾:なんせ開店は急な話でしたからね。
小山:しかも「ミナミに出来るんですか!?」ってところからですもんね。スタッフが決まったのも近々でしたし。
●そうだったんですか。でも、このまったく違う色を持ったスタッフを選んだのは流石ですね。似たような人ばかりだとお店の色が決まってしまうから。そのうえ、この3人は強い個性の中にもポップ感がある(笑)。
小山:本当にその通りですね。DROPはオールジャンルにはもちろん対応出来ますけど、割とへヴィでラウドなジャンルは特に強いハコだし、堀江にあるclub vijonはこちらもオールジャンル対応した上で更にアートに特化した音楽のバンドさんに多く出演して頂いてたんですよ。VARONがオープンすると3店舗とも距離が近いので、“違うカラーを出したいね”っていう話をしていたので。大変だけど“これから自分たちがハコを作っていくぞ!”という気持ちがあって。すごい大変ですけどその何倍も楽しいですね。
永野:やっぱり本気で仕事をしないと、本気で楽しめないですから。その点で、小山さんも善雄さんも、仕事にすごいストイックなんで。そういう信頼関係があった上で楽しさが生まれると思います。
●人との繋がり…特にバンドマンとの繋がりを大事にしていると思いますけど、多くの人が集うフックになっている部分はなんでしょう?
永野:制作する人の人柄ですね、絶対。そこが一番です。
●ベースオントップの特徴というか、“イズム”でもある?
小山:僕らの会社はすごく自由にさせてくれるんですよ。現場にいる人間がやりたいと言った事はバンドのためになる事ならすぐ検討してくれますし。
永野:やっぱり現場にいないとわからないことが多いので。現場主義の大切さを会社もわかってくれていると思います。
●それでは3人が“これは応援したい”って思うようなアーティストっていますか。
小山:ほんとにたくさんいますが、たまたま今日打ち合わせをしていたバンドを紹介させて頂くとFABLED NUMBER(フェイブルドナンバー)ってバンドはおすすめですね。音楽活動にすごいストイックで、暇さえあれば気に入った曲を編曲してるメンバーがいたり、幼い頃海外に住んでいたボーカルさんはボーカルさんで音楽をいろいろと学んできたりしていて。すごい良いメロディーセンスを土台にエモや、エレクトロの要素が入ったすごく良いバンドです。
●そういう情報をどんどん仕入れて、ブッキングの話をするわけですね。
小山:元々僕はvijonのブッキングマネージャーをさせて頂いていて、vijonでは新人発掘的な事もしていたので。それもあってか、vijonはほんとに良いバンドさんにたくさん出会えた場所です。新しいお店では完全にいちから関わっているので、自分がオススメしたい人を前に出せるのも嬉しいですね。
●なるほど。永野くんのオススメは?
永野:色々といてるんですけど、やっぱりホンマに音楽が好きで、魂のこもったライブを見せてくれるバンドはめっちゃ応援したくなります。人生のどれだけをバンドにかけてるか、僕は結構そう言った所を意識してしまいますし、バンドに求めてしまいます。自分の好きな音楽のジャンルって言うのはやっぱりありますけど、頑張ってるバンドとかアーティストはそんなところは軽く超えてくると思ってますので。
妹尾:良いバンド、アーティストがいすぎてて選びきれないっすよ(爆)。他とは違った何かおもしろい発信だったり、失敗を恐れず挑戦して行くバンド、アーティスト達と一緒に目標を持って上がって行きたいです!
●これから新しい風が吹きそうですね。VARONを運営するにあたって、どういう風な利用の仕方・楽しみ方をしてほしいですか?
妹尾:僕ら3人が持っている色を生かして、バンドがジャンルの壁を越えられるよう様々な制作をしたいです。それぞれが持っている色から上手く新しいやり方を見つけて、面白い化学反応が見られたらいいなと思います。もちろん地元バンドが使いやすい場所でありたいですし、バンドやお客さんにも「近くまで来たから寄ってみたよ!」くらいの気軽さで遊びに来て欲しいです。
小山:立地も心斎橋のど真ん中なんで、買い物帰りに寄る、みたいな。(笑)。
永野:別にライブを観に行く予定じゃなくても、「一杯だけ飲みに来たよ」みたいな感覚でいらしてください(笑)。他にも、イベンターさん関係のイベントも入って来ているんで、プロユースでもしっかり対応できるハコにしたいです。
●地元に密着しながらもオールジャンルで、しかもイベンターも使いやすい。キャパも200くらいだし、丁度いい感じですね。
永野:何でも対応できるよう、機材の充実やスタッフの教育もしていこうと思っています。趣味でやっているバンドさんも“使って良かったな”と思えるし、プロでも使える。そんなハコ作りを目指したいです。
●まさに、3人の性格がよく出ていると。
妹尾:そうですね。おしゃれなところもありつつ、アンダーグラウンドなシーンもバチっと決めたいですね。
小山:繋がりがあれば、ジャンルも地域も超えてやっていけると思います。それを受け入れられる立地にありますし、いろんな人たちとどんどん繋がったり、繋げたりしていきたいですね。
●お話を訊いているだけでもいろんな可能性が見えてきますし、なんでも出来そう。楽しいことだらけじゃないですか。
妹尾:ほんまに毎日が楽しくて仕方ないです(笑)。人間関係は一生の宝物だと思っているので、墓まで持っていきたいと思える繋がりを大事にしていきたいですね。
Interview:PJ
Edit:森下恭子