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竹上久美子

京都発、バンドサウンドを取り込んだ新生竹上久美子の心に響く旋律と透き通る歌声

 京都生まれ京都育ちのシンガーソングライター竹上久美子が、自主レーベルを立ち上げ初の全国流通アルバム『助走とロンド』をリリースした。

CMソングの作曲/歌唱、映画や演劇の音楽制作に携わるなど音楽作家としての活動にも力を入れ、澄んだ歌声&キャッチーなメロディーが魅力である彼女の新作は、積極的にバンドサウンドを取り入れた新しいアプローチにより、これ迄から一歩進んだ色鮮やかな歌世界を構築している。

ゆっくりと助走をつけて、満を持してリリースされた竹上久美子の今を"ギュッ"っと詰め込んだ充実のフルアルバムを堪能してもらいたい。

Interview

●ついに全国リリースのアルバム『助走とロンド』がリリースされました。竹上さんご自身でレーベルを立ち上げられたんですよね。

竹上:少しでも多くの人に聴いてほしいし、今年は活動拠点を京都にしようとはっきり決めて活動していたので、制作も京都からやろうと。足場を固める意味でも準備をしていた1年でした。ブログでもCDができていく過程を載せたり自分達で頑張るというDIY精神の表れですね。

●DIY精神って凄く大事ですよね。今のご時世、自分が"伝えたい事"を持っていないと伝わらないと思うんです。

竹上:どんなミュージシャンだって、"いいものを作りたい""多くの人に聴いてほしい"という2つの欲があると思うんです。いいものを作るだけならレーベルを立ち上げなくてもいいんですけど、たくさんの人に聴いてもらいたいという気持ちを実現するために形を作って、自分達で頑張ろうっていう感じです。

●竹上さんは音楽活動を始めたのが大学在住の2003年からという事ですが、人前で音楽をしようと思ったきっかけは?

竹上:小学校2年生の学芸会で劇中歌があって、私が曲を作ったんです。みんなが自分の書いた曲を歌ってくれて、それがすごく楽しかったというのが最初ですね。

●小学2年で曲作りなんて中々できませんよ!

竹上:その時はそれがすごい事だと思っていなくて(笑)。今作でもクラリネットを吹いている曲があるんですが、中学になってからは吹奏楽部に入部して音楽にのめり込んでいきました。その時にコピーバンドも経験して、流行りの曲をコピーしていましたね。

●なるほど。今作はバンドサウンドというのが大きなキーワードになっていると感じました。

竹上:今まではずっとセルフプロデュースで制作してきてたんですけど、今回は共同プロデューサーとしてCHAINSのラリー藤本さんを迎えて制作しました。サウンド面もあらかじめ構想があってイメージ通りのバンドサウンドになった曲もあれば、自分のイメージを遥かに超えるサウンドになったものもあって、周りの皆さんに感謝しています。

●例えばどういった曲ですか?

竹上:M-7「リバーサイド・ストーリー」は変拍子のトラックメイキングもあるし、サウンド的にも80年代のサウンドに仕上がっていて、自分にないイメージを広げてもらった曲です。

●「リバーサイド・ストーリー」は憂いを帯びたロックなバンドサウンドだけど、変拍子の間奏からギターソロがあったりと今までになかったアプローチですよね。

竹上:サポートギタリストの神宇知(shiba in car)さんも80年代音楽が好きな方で、彼のおかげで曲のバランスがよくなりましたね。曲の作り方も、今までやった事のないアプローチに挑戦するというのが今回のテーマでもあったんです。今まではメロディから曲を書く事が多かったんですが、今回はその概念を捨てて、歌詞から書いたり、ベースラインから書いたり、リズムから書いたり…いろんなパターンを試してみたんです。

●歌についてはどうですか?

竹上:今までは張って歌うイメージがあったと思うんです。線で例えると、まっすぐ突き抜けていくようなイメージですね。今回は力を抜いて歌ってみたり、歌詞もストレートな事は言わずに少し濁している部分もあったりしますね。

●メロウなバンドのアレンジと、今作の竹上さんの声はいい具合に混ざり合っていると感じました。M-1「表面張力」はいきなり歌から始まりますが、耳に残るしハッとしました。

竹上:それは狙い通りです(笑)。アルバムの大事なつかみの部分ですね。制作の初期段階から、ピアノと歌だけの曲を1曲目に入れたかったんです。クラシックの組曲で言うとプレリュードの部分ですね。フルアルバムにはストーリー性が必要だと思ったし、起承転結のバランス的な意味で最初に弾き語りを持ってきたんです。

●2分くらいの短い曲ですけど、CDをかけた瞬間のインパクトは結構ありますよね。M-2「ランプ」は先行シングルの曲ですよね。これもすごく耳に残るメロディ。

竹上:この曲ができた事によって、"今までと違う事に挑戦していった上で、力強さもあるし繊細さもあるようなものにしたい"というアルバムコンセプトの核になった曲です。だから思い入れはすごくありますね。曲のテーマや歌詞自体もレーベルを立ち上げて京都からやりたい事を発信しようと決意をもった制作だったので、決意の始まりの曲が「ランプ」なんです。決意についてを歌っている曲なので、歌詞にも注目してもらいたいですね。

●M-3「poppy seed」の変化するドラムのリズムや、M-4「さよなら、リズム」のスライドギター、続くM-5「エブリシングOK」のブリティッシュな雰囲気も斬新で印象的です。

竹上:本当にサポートメンバーに助けてもらって、イメージしていた以上の竹上久美子が表現できたと思っています。「poppy seed」は英詩と日本語詩交互に出てくるんですけど、これも新しい試みで、英語の響きをそのまま活かしてみました。

●1年かけて足場を作ってようやくリリースですが、今の率直な感想は?

竹上:思っていた以上にいいものができたという感覚があるので、本当にたくさんの人に聴いてほしいと思っています。

●バラエティ豊かだし、統一感が無いのではなく今まで積み重ねてきたものが反映されていて、ちゃんと竹上久美子という人間が表れている気がします。周りから取り入れたというよりは、協力してもらう事で自分が持っていたものを上手く引き出してもらったんじゃないかなと感じました。

竹上:上手いこと言いますね! それを私が言った事にしてほしい(笑)。でも自分がイメージした通りになった部分もあれば全く違うものになった曲もあるので、相乗効果が生まれたのがよかったと思います。だからこそ、思い通りのものができたのではなく、思っていた以上のものができたと自信を持って言えますね。

Interview:上田雄一朗

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