音楽メディア・フリーマガジン

石巻ロックフェス2011

石巻ロックフェスティバルの奇蹟。それは震災の混沌の中で「石巻でライブがみたい」というひとつのツイートから始まった。

2011/10/9(日)@石巻サン・ファンパーク
出演者:黒 / SWANKY DOGS / notice it / コザック前田(ガガガSP) / THE HILLS / Who the Bitch / camellia / ヒダカトオル / under the yaku cedar / Peco(YOGAインストラクター) / ネモトムネユキ / プラズマ11 / FLY / 黄金の手 / ココロネ / branch / サン・ファンベンチャーズ / NO LIFE KING / 安東由美子 / 打首獄門同好会 / asari / 遠藤 勝 / Turquoise Hip / DuckTetsuya / One Plus One / 吉村秀樹(bloodthirsty butchers) / 蒼井美恵 / ヒガアサミ&イマイダイキ

Review

東日本大震災以降、被災地支援・応援を目的とした様々なイベントが開催された。体育館や避難所でのミニライブから、数万人を集める巨大フェス並みの野外イベントまで、時に華々しく、時に慎ましく、音楽による支援の輪は広がってきている。

そして震災、特に津波によって甚大な被害を受けた宮城県石巻市で行われた石巻ロックフェスは、その成り立ちからして特殊で、純粋で、尊く、参加した人にとっては忘れられない特別な一日になったのではなかろうか。

ご存知ない方の為にざっと石巻ロックフェス開催への足取りを、オフィシャルホームページと、発起人である石巻出身の鈴木大輔(under the yaku cedar)の言葉からみてみよう(ちなみに鈴木の実家は津波により全流出、2週間ほど両親と連絡がとれず、その後無事を確認)。

まず全てのきっかけは震災の余韻まっただ中の4月、打ちひしがれた石巻の子がツイートした「石巻でライブが観たい」という言葉が鈴木の胸に突き刺さった事だった。当初は小さいイベントを開こうと考えていたが、6月くらいには本格的にフェス的なものにしようという思いに行き着く。そして実現に向けて、7/16に比谷野音で“復興の狼煙ライブ”をはじめ、ストリートやライブハウス、イベント出演など、精力的な動きで石巻ロックフェスをアピール。そして1人の思いから有志が集まり、20人程の実行委員会ができる。当初目標にしていた7月開催は会場の都合で断念したが、8月中にはついに10/9の開催が決定。この短い準備期間と少ないスタッフによる実現までの労力は想像に難くない。実際専任のスタッフがいるわけでなく、大きなイベンターも使わず、お抱えスポンサーもなければ資金もない。そのうえ一般的に有名なミュージシャンが多数集まるわけでもない(失礼)イベントを、ここまで世に知らしめ、実現できたというのは本当に凄い事。大きなイベンターが有名どころをずらっと並べて「さあどうぞ」的なものとは対極的に、もう一つのコンセプトである“箱バンフェス”、つまり今回は東北メインだったがライブハウス推薦バンドをメインにという所にも意義がある。それは復興とインディペンデント、つまり被災者にとって本当に大事な事は“自立”であることを意図せずとも表している。
当日はこの上ない晴天に恵まれ、交通の便がよろしくない不利な場所にもかかわらず、約2000人の観客が集まった。ロック好きの若者は勿論、子供連れから地元のおじいちゃんおばあちゃんまで、年齢層は他のどのフェスよりも幅広い。それが全体を包む暖かい雰囲気に一役買っていたのは言うまでもないだろう。
地元密着という形で進めてきた努力も報われた形になった。ライブ会場はメインとなるROCK STAGE、海際に設置されたSEASIDE STAGE、芝生の上にある弾き語りメインのスペースFOOD COURT STAGEと3つ。それぞれのステージで交錯する熱すぎる音楽と気持ち。そう、出演者のこのフェスに対する気持ちの熱さという点も特筆されるものである。

ROCK STAGEでトップを飾った秋田の黒から始まり、ゲスト出演のヒダカトオル、そして主催under the yaku cedarまで、皆いつも以上の気合いと気持ちの入り方であったであろう。出演者がMC時に声がつまる事は稀ではなかった。震災後の混沌の中の一言から生まれた音楽フェスは、出演者同士のみならず、観客や関係者も含めて追悼、復興への思いをひとつにする事ができた。更に、故郷の復興を目指す男が、自分ができるロックという手法で進めてきたイベントが、石巻の復興という本題のみならず、全ての被災地にとっても勇気を与え得るものに昇華していったように思う。大きな資本に頼らず、DIYなイベントだからこそ達した境地だろうか。そして動き出した石巻ロックフェスは石巻の、東北の復興とともにあり、来年以降も続いて行く事を切に願う。
「希望とは、混沌の濁流から生まれます。それが生まれるのは、今です(鈴木大輔)」。

文 / 平山 “two”勉(Nomadic Records)

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj