音楽メディア・フリーマガジン

“爆ひな’12 Powered by FM OSAKA”

2012/3/3@心斎橋Music Club JANUS ACT:撃鉄 / 嘘つきバービー / 四星球 MC:みぃ(FM OSAKA)

FM OSAKAのロックプログラム「ミッドナイト☆ジャングル」と関西のロックイベンター「清水音泉」がタッグを組んだ、ロックンロールの祭典“爆ひな”。

毎年個性豊かなアーティストが集うことでも有名(?)ですが、今年の出演者は例年の3割増(当社比)濃ゆ~いメンツが集結! 全力で盛り上げた出演者に、全力で楽しんだオーディエンス。

そして何よりこのイベントを全力で支えてくれたスタッフの方々。すべての人の力を得て“爆ひな”は今年も素晴らしいイベントになりました。

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全出演者が発表され、このメンツを知った人たちが思ったであろうことを、私は当てることができるだろう。“濃い”。この一言に尽きる。一般的に“女の子の節句”というイメージがあるひな祭りだが、この日の出演バンドには女性がひとりもいないどころか、各バンドに必ずひとりは筋骨隆々とした半裸(あるいは裸ハッピ)の人物がいるのだ。想像もつかないほど衝撃的なライブになりそうな予感に戦きながらも、押えきれない高揚感にドキドキしていた。

まずは今イベント唯一の女性にしてFM OSAKAのアイドル(?)DJ、みぃのMC。毎年様々なファッションで楽しませてくれる彼女だが、今年は撃鉄を意識した全身レオパードのワイルド&キュートコーデ! 「撃鉄の天野さんとベストカップル賞狙ってます!」と言う彼女の笑顔に、男性はもちろん女性からも「かわいい~!」との声が上がる。
そしてここで思わぬサプライズ、偶然遊びに来ていたTHEラブ人間のVo./Gt.金田が急遽MCとして参戦したのだ! 「ついさっきMC出演が決まりました」と笑いつつ「4/6に梅田Shangri-Laで嘘つきバービーと対バンします!」とちゃっかり宣伝までしていった金田に、このイベントの自由さとアットホームさを再確認する。

1バンド目から撃鉄というフルスロットルな展開に、テンションが上がらない訳がない。サウンドもパフォーマンスもダイナミックな撃鉄に、ドアタマから会場は半端ない熱気を放ち出した。
「部屋」ではBa.田代が拳で叩くように鳴らすゴリゴリの低音が響き、「ヨルテツ」ではDr.近藤が体を揺さぶるようなリズムを刻み、G.森岡はクールな表情と裏腹に、躍動感溢れるギラギラのリフで1曲1曲にアクセントをつける。そしてフロントマンの天野はヒョウ柄の衣装を振り乱しながら踊り続け、一瞬たりとも動きを止めることがない。そしていきなりアンプを踏み台にしながらカーテンレールに指をかけ、照明用バトン(単管パイプ)にしがみつくと、重力を無視して天井にしゃがみ込む。さらにそのままバトンに足をかけ、ターザンのように宙づり状態で歌い出した。もう「凄い」という言葉しか出てこない。あらゆる面で計り知れないインパクトを残し、撃鉄は去っていた。

“まる描いてちょん まる描いてちょん…”。突然、Ba./Vo.岩下がぽつぽつと歌い出した「絵描きうた」の独特な歌詞で笑いを誘い、最後のフレーズを言い終わると同時に「カサカサ」の強烈なイントロが静寂を切り裂いた。椅子に座りながら演奏するG.千布の暴れっぷりに比例して、ファンのボルテージが上がっていくのが分かる。曲が終わって一言岩下が「始まるよ」とささやけば、会場から鼓膜を破らんばかりの歓声が上がった。
「音楽ずるり」では、Dr.豊田が飛び出して、柵に足をかけオーディエンスを煽り出す! すると岩下はバスドラムのフロントに足をかけ蹴り飛ばし、さらに千布の椅子に乗っかって弾き出した。どこまでも自由奔放で、撃鉄とはまた違ったベクトルでハチャメチャだ。
それなのにMCでは「何をしゃべればいいのかな? 音楽だけやってればいいと思ってたよ」と照れながら明かしたり、舞台にセットされた桜の花びらを摘んで、豊田の頭に乗せ満足そうな笑顔を見せる(後に清水音泉の田口氏は「セットの花びらを摘み取ったのは嘘つきバービーが初めて」と語る)が、妙に愛嬌があって惹き込まれてしまう。その一挙一動足から目が離せなくなっている事実に気付いた頃には、すっかり嘘つきバービーの虜になっていた。

「いつもブリーフとハッピだけど、今日は少しだけ女の子目線でライブしたいと思います」。四星球のアクト前にそんな放送が流れ、アニメ『キャンディ♥キャンディ』の女の子らしいオープニング曲と共に現れた彼らが着ていたのは、モンペ&芋ジャーだった。
自身を“コミックバンド”と称する彼らのライブは、まるでギャグ漫画のように次から次へと小ネタが飛び出てくる。2曲目「め狐 CONG CONG COMPLEX」ではVo.北島が曲中に突然「(ライブが)楽しみ過ぎてクッキー焼いて来たわ!」とタッパに入ったクッキーを取り出したかと思うと、今度は“COMPLEX”にかけて吉川&布袋のコール&レスポンス! “宇宙が好きなおっさんの歌”「Mr,Cosmo」では、「今からみんなでUFOを呼ぼうと思います!」と言い、両手をUの字にして左右に振り、全員で宇宙と交信し始めた。
まったく違うタイプの個性ある3バンドが集結した今年の爆ひな。当然ファン層もまったく違うだろう。それでもこの瞬間、撃鉄で腕を突き上げ、嘘つきバービーで雄叫びをあげた人々が、四星球の言葉に合わせて今度は宇宙と交信している。そこには、宇宙に輝く星よりも美しい笑顔があった。

(TEXT:森下恭子 / PHOTO:rockey)

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