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乙三.

ライブという原点に立ち返った2年半を経て 新生・乙三.がここからまた新たなスタートを切る!

 生涯軽音楽部をモットーに青臭い三十路男六人衆が集まり2002年に結成された、乙三.(おっさん)。

2009年3月に発表した3rdミニアルバム『お別れ』以来、彼らが約2年半ぶりのリリースを果たした。昨年5月には、メンバーの脱退も経験。

今のメンバーで新しいサウンドを模索しながら、ライブ活動に専念してきた成果が今作『横浜ミックスナッツ』には表れているようだ。支え続けてくれる周りの人々に対する感謝の想いも込めつつ、自分たちの“今”を存分に表現した新作を手に、乙三.がここからまた新たなスタートを切る。

Interview

「"ここから改めて頑張るぞ"っていう再スタート的な部分もありますね。目標が明確になって、次へ進むキッカケにもなる大事な作品ができた」

●前回のミニアルバム『お別れ』から約2年半ぶりの新作リリースとなりますが、その期間はどんな活動をされていたんですか?

創作:別に休んでいたわけではなくて、それまでと変わらずライブは続けていました。ただ、リリースのタイミングがなかったというだけですね。

●去年にはメンバーの脱退もあって、そこでバンドが止まっていたというわけではない?

創作:僕らは続けていくことしか考えていなかったので、解散とかいう話にはならなかったですね。逆にメンバーが脱退する前は、一番落ちていた時期だったかもしれない。『お別れ』の後、CDのリリースができなかったこと以外にも色々とあったんです。

●リリースがないことへの焦りはなかった?

創作:リリースがないまま1年、2年と過ぎていく内に、お客さんから「次はいつ出すの?」と訊かれることが多くなって。自分たちとしてはそこまで"早く出さなきゃ!"という感じではなかったんですけど、やっぱり世間体がねぇ…。「いったい、どうしちゃったの?」みたいに心配されるのが、ちょっとキツかったですね。

●メンバーの脱退による、サウンドの変化はなかったんですか?

創作:トランペットという割と目立つ音が抜けてしまったので、ギターや他の音でカバーできるように今までの曲もアレンジし直しました。 かといってバンドとしての方向性まで変えるわけじゃないし、そこで曲を一新するのは違うなと思ったんですよね。

●今のメンバーでやれることを表現するというか。

創作:地味になったと言われることもあるんですけど、背伸びして華やかさを出すよりは今のほうがいいかなって。6人になってからは、派手じゃなくても成り立つ音作りにしようと考えるようになりましたね。

●今回のアーティスト写真での、創作さんの格好はかなり派手ですけど…(笑)。

一同:(笑)。

創作:これは今回のデザイナーさんがM-1「横浜ミックスナッツ」をかなり聴き込んでくださって、そこから出てきたアイディアなんですよ。僕が時代遅れのスターを気取った人間で、それを周りのみんながスタッフとしてサポートしているというイメージなんだそうです。歌詞の内容とは全く関係ないんですけどね(笑)。

●(笑)。この曲はサンバ調のリズムを取り入れているのが特徴かなと。

創作:曲調的には「勝手にシンドバッド」(サザンオールスターズ)のイメージに近いですね。サンバ調のメロディは元からあって、そこにまず"横浜"と"ミックスナッツ"という2つのキーワードを決めてから歌詞を書いていったんです。

●横浜のイメージから歌詞を書いている?

創作:自分の中にある、横浜という街の印象というか。横浜って歴史のある町で昔から栄えているんですけど、今でもなお栄えている地域もあればそうじゃない場所もあったりする。今回は後者のデカダンスな感じを描きたいなと思っていました。なんでミックスナッツなのかと訊かれると困るんですけど(笑)。

●でも新しさと古さが共存している感じは、ミックスナッツ的と言えなくもない。

創作:そこは好意的に受け止めて頂ければ…(笑)。

●メンバーそれぞれが色んなジャンルを通ってきているバンドだからこその"らしさ"も出ている気がします。

創作:もちろんこれまで色々と聴いてきたものも出ているんでしょうけど、メンバーそれぞれの好きな音楽がバラバラだっていうことも大きいかもしれませんね。

幸平:それもまたミックスナッツということです(笑)。

●つながりましたね(笑)。これが今作のタイトル曲になったのは、自分たちでも気に入っている曲だから?

幸平:ライブでやっていて、お客さんの反応に手応えを感じる曲なんですよ。自分たちも演奏していて楽しいし。

創作:今回の収録曲は、去年の10月くらいからライブでやっているものもあって。ライブでの感覚が良いものという基準で、この5曲を選んだんです。6人になってから作った中でタイトルに一番インパクトがあってライブでも盛り上がる曲と考えると、これがタイトルに適任だったんだと思います。

●確かにサンバ調でホイッスルの音も入っていたりするので、カーニバル的な感じでライブも盛り上がりそうです。

幸平:だいたい新曲をライブでやると客席がシーンとなっちゃうことが多いんですけど、この曲は初めて披露したときから盛り上がったんですよ。

創作:でも作った当初は、あまり納得がいっていなくて。サザンオールスターズをイメージしたはずなのに、サビがTUBEっぽくなっちゃったから…。

●そこもミックスされている(笑)。クレイジーケンバンドっぽい雰囲気もあると思いましたが。

創作:それはこの曲に限らず、よく言われますね。昭和の歌謡曲が好きだからというのも関係しているのかな? クレイジーケンバンドの曲にも、そういう匂いがあるから。サザンオールスターズについても、様々な音楽をミックスした上で日本の歌謡曲として作り上げるのが本当に上手いところをリスペクトしていて。僕らが通ってきた音楽ともたくさん共通点があるからお手本以上の存在で、絶対にその名前は外せないんです。

●ルーツにしている音楽が共通しているから、曲の雰囲気も近いんでしょうね。M-2の「風待ち顔」はタイトルから『風街ろまん』(はっぴいえんど)が浮かんだんですが、この曲はどんなイメージで?

創作:はっぴいえんども好きなんですけど、この曲に関してはフィル・スペクターとかのオールディーズに近い感じにしたいなと思って作りました。歌詞のイメージはまだ手も繋いでいないくらいのウブな感じです(笑)。

●「横浜ミックスナッツ」のアダルトな歌詞とは正反対ですね(笑)。

創作:「横浜ミックスナッツ」の歌詞を読んだ女性スタッフが思わず「エロい!」と言っていました(笑)。

●それで言えば、M-4「入っちゃうぜ」は完全に下ネタな感じが…。

創作:ライブでも盛り上がるんですけど、歌詞に関してはさすがに露骨すぎるかなと(笑)。下ネタでもドロッとしないようにということは、僕なりに気を付けていて。カラッとした明るいエロを目指してみました。

幸平:基本的にスタジオで初めて合わせるときは、歌詞がない状態なんですよ。みんなでやっていく内にだんだん歌詞が固まってくるんですけど、僕らも"こんなことを歌うの!?"って思うことが多いですね(笑)。曲調は昔のロックンロールみたいな感じをイメージしています。

●M-3「エリーゼのために」は、サビの"いい奴の体で"が"yesterday"と聞こえて。英語っぽい節回しになっているのは、洋楽がルーツになっているからなのかなと思いました。

創作:単に滑舌が悪いというのもあるかも…(笑)。でも歌詞よりもまずメロディを伝えたいという想いが強いのは大きいかもしれませんね。メロディーに対する言葉として歌詞を書いているので、僕らの曲では空耳的なことがよくあるんですよ。

●「エリーゼのために」というタイトルの意味は?

創作:この曲は仮歌の時点からなぜか、サビの文末に"エリーゼ"と付けて歌っていたんです。このままだと意味を持たせるのは難しいとわかってはいたんですけど、そこから抜け出せなくなってしまって…(笑)。あとはピアノをやっている人なら必ず通る楽曲のタイトルでもあるので、その言葉のポップ感もありましたね。

●"体(てい)"といった歌詞には珍しい言葉を使っているのも面白いかなと。

創作:最近は言葉のマンネリ化を防ぐ意味もあって、ブログやTwitterで言葉を紡ぎ出す機会を増やしているんです。そういう場で気に入った言葉や表現が、そのまま歌詞に出てきちゃうことも多いんですよね。

●時折出てくる"沙羅双樹"や"婆娑羅"などの仏教用語もすごく気になるんですが。

創作:幸平が大学の禅学科出身なんです(笑)。

幸平:中退だけどね…って、それは関係ないでしょ!

●関係ないんだ(笑)。

創作:単に、僕の好みです(笑)。言葉の響きが良いし、そういう匂いも含ませたくて。1つ意味を調べてみるとそれに付随する言葉も一緒に出てきたので、色々と歌詞の中に散りばめてみて。…これは仏教とヨーロッパの伝統音楽をミックスナッツ的に合わせた曲ですね。

●今のは完全に思い付きですよね(笑)。M-5「謝肉祭(カーニバル)」はどんなイメージで?

創作:「謝肉祭(カーニバル)」は言葉のイメージから元々お祭り騒ぎ的なイメージがあったんですけど、ちゃんと調べてみると意外に騒ぐだけのものではないことがわかって。

●リオのカーニバルとかのイメージが強いですけど、元々は春の到来を喜ぶ祭りが由来なんですよね。

創作:ちょうどこの曲を作っていたのが、去年の3月末だったんです。あまり露骨に触れるのは嫌なんですけど、やっぱり東日本大震災のことを避けては通れないなと思って。そういうことも含めて書いた曲ですね。

●シリアスな想いも込められている。幸平さん的に、この曲の聴きどころは?

幸平:…僕、スライドギターが苦手なんですよ。

●それ、聴きどころですか!?

幸平:この曲ができた当初はレコーディングの予定もなかったから、ライブで修行のためにやれば面白いかなというくらいの軽い気持ちで入れてみたんです。でも今回レコーディングすることになってしまって、本当に苦労したんですよ…。

創作:乙三.では珍しく、全編にアコギが入っている曲で。このバンドに入ってから弾き始めたんですけど、ようやく僕のアコギがレコーディングでも耐えうるレベルになってきたかなと(笑)。

●ちゃんと進化していることも含めて、今の乙三.が伝わる作品なわけですよね。

創作:新しい名刺になるようなアルバムが欲しかったので、今作には6人になってからの代表曲を収録したんです。全体的なまとまりよりも、"こんなことをやっているバンドです"っていうことを伝えたかった。「これが俺らの全て」と言っちゃうと語弊があるんですけど、乙三.の持っている幅をある程度は見せられたんじゃないかな。

●2年半ぶりのリリースということで感慨もひとしおなのでは?

創作:"やっとだな"っていう想いは正直大きくて。単純に嬉しい気持ちもあるし、"ここから改めて頑張るぞ"っていう再スタート的な部分もありますね。目標が明確になって、次へ進むキッカケにもなる大事な作品ができたと思います。

幸平:ライブに力を入れてきた2年半でしたけど、やっぱりレコーディングの感覚も忘れたくないですね。また次に向けて頑張っていかなきゃなと思うし、本当に再スタートっていう感じです。

●ずっと待ってくれていたファンにもこれから再び応えていける。

創作:なによりお客さんが今回のリリースを、僕ら以上に喜んでくれているんです。「楽しみにしていたよ!」って言われるのはありがたいことだし、すごく嬉しい。CDって簡単に出せるものじゃないし、色んな人のおかげでリリースできているんだということを今回で改めて実感したんですよ。この2年半の経験が本当に大きかったと思います。リリースして終わりじゃなくて、今まで人任せにしてしまっていた部分まで今後は自分たちでやっていきたいですね。

Interview:IMAI
Assistant:Hirase.M / HiGUMA

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