神戸発、完全覚醒系3ピースバンド、シリカの1stミニアルバム『夕焼けの説明書』が11/23にリリースされる! 天才的で形容不可能と賞賛された2011年春にリリースの『超電磁砲』からわずか半年。
破壊と轟音が合わさり、うねりを上げて覚醒し始めたシリカが短期間で更なる進化を遂げた。ロックンロールもメランコリックもポップもノイズも、だれも触れないタブーも全てまるごとぶち込んだ5曲18分の完全覚醒した世界を堪能せよ。
●約半年ぶりのリリースなんだけど、あっという間な気がします。
廣田:それは上田さんが歳だからですよ。
●あ、そういうこと? アルバムリリースから半年というと、リリースツアー真っ最中のバンドもたくさんいると思うんだけど、いつ作曲したんですか?
林:断片的に何曲かはストックがあって、それを固めていった感じですね。散らかっていたものをガッと固めて。
●そんな感じはあまりしないんですよ。しかるべきタイミングで生まれてきたような。
林:最初はインストも入れる予定だったんだけど、強引にグッと凝縮させて結果的には"いらんわ"と思って。
廣田:あ、上田さんピーナツ食べてください。(ピーナツを差し出す廣田)
●あ、ありがとうございます(笑)。前作『超電磁砲』の反応はどうでしたか?
林:ライブの質もお客さんの質も変わって、ちゃんと自分らのライブが出来るようになりました。その結果動員も増えたし、対バンも含め質のいいライブが増えてきたと思います。
●前回のインタビューでは「一時期ライブの善し悪しで、もがいていた時期があった」と言ってましたが。
林:徐々にいい感じのアベレージの高いライブが出来るようになりました。
●シリカの中で何かが変わった?
林:単純に楽しいんだと思いますよ。言葉にするのは難しいんですけど、最近はいろんな人の動きのおかげで対バンの質が変わったのが大きいのかな。
安田:いろんな人がおると"しっかりシリカを出していかないと"みたいな想いが芽生えてきた。以前は"俺らが楽しけりゃいいや"っていう気持ちのムラがあったけど、 "やらなあかん"って感じになりました。いろんな人にサポートしてもらっている状況で、"俺らが楽しければいい"という気持ちは通用しないなと。それを完全に無くしちゃうとブレるんですけど、しっかりやろうぜという気持ちは生まれたんちゃうかな。
●前回も「最近ライブが楽しくなってきた」と言ってたんだけど、どんなところが楽しい?
廣田:お客さんに助けられてる部分もあるよな?
安田:それもあるね。シリカって名前を今まで以上に認知してもらったのは大きいよな。
●広く認知されてきたって感じる?
廣田:ライブって自分たちのテンションをどれだけ高いところに持っていけるかがひとつの勝負だと思うんです。自分たちだけの頑張りにも限界があるし、それをお客さんに押し上げてもらっている感はあるかな。メンバー同士でカバーしあう時もあるし、常にテンションを高いところでキープ出来るようになったんじゃないかなと思います。
●そういう積み重ねがあって、いいライブが出来てきているという実感が楽しさに繋がっているのかもしれませんね。
安田:上手いことまとめましたね。
廣田:さすがっす。
●また始まった(笑)。最近は特にフラストレーションを感じることも無くなった?
林:ありますよ。とあるライブハウスでセットリストを決めてなくて「5曲やります」って曲数だけ言ったら"あぁ?"みたいな顔されて、「それがバンドさんの方針だったら」って言われて。あれホンマに嫌やった。
安田:まあ、それがライブに出なくなっただけええやんね。
●大人になったと。
林:俺もそこでちょっと押さえましたね。結局曲名は書かなかったけど。前だったらそれだけでアンプ壊せますもんね。
●なるほど。『夕焼けの説明書』はドキっとする日常をリアルな言葉で歌うシリカらしいシニカルな曲が凝縮されているんですが、M-1「夕焼けシャングリラ」は某匿名巨大掲示板のことを歌った曲?
林:そうですね。僕は極力見ないようにしていたんですよ。でもある日見てしまった時に"めっちゃ適切なこと書いてあるし、匿名ってすごいな"と感じたんです。でも、もしかしたらメンバーが書き込んでるかもしれへんし、スタッフかもしれへんと思った時に、"匿名って怖いな"と思って。バンドに対しての匿名の書き込みを見た時、普通なら流せるようなどうでもいいことが"どうでもよくないこと"に思えて。
●でもアンチばっかりでもないですよね。他のみんなは見たんですか?
安田:僕とか2時間おきくらいで見てますよ。"はよ何か書いてくれへんかな"って。"ドラムが女と歩いてた"とか書かれたこともあるし。
●匿名だから何でも書けるシステムだけど、それだけバンドのことが気になってる人がいるってことですよね。ラストの歌詞"すべての感情をここにぶつけりゃいいさ"の"ここ"ってどこのこと?
林:俺らのことだけじゃなくて、"このファンキモい"とかいってTwitterのアカウントを貼る奴がいるんですよ。それが理由でその子はTwitter辞めちゃったりとかしてて、その人は絶対苦しんでると思うんです。それをこの曲にぶつけていいですよっていう…。
安田:拠り所にしてくれと。僕は"掲示板にぶつければいい"って解釈が面白くていいなと思いましたね。
●どっちにも取れそうだけど、僕は林くんの解釈で聴いてたんです。だから絶対"シリカも変化してるんだな"と思って。M-2「三つ巴」ですがこれは3人のこと?
安田:俺らは3人で行きたいんですよ。
林:2曲目に持ってきている曲だし、これから3人で入り乱れるという意思の表れです。雷神図とかで有名なマークあるじゃないですか? あのマークが個人的に好きで、いろんな意味を含んだ曲です。
●曲からも"決意"が感じ取れる。
林:今までの自分に別れを告げるというか…。サムいし恥ずかしいですね。
安田:俺はええと思うよ。
●M-3「BACK TO THE FUTURE」は今作中でサビの破壊力が高い曲で、浮遊感もありますね。
林:タイトルは一番好きな映画から取ったんですが、歌詞よりも演奏で未来と過去を行き来する感じを出したかったんです。ギターのアルペジオで宇宙的な感じを出したくて。
安田:ドラムもやっぱり宇宙っぽい感じにしました。俺らで宇宙感出していこうぜって感じで。
廣田:ベースもそうですね。
●またシリカのペースにはめられてる気が…。続くM-4「SSS」はイントロからAメロの流れが綺麗だし、Bメロのサンバっぽいリズムも今までありそうでなかったアプローチ。
林:テンポ自体珍しいですよね。曲に対してそんなに意識はしていないですけど、歌詞にはこだわりがあります。SSSの意味も気づかない人は気づかないだろうけど、気づく人はそこを意識して聴いてくれればいいなと。この間、凄いリアルな夢を見た時の歌なんですが、その時の周りの人からの特別視がすごいんですよ。夢の中で僕は、何故か須磨駅で下駄を拾っていて、それでも変な目では見られないんです。"あの子はそういう子だからほっとこう"という特別視。電車の優先座席も僕的には差別だと思うんですけど、夢の中では周りの人がすごく優しかったんです。目が覚めた時、気持ちがよかったというか、特別視されている自分が嬉しかったんですよね。
安田:ネタが解らなくても普通に聴けるし、知ってたら知ってたで歌詞の印象がガラッと変わるんですよね。
●ドキッとしますよね。林君の歌詞って切り口がすごいなと思うし、物ごとを俯瞰的に見る能力が高いんじゃないかなと思って。
林:"自分を見ている自分"がいる人って実は結構いると思うんですよ。僕はそれを歌で表現したいなと思っているんです。
●なるほど。さっきリズムの話もしましたが、"このパートはこうしてくれ"という具体的な指示は林君からある?
安田:基本は林が細かく構成して、それに沿った演奏をするって感じです。雰囲気で細かいリズムは自分で考えるんですけど、林の曲のパワーがすごいんで、面白いフレーズも、インスパイアされて自然に出てきた感じです。最近にしちゃ珍しくいろいろ詰め込んだ曲で、ドラマがありますね。
廣田:分厚いとこから細いところの差は大きいし、コードを鳴らしたりアルペジオで進行したりと表情がコロコロ変わるので、細かく聴いてもらえると面白いと思います。
林:曲作りの速度は本当に速いよね。
●では最後M-5「疾走!真っ赤な林檎ちゃん」。
林:これは1番は自分のことを歌っていて、林檎ちゃんっていうのは、たまたま楽器屋に行った時、¥5,980の赤いギターがあって衝動買いしたんです。ずっと同じコードが続くんですけど、曲の雰囲気は前からあって"こんなんやってみたらどうなるんやろう?"っていう実験的な曲なんです。"こういう曲をやってもカッコいいですよ"っていう感じを出した冒険した曲ですね。
廣田:林はすぐコードを変えたがるのに、BメロまでひたすらAコードだもんな。でもこの曲は盛り上がると思うな。
●僕は今作で進化したシリカを感じたんです。みなさん自身はどうですか?
林:かなり実感はありますね。前作よりカッコいいかは解らないけど、全然違うカラーのいいものが出来て"シリカってこんなんも出来るんや!"って感じは出せたし、決して軸はブレてない。
安田:『超電磁砲』とテイストが似ているところもあるし、今作は『超電磁砲』の弟。だからぜひセットで聴いていただきたい。半年という短いスパンで生まれた兄弟作、ぜひセットで!
●上手いことまとめに入ってますけど(笑)。
安田:区切りとして『超電磁砲』からシリカは変わったと思うんですよ。どっちがいいとかじゃなくて、全部まとめていいと思えるものが出来ました。
廣田:いいアルバムです。でもライブとなると俺ら3人だけやから、CDという名刺はあれど、ツアーで僕らを観てもらいたいですね。
●いろんな問題提起があるアルバムだし、それを聴いたリスナーの反応が気になりますね。
林:何かが変わればいいですよね。電車に乗って優先座席を見た時に"シリカが言ってたことってあれなのかな"って気づいてくれたらそれってすごいことだなと。俺らが曲を作ったことで、その人の日常の一部が少し変わったみたいな。それがいいとは限らないけど、何かが変われば嬉しいですけどね。
Interview:上田雄一朗
Assistant:森下恭子