音楽メディア・フリーマガジン

キュウソネコカミ

圧倒的なテンションで心を掴む全方向対応型ダンス・ロックバンド

kyuso-logo-artist-majime一部の人々からそれなりの支持と強烈な怒りを買った1stフルアルバム『10代で出したかった』から9ヶ月、キュウソネコカミが早くも2ndフルアルバム『大事なお知らせ』をリリースする。前作発表後に数多くの対バンを重ねる中で、ライブでの爆発力と表現力を磨いてきた彼ら。圧倒的なテンションで観客の心を掴み取れるようになった最近のライブを象徴するかのように、今作では多様な楽曲のポピュラリティと強力なフックを持ったメロディが威力を増している。意味深なタイトルの意味はさておき、彼らの魅力を凝縮した勝負作であることは間違いないだろう。

 

「僕らも色んなヤツに“あいつらダサいな”とか思われてるんでしょうけどね(笑)。でも今はそれをブチ超えていけているから気持ち良いんですよ」

●Youtubeに上がっている新宿MARZでのライブ動画「DQNなりたい、40代で死にたい」が好きなんですけど、あの頃(2011年6/3)はまだ客席とも距離感がありますよね。“ヤンキーこわい”のコールアンドレスポンスも、今ひとつノり切れていなくて…(笑)。

ヨコタ:あれが東京での初ライブだったんですよ。

●そのせいか、まだアウェー感があるというか。でも先日(2012年12/2)、新宿LOFTで観たライブではお客さんもノリノリで“ヤンキーこわい”を大合唱していて(笑)、すごく受け入れられている感じがしたんです。

ヤマサキ:確かにそうですね。最近はマニアックなお客さんだけじゃなくて、フェスとかに行っているようなライブ好きのお客さんも結構来てくれるようになったんです。それによって自分たちもやりやすくなったし、お客さんが多いところにだんだん行けている感じはします。

ヨコタ:お客さんのポテンシャルが高いんですよ。東京の人も瞬発力があるなと思いましたね。

●恥ずかしがる様子もなく、みんなが合唱していたのが印象的でした。

カワクボ:参加したらお客さんも面白いと思うんですよ。そこまでが難しいんですけどね…。

ヨコタ:でも誰かが盛り上がっていると、そのまわりの人も自然と付いてきてくれるから。

ヤマサキ:1人だと「ヤンキーこわい」とは言いにくいけど、そういう盛り上がりを見たら「もう言ったれ!」となる。それがどんどん波及していったらいいなと思っていて。1年前とはもう完全にライブの感触が違いますね。

●お客さんの反応が変わったのは、今年3月に初の全国流通盤1stアルバム『10代で出したかった』をリリースしたことも関係しているのでは?

ヤマサキ:それも大きいですね。前作は今でもジワジワと売れていて、最近では珍しい売れ方らしいです。

ヨコタ:そこで“鉄は熱いうちに打て”ということで、9ヶ月後に今回のアルバムを出すことになりました。

●それが今回の2ndアルバム『大事なお知らせ』となるわけですが、かなり早いリリースペースですよね。

オカザワ:しかもまたフルアルバムっていう…。

ヤマサキ:ホンマに血のにじみ出るような努力の末、11曲を捻り出した感じですね。

ヨコタ:今回のレコーディングは本当にしんどくて…。曲を作りながらライブもしてレコーディングもしてという感じで、それが1ヶ月半くらいの期間にギュッと詰まっていたんです。作り始める段階で5〜6曲はあったんですけど、ストックだけじゃなく新たに作ろうということになって。レコーディングしながら作った曲もあります。

●M-8「ファッションミュージック」は、以前からライブでもやっていますよね?

ヨコタ:この曲は、前作を出した頃にはもうできていたんです。他にもM-1「JP」やM-2「サブカル女子」は既にライブでやっていましたね。

ソゴウ:僕らは新曲ができたら、すぐライブでやるみたいなところがあって。ライブでの反応を見てアレンジを変えていったりするので、ライブで最初にやった時からはホンマに変わっている曲もありますね。

●ライブでアレンジを練ってきた楽曲が入っている。

ソゴウ:今作の前半は、最近のライブで定番になっている曲が多いですね。

ヨコタ:でも今回はライブでやったことのない、完全にスタジオで作った曲も入っているんですよ。そういう曲をライブでやった時にどういう反応があるのか、これからどう変わっていくのかは僕らも楽しみですね。

●ちなみにまだライブでやっていない曲とは?

ヨコタ:M-5「死なんかなー」、M-6「音楽やめたい」、M-10「シャチクズ」、M-11「TSUTSUNUKE BOYS」ですね。

ヤマサキ:僕らはライブでウケなかったらしっかりヘコんで、一度やらなくなるんですよ。その寝かせている期間がなかったのが、今言った4曲で。だから、これからまた変わっていくかもしれないです。

●1曲の中でも急に曲調が変化したり、展開が一筋縄でないものが多いのはそうやってライブで練りながら作っているから?

ヨコタ:それもあるけど、やっぱり“ヒネったことをしたい”という気持ちからですね。

ヤマサキ:シンプルにはしたくないんです。

カワクボ :曲を作っている時から結構、特殊な気がしますね。

●特殊?

ソゴウ:セイヤが作ってきたフレーズを聴いてみたら、Aメロ・Bメロ・Cメロがどれも別の曲みたいな感じだったりして。それを1曲にまとめているので、聴いていると途中で曲調がガラッと変わる感じになるんですよね。

ヨコタ:そういうのが好きやしな(笑)。

ヤマサキ:好きっていうか、僕はコードとかが全然わからないから、つながりとかもよくわからなくて。自分が弾きたいフレーズを弾いて、あとはみんながその間をつないでくれる感じですね。

●曲は全てヤマサキくんが書いている?

ヤマサキ:歌詞は全て自分が書いていますけど、曲に関しては原型だけを僕が作ってきてアレンジはみんなでやっています。

ヨコタ:まずセイヤが持ってきたテーマやリフとか歌詞からみんなでアレンジしたものに、さらに新しいものをどんどん加えていく感じですね。

オカザワ:スタジオで練習している時にセイヤさんが「ここをこうしたい」みたいなことを言い出して、それを試してみて今に至る…みたいな感じです(笑)。しかもスタンダードなことをしたら、「違う!」って言われるから…。

●だから特殊なアレンジになっていると。今作は前作から曲調の幅も広がって音楽的な進化も感じました。

オカザワ:前作はシンプルで、勢い重視なアルバムだったんですよ。

ヨコタ:でもそこから今回は新しいことをしようとしたというよりも、“こういう引き出しもあった”という感じで。“こういうこともできるんですよ”というのも見せたかったので、「サブカル女子」を作ったりして。勢い一辺倒じゃなくて、“僕らみたいなバンドがちゃんとしたメロディで歌を作ったら意外とウケるんじゃないか?”というのが発想としてまずあった。コード感とかもちゃんと意識して作ったのは、実はこの曲が初めてなんです。

●メロディがすごくキャッチーですよね。

ヨコタ:好きなジャンルはバラバラだけど、実はメロディアスなものが好きなメンバーが多いというのもあったので上手いこと、この曲ができて。ライブでやったらみんなに「良かった」と言われたから、“こういうことをやってもいいんだな”という感じになりました。

ヤマサキ:「サブカル女子」を初めてライブでやった時、フロアにいたサブカル女子たちがすごい顔をしていましたけどね。(笑)。“怒ってんのかな?”っていう…。

カワクボ :実は僕らのお客さんには、そういう子が多いんですよね(笑)。

●自分たちを応援してくれているファンに対して、何てことを…(笑)。

ヤマサキ:そこをあえて突き放すような曲を書くことによって…、“そういうのが良いんやろう?”っていう(笑)。女子は1回突き放されたりしたいんですよ。

●何の話ですか(笑)。とにかく「サブカル女子」が今作のキーになっていると。

ヨコタ:“こういうこともできるんですよ”っていうことをやってみたら、意外とポップなアルバムになりましたね。でも前作に入っているような10代からの曲もライブではずっとやっているし、僕個人としては前作と今作を足して2で割ったらすごくバランスが良いんじゃないかと思っていて。勢いのあるロックだった前作から9ヶ月空けた分、そういう違いがあっても面白いのかなと。

ソゴウ:色々やってみたからといって、何かが失われたというわけじゃないんですよね。今回はやってないことも、ちゃんと残っていて。

●前作であった魅力は、今もちゃんと自分たちの中に残っている。

ヨコタ:もしかしたらもう前みたいな曲は書けないんじゃないかという不安は少しあったんですけど、そしたら最後に「TSUTSUNUKE BOYS」ができて。これはまさに“ザ・キュウソ”みたいな曲で、動機も作り方も初期のキュウソみたいな感じなんですよ。

ヤマサキ:久しぶりに誰かをディスる曲で、僕の得意な感じです(笑)。

オカザワ:今作で一番、衝動的ですね。

●この曲が最後に入っていることで、“キュウソは何も変わっていない”っていうことが伝わる。

ヨコタ:今作を作っている時にあまりにも“良い曲”ばかりになってしまったら、“キュウソも日和ったな”とか言われそうだと思っていて…。

ヤマサキ:でも「サブカル女子」も、歌詞はすごく毒が効いていますからね。だから、こういうメロディの曲でも“これがキュウソや!”みたいな感じでやれる部分はある。

●J-POPなみにキャッチーなんだけど、よく聴くと歌詞に毒が満載なのがキュウソの魅力ですよね。

ヨコタ:歌詞にはどれも毒が入っているし、“それさえあればキュウソ”っていう部分は絶対にあります。

ヤマサキ:僕らはどっちかというと、J-POPを目指しているというか。ちゃんと“売れたい”っていうことを考えているので曲はキャッチーな方向に行きつつ、歌詞では毒づいて…みたいな感じです。

●J-POPにはないイビツさがあるというか。

ヤマサキ:僕らはダサいバンドを見抜く力が強くて。“これをやったらダサい”っていうものがすぐにわかるから、それをけなしつつ自分たちは別のことをやるんです。

ヨコタ:誰かがやっているのを見て“ダサいな”と感じるところは全員に共通していると思います。だからバンドとして“こういうふうになりたい”みたいなものがなくても、“そういうことはしたくない”っていうものを避けていたら、自ずとこういう感じになっていったというか。

●明確な理想形があったわけじゃなくて、やりたくないものを排除していった結果が今のスタイルだった。

ヨコタ:できるだけヒネったやり方で、知名度とかを上げていきたいなという気持ちがあったから。結果的にそうなったという感じですね。他のバンドの音源を聴いていても、“自分がこのバンドのメンバーだったら、こういうことはしないな”っていうのがすぐ浮かんでくるんです。

ヤマサキ:まあ、僕らも色んなヤツに“あいつらダサいな”とか思われてるんでしょうけどね(笑)。でも今はそれをブチ超えていけているから気持ち良いんですよ。

オカザワ:自信を持って、これをやっている感じですね。

●自分たちにしかできないものをやれている。

ヤマサキ:音源だとまだ他のバンドに似ているところも感じるかもしれないけど、ライブを観てもらったらきっと違いがわかると思う。曲はちゃんとしているんだけど、メンバーが汗だくだったり、曲と全然関係ないMCをしたり、ダンボールを潰したりとかしていて(笑)。

●ライブパフォーマンスの面白さは、キュウソの大きな魅力だと思います。

ヨコタ:ライブで無茶苦茶なことをしてるバンドは曲がそんなに凝っていなかったりして、逆に曲がすごく凝っているバンドはあんまりライブパフォーマンスに面白みがなかったりする。僕らはできるだけその両方があるバンドになりたいなと普段から話し合っていたら、ライブがああいう感じになっていって。

ヤマサキ:ライブパフォーマンスはハチャメチャな感じなんですけど、ステージを降りたらちゃんとしているっていうのが売りな部分もあって。実は挨拶もちゃんとするし、ファンにもちゃんと「ありがとう」って言う。ステージを降りたら、みんな“こんな人なんや”と思われるくらいで…そのへんは大事にしてると思わへん?

ヨコタ:そうやけど、「そこが売りです」って…。

●それは自分で言うべきところじゃないですね。

一同:(爆笑)。

Interview:IMAI

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