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カヨコpresents…“唄魂2012、野音!~大阪城無双~”

カヨコは言った。「音楽をもっと愛そうや」と。

2012/7/14(土)@大阪城野外音楽堂

カヨコ / 小南泰葉 / onelifecrew / ecosystem / SAL / アキドリ / SUAL拳 / 植田真梨恵 / 代々木原シゲル / 石原志織 / わたなべゆう / 小玉哲也 / サカノウエヨースケ / ヒグチアイ
“唄魂”。それは『あらゆるしがらみを取っ払い、真に魂のこもったアーティストだけを集める』というコンセプトをもとに、シンガーソングライ ターのカヨコが主催しているイベントだ。過去に開催された9公演(番外編の公演を除く)でソールドアウトを記録してきた好評イベントが、今回“唄魂 2012、野音!~大阪城無双~”として過去最大規模で開催されるにあたり、本誌でも4ヶ月に渡る短期連載を行ってきた。そして7月14日、ついにこの日 がやってきたのだ。

直前まで降水確率90%と記録されていた天気予報は見事に外れ、ここ最近で一番熱いんじゃないかというくらいの快晴で迎えら れた当日。まずはとことんポップなサカノウエヨースケのライブから始まり、ハッピーなアンサンブルで笑顔の連鎖を起こすアキドリが登場。3番手の植田真梨 恵は危うささえ感じるほどリアルな歌を差し込み、代々木原シゲルはクセのある力強い歌声でオーディエンスの心をギュッとわし掴みに。そしてシングルコレク ションのように濃いSUAL拳のステージの後は、ヒグチアイの太陽のように暖かい曲たちが響き渡る。

少し涼しくなり過ごしやすくなった15時 頃。緩やかに流れるonelifecrewの音はロケーションにピッタリで、実に心地良い。その次はカヨコと大野賢治との挨拶があったのだが…オンタイム で進んで来たスケジュールが、まさか2人のトークで押したというのはここだけの話。その後も、小南泰葉が独自の歌詞世界で会場の空気を作り上げれば、わた なべゆうはアコースティックギター1本で癒しの空間を提供。SALの奏でる音に合わせて体を揺らし、小玉哲也のキャッチーな楽曲と人懐っこさに惹き付けら れ、ecosystemはゴリゴリのバンドサウンドと関西人のノリで盛り上げる。どのアーティストも自身の“らしさ”を持っていて、ステージごとに違った 雰囲気を楽しめるのが面白い。そのうえ全員がカヨコが心から信頼しているアーティストばかりなので、仲の良さが伺える掛け合いが随所随所で見られほっこり した気持ちになる。特に印象的だったのは、活動休止中の石原志織がカヨコへの感謝を込めて出演していたこと。包容力のあるのびのびとした歌声で会場を包み 込み、大トリ前の大役を見事に果たしてみせた。

満を持してカヨコが現れると、全員が立ち上がりで手拍子で迎え入れる。サビのリフで随一の盛り上 がりを見せる屈指のキラーチューン「人間無双」やジャジーな鍵盤のアレンジが光る「イミテーションロック」など、バンドスタイルの迫力もさることながら、 嘘のない等身大な言葉を放つ姿に心から惹き付けられた。本編最後の曲「Searchlight」を唄っている彼女は本当に輝いていて、私には彼女自身が暗 闇を照らす一筋の光のように思えたのだ。きっと、会場にいた人たちも同じように感じたのではと思う。アンコールを受け再び現れた時、カヨコは言った。「音 楽をもっと愛そうや」と。音楽に限らず、もともと好きで始めたはずなのに、続けていく上で辛い現実や壁に突き当たって好きだった気持ちを忘れてしまうこと がある。誰にだってそういう経験はあると思うし、私自身にもある。彼女はその“好き”という純粋なエネルギーの大切さを、イベントを通じて思い出させてく れた。

カヨコは決して世界的に有名なアーティストでもなければ、絶大な人気がある訳ではない。彼女が大阪城野外音楽堂という大舞台で見事イベン トを成し遂げることができたのは、本人も言っていた通り、多くの人たちの応援と協力があったからこそ。それは何より、カヨコ自身が人を愛し、音楽を愛して いたからこその結果だと思う。素晴らしい音楽に、メジャーもインディーもジャンルも形態も関係ない。いつまでも鳴り止まない拍手と、涙を浮かべながら幸せ そうに笑うカヨコの表情がそれを物語っていた。

TEXT:森下恭子

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