音楽メディア・フリーマガジン

カケラバンク

人混みの中で立ち止まって見つけた僕らのカケラ

前作のミニアルバム『目を閉じて見えるモノ』から、1年ぶりとなるNew シングル『バトンタッチ』を発表した、カケラバンク。アコースティックギターとパーカッションという生楽器を用いて、日常の中で抱く感情を素直に表現する2人組。

2008年に京都から活動拠点を東京に移した彼らが、頭角を現したのは上京後すぐだった。YAMAHA主催“Tokyo Band Summit 2008”で、約1000組の中からグランプリを受賞し、香港にて行われた“Asian Beat Grand Final 2009”に日本代表として出演。他にも“音霊 OTODAMA SEA STUDIO”に3年連続出演し、“MINAMIWHEEL 2010”に出演するなど注目度も高い。2009年には旅人フォトグラファー須田誠さん主催のイベント“No Travel, No Life”に出演。このことをキッカケにCDジャケットでのコラボや、ライブとトークが楽しめるイベント“青山の変”を開催するなど、写真家とのコラボにも注目が集まる。

彼らが人々の心を惹き付ける、その魅力とは何なのか。

Vo.&G.櫻井幹也が放つあまりにもストレートな歌詞。ハイトーンなヴォーカルと優しくもあり力強くもあるギター。Per.伊藤弘の奏でる心地よいリズム。そのすべてが奇麗に重なり合い胸にまっすぐ突き刺さる。
心の中にきっと誰もが持っている不安や、痛み、そして悲しみ。簡単に表に出ることは無いその感情を、何も飾らずにありのまま歌にする。時には世の中に対する疑問をぶちまけたり、家族に対する思いを語ったり、誰もがあたりまえにしてしまった本当は大切なことを教えてくれたり。その言葉の一つ一つは、シンプルなアコースティックサウンドだからこそ説得力を増すのではないだろうか? この2人だからこそ生み出せる世界観なのかもしれない。

今作では櫻井幹也が、“本当の自分”というものを問いかけている。東日本大震災の後、見え始めた人々の異変。テレビから流れてくる曖昧な情報。理不尽な対応。誰もが胸を痛め、未来を悲観した。その中で、きっと誰もが色んなことを思い、考えただろう。私も色んなことを思ったし、自分に出来ることは無いか…なんて偉そうに考えたりもした。おそらく櫻井幹也も、再び人との繋がりや自分のこと、様々なことに考えを巡らせたのではないだろうか。
M-1「本音」ではわかりたいことは沢山あるのに、自分の未来すらもわからなくなってしまった、今の現状をストレートに歌っている。「自分にできることは何?」何も出来ないことに歯がゆさを感じながら、それでも「自分にできることはあるはず。だから諦めず生きていくんだ」と歌うM-2「ワンコイン」表題曲のM-3「バトンタッチ」は自分自身のこと。自分が思い描く未来と現実。人生について自問自答を繰り返しながら、それでも前に進んでいくという強いメッセージが込められた1曲。M-4「クローン」は「本当の自分なんて居るのか?」という疑問を、クローン人間に例えて歌っている。ユニークだがどこか切なさを感じる曲だ。
真実が見えなくなって、自分には何も出来ないともがき、それでも何かを探している。全ては考え方1つでいくらでも変えられる。大切なのは、自分がどうあるべきなのか。この作品ではそれを気づかせてくれる。

身の回りの些細な出来事から感じたことや、社会に対する疑問。自分自身と向き合って溢れ出た感情。色んなモノと向き合って、それを歌にしてきたカケラバンク。日々暮らしていく毎日の中で、私たちがつい忘れてしまっていること、誰もが見過ごしていく小さなカケラを、これからも彼らはそっと拾い集めて私たちに話してくれるだろう。

TEXT:HiGUMA

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