2013/10/6(日)@Wakayama Kataonami Beach (和歌浦片男波海水浴場)
【みかんステージ】 THE NEATBEATS / HUSKING BEE / GOOD4NOTHING / THE STARBEMS / DRAW INTO DISORDER / GARLICBOYS / SPREAD / F.I.B / LABRET / HEAD SPEAKER / Mr.EggPlant
【うめステージ】 SEX addict / TOMOVSKY / ガルウイングス / コザック前田(ガガガSP) / ジョン・B&ザ・ドーナッツ! / コロボックルズ / ROACH / 南壽 あさ子 / 大澤ミックミラン雄介 / six needle club
【ビーチステージ】 The Bugchatz / パニック☆ロケッツ / ザ・サイレンズ / THE SKIPPERS / BEAST / Wienners / kiki / FIVE-O grind / SEGARE / ランデブー
和歌山唯一のロックフェス“KISHU ROCK IMPACT2013”(以下紀州ロック)。直前まで台風の脅威に脅かされながらも(台風は大成するフェスの宿命なのだ!)、会場に着けばそんな心配がウソのように晴れ渡った青空が私達を迎えてくれた。
まずはみかんステージのMr.EggPlant。王道のハードコアで、ヘヴィな音をミドルテンポのメロディーに乗せて会場を盛り上げていく。続いてうめステージのsix needle club。まさに“ブルース meets ロックンロール”! 激しいサウンドとメロディックな旋律が相まって、心地良い音を生み出していた。再びみかんステージに戻れば、HEAD SPEAKERがエネルギッシュなライブを展開。一聴しただけで楽しくなるほどにキャッチーでポジティブな音楽だ。対して京都のLABRETが見せた叙情的な楽曲は、心の琴線に触れる切なさをはらんでいて、ハイスピードで繰り出される楽曲がグッと胸に刺さる。
「うめステージということで、梅色の服を着てきました」。そう言って始まったのはシンガーソングライターの南壽 あさ子。美しいピアノと透き通った歌声は、心に沁み入るような優しい“癒し”の要素を含んでいる。続いては辺り一帯を即座にモッシュピットへと変えるROACH。彼らの人柄と音楽が、多くのオーディエンスを惹き付けていく。最終的には大きなサークルが出来上がり、誰もが笑顔で肩を組むようなピースフルな空間生まれたのだった。
すさまじいテンションで魅せてくれたのは日本一クレイジーなポップバンド、Wienners。シャウトに近いVo./G.玉屋2060%と、可愛らしいVo./Key./sampler.MAXの声のバランスが絶妙で気持ち良い。そして、独特の雰囲気で場を盛り上げたジョン・B&ザ・ドーナッツ!。“所在ない”という歌詞のリフレインが耳に残る曲や、ひたすら猫のことを歌った曲など、何とも言えない不思議な感覚がクセになる。コザック前田(ガガガSP)のライブは、ファンとの距離感が良い。ひとりのお客さんをピックアップして「青春狂時代」の“リリック・ソング・フォー・ユー”のワンフレーズでマイクを向け、マンツーマンで歌い出したのだ。「“楽しんでいってほしい”じゃなくて“絶対楽しませてやる”という気持ちでやっている」と豪語した内容に違わない、最高に楽しい時間だった。
ライブの合間に、海の側で波の音を聞きながら和歌山ラーメンを啜る。会場付近でやっているフリーマーケットを覗きつつ辺りを散歩するだけでも面白い。少し休憩した後、GOOD4NOTHINGのステージで最初からフルスロットルで駆け抜ける。ダイバーが絶え間なく飛び交い、巻き起こるモッシュの嵐。チューニングもMC中にしゃべりながらサッと済ませるテンポの良い流れ。ラストは全員がハンズアップし会場に無数の花が咲いた。そしてTOMOVSKYは今日も自由奔放。「せっかく綺麗な芝生があるから、有効に使おう」と言って、ステージから飛び降り客席へと突っ込む! お客さんとハイタッチしたり、握手したり、寝転んだり…とにかくはちゃめちゃ。さすが世界一おちゃめで世界一素敵な47歳のライブである。
イベントもいよいよ終盤にさしかかり、歴戦の雄であるHUSKING BEEが登場。エアジャム世代はもちろん、10〜20代の若い世代までその存在が知られ愛されていることからも、彼らがどれほどすばらしいバンドなのか伺える。説得力のある歌声と心に突き刺さるメロディーからは、幾年も音楽と向き合い、表現してきた人間だからこそ出せるものを感じた。
トリを飾るのはもちろんこのバンド! 運営に携わっている部分もあるほど、このイベントと切っても切り離せない関係である紀州ロックの看板的存在、THE NEATBEATSの登場だ! とにかくダンサブルな彼らのライブ。誰もが身を乗り出して「自分が主役!」と言わんばかりに暴れ回る! 3コード8ビート、シンプルだからこそまっすぐな熱いロックンロールが、星空の下に鳴り響いた。
ライブで騒いで、疲れたら芝生で休んで、暑くなったら近くの海で涼んで、気晴らしに散歩をしつつ地元の美味しい料理を食べて、復活したらまたモッシュピットに飛び込んで…そんな夢のようなロケーションのもと、和歌山に集ったミュージックラバーたちがおおいに盛り上がった。
豊かな自然の中で、のびのびと音楽や食べ物を楽しめる紀州ロックは、他のフェスにはない魅力がたっぷりと詰まっている。イベント中、お客さんはもちろん、出演者も楽しそうに会場を廻っている姿がよく見かけられたのも、そんな紀州ロックの良さが現れている証拠だろう。そして他ならぬ出演者が楽しんでいるからこそ、ライブも(もちろんいつも素晴らしいが)いつにも増して楽しく、素晴らしく感じたのだ。
最高のロケーションで、最高なアーティストと出会える紀州ロック。あなたもぜひ、この良さを体感してみてはいかがだろうか?
TEXT:森下恭子