音楽メディア・フリーマガジン

高橋瞳

コラボレーションシリーズ完結! カラフルな楽曲の中で彼女はその輝きを増した

 2009年に発表した10thシングル『ウォーアイニー』をBEAT CRUSADERSと共作して以降、いずれも強烈に個性的なアーティストたちとコラボレーションを重ねてきた高橋 瞳。

ヒダカトオル、ROLLY、Koji Nakamura(iLL/ex.SUPERCAR)、H ZETT Mといった既発シングルで共作してきたアーティストに加え、新作3rdアルバム『PICORINPIN』ではCharaの参加も実現した。

カラフルな楽曲と交わることで、彼女の声が持つ可能性と新たな側面も開花している今作。“高橋 瞳”という1人のアーティストとして芽生えた自我とここで得た自信を胸に、彼女は大きな一歩を踏み出していく。

Interview

●今作『PICORINPIN』の出発点になったのは、コラボレーションシリーズの第1弾シングル『ウォーアイニー』(2009年)だったんでしょうか?

高橋:『ウォーアイニー』を作る前に、BEAT CRUSADERSの『Oh my ZEPP/PRETTY IN PINK FLAMINGO』(2009年)というDVDに出させて頂いたんです。撮影終了後に初めてメンバーの皆さんとゆっくりお喋りをしたら、1人ずつ自分の悩みを話してくれて…(笑)。

●初対面でいきなりですか(笑)。

高橋:以前から私が色々と悩んでいる話をVo./G.ヒダカ(トオル)さんに相談していたので、汲み取ってくれたんだと思います。そこで"キャリアがある方たちでも悩みながら音楽をやっているんだ"という姿勢にちょっと感動してしまって。当時は"20歳になったら音楽を辞めよう"と思っていたんですけど、そこから"もしかしたら私にも色んなことができるのかな"っていう気持ちになれました。

●そこで色んなアーティストとコラボレーションしていくアイデアも生まれた?

高橋:『ウォーアイニー』の制作中に、そこがより形になって見えてきたんです。"自分の声をどうやったら活かせるのか?"というところから、今までやってみたくてもできなかったことを試させて欲しいとスタッフに相談して。そこから今回の企画が始まりました。

●色んなタイプの楽曲を歌うことで、自分の声を活かす道を探したというか。

高橋:私は"高橋 瞳"というプロジェクトに関わっている一員として、自分を見ているんです。そういう視点で見ると、1人のボーカリストとしていつまでも色んな人たちと作業できないだろうし、いずれは自分で作った基盤を元にやっていかなきゃいけない。そこへのプロセスとして今回のコラボレーション企画を始めて、皆さんと一緒に作ったものを1枚のアルバムにまとめるという最終目標を決めましたね。

●アルバム全体のイメージも見えていたんですか?

高橋:私がスタッフに当時送ったメールを最近見返してみたら、"こういう人たちと一緒にやりたい"というアーティスト名のリストがあって。その候補が、実際に参加して頂いた方たちと近かったんですよ。時間が経って忘れてしまっていたけど、20歳の時に自分はちゃんと"こういうアルバムが作りたい"っていうイメージが見えていたんだなと思いましたね。

●M-4「Le Theatre du Grand-Guignol」は、今作中でもちょっと異色な感じがします。

高橋:本当は「鏡の中のフェアリーテール」(『恋するピエロッティ』収録、2010年)みたいに、コーラスを何重にも重ねたQUEENっぽい曲にしたかったんです(笑)。でもちょうどその時に、ROLLYさんに教えて頂いたシャンソンにハマっていて。その話をROLLYさんにしたら"じゃあ、シャンソンをやろうよ"ということになって、この曲を頂きました。

●雰囲気的には何かにつながる"序章"っぽい曲なのかなと思ったんですが。

高橋:そうなんです! 今回はできなかったんですけど、"いつか再録して、これを1曲目に置いたストーリー仕立てのアルバムを絶対に作ってやる"っていう夢にはつながっていて。"いつかこういうこともやるかも?"と匂わせる意味で、序章にはなっていますね。この曲はROLLYさん自身もすごく気に入っていて、私のレコーディングが終わった後に自分で歌ったバージョンを録っていました(笑)。

●アルバムの中でどこに入れるか難しい曲ですよね。

高橋:今作を作る上で最初はM-1「Fire Ball」で最後はM-10「お天気雨」、真ん中にM-5「恋するピエロッティ」を置こうとは決めていたんです。そこで、同じくROLLYさんが作った「恋するピエロッティ」の前へ置くことになりました。

●バラエティ豊かな曲調なので、曲順を考えるのも難しかったんじゃないですか?

高橋:すごく難しかったです。混ざらない人たちばかりだからコンピレーション盤みたいだし、かといって同じ人の曲を続けても面白くない。Charaさん作曲の「Fire Ball」からナカコーさん(Koji Nakamura/iLL)のM-2「MUSIC」への流れがドライブミュージックっぽくて、私はすごく好きで。あと、H ZETT Mさんとヒダカさんが作るメロディに近い匂いを感じていたので、お2人の曲は後半にまとめました。最初はちょっと悩んだけど、曲の並びは意外とスムーズに決まったかな。

●「Fire Ball」を1曲目に決めていた理由とは?

高橋:Charaさんから頂いたデモを聴いた瞬間に"これだ!"と決めていました。

●しかもアレンジは高橋さんが大ファンの田渕ひさ子さんだし、すごく豪華ですよね。

高橋:そうなんですよ! 私は元々ギターソロがあんまりピンとこないんですけど、ROLLYさんと田渕さんのギターソロはすごく好きなんです。いつか一緒にお仕事をしたいギタリストではあったんですけど、「Fire Ball」のプリプロをしている時にCharaさんから「toddleみたいな感じがいいんじゃない?」っていう意見が出て。私から何か言ったわけじゃないのに、Charaさんが呼んで下さいました。

●運良く夢が実現したと。

高橋:しかもドラムが小松正宏さんで、ベースは中尾憲太郎さんなのでbloodthirsty butchersとナンバーガールっていう私の大好きな2バンドの方ばかりで"たまらんばい"っていう感じですよ(笑)。

●(笑)。「walkin'」はCharaさんとの共作ですが。

高橋:Charaさんとは最初のご挨拶としてお互いのデモを交換したんですけど、私はまさか自分の曲を使って頂くつもりでお渡ししたわけじゃなかったんです。でもCharaさんがこの曲を気に入って「瞳ちゃんの曲もやろうよ」と言って下さったので、せっかくだから入れてみることにしました。

●今回のコラボレーション企画ではCharaさんが唯一の女性ですが、作業はどんな感じでしたか?

高橋:音楽の捉え方から、他のアーティストとは全然違ったんです。男性陣の中にも感覚的な方はいましたけど、Charaさんは特に感覚的で。歌詞を書く時も技術的なところより"どっちがかわいい?"っていう基準で選んだりするし、女の子がキュンとするポイントをわかっている方なので一緒にいてすごく勉強になりました。歌い方でも私は専門的なことがわからない分、"女神っぽい感じで"とかニュアンスで伝えてもらえるほうが逆にわかりやすくて面白かったですね。

●Charaさんらしさを上手く取り入れられた。

高橋:小松さんや中尾さんが鳴らすゴリっとしたサウンドにかわいいメロディが乗ることで、Charaさんっぽいんだけどちょっと違う部分もある新しい感じが出せたんじゃないかなと思います。この曲の制作現場で"女の子と一緒にやるのって楽しい!"と思ったので、ギャルバンがやりたくなりました(笑)。

●今回の企画は、誰かと一緒に作る楽しさを知るキッカケにもなったんじゃないですか?

高橋:それが一番大きいですよね。今作では参加して頂いた皆さんが1曲1曲を作るにあたって、本当に愛情を持って取り組んで下さって。歌詞やボーカルで私が悩んだ時も相談に乗ってくれたりして、そうやってたくさん頂いた愛情もパッケージできた作品かなと思います。他にもROLLYさんをキッカケに昔の歌謡曲を知ったりして、今作では出せなかったけれども私の中で広がっている部分はたくさんあるんです。今後の自分が歌うものという部分で、本当に間口が広がった気がしますね。

●自分の可能性が見えたし、広がってきた。

高橋:振り返ってみたら、この3年間はすごく濃くて。さっきも言ったように今は"高橋 瞳"というプロジェクトの一員として、自分を客観的に見れているんです。そんなことは3年前だったらできなかっただろうけど、色んな方と一緒にやらせて頂いたことでやっと"高橋 瞳という子が何をしたらいいのか?"が見えてきた。その中には自我もちょっとあるし、今後の自分が作りたい作品のイメージをより明確にさせてくれたのが今作だと思います。だから今は早く次の作品が作りたいですね。

●歌詞や曲も書くようになって、自信も付いたのでは?

高橋:元々は他に良い曲や歌詞を書く人がいるんだから、私はそれを歌うだけでいいと思っていたんです。でも色んな人と一緒にやることで可能性もたくさん見えたし、自分が作るものにもっと自信を持っていいんだと思えるようにもなった。"高橋 瞳は自分の言葉とメロディでも何か言えるんじゃないか"ということが見えただけでも、今作はすごく大きな収穫でしたね。

●20歳で辞めようと思っていた時は、"自分じゃなくてもいいんじゃないか?"と思っていたわけですからね。

高橋:それは今でも思うんですけどね(笑)。元々、私は自分の感覚が普通すぎて嫌だなと思っていたんです。今年は東日本大震災や色んなことがあったので、音楽に対する価値観がすごく変わってきて。誰かに言われても震災についての歌を作ろうとは思えなかったし、そこで音楽をやる必要性が見出せなかった。でも宮城県の実家へ帰った時にお祖父ちゃんやお祖母ちゃんは一緒に話すだけでも喜んでくれるし、私が歌えばもちろん喜んでくれる。ただそれだけでいいと思ったんですよ。

●純粋に自分の歌を聴いて喜んでくれる人がいることを実感できた。

高橋:"誰かのために何かをしよう"じゃなくて、私がしたいことをやって誰かが喜んでくれるというのが一番健康的なあり方だと思うから。"やりたいことをやったらいいんだ"と思ったら、普通の感覚でいいと思えるようになったんですよ。"自分じゃなくてもいいじゃん"と思う部分は常にあるけど、自分のしたいことをやればいいんだと気付けただけでも、私はだいぶネガティブを卒業できたかなと思っています(笑)。

●(笑)。そういう心境だから、約3年ぶりとなる10/20のワンマンライブもより楽しみなんじゃないですか?

高橋:今作の収録曲を中心にしたライブにする予定ですけど、以前の曲もやりたいなと思っています。ライブ用にアレンジしている楽曲もあるので、ライブならではの聴き方ができるんじゃないかな。面白い日になると思うので、ぜひ観に来て頂きたいですね。

Interview:IMAI

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj