前日に通過した台風の影響で当日は晴天だったにも関わらず中止となった幻の2007年、会場を埋め尽くすライターや携帯の灯り/目に見えない紙吹雪が舞った「CHERRY BLOSSOM」など数々の奇跡が生まれた2008年、2年目のジンクスをものともせずにロックシーン夏の定番へと化した2009年、“京都大作戦は絶対に晴れる”という伝説をいとも簡単に吹き飛ばした土砂降りの雨の中で2万人が笑った2010年。数々の記憶と思い出が詰まった京都の地で、今年もまた“京都大作戦”が開催されました。炎天下の中、全国から京都に集まった2万人がロックファンシップにのっとり、朝から晩まで正々堂々と音楽を楽しんだ2日間。今年もまた想像を超える感動の瞬間がいっぱいありました。
2011年7月9日(晴れ)
ロックシーン夏の風物詩、この2日間を境に色んな人から「黒い! すごく黒いわ!」と言われる僕らの夏フェス“京都大作戦”。晴天の空の下、太陽が丘に降り立った僕を襲ったのは広い会場を包む熱気と興奮。開演前からたくさんのお客さんが詰めかけ、額から頬に汗がつたって落ちる。これこれ、この感じ。“京都大作戦”に帰ってきたのだ。
今年もMOBSTYLES・田原氏の挨拶から“京都大作戦”が始まった。ステージの上から「北海道から来た人ー?」と田原氏が観客たちに問いかけていく。印象的だったのは田原氏の最後の質問、「東北から来た人ー?」という問いに対して元気にあがったたくさんの手。その光景を見て震える胸を押さえているウチに、いよいよ開幕のときがきた。
3年前のトップバッターとして源氏ノ舞台(メインステージ)で熱いライブを繰り広げたROTTENGRAFFTYが今年もトップバッターとして登場。まるで史上最高の一番打者として恐れられた真弓(阪神タイガース)のように、2日間を象徴する凄まじいライブを繰り広げてきた過去のトップバッターたち(ROTTENGRAFFTY、Northern19、locofrank)。そんな重要な役割を今年もまたROTTENGRAFFTYが担うというのが本当に嬉しかった。
ROTTENGRAFFTYは最高のライブで魅せてくれた。個人的にびっくりした&テンションが上がったのは、野外で披露された「零戦SOUNDSYSTEM」。曲調や雰囲気的にまさかこの場で聴けるとは思っていなかった意表をつく選曲に血が沸騰したのは、決して朝からしこたま飲んだビールのせいだけではなかったはず。
そして最後を飾ったのは「マンダーラ」。全力で駆け抜けていくステージの5人と、まだ始まったばかりなのに後のことを考えずに暴れまくるオーディエンス。今年もまったく想像が付かないほどものすごい2日間になるであろうことは、ROTTENGRAFFTYのライブでわかってしまった。
突き刺さってくるストイックな歌と激しくエッジィなサウンドで、硬派なステージを終始貫いたのはTHE BACK HORN。「コバルトブルー」でスタートした彼らのライブは、まさに“THE BACK HORNここにあり!”と高らかに宣言しているようだった。
とにかく驚いたのは、野外フェスというシチュエーションでありながら、一切ブレずに己の表現を貫き通したその姿勢。更に、だからといって誰も寄せ付けない緊張感を放っているわけではなく、観る者を無意識的に興奮の渦へと巻き込んでいく抜群の一体感。ロックという音楽の本質を体現するような彼らのステージは、とにかく圧倒的だった。そして会場を埋め尽くした観客は、それぞれが思い思いの方法で感情をスパークさせている。笑っている者もいれば、まるで泣いているかのように顔をくしゃくしゃにゆがめている者もいる。輪になって暴れている者もいれば、じっと聴き入っている者や、音に身を任せて飛び跳ねている者もいる。それぞれが素を出すことにまったく躊躇することなく、THE BACK HORNの音に共鳴する。これがライブだし、これが“京都大作戦”だ。
おそらくこの日の最高気温を記録したであろうこの時間帯、フラワーカンパニーズが登場。「恋をしましょう」でテンション高くスタートした幕開け、広いステージで暴れまくって吠えまくるVo.鈴木圭介。結成22年を迎えてますます血気盛んな彼らは、野外フェスのようなお祭り騒ぎが大の得意(もちろん胸をグッと鷲掴みにするような人間くさいライブも大の得意なので要するに無敵)。観る者を惹き付けるライブはオーディエンスをノリノリにさせる。
お祭り騒ぎから一転して、中盤で鳴らされた「元少年の歌」~「深夜高速」の流れは大きな山場。シンプルなサウンドに乗って届けられた言葉が次から次へと身体に入っていく。たくさんの観客が泣きそうになりながら「生きててよかった!」と一緒に歌う。
そしてフラカン節が炸裂した「真冬の盆踊り」。10-FEETのTAKUMAも巻き込んで真夏の昼間に繰り広げられた盆踊りで開場はもうトランス状態。脳内をループする魅惑のビートに酔いしれる。
今年が2回目の出演となったACIDMAN。彼らも自分たちの個性がわかっていたかのような爽快なステージだった。ハンドクラップとともに「最後の国」で幕を開け、“音”で魅せるロックが満載で、しかも懐が広くスケール感のあるステージング。緩急自在のセットリストは観客を次から次へと巻き込んでいき、曲が始まってイントロのフレーズが流れるたびに「おおおおおぉー!」と興奮の声が上がる求心力は、シーンに於ける彼らの存在の大きさを物語っていた。
「River」「赤橙」で2万人を燃えさせた後、Vo./G.オオキが「夏にふさわしくない星の曲をやります」と言って始まった「ALMA」。オオキはそう言ったが、真っ青な空の下、太陽に照らされながら味わう同曲もまた味わい深い。深遠でどこまでも広がっていく夜空を描き出し、観客を見惚れさせる。
そして最後を飾ったのは「ある証明」。オオキが吠え、ロックの膨大なエネルギーを見せつける。ステージの3人が終始放ち続けた揺るぎない力強さは観る者を刺激し、朝から暴れまくっていた観客たちも疲れを忘れて吠えた。
ライブが始まる前から客席エリアは異様な興奮状態。今年復活するあの“AIR JAM”の伝説の記憶を胸に刻んでいた者もそうでない者も、難波章浩がステージで音を鳴らした瞬間から意識を吹っ飛ばして暴れまくる。最初からモッシュピットとダイヴの嵐。
主催者である10-FEETの世代にとって、そもそも難波は最もリアルな憧れの存在。そんな彼が“京都大作戦”のステージで鳴らした「STAY GOLD」は、多くの観客と出演者の胸に、忘れられない輝かしい記憶として刻まれたに違いない。ダイバーの数はもう数えきれない。客席エリアは前から後ろまで大興奮のオーディエンスで溢れかえっている。全員が腕を振り上げ、必死に顔をゆがめ、喉を震わせて歌う。一瞬一瞬がスローモーションのようにゆっくりと流れているような不思議な錯覚に会場全体が包まれた。
彼自身の想いを代弁するかのように「TURNING BACK」で締めくくられたステージ。難波章浩を中心に、2万人が想いをひとつにした瞬間だった。
“京都大作戦”の女番長と言えばこの人、MINMI。シチュエーションにドハマリする「シャナナ☆」「サマータイム!!」で舞うタオルの数は尋常ではなく、その光景と、定番と化している「めっちゃヤバイ!!」のコールを体験するだけでも価値があるというもの。最初のサマーチューン2曲でレゲエ仕様に身体がほぐれたオーディエンスは全力ではしゃぎまくり、リズムに身を委ねている。
ロックバンドが続く“京都大作戦”、ハッキリ言ってしまえばMINMIはアウェイのはずだが、彼女のバイタリティはそんなことを微塵とも感じさせない。むしろそのアウェイ感を逆手に取るほどのパワフルさ。観客は我を忘れてその場を楽しんでいる。
そして中盤、「ロックとは何か教えてもらおう!」というMINMIの挑発にギターを持ったTAKUMAがステージに登場し、「Legend~Are yu ready feat.10-FEET~」。ジャンルを超えたコラボが次から次へと楽しめるのも“京都大作戦”の魅力。ライブハウスではなかなか観ることができない。
「ロックンロール!!」というコールが宇治の空に鳴り響く。グラウンドエリアにいる観客だけではなく、後方土手に設けられたシートエリアに座っている観客も手をあげてステージから放たれる熱を受け止める。みんなが声を枯らし、サンボマスターがロックンロールを鳴らす。「みんなで宇宙一のロックをやろうじゃありませんか!」とVo./G.山口が叫ぶ。
福島出身の山口はあの日以来、思うところがあったに違いない。この日も自分ができることを120%振り絞ったに違いない。ときには泣くように歌い、ときには心の底から叫ぶ。それは涙が出るほど素晴らしい生き様だった。生命力に溢れたステージだった。
全員がサンボマスターと一緒に歌い、サンボマスターと一緒に叫んでいた。山口は「今日家に帰ったら自分のこと自慢してくれよな。これだけいいライブをやった自分のこと自慢してくれよな」と言った。「みんな、音楽を好きでいてくれてありがとう」と言った。本当にその言葉通り、心からいいライブだった。
空が暗くなり、いよいよ初日最後のステージにあのSEが鳴り響く。ものすごい数の人が殺到し、源氏ノ舞台の客席エリアは前から後ろまで異様な密度。“京都大作戦”だけではなく、今まで何度も何度も経験してきたハズなのに、10-FEETのライブが始まる前のものすごい興奮は何とも言えない瞬間だ。
広大な客席エリアの至る所で狂ったように観客が暴れまくった「hammer ska」。数えきれないほどのサークルモッシュとダイバーが舞った「1sec.」。周り全員が飛び跳ねてステージがまったく観えなくなった「super stomper」。ステージと会場全体のテンションが一瞬たりとも途切れない。
最近のライブ定番“激”キラーチューンで疲れ知らずのオーディエンスをこれでもかと暴れさせた後、難波がギターを持ってステージに登場。まさかのコラボ「New Life」と「STAY GOLD」に会場は激アガり。難波が「10-STANDARD!」と何度も叫びながら客を煽り、人がおもしろいように宙を舞っては落ちていく。
「2%」では若旦那(湘南乃風)との定番コラボもあり、本当に贅沢なステージ。今日1日大量の汗を流し、源氏ノ舞台と牛若ノ舞台(サブステージ)を何度も往復してどれだけの距離を歩いたかわからないが、疲労困憊の身体に10-FEETの歌はポカリスエット(京都大作戦協賛)のように染み込んでいく。最後は何度聴いてもいつもブルブルと心を震えさせる「VIBES BY VIBES」で締め。他の出演者もステージに出てきて、ステージの上も下も数えきれないほどの笑顔が照明に浮かび上がったまま終幕。
2日目。昨日も暑かったが、今日の暑さはちょっと尋常ではない。朝から灼熱の日射しが降り注ぐ。昨日の疲労が残っていないわけではないが、今日1日どんなライブが繰り広げられるのかを考えるとたちまち心が踊る。それは観客たちも同じ。太陽が丘に集まった愛すべき音楽バカたちは、既に汗まみれだけどみんなが本当に楽しそうな表情を見せる。
2日目もMOBSTYLES・田原氏の挨拶から“京都大作戦”がスタート。「北海道から来た人ー?」と田原氏が観客に問いかけていくという流れは昨日と同じなのに、なんだろう、田原氏の「東北から来た人ー?」という問いに対してたくさんの手があがった瞬間、また涙があふれそうになる。みんな来れてよかったなぁと思うと同時に、来たくても来れなかった人もたくさんいるだろうなと複雑な想いに駆られる。今日も暑い1日になりそうだ。
気温が30℃を超える中、テンション高めに始まったSTOMPIN'BIRD。観客はサークルモッシュを何度も何度も繰り返す。いつもライブハウスで観て来たSTOMPIN'BIRDのガチンコなステージは胸を震わせるものがある。Ba./Vo.YASUの「京都大作戦! そんなもんじゃねーだろ!」という煽りに客席からは地響きのような返事が返される。35分間という短い持ち時間の中で、STOMPIN'BIRDは数えきれないほどのライブチューンを立て続けに重ねていく。会場の熱はどんどん上がっていく。トップを飾るバンドのライブは本当に凄まじい。彼らが今まで培って来たものをすべて賭け、すべて捨て去ったかのような腹をくくった感のある姿が胸を打つ。MCで「バイト休んで来ました、STOMPIN'BIRDです」とYASUが言ったのもしかり。そのMCは爆笑を誘っていたが、「俺らは本気でやってるんだからお前らも本気で遊べ」と言われたようにも感じる。
なんとこの短い時間の中でSTOMPIN'BIRDが演奏したのは13曲! 最高のテンションで2日目が幕を開けた。
「トイース!」と登場したPOLYSICS。バイザーを付けた3人が音を合わせて「Heavy POLYSIKS」を始めた瞬間、広い会場で一気にPOLYSICS中毒者が続出する。
彼らは現在ツアーの真っ最中で、おそらくバンドの状態も最高に近いのだろう。G./Vo./Pro./Syn.ハヤシが超絶なプレイでギャンギャンとギターに悲鳴を上げさせたかと思えば、「トイース!」コールで会場をひとつにし、3人は予測不可能かつダイナミックかつタイトかつギリギリのアンサンブルで魅せる。数えきれないほどの拳が突き上げられ、客席エリアの色が変わる。
ライブ後半になってもその熱は一切冷めることがないというか、むしろうなぎ上りの天井知らず。ハヤシがバイザーを取り、ヤバい目つきで頭を振り続けた「シーラカンス イズ アンドロイド」から巨大な“ダバダバコール”を作り出した最後の「Let's ダバダバ」まで3人は全力で走りきった。ものすごい一体感を作り出したクレイジーなステージ。
皆勤賞、もはや彼らを抜きにして“京都大作戦”は語れない。「Right Now」から始まったdustboxのステージは今まで以上にアツい。最初のピークは「Try My Luck」。耳に残るメロディと疾走感のある激しいサウンドで居ても立っても居られなくなったダイバーたちが打ち上がっては人の中に消えていく。dustboxのライブの楽しみ方を隅から隅まで心得ているオーディエンスは、大きな大きなサークルを作ってはモッシュで暴れ、腕を突き上げて空に向かってVo./G.SUGAと一緒に歌う。「dustbox最高!」と口々にする観客。ステージには心から楽しそうにライブを味わう3人。見慣れた光景は、得も言われぬ幸福感に包まれている。
タメにタメて始まった「Hurdle Race」では前方の客席エリアはぐちゃぐちゃのカオス状態。砂埃というか土煙が舞い上がり、おそらくこの日いちばん気温が高い時間帯にいちばん熱い盛り上がり。SUGAが「全員でハンパねぇことしようぜ!」と叫んだ通り、全員が半端ない盛り上がりを見せた。
ロック感溢れるライブが続いた流れは一変、RHYMESTARがステージへと登場。プリミティブなビートが効いたトラックに乗せて、宇多丸とMummy-Dが次から次へとリリックを放り込み、オーディエンスの鼓動を一気に加速させる。抜群の支配力を見せた貫禄のステージ。客席エリアの最前から後方シートエリアの土手の上まで巻き込んだ「付和Ride On」の爆発的な盛り上がりに舌を巻く。
彼らは2MC+1DJのヒップホップユニットだが、「ライムスターイズインザハウス」の即興性が高いバンドのようなアンサンブルは観客の興奮を更に掻き立てる。DJ JINのプレイが光る。身体の芯をビシビシと揺さぶられるパフォーマンスに陶酔する。
そして最後は夏にぴったりのキラーチューン「サマー・アンセム」。緊張感のあるトラックとリリックの雨あられの後、宇治の晴れ渡る空に広がっていくサビのメロディ。たくさんのタオルが舞った。
dustboxと同じく、もはや彼らを抜きにして“京都大作戦”は語れない感のあるDragon Ash。現在病気療養中のBa.IKÜZÖNE、この日ステージに立った代打ベーシストはRIZEのKenKen。彼も過去の“京都大作戦”で素晴らしいステージを見せてきただけに、このコラボだけでもテンションが上がる。
Dragon Ash夏の定番曲「La bamba」が鳴り始めた途端に会場は怒濤の盛り上がり。Dragon Ashならでは、聴く者を選ばないスケールのデカいミクスチャーロックはたくさんの人を巻き込みながら鳴り響く。KenKenが手にしているのはIKÜZÖNEの愛器。雰囲気たっぷりの幕開けからどんどん疾走していく「Dreamin'」、このメロディを聴けば否が応にも血が沸騰する「AMBITIOUS」、10-FEETのTAKUMAがギターで参加し、押し寄せる怒濤のリズムと歌で会場を狂喜乱舞させた「Fantasista」。全員で叫び、暴れ、魂を震わせた。
HOME GROWNをバックにPUSHIMが登場。抜群のグルーヴに乗ってレゲエクイーンの力強いヴォーカルが森にこだまする。イントロが鳴り始めて客席エリアから「ウワーッ!」と手があがる。その熱気を優しく包み込むように、PUSHINが抜群の歌唱力でメッセージフルな「Do the Reggae」を歌い上げ、一転して情熱的なヴォーカルで魅せる「jamaica jamaica」、ソウルフルな力強さを感じさせる「Love this Music」と、彼女の歌は目まぐるしく様々な表情をみせる。
素晴らしい歌。果たして、こんなにも太く強くエモーショナルな歌を歌う日本人女性シンガーが他にいるだろうか? 正直なところ、怒濤の終幕に向けたこの後の流れに備えてPUSHINの時間はまったりするつもりだったが、鳥肌が立つほどの歌唱力とたくさんのメッセージが込められた歌、その奥に潜む彼女の想いの強さに衝撃を受けた。日射しがやや傾きかけた時間帯、丘に吹く風とPUSHINの声を全身に浴びながらすごした時間は至福だった。
会場が薄暗くなってきたところでいよいよマキシマム ザ ホルモンが登場。客席エリアを埋め尽くす人、人、人。35分間が一瞬に感じられるほどの地獄絵図が繰り広げられた。
全員が千切れるほど首を振りたくった「「F」」。筆者の近くには、なぜか頭から黒いストッキングをかぶってヘドバンしている腹ペコ亡者もいる。興奮に次ぐ興奮の2日間で、みんなちょっと頭がおかしくなっているのだろう(笑)。
「maximum the hormone」で人間の根源的なエネルギーを感じさせ、重く太く鋭く傍若無人な「シミ」で2万人とともに歌い、「鬱くしき人々のうた」で泣かせる。そして特筆すべきは、上ちゃんの発言もあったMCで爆笑させまくった後の「my girl」。2万人の“ヴァギナ”コールは本当に幸せな瞬間だった。マキシマム ザ ホルモン! ありがとう!
残りは10-FEETのみ。月が浮かぶ夜の闇に包まれた太陽が丘の森、照明にぽっかりと浮かび上がった源氏ノ舞台に登場した3人。360度すべての方向が地響きのような歓声で埋め尽くされる。
「super stomper」の曲中にTAKUMAが「2011年7月10日、今日はいったいどんな終わりが待ってんのやろか?」と言った。その後のMCで「お前らやっぱりすげーわ。人の下敷きになっても踏まれてもお構いなしで笑ってる。俺はお前らに勝てへんと思ってるけど、このライブの中では一瞬くらいは勝ってやるからな」と言った。そしてまたその後のMCでも「昨日から出演者のライブはもうほんまにすごくて、昨日ライブしてても今してても、正直あのライブを超えられる気がしません。どんな状況でも必死で歌っている人、すごい顔してる。全然勝てる気がせえへんけど、一瞬でも勝ったるからな」と言った。その後、Dr.ハセガワやDragon AshのKjを交えて「RIVER feat. Kj (Dragon Ash)」で盛り上がり、会場は2日間で最高の興奮状態になっていた。TAKUMAはまた「くそー! 負けへんぞ!」と独り言のようにつぶやいた。
そしてこの2日間、いちばん鮮明に覚えているのはその後に演奏された「風」だった。
“太陽が昇るあの丘で、僕らは来年もまた会えますか…”とTAKUMAが弾き語りで歌い、「あの日から明日でもう4ヶ月。俺らはこんなとこじゃあまだ終われねぇ。未来を描いた景色をそこに見せてください!」と泣くように叫び、“僕は”という歌詞を“僕らは”に替えて歌った「風」は、10-FEETという人間くさくて不器用だけどどこまでも熱くて暑苦しいバンドが集約されていた。この1年間、日々の生活の中で心に貯め込み、この場所まで持って来た色んな想いがギュッと震えた瞬間だった。
今年も本当に素晴らしかった2日間。こんな機会を与えてくれた10-FEETと素晴らしい出演者たち、そして何より汗まみれで共に泣き共に笑った2万人に感謝します。また来年太陽が昇るあの丘で会いましょう。
text:Takeshi.Yamanaka