マルコシアス・バンプのアキマツネオ(Vo./G.)が中心となり、ワールドワイドに活動できる唯一無二のグラムロックバンドとして2008年夏に結成された、Rama Amoeba(ラーマ・アメーバ)。
翌2009年には異例の2枚同時のアルバムリリースで、メジャーデビューを果たす。
シンプルながらも刺激的なロックンロールアルバムはライブパフォーマンスと共に国内外で評判を呼び、フランスでは“Marc Bolan meets New York Dolls”と評された。その後もコンスタントな活動を続けてきた彼らが、ニューアルバム『Red Or Blue』を4/4にリリースする。
その発売を記念してJUNGLE☆LIFE誌上では、アキマ氏によるハンドメイドアンプを愛用しているというOKAMOTO'Sのオカモトコウキ(G.)をスペシャルゲストに迎えた対談が実現!
その出会いからバンドや音に対する考え方まで語ってもらう中で、世代やジャンルを超えた2人のアーティストが共鳴する瞬間を見た。
●コウキくん(オカモトコウキ)は、アキマさん(アキマツネオ)が作られた"AKIMA & NEOS"のアンプを使っているそうですが。
コウキ:一番最初にアキマさんのアンプを使ったのは、高校生のときですね。OKAMOTO'Sのライブで新宿レッドクロスに出たんですけど、あそこのアンプはアキマさんが作ったものばかりなんですよ。そのときに初めて使ってみたら「これはすごいな」と思って、「このアンプを作っているのはどういう人なんだろう?」ということでレッドクロスの方に紹介してもらいました。そこからアキマさんは、僕らのライブを観に来て下さったりもするようになって。
アキマ:そういうところから始まって、仲良くしているバンドはすごく多いんですよ。レコーディングにも立ち合ったりもしたよね。
●高校生の頃から、アキマさんのアンプを使っていたんですね。
コウキ:最初はアンプのヘッド的なものだけを買って、それをずっと使わせてもらっていて。一昨年、ようやく「アンプ本体もお願いします」ということで作って頂きました。
アキマ:ちょうどOKAMOTO'Sがメジャーデビューする頃だったかな。元々、彼らは高校生の頃から感覚が鋭い感じで。僕らが聴いているものよりもさらに古い音楽を聴いていたりするから、ジェネレーションギャップは全く感じなかったですね。逆に俺のほうが「そんなに古いものはわからないんだけど」っていう変な感じ(笑)。
●年齢的には親子くらい離れているのに(笑)。
アキマ:変な話だよね(笑)。自分だったらありえないなっていう感じですよ。自分の親の友達と遊んでいるような話だから。演奏はちゃんとしているのに、休憩時間とかはお菓子を食べながらハシャいでいたりするところは「やっぱり高校生だな」と思ったけどね。夜遅くなると眠くなってきちゃうし、かわいいなって(笑)。
コウキ:(笑)。僕らは聴いている音楽も昔のものが多かったし、そういうものに憧れて「自分たちもそういうふうにしたい」と考えていたんです。そこでアキマさんのアンプに出会えたから、憧れているところにアプローチできたのかなと思います。
アキマ:周りの環境が良かったんだよね。俺以外にも相談できる人がいて。
コウキ:相談できる人もいたし、本当に環境が良かったんだと思います。
●コウキくんは目指す音のイメージみたいなものが当時からあった?
コウキ:上手く説明できないんですけど、とにかく普通のライブハウスに置いてあるMarshallやJazz Chorusの感じとは全然違って。ギター1本で、周りと合わせたときにも埋もれないようにコード感を出すにはどうすればいいんだろうと考えていたんです。といっても高校生なのでよくわからなかったんですけど、アキマさんのアンプを弾いたときに探していた音にピッタリくる感覚があったんですよね。
アキマ:マルチエフェクターみたいな色んな機能が入っていて、安くてお手軽なものを多用している感じの"高校生の音"っていうものがあって。でもOKAMOTO'Sがやろうとしている音は流行りのそういう機材を使って出せるものじゃないし、次元が違うんですよ。そういう方向に行かなかったから、彼らは良かったんじゃないかな。
●最初に観た時から他の高校生バンドとは違う感じがしたと。
アキマ:OKAMOTO'Sを観たときは衝撃でしたよ。話には聞いていたんだけど、初めて観たときに自分たちにはもうない若さによるロックのエネルギーが純粋に飛んでくるのを感じられてカッコ良かったですね。俺も初期のローリング・ストーンズとかは映像でしか見たことがないんだけど、「ローリング・ストーンズがデビューした頃はこんなムードを出していたのかな」と思った。普通の上手なバンドや有名なバンドを観るよりも、すごく衝撃的だったなぁ。
コウキ:それをアキマさんに直接言って頂いて、すごく嬉しかったのを覚えています。
●最高の褒め言葉ですよね。
コウキ:メチャクチャ嬉しかったです。
アキマ:俺もそういうライブが観られて嬉しかったよ。"こいつらは何をやってきたんだ!?"と思ったし、自分たちが高校生の頃と比べてみてもすごいなって。スタイルが確立しているというか。
●逆にコウキさんは元々、アキマさんの音楽を聴いたことはあったんですか?
コウキ:出会う前は知らなかったんですけど、知り合ってからマルコシアス・バンプをYouTubeで見て「アキマさん、カッコ良い!」と思いましたね。今回のRama Amoebaの新作『Red Or Blue』も頂いてから、メンバー全員で聴きました。
アキマ:そもそもマルコシアス・バンプの頃なんて、生まれていないじゃない(笑)。
コウキ:1990年生まれなんで(笑)。でも当時の音を今聴いても古びていないし、本当にカッコ良いなと思いました。映像を見ていると、目指しているものがわかるというか。「こういう音を出すためにこんなことをやっているんだ!」というのが伝わってきて、すごいなって。当時どういうふうに録っていたのか、アキマさんから経験談を聞いたりもしましたね。
●目指している音のイメージが近かったりもする?
コウキ:やっぱりギターの話をしていても「同じ感覚を持っているな」と感じる人とはすごく盛り上がるし、そういうのはジャンルも関係ないと思うんです。アキマさんとは目指す音や聴いてきた音楽が全く同じというわけではないんですけど、それでも聴いていて「すごいな」と思うことも多いし、勉強になることも多くて。そういう意味で、目指しているものは近いんじゃないかな。
アキマ:たとえばジャズとか俺がよく知らないジャンルの人と話をしても、ギターの音色の話だと仲良くなれるんですよ。求めるものは、どんなジャンルでも変わらないというか。ギターの種類まではジャンルによって違うんですけど、その楽器を良い感じに鳴らしてくれるアンプに求めるものはみんな同じですね。ただ歪み具合が少し違うくらいで、基本的なところは変わらない。
●アキマさんはその求める音を生み出すために、自分でアンプやエフェクターを作り始めたんでしょうか?
アキマ:メーカーの既製品でカッコ良い音が出せていればこんなことはしないだろうけど、どれもこれも俺には満足できるものがなかったから。だったら、自分で作った方がいいなって。日本人には優秀な技術者がたくさんいると思うんですよ。でも、ギターを弾けなかったり、"良い音"が自分ではわからなかったりすることが多い。設計者がそれをわかっていれば、もっとダイレクトに反映できるのになっていうところからでしたね。
コウキ:一般的に"良い音"とされているものじゃなくて、本当に音だけを聴いて"良い"かどうかを判断して、自分が理想とする音作りをした方がいいんですよ。その姿勢をアキマさんから教わって、俺らのバンド全体でも音を作っていく上で一番重要なことに今はなっています。
アキマ:たとえばラーメンで一番売れているものと言えばカップ麺だと思うんだけど、それが最高に美味しいかって言われると違うじゃない? 一度、手打ちの美味しいものを食べてしまうと、自分が思っていた"美味しさ"の基準が実は違っていたことがわかるというか。音もそれと同じだよね。
●コウキさんはある意味で、最高のものをバンドを初めて間もない頃に味わってしまったわけですが。
コウキ:ラッキーでしたね。ある意味、特殊だと思います。ずっと"何か違うんだけどなぁ"と考えながらやっていたところに、アキマさんのアンプと出会って。まだ機材にこだわり始める前だったから、逆にその後で色んな機材を使ってみて「これは目指している音と違うな」というものを知っていった感じです。
アキマ:結局、いくら自分がギターで表現してもお客さんに聴こえなかったら意味のないことなのに、お客さんに届かないアンプが多いんだよね。
コウキ:音のデカさとかじゃないんですよね。どんなにデカい音を出しても、届かないものは届かない。
アキマ:ちょっと大げさな言い方になっちゃうかもしれないけど、"エレキギターはもうやばいんじゃないか?"と思っていて。というのも、バンド形態の音楽は日本中にいっぱいあって、それは別に衰退しているわけじゃない。でもTVとかでエレキギターを弾いている姿形は見えても、カッコ良いと思う音は聴こえてこないんですよね。
●ギターヒーロー的な人も新たに登場しなくなっている気がします。
アキマ:それもあるよね。俺なんかは70年代の3大ギタリスト、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジのギターを聴いて、エレキギターを弾いてみたいという衝動に駆られたわけで。もっと前の世代の人は、ザ・ベンチャーズにすごい衝撃を受けて、ヤられちゃったんだと思うんですよ。でも最近はギターの音がカッコ良いと思ってギターを始める人って、あまりいないんじゃないかな。
コウキ:確かに音楽から衝撃を受ける人はいても、ギターに衝撃を受ける人というのはいないかもしれないですね。
アキマ:シンセサイザーみたいな音がイントロで引っ張ってそのまま曲に入るものが多いように感じるんだけど、俺が聴いていたものは曲の頭からギターの音がガツンときて。曲がどうこう以前に、そのギターにやられていたんですよ。
●リフ自体の持つパワーがあった。
アキマ:そうそう。カッコ良いリフを考えられるかどうかは個人の問題だから仕方ない部分だけど、それを表現する上でカッコ良い音が出るかというのがまずある。だから、カッコ良い音を出せるアンプが必要なんじゃないかと思うんです。そういう自分がわかっていることは、若い子たちにも教えてあげたいと思っていて。
コウキ:僕はアキマさんに作ってもらったアンプを使っているので、やっぱり相談もするんです。
アキマ:レコーディングをすると聞けば、俺も行くし。
コウキ:そうやってすぐ来てくれるところも優しいんですよね。
●レコーディング中にアドバイスすることもあるんですか?
アキマ:今はしっかりしたレコーディングをしているから特に何も言わないけど、高校生の頃は「レッドクロスに機材を入れて録ろう」とか言ったよね。
コウキ:ライブハウスのフロアにドラムや機材を置いて、簡単な敷居を立てて録音したことがあるんです。
アキマ:それも昔っぽいじゃないですか。そういう形で録るとどうなるのか、俺自身も知りたくてすごく興味があった。しかも彼らの音楽は1つのブースで、クリックに合わせて1人ずつ録っていくようなタイプではないから。当時そういうやり方で録っても上手くいかないことはわかっていたし、彼らの音楽は一発でガツンと録ったほうが良い感じになるだろうなって。
●一発録りのほうが勢いがより伝わるというか。
コウキ:あのときのレコーディングはすごく面白かったですね。それがインディーズ1stアルバム『Here are OKAMOTO'S』(2009年)なんですけど、今聴いてもカッコ良いと思えるので(あのやり方で)本当に良かったなと思っています。
アキマ:あれはカッコ良かったよねぇ。リリースするかどうかも、別に考えていなかったんだけど。
コウキ:本当に簡単な感じで、テイクもほぼ重ねず2日で全曲を録ったんです。"とりあえず録ってみよう"っていう狙っていない感じと、重ねるのはギターソロだけっていう一発録りのラフな感じが良くて。逆に今、またやってみたいですね。
●そういうやり方だったからこそ、そのときその瞬間にしか生まれ得ない音になった。
アキマ:今はProToolsとかを使って、間違いなんていくらでも直せてしまうからね。そういう正確なものが良い音楽なのかって言われると、全然別物の話で。昔のレコードで自分が好きなものでも「ここ間違ってるじゃん!」っていうのが確実に1ヶ所はあった。でもそんなことは関係ないんだよね。
コウキ:そもそもピッチが合っていなかったりもして(笑)。
アキマ:きっちりしていても、自分たちが全然楽しくないと意味ないからね。俺自身もずっとやってきた中で行き着いたのが、そういう感覚で。きっちりやっていた時期もあったけど、ある時期から"間違っていてもいいんじゃない?"と思うようになって。Rama Amoebaになってからはずっとそうだね。昔の人たちは一発でラフに録っている人も多かったし、そういうやり方の音楽が好きなんだから自分もそれでいいじゃないかと。間違っていても、良い感じならそれでOKだと思って。自分がちょうどそういう気持ちになっているときに彼らのレコーディングを見たから、余計にそういう部分で話が合うんでしょうね。
●『Here are OKAMOTO'S』のレコーディングはちょうど良いタイミングだったんですね。
アキマ:あれの「狙っていない感じが良かった」というのも、結局は"無欲の勝利"っていうものじゃないかな。一度レコーディングを経験すると、2回目からは"前回はこうだったから今回はこうしよう"とか色々考えてしまう。例えば歌録りでも、とりあえず歌ったファーストテイクはたいてい良い感じなんですよね。2回目は1回目で間違っていた箇所を意識しちゃうから、曲に対する想いよりも間違いを正す意識が大きくなっちゃって。3回目は曲を表現するよりも、さらに上手に歌おうと思ってしまうんですよ。4回目くらいになると、もう艶が取れてきて声質がダメになるし(笑)。
コウキ:すごくよくわかります!
●何十回もテイクを重ねた結果、最終的に1回目が一番良かったという話はよく聞きます。
アキマ:改めて最初のテイクを聴いてみると、「これが一番良いじゃん!」ってなるんです。ギターソロなんかは、特にそうでしょ?
コウキ:やればやるほど形が決まってきちゃうんですよね。イージーな方向に行っちゃうというか。
アキマ:ワイルドさがなくなるもんね。
コウキ:"良い感じ"になってくるんですよね。それはちょっと違う気がする。
アキマ:かといって最初から"デタラメでいいや"と思って臨んだらファーストテイクでもデタラメになっちゃうから、一応きちんと弾けることは目指しつつ…。同じことを延々と繰り返している感じかなぁ(笑)。
●そういうことを最初のレコーディングだと無意識的にできる。
コウキ:今の話とも通じると思うんですけど、今回アキマさんの新しいアルバムを聴かせてもらって、良い意味でのラフさというか初期衝動のような勢いがすごいと思ったんです。もちろん音は間違いなくて、それに加えてバンド全体の演奏で前へ前へという勢いがあった。アキマさんみたいにキャリアのある方でも、まだこんな初期衝動を感じるアルバムが作れるということがすごいなと思いましたね。
アキマ:そう言ってもらえると嬉しいな。Rama Amoebaを結成するときは、高校生の頃の気持ちでバンドがやりたかったんですよ。"こいつはこれだけギターが弾けるから"とかの理由では、メンバーを選びたくなかった。もちろん仲が良いに越したことはないけど、演奏力は二の次で組んでしまいましたね。
●バンドを始めた頃って演奏の上手い下手に関係なく、純粋に一緒に音を出すことが楽しいんですよね。
アキマ:俺はソロのアーティストをやりたいんじゃなくてバンドをやりたいので、良くも悪くもバンドサウンドにこだわっているんです。OKAMOTO'Sと俺たちは、年は離れていてもバンドに対する考え方は変わらない気がする。だから、こうやって話もできるんだと思うし。
コウキ:そうですね。新作は良い意味で、大人気ない感じにグッときました。
●高校生の頃のような、初期衝動的な勢いに溢れている。
アキマ:以前に出した2枚のアルバムなんてベースになるトラックを一発で録って、2日でアルバム2枚分を録り終えちゃったからね。あまり細かいことまで詰めないというか、曲はどんどんシンプルな作りになっていっていますよ。
コウキ:本当に勢いの出ている作品なので、僕らと同世代の人やもっと若い人にも聴いてもらいたいし、届くと思いますね。
●Rama AmoebaとOKAMOTO'Sが対バンしたら面白そうですね。
コウキ:今まではなかったので、ぜひ!
アキマ:やりたいね。それで、俺たちの方が大人気なかったら最高だよね(笑)。
一同:(笑)。
Interview:IMAI
Assistant:Hirase.M