耳掃除中の一堀り、一掻きごとに、生み出た成果を見ずに堀り続けることができる人は凄い。
私は一掘りごとに絶対見てしまう。その掘り掻きの手応えが、成果が気になって仕方がない。見ずには次の手を打てない。いや、そもそもアイドルは耳垢とか溜まらないんだけど。だから、今から書くことは読んだ後に綺麗さっぱり忘れてほしい。
まず、なぜこんなことを考えたのか。
私はホットヨガに通っていて、そこにはドライヤーや化粧水、綿棒などが用意されているパウダールームがあり、そのパウダールームで知らない女性が耳掃除をしているのを理由もなく横目で見ながら耳掃除をしていた時があった。アイドルである私は、耳掃除というか、虚無を掘っているだけだけど。
その女性は30秒ほど掘り、掻き続け、チラ見もせずに綿棒をゴミ箱に捨てた。一掘りごとに成果を確かめる私と、掘り進めて一瞥もせず綿棒をゴミ箱に捨てた知らない女性。格好良いと思った。「アーティストじゃん」って思った。
アーティストには、周囲の反応やこうなってほしいという願望とは別に、自らの感性を信じて自分の作りたいものを、評価や見返りの有無に関わらず生み出し続けるイメージがある。
一方大半のアイドルは、ファンの人たちが望むものを届けたい気持ちを持ち、周囲の反応に重きを置き、あらゆる反応に敏感で、自分が生み出したあらゆるものには何かしらの反応が欲しいと思っている。もちろん、アーティスト気質のアイドルも居るし、それに対して良い/悪いも、正しい/間違ってるもない。
私はアイドルだから、一掘りごとに反応(耳の中の成果物)を確認せざるを得ないのか。ちなみに、私の耳の中は乾燥していていつ掘っても掘り甲斐がない。それなのに一掘りするたびに反応を確認して、やっぱり何も無くて面白くないなと思う。それでもまた次に掘る時、健気に確かめる。
アイドル掘りとアーティスト掘り。私にはやっぱりアイドル掘りが合っているんじゃないかと思う。今までの一手がたとえ空振りだったとしても、いつの日か思いもよらないような大きな反応を得られると信じている。これからも一つ一つ丁寧に、自分のこの一手は届くべきところに届きうる一手なのか自問自答し、その反応を確かめ続けたい。
今までの話はあくまで、耳掃除の話。どうか、読んでしまった貴方がこれまでの話を綺麗さっぱり忘れてくれますように。