音楽メディア・フリーマガジン

~関東・東北地方音楽シーンの現状報告~ Vol.20

The Jikens

地震なんかにThe Jikensは負けず、生かされている喜びを音楽に変えて、これからも現状維持で楽しくやっていきたい

あの日以来、日本の深刻な問題は山積みです。あの日のThe Jikensのことや、東北のこれからのことを4人がそれぞれ執筆しましたのでお読みいただければ幸いです。The Jikensのせわしない毎日のビートはこれからも続いていきます。一緒に東北を盛上げましょう! よろしくお願いします。

■ヒロエ(Rythm G./Vo.)
この冬も仙台の街は光のページェントで彩られる。眩い光のトンネルに、人々は立ち止まり思いを馳せる。そして願う。今年のテーマは“Be Smile! 〜上を向いて歩こう〜”だという。そんな東北の“今”を象徴する活動がある。“東北ライブハウス大作戦”だ。甚大な被害を受けた沿岸部で、大船渡(岩手県)・宮古(岩手県)・石巻(宮城県)を拠点とした3つのライブハウスが立ち上がったのだ。HPやTwitterもあるのでチェックしてみてほしい。音楽の無力さを感じた人がいたのも確かだが、音楽の力で自らを奮い立たせ勇気づけていこうとする姿があることも事実だ。答えはこれから少しずつだ。上を向いて歩こうよ!

■コーチャン(Lead G./Vo.)
The Jikens自主制作音源を多賀城のスタジオアゲインにて録りためていたが、あの地震によりスタジオの地下は水没。スタジオの持ち主M氏の録音機材やbad catのアンプも海の藻屑になっちまった。その後、M氏が残りの機材を我々のプライベートスタジオに持ち寄り、出前スタジオシステムで『道をつくろう』というアルバムを完成させた。“地震なんかに負けたくねー、くそが!”の想いでThe Jikensは少しずつ立ち直り、現状を維持。自分は雄勝のばーちゃんちが流されたし、この地震でみんな数え切れない大事なものを失ったけど、震災以降に得た素晴らしいこともひとつひとつ忘れないよう記憶(記録)し、残していきたい。

■タツヤ(Ba./Vo.)
大学で建築を学んでいたからか、誰に頼まれたわけでもないのに、津波にのまれた町の再建について考えてしまう。あの時の様子や現状は他の人に任せて、このことについて、僕は書きたいと思う。地方の小都市の再建に必要なもの。“働く場所”、“親から引き継いだ土地”、“人と人とのつながり”だ。この3つが欠ければ、確実に人口は流失し町は活気を失う。生まれた土地に働く場所があるだけで、そこにとどまる理由ができる。さらに家族や仲間との繋がりがそこにあれば、とどまる理由は一層説得力を増すだろう。役所は都市の再建を進めるにあたり、この3つを絶やさぬことをまず念頭に置くべきである。

■ハッスー(Dr./Vo.) 現状は震災の影響がほとんど無く活動できているが当時は「音楽なんてやってる場合じゃねー!」って状況だった。無論、出演予定してた公演をキャンセルせざるを得なかった。個人的には春開催から延期して行われた、最初で最後であろう夏に開催された“アラバキロックフェス'11”への出演は今までにない忘れられない経験となりました。音楽は無力なものでしょう。しかし、人の心を動かす小さなきっかけにもなり得るんじゃないかと感じます。

The Jikens 一同

 

 

 

 

渋谷 GUILTY 店長 本田 匠

http://www.guilty.ne.jp/

執筆者プロフィール
齢十八の頃に初めてGUILTYのステージに立つ。その後、大学に留年するなど、さほど波瀾万丈ではない紆余曲折を経て、ハードロックバンドのギタリストとしてGUILTYにレギュラー出演を続ける。6年前、転職を機にブッキングとして勤務を開始。現在、新米店長として奮闘中。

 

現状
「泣きっ面に蜂」。東日本大震災はライブハウス業界にとって、そんなイメージでしょうか。以前からバンドマンと話していると良く「ライブハウスって大変でしょう?」と訊かれる事が多くありました。そもそも音楽業界が芯を失ってしまっている昨今。“GUILTYがもっと良くなるためには? 何が足りないのか? これからどうしたら良いのか?”。正直、3.11が無ければ、もっと早く色々なアイディアを形にできただろうし、今年のGUILTY20周年に向けての準備をもっと余裕を持って進める事ができたと思います。でも3.11が起こらないと気付けなかった事もたくさんあります。「いつ起こってもおかしくない」と言われていた大地震は、やっぱり本当に起こるもので、原発は大事故が起こるもの。そして「音楽が力として機能するまでには時間がかかる」という現実。それは悔しさとして残っています。
1年半以上が経過して、あの時、信じられない程暗くて静かだった渋谷の街も“賑やかさ”という平穏を取り戻しています。時間が経つにつれ、「風化させてはいけない」という声を耳にするようになりましたが、ちゃんと日常を取り戻していくことも、また大事なことです。地に足をつけて一日一日を大切に、良い音楽を発信する場所として、皆さんに愛されるライブハウスで在り続けていきたいです。

メッセージ
お陰様でGUILTYは今年3月でOPEN20周年を迎えました。ここまで続ける事ができたのも、足を運んでくれる皆さん、ステージに立ち続けてくれる皆さんがいるからこそです。本当にありがとうございます。時代の変革を柔軟に取り入れながら、貫くところは貫き、頑張っていきますので、どうぞよろしくお願い致します!

 

 

 

新宿 URGA 店長 沫山 数汎

http://www.urga.net

執筆者プロフィール
ノイズ演奏屋。新宿ゴールデン街で口説き落とされ、7年ぶりに業界に戻ってきて早や5年。極端で異端気味の音楽を好むが、好きなバンドを並べてみると結局自分でも嗜好がよく分からない。実は店長になったのはつい最近(それまで何と店長職がなかった(笑))。
現状
震災後、かなりの日数が経ったにもかかわらず、その傷跡は癒えきっていません。被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。
余震が続き、電気の供給もどうなるか分からない中での営業再開には不安もありましたが、常連のお客様やミュージシャンに背中を押された感もあります。フラッと様子を見に来てくれたり、それまでだったら気にも留めない何気ない言葉や行動が、非常にありがたく感じられたことは今でも忘れません。ライブハウスは、勿論音楽やお酒を楽しむ場所ですが、人と人との繋がりも育てていく場所であることをリアルに感じましたね。
新宿URGAは、歌舞伎町の外れにあります。最近は韓流ショップも増えてきまして、界隈はいっそう賑やかに、無国籍風になってきました。そうした中で常に個性的な音楽を発信していくことが、ウルガの目的であり、目標でもあります。「ここに来ればさ、取り敢えず何か面白いことがあるだろ?」と。

メッセージ
URGAは、音楽だけに限らずあらゆる表現に対して扉を開いていたいと考えています。実際、芝居や舞踏の公演を組むことも多々あります。何事も、まず企画側との話し合いながら決める方針です。ふとした思いつきから突拍子もない企画が生まれることも多々ありますので、お気軽にご相談ください。また、学生サークル企画(新歓や追いコンなど)には学割を適用しています。

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