CHAPTER H[aus]エンジニア樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第 103回
今回取り上げるのは画期的なマスタリング系アウトボードT.C.electronic のFinalizerシリーズです。
Finalizerシリーズのアウトボードは、宅録ヘビーユーザーでも「一体何なのか」と疑問に思うことが多いようです。
1996年ごろリリースされた初代Finalizerは、この一台の中にEQはもとよりマルチバンドコンプ、ノーマライザー、エキスパンダー、リミッターが凝縮された画期的な機種でした。当時の定価で35万円ぐらい、購入層もプロが中心だったこともあり「ハイエンドな実力を持った逸品」と言われていました。
この頃はプラグインもそこそこ出始めてはいましたが、ほとんどがオモチャレベルで、プロの現場では正直相手にされておらず、故にこのFinalizerに期待する人が玄人ほど多かった記憶があります。
翌1997年には更に機能を追加したFinalizer Plusをリリース。
さらにその翌年、96K対応フラッグシップモデルFinalizer 96Kがリリースされました。
前モデルと比較すると「AD・DAコンバーターの強化」「ディザーが3倍に増えた」「ダイナミックEQなど強力な項目の追加」など、シリーズ最高峰にふさわしいリッチな内容になりました。
また、廉価版にあたるFinalizer Expressもリリースされ、手の届きやすい価格設定も相まって、アマチュア上級者からセミプロあたりのユーザーの注目を集めました。
どの製品も現在では生産完了となっていますが、興味のある方は中古市場をぜひチェックしてみてください。
【今月のMV】YAPOOL 「レイトショー」
https://www.youtube.com/watch?v=j33zm3Qf6Q0
ショートストーリーの中からYAPOOLというバンドの本質が垣間見える。
【今月のちょいレア】Fostex T-7
安価ながら上位機種と同レベルの音響製品を数多くリリースしてきたFostexが、20年くらい前に発売していたヘッドフォン。とにかくフラットでワイドレンジ、最新のハイエンドヘッドフォンと肩を並べられる実力が堪能できる。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表
レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター
Whirlpool Records/brittford主宰
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください
当スタジオで制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します
STAY FOR WELL 「Until The Summer Ends」
パワーポップ、メロコア、エモロックの中間を行く、新進気鋭バンドのシングル。どの楽曲も適度に攻めつつ、背伸びはせず等身大で勝負している点に好感が持てる。
The Sticamor 「AMORMEALS」
クールジャズ、コンテンポラリーフュージョン、ネオアシッドジャズなど、どこを切っても近未来的サウンドが楽しめるナイスなアルバム。常にイノベーター的感覚で新路を切り開いていく姿勢に脱帽だ。
Fumiya Kimura 「Intangible」
とにかく玄人受けに振り切ったOne & Onlyなサウンド。縦横斜め、すべてに計算しつくされたフューチャーアンビエントミュージックは、最低限の音数で最大限の魅力をアピールしている。
深川 隆成「 STAND BY ME(そばにいて)」
BEN E.KINGの名曲であり、ジョン・レノンをはじめ世界中のミュージシャンがカバーしているSTAND BY MEを、深川 隆成が絶妙な日本語詞に翻訳、歌いあげた作品。
YAPOOL「Imagination」
王道R&Rにナイスな不純物が絡み合う作品。既存のロックに飽きてきた人にこそ聴いてほしい。