CHAPTER H[aus]エンジニア樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第 102回
今回取り上げる機材はALLEN & HEATHのデジタルミキサーSQ-5です。
ALLEN & HEATHはアナログ、デジタル問わず、クオリティーの高い様々なグレードの製品をリリースしています。PA、レコーディングのどちらにもいける製品も数々存在し、写真のSQ-5もその類に属する実力機です。
マイクプリはもちろん、ADコンバーター(アナログ信号をデジタル信号に変換する重要なパーツ。カメラに例えるとレンズにあたる部分)やリバーブを始めとするエフェクター全般の実力は、内臓エフェクターと一言で表現できないくらい音楽的なクオリティーを誇ります。その優秀さは最新型プラグインを圧倒するほどです。
インターフェース機能も充実しており、USBケーブル1本でPCと接続して簡単に作業出来ます。
さらに特筆すべきは、32ch分までDAWとのパラ出しが可能、つまりハイスペックなデジタルのサミングアンプとしても使用できる点です。
DAW内部でのミックスは飽和状態になりがちで、この点でもSQ-5の実力には抜きんでる優秀さが感じられます。
サミングアンプを使用したことのある人にしか理解しにくいかも知れませんが、このミキサーはゆとりのある立体感的音像が演出しやすくなる、ハイクオリティーに直結するワークフローだと確信しています。
「録り音は結構良いのにミックスがうまくいかない」とお悩みの方に、まず試してほしいプロセスの1つと言えそうです。
【今月のちょいレア】Bettermaker MASTERING LIMITER 2.0
大好評だったMASTERING LIMITER 1.0の後継機。1.0よりも、かゆいところに手が届く製品に仕上がっている。アナログ機とは思えないほど細かな設定をPCからコントロール出来るのだが、2.0ではより多くのコントロールが可能となっている。
【今月のMV】YU-DAI 「Not A Husler」
https://www.youtube.com/watch?v=MhtrQNrD7FY
今どきのシティーポップ、R&Bをベースに、最先端トラップやEDM要素を一度分解後、再構築するようなハイエンド作品に仕上がっている。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表
レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター
Whirlpool Records/brittford主宰
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください
当スタジオで制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します
TOY 「Loyalty」
変わらず安定したハイクオリティーなHipHopを提供してくれる、TOYの意欲作。トラップ、HipHop、New R&Bの要素が交差する点が印象的。
MASHIRA 「思考回廊」
もろ主流ではないが、サブでもないHipHop系アーティストMASHIRAのシングル。楽曲の展開やリリック、声色の絡みが絶妙な作品。
おどるアナグマ 「ひとりごと」
多少強引な言い方をすると「少しフォーキーな“赤い公園”」といった感じか。どこか新鮮でなつかしいサウンドが印象的。平凡な歌詞の中にもさりげなく個性が光る。
星野由美子「 Chocolate Revolution」
2023年2月に開催されたイベント「MITO世界チョコレートフェスティバル」のテーマ曲に起用された。少しジャジーなPOPSで、これまでの彼女の音楽性にはない新局面となっている。
ZERo 「graffiti」
ロジャーニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズを筆頭に、ソフトロック、渋谷系エッセンスが随所に散りばめられたニューポップチューン。当スタジオでは、作曲、レコーディング、マスタリングを担当。