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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第95回

CHAPTER H[aus]エンジニア樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 95


今回ご紹介する電源ケーブルはACROLINK 6N-P4030 です。

見た目は前々回でご紹介したOKTSU DENKO AIR3シリーズのDestinyに似ていますが、音の傾向はかなり異なります。

Destinyは「タイトでコンプ感が強い」印象、対してこの6N-P4030は「ナチュラルかつワイドレンジ」で、オールマイティーに使えそうです。

中古品であれば、1万円台後半くらいで見かけることもあります。

最初の1本として購入する電源ケーブルとしてはもちろん、2本3本目にもおすすめです。


【大学生バンドのセルフREC

ミックス作業は全曲終わっていないが、試しに1曲のみマスタリング作業をしてみることに。

マスタリングを自分たちだけで出来るか、もしくは業者に発注した方が良いかを見極めるためだ。

ミックスとマスタリングの違いを、ごく簡単に説明してみると

*料理の味付けをする→ミックス

*出来上がった料理を皿に盛り付け、見栄え良く仕上げる→マスタリング

といったところだろうか。

マスタリングという工程は、時代と共に解釈が変化してきている。

しかし、音楽制作全工程の中で「一番の職人技が要求される」という事実は、変わらないと思う。

ここ20余年で、高性能プラグインやアウトボードが数多くリリースされ、マスタリングに対しての敷居が低くなった雰囲気がある。

だが、あくまでも「便利になった」だけ、という点も否定は出来ないのではないか。

なぜなら、マスタリングに一番重要なツールは「フルレンジ、大音量で鳴らしてもフラットなジャッジが出来る、優秀なモニタースピーカー」「それらをサポートするハイエンドな電源周り」そして「鍛錬された耳」だからだ。

以前から何度となく触れている話題であるが「PC、DAW、オーディオインターフェースだけ」の内部MIX、マスタリングでのバウンスなどは、クオリティーがキープしにくい。

この連載では、PCベースではない「優秀なアウトボードやマスターレコーダー」を使用したマスタリング、その他工程の説明に、今後も特化していきたい。


【今月のMVwoe be goneTeasin’

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=Y_AATXMqjh0

流行りのシティーポップやギターロックとは一味違う、現在進行形アブストラクトミュージックと呼べそうな作品。良い意味でルーツがわかりにくく、玄人受けしそうな一曲。


【今月のちょいレア】Better maker MASTERING LIMITER

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フルデジタルのアウトボードに見えるが、実はアナログのマスタリング用リミッター。

PCからの設定などはデジタルで行えるが、音声信号はフルアナログ。

このアウトボードに通すだけで、リッチな奥行き感が簡単に演出できる優れものだ。

数々の最新型プラグインを用意し、複数のマスターフェーダーに多段がけしたとしても、この機器の領域にはたどり着けないであろう。


【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表

レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター

Whirlpool Records/brittford主宰

専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動

全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける

スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください

当スタジオで制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。


 

STAY FOR WELL SHE’S LEAVING HOME

パワーポップ、メロコアを軸に、様々な要素が自然に組み込まれている作品。

90年代のオールドスクールから2020年代最新洋楽のエッセンスまで、随所から感じることができる。


 

プルスタンス「夢追いフール」

叙情的ギターロック、というキーワードがドンピシャで当てはまるバンドのシングル。

豊かな倍音成分が含まれるリッチな声質と、バックのサウンドの相性が心地よい。今後の活躍に期待大。


 

YAPOOL BOY

R&R、パンク、ガレージロック、そして近年のUKロックサウンドを、独自の解釈で組み上げるYAPOOLの新作。前作の延長線上にありながらも、今作にも彼らの細かいこだわりが施されている。


 

woe be gone OOPS!

宮城在住オルタナティブシティーポップバンドのEP。今作ではシティーポップ路線だけでなく、オルタナ・アブストラクト系の英語詞の楽曲、邦ロック的日本語詞の楽曲がバランスよく混在している。当スタジオではマスタリングを担当。


 

COLLAPSE BLACK SHEEP IS STILL DREAMING」(US盤)

国内を代表するシューゲイザーバンドCOLLAPSEのUS盤がドロップ。アメリカのみの通販限定リリースではあるが、今作で欧米圏にも少しずつ浸透していく予感がある。当スタジオではMixとマスタリングを担当。

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