CHAPTER H[aus]エンジニア樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第89回
今回ご紹介する電源ケーブルは Ortofon(オルトフォン)PSC-1500XG です。
Ortofonはピュアオーディオのカテゴリーに入るので、ミュージシャンやプロデューサー系の人たちにはあまり馴染みのないメーカーかも知れません。
音質は、見た目同様の派手さが多少あり、広い視野で見ると「フラット、かつワイドレンジ」で、あらゆるシチュエーションに適合できそうです。一度使用すれば、想像以上の威力に驚かされることでしょう。
気になる価格は新品で13,000円程、中古で7,000円前後なので、一本目のパワーケーブルとして打ってつけと言えます。
【大学生バンドのセルフREC】
前回からの続き(バンド被りまくり一発録音)ミックス作業
とりあえず、どのトラックにも少なからず様々な音が被っているので、パンは下図↓のように配置する。
非常に時間と手間がかかるが、全トラックを最初から最後まで1つずつ聴き、各トラックの状況をチェック
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他パートの被りが多いトラック(例:ドラムのオーバートップマイクに、ドラム以外のベースやギターの音が、かなり入っているなど)の、超低音域50Hz以下をシェルビングEQで少しずつカット
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低音や被りのダブつきをある程度抑えられたら、低音系トラック(ベースやキック、フロアタムなど)から、あえてセンドリターンでコンプを弱めにかけていく
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様子を見ながらトータルコンプを薄くかけ、まとまりを作る。
空間を広く演出したい時は
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なるべくリバーブ等には頼らず、オーバートップのL、Rトラックをコピー
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L、Rをコピーした2トラックをコンプで強くつぶし、リリースタイムを長めにして少しずつ全体に混ぜていく
ちなみにこれらの手法は1つのパターンであり、目的によってやり方を変えていくのは言うまでもない。
【今月のMV】 深川隆成 「桜の季節」
https://youtu.be/0exPVo5dQj0j0
JAZZとPOPSの中間を行くバラード曲のMV。シックな彩りを感じさせる、真の大人の作品だ。等身大の彼の本質が垣間見える。
【今月のちょいレア】 TASCAM TM-280
老舗音響ブランドTASCAMのフラッグシップモデルだった、逸品コンデンサーマイク。広いレンジと解像度の高さを誇り、2段階上の上位機種と比較しても全く遜色がない。現在は生産完了となっているが、中古市場で15,000円ほどで見かけることもあるので、コスパの高い一本を探している方におすすめ。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表
レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
とりいそぎ 「こんなに晴れているのに」
とにかく分厚い上モノ、多彩なキーボード群、重厚だが暑苦しくはないコーラスワーク、歯切れの良いギター、そしてファットかつ適度な存在感のボーカル。タイトでグルーヴィーなリズム隊が立役者なのは、言うまでもない。
ボトルメール 「拝啓」
少しアンニュイな女性ボーカルと、叙情的なギターロックサウンドがナチュラルに交差するポップバンドのミニアルバム。曲それぞれに多様な情景が浮かぶのが好印象だ。
例えばあなたと私の関係について 「ing…」
ネオソウル、ニューファンク、フューチャージャズをベースに、時代の半歩先を意識したサウンドを常に追求するバンドのフルアルバム。東京ビッグサイトで開催される「DESIGN FESTA」への出演や、全国レベルのメディアへの露出など活躍の場が年々増えている。
深川隆成 「ひまわり Loss Of Love(Theme from ‘Sunflower’)」
表題の「ひまわり」を筆頭に、ジョン・レノンの「Imagine」、ルイ・アームストロングの「What a wonderful world」を収録した、ピアノと歌による3曲入りカバーアルバム。CD売り上げの収益をウクライナ大使館に寄付、また5月26日にはサントリーホール小ホールにてウクライナ支援コンサートを開催。
woe be gone 「BLACK BIRDS」
東北を代表する、オルタナ要素を含んだシティーポップバンドのシングル。今作は、より欧米を意識した曲調と、サウンドキャラクターが特徴的だ。特に洋楽好きにおすすめしたい。