CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の
セルフRECはプロRECを越えられるか? 第84回
先回に引き続き「ACスタビライザー」のご紹介です。
【FURUTECH Flow15】
FURUTECHは国内トップクラスのピュアオーディオアクセサリーメーカーで、Flow15はノイズ・フィルター内蔵型電源供給ユニットのエントリーモデルに値します。
使用法は前回と同じく「電源ケーブルとタップ」や「クリーン電源、アウトボードと楽器」の間につなぎます。
壁コンセントと電源ケーブル、ケーブル間に生じやすいグラウンドループや電源ノイズを遮断し、ピュアでリッチ、かつワイドレンジな音像がGETできます。
現在売価2万弱ほどで見かけますので、ミドルクラスの電源ケーブルを買うのと同じくらいで手に入れることができます。
興味のある方は是非探してみてください。
【大学生バンドのセルフREC】
引き続き「スローバラード系」のレコーディング。
1B・2Bの下ハモダブリングを残すのみ。加えて、アウトロのメインボーカルトラックにフェイクも入れてみよう、ということになった。
まず1B下ハモダブリングから。
1Bをループし、モニターバランスを追い込み、決まったところで練習がてら一回収録。
雰囲気がいまいちなので再度録りなおし、雰囲気、リズム、ピッチのどれも良い感じになったのでこの回をキープする。
ピッチとリズムを少々修正してOK。
2B下ハモダブリング。
慣れてきたためか1テイク目から良い感じに。2テイク目、修正なしでOK。
アウトロのフェイク。
メンバーと確認しながら一回チャレンジ。ニュアンスが違うということで再度収録。
手ごたえはあるがイメージと少し違うということで、他メンバーがお手本を見せる。
今までのキューボックスに加えて、もう一台メンバー用にキューボックスを用意した。
メンバーが②を使ってモニターバランスをとり、ループ、プレイバックしながら何度かお手本となるフェイクを歌う。
メンバーのお手本ニュアンスを再確認したところで、メインボーカルが再度フェイクにチャレンジする。
3回チャレンジし、結局1回目のピッチとリズムを修正してOK。
フェイク部分は、ミックスの時にディレイ、リバーブを深めにかけて世界観を演出することになりそうだ。
これでスローバラード系楽曲のレコーディングはすべて終了。
【今月のちょいレア】 Acoustic Revive RTP4 absolute
Absoluteの文字通り「究極の」電源タップ。往年のクリーン電源の名機たちより位相が良く、いびつさも偏りも皆無のハイエンドな特徴の固まりである。スーパーリッチでパワフルなダイナミックレンジが演出できる、至高の逸品。
【今月のMV】 YAPOOL 「尻切れトンボ」
https://www.youtube.com/watch?v=5-PfIxIDbm8
70年代のR&R、特撮のエッセンスをベースに、全年代のロックのおいしいところをセンス良く詰め込んだ作品。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!
深川隆成 「時の流れ」
ジャズとニューミュージックの中間にある大人のポップスで統一されている、深川隆成のファーストフルアルバム。彼の声色には、リスナーに安堵感とポジティブな感情を与える成分が多大にありそうだ。当スタジオでは、3曲分のスタジオ録音と、ライブレコーディング楽曲のプリマスタリングを担当。
THE JIVES 「STABLE」
80年代、アメリカとイギリスで「ブルーアイドソウル」というジャンルが存在したが、THE JIVESの最新作は「ブラックアイドR&R」というキーワードがピッタリはまる。東洋人が奏でる、現代のリアルタイムロックサウンドを心ゆくまで堪能してほしい。
THE ECHO DEK 「Lost My Grip」
ここ数年、ビルボードチャートを意識するきらいがあったが、今回はちょっと毛色が違う。欧米圏のどこで流れていても違和感のない、かといって馴染みすぎない、2020年代のニューロック誕生といったイメージだ。
YAPOOL 「YAP YAP YAP」
ヤプール人、といえば「ウルトラマンA」をはじめとする「ウルトラシリーズ」に登場する架空の異次元人のこと。そこから名づけたというこのバンドは、まさに「異次元人が奏でるロックサウンド」だ。別角度からみるとディープなロックンロールでもあり、聴きこむほどにいろいろな発見がある。
アカハナ 「日常 / ミスター・ムーンシティ - EP」
初期と現在の下北系ギターロックの良いとこどりをした、ロックバンドのEP。個性的でブライトな声質と、歌詞が特徴的。バックサウンドの音作りの好印象だ。