CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の
セルフRECはプロRECを越えられるか? 第72回
今回ご紹介するマスターレコーダーは、DENON DN-F650Rです。
ソリッドステイトレコーダーというカテゴリの機種で、行政運営の音楽ホールや音響設備が充実している結婚式場などに多く設置されているようです。レコーディングの厳しい使用環境にも対応出来るのか?という声も聞こえてきそうですが、実はかなり使えます。
記録メディアはUSBスティックとSDカードで、個人的にはUSBスティックで記録した方が音質が良いと感じました。
作成出来るファイルフォーマットはWAVとMP3です。
WAVは16bit 44.1kHzから24bit 96kHzまで対応していますが、24bit 96kHzのみ他と比べると少々クオリティーが落ちる気がします。
一方MP3の音はピカイチで、通常のDAWでは太刀打ちできない程のクオリティーが得られます。
このDN-F650Rは2010年頃発売され、2016年頃にはディスコンになっていたように思います。当時のショップ販売価格は59,800円くらいだったでしょうか。
残念ながら生産完了となってしまいましたが、たまに中古市場で1万円台後半で見かけることもあります。
【大学生バンドのセルフREC】
ここしばらくはミックスを中心に作業してきたので、コーラスを録ることに少々身構えてしまったメンバーたち。
前回使用したキューボックスFURMAN HDS-6(親機)HR-6(子機)はステレオ1系統 モノラル4系統だったが、今回から使用するconisis 1811(親機)1805(子機)はステレオ1系統 モノラル6系統となる。
以前使用していたFURMANのキューボックス
今回使用するconisisのキューボックス
conisisを使うことにより、チャンネルの多さはもちろん音質もかなりグレードアップし、コーラスのダビングもしやすくなりそうだ。
各サビでとりあえず3度上ハモを入れる予定だが、場合によっては下ハモや、ラスサビのメインボーカルダブリングも入れてはどうかという案も出始めた。
セッティングも済み、ラフに歌ってモニターバランスをチェックすることに。
モニターバランスの設定は以下の通り。
【今月のちょいレア】SPL Gold Mike
現行品であるGold Mike MK2の初代モデルである、真空管2chマイクプリアンプ。真空管くささをあまり感じさせない、プレーンでややファットな音が特徴。大抵のソースに合うが、特にドラムのオーバートップにうってつけの機材だ。
【今月のMV】SNEAKIN’ NUTS 「GOIN’ BACK」
https://youtu.be/7LQDTFBzTd4
初期パンクとR&Rがバランスよくミックスupされた、SNEAKIN’ NUTSの代表曲。彼らのワン&オンリーな存在感は特筆ものだ。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
底なしの青 「rhythm」
仙台在住ギターロックバンドのフルアルバム。一聴するに下北系ギターロックバンド風、ただ彼らの楽曲はライブハウスより夏フェスの屋外ステージが似合うイメージがある。当スタジオでは全曲のマスタリングを担当。
モモかん 「マオ」
シンガーソングライターmomoのバンド形態「モモかん」によるシングル。王道ポップスワールドの中に垣間見えるmomoの世界観は、奇をてらうこともなく斬新なアレンジもほぼ存在しないが、聴き重ねるうちに自然に引きずり込まれる中毒性をはらんでいる。
SNEAKIN’ NUTS 「プロレタリアの銀河の夢」
平成最後の筋金入りガレージR&Rバンドのアルバム。硬派でブレない、真のロック的精神性がオールラウンドに伝わってくる。2021年1月全国発売。
美元智衣 「想っているよ」
美元智衣の等身大の魅力あふれる、聴き手を選ばない完成度の高いバラード曲。東京都の芸術文化活動支援事業「アートにエールを!東京プロジェクト」に合格、同サイトにて動画も公開されている。当スタジオではマスタリングを担当。
里実さと 「旅色」
「ピュアなアンプラグドサウンド」というワードがぴったりきそうな楽曲群が連なる。余計な脚色のない天然サウンドを是非体感してほしい。