今回から、dbxシリーズについてご紹介しましょう。
dbxと聞いて真っ先に思い浮かぶのは「PA機器ブランド」というイメージですが、実はRec用としても優秀な機材が多いメーカーだと私は思います。
特にコンプが有名ですが、マイクプリ、チャンネルストリップにも良い製品があります。
革新的だったのは、1999年に当時定価14万円で発売された2chチューブコンプ「dbx566」、チャンネルストリップ「dbx576」、2chマイクプリ・EQ「dbx586」です。これらの3機種は“5”シリーズと呼ばれています。
“5”シリーズのマイクプリやコンプは、どれもワイルドでパンチのある音ですが、特筆すべきはEQの性能の素晴らしさです。今まで他メーカーも含め100台以上のアウトボードを試しましたが、これ程までに「派手に、かつ音楽的に」かかるEQは他にありません。
その特徴ゆえに、ナチュラル指向の音源には不向きかと思いますが、ヒップホップ、レゲエ、R&B、ラウド系などに多大なる効果をもたらします。
特にHighとLowのかかり方が秀逸で、他の機材の追随を許しません。
中古市場でたまに3万円台後半で販売されているのを見かけます、状態の良いものであれば是非試してみてください。
次回は5シリーズの弟分に当たる3シリーズについてご紹介します。
【大学生バンドのセルフREC】
以前、散々に打ちのめされた【4つ打ちダンスロック:BPM=170】のコーラスアレンジをやり直し、新たなコーラスを猛特訓して、いよいよ再チャレンジすることになった。
コーラスを重ねる予定のサビのメインVo.のピッチをAutoTuneで補正してから、コーラス録りに挑むことにした。
いかにも補正しました、と思われないように「グラフィカルモード」で丁寧に修正していき、いよいよコーラス録りに。
使用マイク:Audix CX111
マイクケーブル:Evidence Audio
アウトボード:Forcusrite Voice Master Pro
コーラスのモニターバランスは、他パート以上にシビアに行う。
1サビの上ハモを録る。
2テイク目を残し、AutoTuneで修正する。
2サビの上ハモも、本当はコピペで行きたいところだが、歌詞が違うのでコツコツと録り進めるしかない。3テイク目を採用し、AutoTuneで修正。
3サビは、まさかの1stテイクが無修正でOK。
3声コーラスは、より一層難易度が上がるので、モニターバランスもサビだけループプレイバックにして、細かく調整する。3テイク目がまあまあの出来だったので、これを修正して1サビはOKに。
2サビは一発OK。
3サビはピッチ、リズムは良かったが歌詞を間違えるというミスが。録り直して修正なしでいける出来に。
これでこの曲については、全パートを録り終わり、ミックスができる状態になった。
【今月のちょいレア】Fostex Model 2016
80年代後半にリリースされた16chラインミキサー。30年経った現在でも、音質的には同じ価格帯のものより1ランク上のクオリティーを提供してくれる。操作性も良い。
【今月のMV】 カイザーストロングバーツ 「風を掴む」
自由奔放に駆け巡るR&Rバンドの真髄が詰まった作品。とにかくリスナーをハッピーさせるバンド。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
Rapid an Falsetto 「 Where are you Standing? 」
スピード感のあるパワーポップ、ギターロックバンドのマキシシングル。的を得た活動のセンスが素晴らしい。
ROKI 「 1965 」
音がとにかくデカい。ラウド系よりも1ランク上の音圧が堪能できるR&Rバンドのアルバム。直観的な初期衝動で制作された本作は、よい意味で予定調和がない。
航空電子 「 サクラサク 」
某大手楽器メーカー社員で結成されたフォーク・トロンカ、オルタナバンドのシングル。「はっぴいえんど」のトリビュート盤に参加経験あり。
DARKNESS FLOW 「 Friend of Mine 」
栃木在住ヒップホップグループのシングル。ブラックミュージックを厳選したネタで網羅され、
深い音楽性が体感できる。Lunch Time SpeaxのGocchiもラップで一曲参加。
The Vision 「 course 」
横浜を拠点とするセミアコ、エレアコを全面的にフィーチャーしたエモロックバンドのシングル。
歌詞のセンス、メロディー、声質などが個性を醸し出している。
【お知らせ】
SOUNDDESIGNER 2018年6月号「マイク特集」特集記事P16~17で執筆、P37でコメントを掲載していただきました。ぜひご一読ください。