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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第50回

今回ご紹介する機材はブルーメタリック色が目を引くDBXの2chプリアンプ、786です。
<786 表面>

<裏面>

41回~44回のコラムでご紹介した、DBXプリアンプの「3シリーズ」「5シリーズ」のシルバータイプや「676」のブラックタイプは全てTube仕様ですが、「786」はディスクリート仕様となっており、これらとは違ったコンセプトの商品です。とは言え、DBXの「アメリカンでガッツのあるロックテイスト」は健在で、例えるならば「ファット&ソリッド」という表現がピッタリの逸品です。

特に「ステップアップトランス&AETのパワーケーブル」の組み合わせが秀逸です。
ドラムは全パート、ギター全般、ボーカル、ピアノ、ブラスなど大抵の楽器とも相性抜群です。
この786は、おそらくDBXプリアンプの中でも一番のフラッグシップモデルに位置する、高級なソリッドステートなマイクプリではないでしょうか。

90年代後半から2005年頃まで販売されていたようで、当時の売価は30 万円後半ほど。TubeTechやManley のライバル機種だったように記憶しています。
今でもごくたまに中古品を見かけますが、完動美品で相場10万円前後といったところでしょうか。オーディオインターフェースのプリアンプに限界を感じてきた人には、ぴったりのツールだと思います。


【モニタースピーカー考察】
モニタースピーカーを中心とする「フラットな音像を構築するノウハウ」がある程度出来てくると、健全なMixがしやすくなります。

今まで取り上げてきた【大学生バンドのセルフREC】に当てはめながら「あまり話題には上りにくいが、なにげに重要なTips」をいくつか紹介します。

下図は、45回コラムで取り上げた「ステムミックスをアナログミキサーの各チャンネルに取り込んだセッティング」です。

「バウンスによる音の変化を避ける」「平面的なミックスにならないようにする」ために、敢えてこのようなセッティングをしました。
現在、マルチバンドコンプ系のアウトボードはなかなか手に入りづらいので、代わりに通常のステレオコンプ(中級以上)でも代用可能です。

ミックスの際に一番身近でおなじみなのがEQですが、最初は極力EQ、リバーブ、コンプを使用せず、パンも敢えてセンターに、ボリュームをフェーダーでいじるだけでバランスをとっていきましょう。
その後エフェクターを必要に応じて増やしていき、パンも少しずつLRに振っていくのが、ミックス上達のコツです。

ミックス完成予想図参考例↓


【今月のMV】The Echodek 「DREAM CAR」
JUSTISE、Tahiti80といった仏アーティストにも通ずる、フレンチダンスロックのコアな部分が全方向から感じられる。フューチャーオルタナポップのパイオニアが放つドリームロック。


【今月のちょいレア】CAD MH510
比較的ロープライスでありながら、個性的かつリッチな路線を開拓してきたアメリカのブランドCAD。その上位に位置する、カラフルなヘッドホン。低音の強さが印象的だ。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター
Whirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

平凡ズ 「 7月10日のフィッシュボーン・パーク 」

60年代マージービートに始まり、70年代パワーポップ、80年代モッズ、ニューウエーブ、90年代オルタナ、カントリーなどのフレーバーがバランス良く散りばめられた一枚。2019年2月全国発売。

クラウディールーム 「 COLORLESS / warmth 」

ストライクゾーンに入ってはいるが、良い意味でど真ん中ではないギターロックバンドのシング  ル。ルーツがわかりやすくもあり、どこかわかりにくくもあるところに個性を感じるバンドだ。

The TRIGGER. 「 Hare,tokidoki ame 」

少しエモ的な要素もある、ギターロックバンドのマキシシングル。声質、歌詞、曲調と空気感のベクトルが、常に同じ方向を向いて融合している点を評価したい。ステージングも印象的。

みならいモンスター 「 Looking for good song forever 」

近年リリースのペースが早いのに比例して、作品のクオリティーも少しずつアップしてきている。バンドサウンドと同期音源の一体感もより自然になり、三姉妹バンドの真の軸が出来上がりつつあるようだ。

クツマユウキ 「 B/M #2 」

ミッシェル・ガン・エレファントをはじめとするガレージサウンドに、奥田民生系ロックン・フォーク、そしてヨーロピアンなエレクトロサウンドが縦横無尽に融合した、ミクスチャーアシッドロックの決定盤。聴き手を選ばないナイスなアルバムだ。

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