暑さ寒さも彼岸まで、と申しますが、まだまだ寒さが勝るこの頃、いかがお過ごしですか? 寒い日こそ、インドア派! じっくり楽曲制作やセルフRECに専念してはいかがでしょう(笑)。
さて、前回はパソコン、ソフト、オーディオインターフェイスなどの「セルフRECの必需品」についてざっくりと説明しました。今回は、それらについて「さらに
掘り下げてみます。
パソコン、ソフト、オーディオインターフェイスの組み合わせは、昨今かなり自由自在になってきています。価格に比例して音質、インプット・アウトプット数、付属するエフェクトの種類が増減します。レイテンシーも、価格に応じて差が出る部分の一つと言えます。
【レイテンシーとは??? 】
パソコンやデジタル機器でオーディオデータを扱う際に起こる、生演奏とモニターのズレ“音の遅れ”です。
リアルタイムの演奏に対して、返ってくるモニターの音が遅れるので演奏がしづらいという現象が起きます。
ProtoolsHD/HDXや、ハードウエアのデジタルミキサー、デジタルMTRなどにも、当然ほんのわずかですがレイテンシーが存在します。ただ本当にわずかなので、気にする人があまり多くありません(プロも含め)。
少し問題になるのがネイティブ環境のソフトです。
【例】
CUBASE PRO8、Logic ProX、SONAR X3、Studio One、Protools11(ネイティブ)など。
一昔前のソフトのような「ワンテンポ遅れる」くらい露骨なズレはなくなってきているものの、プロをはじめ経験値の高いユーザーはレイテンシーについていろいろな工夫をしています。
●バッファー、サイズの量を加減してレイテンシーを調整
↓↓↓
少ないトラック数には有効な方法
●各ソフトのダイレクトモニター機能を使う
↓↓↓
よく知られた手法だがエフェクトが使えなくなるケースもあり
エフェクトが使えなくなる問題を解消するには、DAWの前にミキサー(エフェクト内臓タイプ)を接続し、直接ミキサーのモニター音を聞きながらミキサーのエフェクトを代用という方法もあります。これならば、3ピースバンド程度のパート数を一発録りしても、さほどレイテンシーに神経質にならずに済むと思います。この方法でしたらトラック数の多い録音にも対応しやすくなります。
セルフRECに手慣れた方々は、レイテンシー対策として「ちょっと高価だけどドライバーが優秀なインターフェイスを使用する(例:RMEシリーズなど)」などして、ズレが許容範囲になるよう調整していることも多いと思います。
他にもいろいろな手法がありますが、「各プレーヤーが気持ちよく演奏できて、生き生きとしたテイクが録りやすい環境を構築すること」を忘れないように心がけましょう、ではまた次回。
[写真上]先日当スタジオでレコーディングを行った57pictures。UK/ポストロック/シューゲイザーを基調とした邦オルタナバンドです。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。1998年、地元茨城県日立市にレコーディングスタジオ「チャプターハウス」を設立。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。Whirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。音楽制作専門誌SOUND DESIGNER 2015年2月号に、コンプレッサーについての記事が掲載されています。
http://www.sounddesigner.jp/contents/2015/02/01/index.shtml
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
The Echo Dek『Some Glastonbury』
これぞUKロックな曲から、初期NWの香りを残す曲、上質なソウルの趣ある曲ありと、どれをとっても高い音楽センスを感じさせる。TAMTAMなどを輩出しているmaoと、チャプターハウスレーベルであるwhirlpool Recordsのダブルネームで、2015年4月1日全国発売。
COMezik『他人』
千葉が生んだ型破りなモンスターガールズバンドの3rdミニアルバム。US、カナダのラウドロックをベースに、イカ天的イロモノネタが魑魅魍魎にハングアップする。MVも強烈! 一見の価値あり。2015年3月25日全国発売。
Falls from the skies『Unseal』
ギターロックとエモロックの中間の立ち位置にある3ピースバンド3rdミニアルバム。内省的な歌詞の中にも明るさを感じるアンバランスさが魅力的。流行に左右されない佳曲揃い、じっくり聴きこんでほしい。
Tsubamellia 『my mood』
さわやか、且つ優等生的ギターロックバンドのマキシシングル。決して派手さはないが、音楽性の幅の広さ、懐の深さを感じさせる。何度も聴きたくなる充実した1枚。
LoaChestnuts 『Make it one's one 』
良い意味での「荒削り」さが魅力のメロコアバンド1stマキシシングル。1つのイメージに固まらない様々なカラーを持ち、18歳らしい勢いと、年齢らしからぬアイディアが共存したユニークさが魅力。
mash『mash』
西海岸系とカナディアンメロコアの雰囲気を感じるパンクバンドのシングル。1曲1曲のドラマティックな展開と疾走感が素晴らしい。
return trip『橋の向こう』
男女のツインボーカルギターロックバンドのシングル。ボーカル2人の声質の組み合わせがさまざまなバリエーションを見せており絶妙な味となっている。ぜひアルバム単位でも聴いてみたいものです。