音楽メディア・フリーマガジン

~関東・東北地方音楽シーンの現状報告~ Vol.9

under the yaku cedar G./Vo. 石巻ロックフェス実行委員会代表 / 鈴木 大輔

【under the yaku cedar】 http://www.undertheyakucedar.com/
【石巻ロックフェスHP】 http://www.ishinomaki-fes.net/

復興とはなんなのか? その問いを繰り返し、考え抜いた結果、僕らは「新たなものを築く事」に辿り着きました。

2011/10/9に行われた、石巻ロックフェス。こんなにも多くの人に支えられ、多くの人によって作られたロックフェスはかつてあっただろうか。「海を向いて歩こう」をスローガンに掲げ、過去を乗り越え自然と対峙し未来を見つめ、生きている事の喜びを多くの人と共有する事を目指した当日は全国から約2000人が集い、鎮魂を祈り、人と人、そして自然が寄り添うことに希望を見出した。

宮城県石巻市。思い出すのはあの海だ。何かあったら、何もなくとも、よく防波堤に座って、耳にぶつかる風と砕ける波の音を、いつまでも飽きることなく聴いていた。帰り際は、風の感触が身体にまだ残っていて、どこか心地良かった。
そんな海が、僕から多くのものを奪っていった。両親は海沿いから数百メートルの所に住んでいて、もちろん家は流されたし、両親は津波に飲まれながらも奇跡的に生還した。僕が意を決して、実家を訪れた時には、寿司屋だった我が家のカウンターだけが、職人だった親父のプライドだけを誇示するように、残されていた。
人は記憶や記録によって、ようやく過去の自分を認識出来るという。たった小さなガラクタのような玩具や、柱の傷、たった一枚の古びた写真でも、僕が過去に、そこに居たという事を証明してくれる。そういったものを波は残してはくれなかった。その喪失感を抱えながら生きていく事も可能だったと思う。でも、僕は紛れも無く僕が生まれ育った街と、あの海に対峙する事を選んだ。失くなったのなら創るだけだ、と自分に言い聞かせた。だが、自分に何が出来るんだろう、という問答を繰り返した結果、やはり僕には音楽しかなかった。
そんな時、「石巻でライブがみたい」という叫びのような呟きを見たのをきっかけに、石巻でロックフェスを計画した。震災後、まだ2ヶ月のあの時期に何を馬鹿な事を言ってるんだろう、と散々言われた。でも、僕は思った。言葉で言い表せぬ悲しみは、言葉では言い表せぬものでしか癒せないと。それは音楽だった。石巻に、悲しみを抱えた人々に絶対音楽が必要だと信じていた。衝動的な発起から、約5ヶ月。2011/10/9に、石巻ロックフェスは開催された。それは多くの人の並々ならぬご尽力により、実現出来た。来てくれた人達の、自然な笑顔を見れた時、“やって良かったな”と心から思えた。海と山と風と太陽と月に見守られたロックフェス、そして産業に埋もれていないピュアネスの塊のような音楽。それだけで、人は自然に笑う事が出来る。僕はそこに、希望を感じた。地震と津波は多くを奪ったけれど、唯一残ったの微かな希望。一人一人が立ち上がり、自然と調和を計りながら自ら未来を切り開いていく事。
過剰な消費社会に魂を病んだ僕らに、大切なものを教えてくれたのは奇しくも、あの海だった。今、僕らが進むべき未来はきっと自然の中にある。20世紀の生き方と決別し、チェンジが必要なのは明確だ。
石巻の海は、ずっと変わらず美しかった。

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ミュージシャン / KAORU

【office mothol】 http://officemothol.masa-mune.jp/

音楽に「力」があるわけじゃなく、奏でる側と聴く側の気持ちが重なった瞬間、初めて「力」を産むのではないだろうか?

激しく長く続く揺れの中、人々は自然の驚異に対し悲しい程に「無力」としか言いようが無かった。ライフラインが寸断されたであろう事は容易に想像がついた。既に携帯は繋がらず、頻繁に発生する余震の中、車中のラジオからは大津波と、それにより壊滅状態になった街の情報が繰り返される。誰もが希望の光を見失いかけていた。

電気、ガス、水道、電話、食料、燃料。昨日まではお金を払えば当たり前に手に入った物が手に入らないという事実が、自分達の住む街でリアルに起こり始めた。それどころか街のほとんどが喪失した場所さえある。自分が住んでいる街では無いにしろ、そこには自分の知っている風景があった。被害状況は場所により人により全く違う、失った物も違えば欲している物も違う。しかし、音楽の力で「勇気を」「癒しを」。震災発生から、そんな言葉があちこちから聞こえてくる様になるまで、さほど時間はかからなかった。
果たして音楽に「力」なんてあるのか? 僕はそんな疑問を抱いていた。「ミュージシャンだからミュージシャンに出来る事を」という言葉を簡単に口にする人間が居たけれど、それはたまたま音楽がやれる程度の被害しか無かった人間が、音楽をやる事を正当化する為に言っているエゴにしか僕には思えなかった。「ミュージシャンだから出来る事」では無く「ミュージシャンだけど出来る事」もあるはずで、実際に瓦礫の撤去や食料の運搬をしているミュージシャンも沢山いた。音楽を辞めようとは考えなかったが、この時期に音楽活動を再開する事には迷いがあった。
しかし、そんな僕が震災発生から一月足らずで震災復興ライブを企画する事になる。賛否両論が巻き起こる事も批判の目が向けられる事も予想は出来た。けれど全国的に「自粛」の波が広がる中、ここで誰かが音頭を取らなければ、被災地である仙台の音楽シーンが元の健全な状態に戻るまでに必要以上の時間を要する様な気がしてならなかった。震災発生から2週間が過ぎ、ようやく連絡がついたライブハウスのスタッフはこう話していた。「仙台から何か動きを起こさなければ、東北に限らず全国のシーンが沈んでしまう」と…。その言葉が僕の気持ちを動かしたのは事実だった。しかし出演者を探す中で、震災前まで普通に音楽の話が出来た仲間が家や職、大切な人を失っているという現実に直面したりと、ライブが近づくに連れて“自分達が企画した、このライブに何の意味があるのだろうか?”と、疑問ばかりが大きくなっていった。
そもそも、音楽に限らず芸術という分野は、人々が衣食住、家族、仕事という当たり前に存在する物が当たり前にある時に出来る、心の「ゆとり」みたいな所に訴えかける物では無いかと僕は考える。その当たり前の事が当たり前で無くなった今、やはり音楽なんて無力なんじゃ無いだろうか? その想いを拭えないまま、僕はライブ当日を迎えた。
企画を進める中、折れそうになる気持ちを支えたのは、共にこの日のステージに立つと決めた仲間達だった。そして、この企画に賛同し、ノーギャラで出演を引き受けてくれたHOUND・DOGの八島純一氏の存在。ライブを終えて確信した事が1つあった、やはり音楽は「無力」である。しかし、それを奏でる者と聴く者の「想い」が重なる時、音楽は無限の「力」にもなるという事。この日八島氏を交えて演奏したHOUND・DOGの「フォルテシモ」でステージも客席も一つになった、あの瞬間を僕は忘れない。そして、もう1つ忘れてはいけない事がある。未だに音楽が「力」にならない状況の人々が大勢いるという事。音楽の「力」はけして押し売りする物では無いのだから。

六本木morph-tokyo / 店長 yummy

http://www.morph-tokyo.com/

執筆者プロフィール
音楽と古着をこよなく愛してます。古着を愛しすぎてたまに変な帽子とかかぶってます。

現状

当店は地下1階にある為、揺れは感じたものの幸いそんなに被害はありませんでした。ですが、同ビルにある8階の事務所は大きく揺れてぐちゃぐちゃになりました。イベントやブッキングのキャンセルが増えていく中で、営業再開のタイミングは正直かなり悩みました。しかし4日後の15日、キャンセルが相次ぐ中でLIVEを決めたアーティスト2組と、集まった30人のお客様の表情や気持ちのこもったLIVEを見て、音楽の秘めるパワーをとても感じました。震災から約1週間後、『長靴を届けますProject』という任意団体を立ち上げ、TVの入らないような被災地の個人宅等を回り、その都度必要なものを届けるという活動を今も行っており、たくさんのお客様やアーティストさんにご協力をいただいております。

メッセージ

morph-tokyoはおかげさまで10年目に突入しました。これからもやんちゃで楽しい大人たちが集まる場所で居たいです。ファンキーなアーティスト大募集!!

渋谷TAKE OFF 7 / 店長 川俣 大祐

http://kox-radio.jp/to7-top.html

執筆者プロフィール

『人事を尽くして天命を俟つ』。真の登竜門となるよう日々精進して参ります。宜しくお願い致します。

現状

東日本大震災におきまして被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。移転して1年4ヶ月、新しいビルの地下1Fという環境が幸いし大きな被害は全くありませんでした。テレビで津波の映像を見た時は衝撃でした。自然災害、二次災害の恐ろしさを改めて痛感し、無力さと、命の尊さを考えさせられました。余震が続く中、今後の公演やお客様への対応などを協議し、可能な限り営業を進める方針を決定致しました。「こういう時こそ音楽だ!」という思いを糧に節電を心掛けながら可能な限りライブは開催しました。今回の震災で何気ない日常がどれだけ幸せなのかを思い直し、ライブハウスの存在意義が改めて人と人との繋がりなんだと考えさせられました。「楽しい音楽を心に」皆で一つの空間を作り上げるように全力で今後とも取り組んで行きます。

メッセージ

渋谷に1980年10月オープンしてから32周年を迎える事が出来ました。全てのご出演して頂きましたアーティスト様と、ご来場して頂きましたお客様に感謝致します。2009/11/1、CLUB QUATTRO隣のビルに移転しました。心機一転、全ての音楽と演芸を毎日発信しております。

高田馬場CLUB PHASE / ブッキングマネージャー 吉野将兵

http://www.club-phase.com/

執筆者プロフィール

生まれ育ちは大阪ですねん。ぼちぼちギタリストもしております。

現状

当初は精神的にお客様や出演アーティストの方、またPHASEスタッフもダメージがありました。もちろん、PHASEだけでなく他のライブハウスも同じ だと思います。今では東北からのツアーバンドもあり、活気も少しずつではありますが戻りつつあり、CLUB PHASEは震災時を忘れる事無く肝に銘じ、対応策を迅速にできるように心掛けて日々精進しております。今もなお電力問題や原発問題が続いてる中、キャン セルや自粛も相次ぎました。ですがご協力とご理解のもと沢山の方々に支えられ、現状、PHASEらしさを取り戻しています!! 今後もさらに笑顔絶えない空間創りを徹していきます。

メッセージ

PHASEを知ってる方も知らない方も気軽に寄れるアットホームなライブハウス創りを目指しております。また、出演アーティストに持ち込み企画、ツアーバンドも随時募集しております。オールジャンルで何でも来い!! のライブハウスです。お気軽にお問合せください。

LIVE labo YOYOGI / 店長 / ブッキングマネージャー ハロー松田

http://www.yoyogi-labo.com 

執筆者プロフィール

三代目店長兼ブッキングマネージャー。太っているように見えます。

現状

震災で被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。まだまだ大変だとは思いますが、お互い頑張っていきましょう。laboは震災を受けて音楽を発信していく事の喜びを再確認し、ライブハウスとしての社会的責任などを考え直すきっかけになりました。来場いただくお客さまと出演バンドに対する、安全管理などもう一度スタッフ間で確認しました。また、laboでは定期的にDJ寺岡×labo主催でチャリティーイベントを行い義援金を集めるイベントを続けています。継続的に続けていかなければ意味がないと思うので、今後もしっかりと続けていきます。ちなみに、次回は3/28です。そして、ライブハウスとして、お客様に安心して楽しんでいただける環境作りを今後も徹底していきたいと考えています。

メッセージ

楽しい事、面白い事、バカな事、まじめに真剣に取り組んで、新しい事をやっていきましょう! よっほほ~い!

福島Live Space C-moon / ブッキングマネージャー Heidi

http://c-moon.net

執筆者プロフィール

オーストラリアへの渡航経験など自由奔放な生活期間をえて、オープン当初のC-moonスタッフになる。未だに一部が原発事故により避難指示が出ている町から通勤しています。

現状

3/11の地震発生直後、外には不安そうな顔をしている人や泣いている人たちで溢れ、信号は止まり交通マヒを起こしていました。ライブハウスの中はサイドのモニターが倒れていたり、酒瓶が落ちて割れている程度で機材は無事でした。その後はお客様に安否確認の連絡をとり、お互いに励ましあい、そして電気・ガス・ガソリンなど通常の生活に戻るまで1カ月はかかりました。地元を元気づける為、震災以降の初ライブは自粛せずに、同月27日お世話になっている地元バンドを誘いライブをしました。福島はまだまだ問題を抱えておりますが、地元の皆さんに時には支えられながら、そして支えていけるよう頑張っていきます!!

メッセージ

C-moonはオープン以来さまざまなジャンルのアーティストさんに演奏して頂いております。ライブハウスは新しい人に出合いハッピーになれるところ!! 今まで福島にいらしたことのないアーティストさんにもどんどん来て演奏してもらいたいです!!

Hachioji RIPS / ブッキングスタッフ 松山 周一

http://rips.rinky.info

執筆者プロフィール

26歳、八王子生まれ八王子育ち。RIPSのブッキングスタッフです。

現状

hachiojiRIPSは、震災前と変わらない状況で営業いたしております。震災当日は大学サークルの引退ライブでした。リハーサル中に大きい揺れを感じ、すぐさま避難をしました。そこから4月いっぱいは計画停電の影響もあって思うように営業が出来ず、そして何より“こんな状況の中で営業していいのか”という気持ちもありました。ですが、周りのバンドマンやお客さんがRIPSの営業を心待ちにしてくれていたため、営業を再開しました。現在は募金やチャリティーライブも行い少しでも力になれるように努めております。

メッセージ

学生の街八王子にあるライブハウスRIPSです。都内には無い独特の雰囲気を持った街です。
今までも沢山のバンドさんに足を運んでもらいました。これからも沢山のバンドさんに来て頂けるような環境をご用意いたしますので、まだ来られた事の無い方もお待ちしております。

執筆

者プロフィール
三代目店長兼ブッキングマネージャー。太っているように見えます。

現状
震災で被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。まだまだ大変だとは思いますが、お互い頑張っていきましょう。laboは震災を受けて音楽を発信して いく事の喜びを再確認し、ライブハウスとしての社会的責任などを考え直すきっかけになりました。来場いただくお客さまと出演バンドに対する、安全管理など もう一度スタッフ間で確認しました。また、laboでは定期的にDJ寺岡×labo主催でチャリティーイベントを行い義援金を集めるイベントを続けていま す。継続的に続けていかなければ意味がないと思うので、今後もしっかりと続けていきます。ちなみに、次回は3/28です。そして、ライブハウスとして、お 客様に安心して楽しんでいただける環境作りを今後も徹底していきたいと考えています。

メッセージ
楽しい事、面白い事、バカな事、まじめに真剣に取り組んで、新しい事をやっていきましょう! よっほほ~い!

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