前回まで「低音を中心としたマイクの実用例」を挙げてきました。今回からは「ペンシル型コンデンサーマイク」を取り上げます。
ペンシル型コンデンサーマイクは、ドラムのオーバートップにペアで使用することが一般的ですが、アコギやピアノ、ブラス、ストリングス系にも使えます。
【AKG C480】
スタンダードモデルAKG C451の上位機種に当たります。
【CAD GLX1200】
【Joemeek JM27】
【TASCAM TH-50M】
次回から以上の4機種の比較をしていきたいと思います。
【大学生バンドのセルフREC】
セルフRECのMIXについて、前回はコンプの基礎をご紹介しました。
今回はコンプの実践的な使い方です。
キックは、ベースとの絡みを考慮しつつ作業を進めます。
【スレッショルド】最初は深めに設定。様子を見ながら浅くしていく。
【レシオ】レシオは割合なので、まず2:1でかけてその後3:1、4:1を試す。
【knee(ニー)】最小と最大の中間に設定。他のパラメーターとの兼ね合いを考えて上下させる。
【アタック】まずは最速に設定、少しずつ数値を上げていく。イメージの音が出てきたら一旦ホールド。
【リリース】タイトにしたい時は、アタックより少し大きい値に設定。
スネアの設定は以下の通りです。
【スレッショルド】キックと同じ。
【レシオ】キックと同じ。
【Knee(ニー)】硬くしたいときは値を最小に。それ以外は少しずつ値を上げ様子を見る。
【アタック】ある程度数値を上げておき、アタックがつぶれないようにする。
【リリース】サスティンが欲しい時はタイムをやや長めに設定。
【今月のちょいレア】CAD E300S
比較的ロープライスでありながら、ハイエンド機種ブランドともいい勝負をする。CADのコンデンサーマイクの中では上位に位置する、万能型の名マイクだ。
【今月のMV】川嶋志乃舞「Jump up!!!」
日本テレビの音楽番組「バズリズム02」でもオンエアーされた、瞬発力全開のMV。軽やかで弾けたダンスビートと三味線の真髄が絶妙にリンクする。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
WORSTRASH 「Draw up my emotions」
パンク、メロコアの期待のニューカマーバンドの新作。ボーカルSweeney Lenの放つエネルギッシュなパワーボイスと、さわやかでアグレッシブな楽器隊が織りなす強烈なステージングも圧巻だ。
MILF 「DESERT OF CLOUD」
ロカビリー、リズム&ブルース、R&R、初期パンクのいいとこどりのロックアルバム。古きを温めてから、あえて再度冷ましたようなインパクトのある存在感が存分に味わえる作品。
川嶋志乃舞 「光櫻」
ハイパーシャミセニスト川嶋志乃舞の本質をすべて詰め込んだ「伝統芸能盤」が、満を持しての全国リリース。ポップな面だけではない、彼女のこれまでの三味線キャリアが思う存分に堪能できる。
Cuicks 「neo teenagers」
フューチャーEDMの決定盤。渋谷系の流れが現代風にマッシュアップされており、メロウなメロディーと浮遊感のあるサウンドスケープの融合が好印象だ。ネクストフェーズを感じさせるインテリジェンスなポップネスが満載。
Amtika 「Remenbrance」
フュージョン、ジャズをベースに、リアルタイムのルーツミュージックを貪欲に取り込んだ、インストの黄金律的アルバム。フレージングの組み合わせの妙が素晴らしく、一気に最後まで聴けてしまう。
【超低音収録マイク&低音系デュアルマイク対決】
組み合わせその① YAMAHA SUBKICK & LEWITT DTP640REX
組み合わせその② SOLOMON MICS LFRQBLK & audio technical AE2500
Super LOW(50Hz以下を目安)は、①YAMAHA SUBKICKより②SOLOMON MICSの方が
伸びていますが、上の音域はSUBKICKの方が少し伸びている気がします。
又、①LEWITTと②audio technicaを比べてみると、LEWITTの方が低域が伸びています。
なので、あえてaudio techinicaはSOLOMON MICSと組み合わせてみました。
(ただし、あくまでも一つの目安と思ってください。)
【大学生バンドのセルフREC】
「4つ打ちダンスロック」は、リバーブのかけ方を細かく工夫してドライながらもリッチな音像が出来てきました。次はダイナミックス系(コンプ、リミッター、エキスパンダーなど)について考えてみます。
「EQとコンプ、どちらから手をつけたら良いのか?」と聞かれることがあります。
曲調やコンセプトで、リバーブ含め臨機応変に変えていくのが一般的ではないか?と思います。
とりあえずこの曲は、「キックの4つ打ちが揃っている存在感」がキモなので、コンプを使っていきます。
RECの際にもコンプを2段がけで使用して、ある程度音量を揃えていますが、より「人間が演奏している感じ」を残しつつ音粒を揃えていきたいところです。
ここでコンプの基礎知識に触れてみましょう。
コンプレッサー、通称コンプは「音量を揃えるエフェクター」です。
スレッショルド(ある一線)を超えた音量を、どれくらいの割合で抑えるか調整するのがレシオです。図の右側ではレシオが2:1になっているので、スレッショルドを超えた音量が半分に圧縮されているということです。
レシオはパラメーター値が1:1から1:∞(無限大)まで存在することが多いのですが、レシオが1:1の場合は、スレッショルドをいくら低く設定しても全く圧縮はされません。
【今月のちょいレア】CAD EQUITEK E350
今やレジェンドになりつつある、ビンテージコンデンサーマイクの雄、E350。当時は欧米エリアのみで販売されていた。定番のビンテージマイクよりも密度が濃く、ワイドレンジな優れものだ。
【今月のMV】みるきーはぼくの味「夜が明けるまで」
ゲスの極み乙女。やindigo la Endの影響を多大に受けつつも、少し違った切り口でアウトプットしている。上モノのリフとリズム隊の絡み具合が良い。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
De怪!「Burn out」
アメリカでの活動経験もあるBOSS率いる、ボンテージメタルバンドのミニアルバム。専門学校講師でもあるTOMO氏のハイトーンボイスが冴えわたる。ハードロックのニュームーブメントを起こしそうな予感。
The Echo Dek 「アイ ブレイク ユア ハート」
2020年代のブルーアイドソウルとオルタナティブが、蜜月のように融合した作品。The futureOf Motownとも呼べそうだ。日本語バージョン、英語バージョンの分け方にもきめ細かなセンスを感じる。
sunday melanchory afternoon 「春の知らせ」
全曲サビ頭、というインパクト全開のマキシシングル。一聴すると定番のようだが、聴きこむうちに軽やかなオリジナリティーがまん延した世界観に気づく。
経血(EYESCREAM、NO NO NO とのスプリット盤)/ Croon A Lullaby
80年代ニューウエーブと初期パンクが融合したロックバンドのスプリット作品。伝説の雑誌「DOLL MAGAZINE」の雰囲気を思い出す。全国発売中。
ザ・ビートモーターズ「土手」
イオンCMソングVo.にも起用経験のある秋葉正志氏の歌声が、いつまでも耳に残るデジタルシングル。エレファントカシマシや奥田民生などが好きな人はドはまり間違いない。
【お詫び】先回掲載したザ・ビートモーターズ「FGTSL」の画像が間違っておりました。お詫びいたしますとともに、正しい画像を再掲載させていただきます。
ザ・ビートモーターズ 「FGTSL」
ROCK IN JAPANやCOUNTDOWN JAPANにも出演経験のあるロックバンドのデジタルシングル。フォーキーでメロウなメロディーラインと歌声、そして定番を少し外した楽曲の三位一体のバランスがとても良い。
【超低音収録マイク対決】
前回ご紹介した「低音系デュアルマイク」と今回取り上げる「超低音マイク」を組み合わせて、ドラムのキックを録りくらべてみようという企画です。
超低音マイクその1 【YAMAHA SUBKICK】*生産完了品
読んで字の如し、スーパーLOWからLOWまでの収録に特化したマイク。中音以上のレンジは、ほとんど録れないので、他の低音マイクと組み合わせて使用するのが前提です。
超低音マイクその2 【SOLOMON MICS LFRQBLK】
前述のSubkickと役割は似ていますが、違う点は「本体の形状がそこまで大きくないので、大抵のマイクスタンドにセッティング可能」なこと。SubkickよりスーパーLOWが伸びてしまう気がします。
次回、これらの低音マイクと低音デュアルマイクを組み合わせ、実際にドラムキックを収録し検証します。
組み合わせその① audio technical AE2500 + SOLOMON MICS LFRQBLK
組み合わせその② LEWITT DTP640REX + YAMAHA SUBKICK
【大学生バンドのセルフREC:MIX編】
4つ打ちダンスロック(仮称)のMIXに取り組んでいる彼ら、セミドライな音像を作り出し「タイト」と「リッチ」の両方を演出するため、前回触れた「ドライな感じのリバーブ」を試みようとしている。
ミックスの定位はRide→L、Hi-Hat→R1、Floor Tom→L、Mid Tom→L、Hi Tom→ややR。
(注:サウスポーのドラマーの場合はこの逆になる)
リバーブをかける対象となるパートは
① Snare Top1(アタック用)
ゲートリバーブをモノラルで少なめにかけ、その後リバーブタイムを短くしたホールリバーブ
をステレオでかける。
② Snare Top2(胴鳴り用)
Top1と同じ。様子を見ながらタイム、量を少し調節。
③ Snare Bottom(スナッピー)
ゲートリバーブはTop2と同じくらいだが、タイムの短いホールリバーブを少し多めにかける。
④ Floor Tom
PANがL寄りなら、Lだけにリバーブタイムの短いホールリバーブをかける。R寄りならRだけに。
⑤ Mid Tom
Floor Tomと同じ。
⑥ Hi Tom
Floor Tomと同じ。
⑦ Over Top L
ホールリバーブをLだけにかける。Tomより少し多めの量で。
⑧ Over Top R
Over Top Lと同じく、Rだけにかける。
⑨ Hi Hat
ホールリバーブを、Rにかなり少量でかける。
⑩ Ride
ホールリバーブを、Lに平均より少なめ程度に。
⑪ Ambient
ドラム全体に、リバーブはかけずコンプをやや深くかけてサスティンを伸ばして入れ、様子を見る。
⑫ ギターバッキング
ステージでいうと下手(客から見て左)側になるので、L側のホールリバーブをほんのりかける。さらにアーリーリフレクションを別のAuxでステレオでかける。
⑬ ギターリード
ステージ上手(客から見て右)側になるので、R側のホールリバーブをかける。バッキングにかけた分より少し多めに。L側のホールリバーブもほんのりとかけて、更にアーリーリフレクションを別のAuxで、ステレオである程度かける。
⑭ キーボード
キーボードはステレオファイルなので、PANを3時、9時に振って、Lだけ、Rだけのホールリバーブを少しかける。
⑮ ボーカル
リバーブタイムの短いホールリバーブを、ステレオで少しかける。歌とバックのなじみ具合を確認しながら、プリディレイタイムを調整する。
⑯ 同期(ストリングス)
ストリングスはあえてモノラルファイルにしてセンターより少し左、または右に配置する。タイムの短いホールリバーブをL、Rプリフェーダーにしてかけて立体感を出す。この時リバーブタイムもしくはプリディレイの値を少しずらし、ステレオ感を斜め奥で出す。
⑰ コーラス
元々のPANがLであれば、Lだけのホールリバーブを控えめにかけていく。
リバーブはそのままだとダブつくポイントが出てくるので、低音と高音をEQで削り、リバーブのリリース音が次の音にかぶらないようエキスパンダーやノイズゲートで調整する。ポイントは、安易にステレオリバーブをかけない、ということだ。
又、ベースやキックのような低音パートにリバーブをかけると曲の低音域がぼやけるので、基本はかけない。
(シューゲイザーやブルックリン勢などのジャンルでは、リバーブのプリディレイを遅くして原音が沈まないようにするかけ方もある。)
【今月のちょいレア】SHINANO GP1500(modify品)
ピュア電源整合器のパイオニア、SHINANOが放つディストリビューター。アースを除去し、プレーンな電源を供給する。現在はVoltAmpere社がその流れを引き継いでいる。
【今月のMV】クラウディールーム「walk home (27km)」
リラックスした雰囲気の中にも心地よい緊張感が点在する、ギターロックの佳曲。音楽性の幅がナチュラルに広がり、バンドとしての伸びしろに期待が高まる。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
スーパーアイラブユー 「WE ARE BEAUTIFUL DREAMERS」
ローリングストーンズ、エルビス・コステロといった洋楽ロックを根底にもち、それらに影響を受けた邦楽ロックのレジェンドたちの系譜とも言える、エッセンス満載のサウンド。2019年9月9日全国発売。
川嶋志乃舞 「SUKEROKU GIRL」
日本を代表する三味線マエストロが放つ、ハイパーポップアラカルトアルバム。ポップス・フィールドの隅から隅までのエクセレントなアイデアを昇華させた力作。2019年10月全国発売。
THE JIVES 「She Heard Out Usual Troubles」
国内外のロックンロールをベースに、現在のロックエッセンスをさりげなく斜めから取り入れた、セミ・現在進行形なロックアルバム。様々なアイデアがオルタナティブ的に交差し、有機的に化学反応を起こしている。
ザ・ビートモーターズ 「FGTSL」
ROCK IN JAPANやCOUNTDOWN JAPANにも出演経験のあるロックバンドのデジタルシングル。フォーキーでメロウなメロディーラインと歌声、そして定番を少し外した楽曲の三位一体のバランスがとても良い。
3tsuaru 「LAUGH BUG」
普遍的ミニマルミュージックと、先鋭的ポストロック、そしてポップなオルタナティブ・ロックが絶妙なバランスで絡む、フューチャーミュージックの決定盤。邦楽中心のリスナーでも自然に入り込むであろう、不思議な魅力にあふれている。
*ジャングルライフ262号28ページに、川嶋志乃舞さんと樫村の対談記事を掲載していただきました。是非お読みください*
WEB対談ページ
https://www.jungle.ne.jp/sp_post/kawashima-x-kasimura/
【低音用デュアルマイク対決②】
前回は、低音用デュアルマイク「audio-technica AE2500」と「LEWITT DTP640REX」を用いてバスドラを録音し、比較してみました。
今回も同じ2本のマイクを使用して、エレキギターの録音をしてみましょう。
一般的にエレキギターREC用の定番とされているSHURE SM57で中音~高音を録り、低音補強用として上記のデュアルマイクを加えます。
ギターアンプは定番中の定番であるMarshall JCM2000と1960のキャビのセット。
スピーカーのど真ん中を少し外したポイントを狙い、収録します。
シールド、マイクケーブル、電源ケーブルは全てオヤイデ。ストラットのギターを使用して、エフェクター系は一切使わず、アンプ直でオーソドックスな歪みのバッキングを録音します。
【audio-technica AE2500 + SHURE SM57】
中音~高音用のSM57は、予想通りソリッドでやや粘っこい音を拾いました。
AE2500の「ダイナミックマイク」チャンネルは中低音域のふくよかさがしっかりと、「コンデンサーマイク」チャンネルはクリアな低音からブライトな中高音までまんべんなく録音されており、SM57を含めた3つのチャンネルを普通に混ぜるだけで、目の前でギターアンプが鳴っているような音で録音できました。
【LEWITT DTP640REX + SHURE SM57】
SM57は前述の通り。DTP640REXの「ダイナミックマイク」チャンネルは、低音から中低音にかけてタイトでファットな音が、「コンデンサーマイク」チャンネルは締まりのある低音とリッチな中低音域が好印象を残しました。
AE2500、DTP640REXのどちらの組み合わせでも、アンプシミュレーターでは再現しにくい濃密な音像が実現できました。
【大学生バンドのセルフREC~MIX編】
今回はリバーブの実践的な使用例を挙げてみましょう。
大学生バンドの曲「4つ打ちダンスロック」は、一部のパートを除き全体的にタイトでドライな質感。それだけにメンバー全員が「リバーブはほとんど必要ないのでは?」と思っているようです。しかし、ノンリバーブにしてしまうと各パートの混じりがイマイチになったり、リッチな広がりや奥行き感が演出しにくくなりがちです。著名アーティストの音源でも、全体的にドライであっても1つ1つのパートには少しずつ緻密なリバーブがかけられている事が多いのです。
ドライでありながらリッチな音像を創り出すには?
① ステレオとモノラルが混在しているトラックで、モノラルでも良いものは極力モノラルにして→モノラルのリバーブをかける。不必要なにごりや残響をある程度カットできる。
② 初期反射(アーリーリフレクション *前月分を参照)のタイム、Difusion、密度(dense)の数値をある程度減らし、パンを意識しながら細かくリバーブをかける。
③ 一曲の中に数多くのリバーブを使わない。出来ればプレート系とルーム系といった2種類くらいに留め、リバーブの次にエキスパンダーやノイズゲートを緻密にかけて、減衰が自然になるよう細かくコントロールする。
④ リバーブの種類を意識しないかけ方を試みる。例えばホールリバーブのプリセットは2.5m secぐらいが一般的だが、極端に短くし(例:0.5~0.8m secぐらい)イコライザーで低音部と高音部をある程度削って、モノラルで控えめにリバーブをかける。
【今月のちょいレア】 TASCAM X48MKⅡ
96kHzで同時に48トラック録音可能な業務用ハードディスクレコーダー。音質もProtools HDXと同等か、それ以上のクオリティーだ。2015年ごろ生産完了。
【今月のMV】スーパーアイラブユー「FORGET ME NOT」
エレカシ、真心ブラザーズ、サニーデイサービスに通じる、フォーキーでメロウなナンバー。良質なポップスと呼べる佳曲だ。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
クラウディールーム 「 LOSS 3.5 」
ギターロックの本質を少し斜めから解釈した、エモーショナルなロックバンドのミニアルバム。普遍性のある各パートのフレーズだが、バンド全体に混ざると化学反応をおこし、個性を発揮する。
迷い羊とノクチルカ 「 ロマンチカループ 」
インターナショナルな匂いのする、ポップな女性デュオのシングル。今作はクラウディールームのリズム隊をサポートに迎え、ポップワークスの枠を超えた、存在感のある熱い楽曲に仕上がっている。すばらしいコーラスワークも必聴だ。
海月ひかり 「 アーティスト 」
邦楽女性Vo.というカテゴライズでは括れない、実力派シンガーの渾身のマキシシングル。大人の女性をテーマとしつつも、メルヘンチックな雰囲気も漂う注目作だ。
カカシカシカカ 「 Jack Song 」
ポップマエストロ星野源を彷彿とさせる、セレブなセンスが光るポップチューン。随所に洋楽の黄金律が見え隠れし、聴き手を選ばない幅広い魅力がある。
Porcho
プリンスmeets レッドツェッペリン、VSレッチリといったような、欧米のオールドロックとブラックミュージック、オルタナが合体したような、とにかく濃いシングル。肩肘張らず聴ける英語詞の内容と発音がグッド。
配信も決定。https://linkco.re/6SBT97fB
【低音用デュアルマイク対決】
今回は、先回ご紹介した2つのマイク「audio-technica AE2500」と「LEWITT DTP640REX」を使用して、実際にバスドラを録ってみます。どちらも元々バスドラやベース用に開発された低音用の特殊なデュアルマイクです。
【audio-technica AE2500】
【LEWITT DTP640REX】
マイクプリにはTUBE-TECH MP1Aを使用します。
どちらのマイクもダイナミックとコンデンサーの2ch仕様になっており、低音用にチューニングされていますが各々キャラが違います。
バスドラのキックを録音してみました。
リリースされて15年以上経つaudio-technica AE2500から試してみましょう。
【ダイナミック部】
同社の名マイクATM25に近いキャラ。スーパーローより少し上の100~250Hzあたりのアタックは、やや硬め。オーソドックスな低音の質感が録れました。
【コンデンサー部】
同社のAE3000の重心が下がった感じ。クリアな低音が魅力的だ。
LEWITT DTP640REXも、同じくバスドラを録音してみます。
【ダイナミック部】
AE2500のダイナミックより重心が下で、スーパーローの上の方ぐらいから録れました。中音から中高音はAE2500ほどソリッドではなく、プレーンといった感じ。
【コンデンサー部】
低音にチューニングされていながらも、クリア&タイト。プライス的にはLEWITTの方が、少しリーズナブルです。
コンデンサーマイクで低音にチューニングされているマイクは、今回ご紹介したこの2つ以外はあまり見かけないので、どちらかを手に入れればキックだけでなく、ベース、スネア、ギターなど幅広く対応できると思います。
【大学生バンドのセルフREC】
前回に続きリバーブについてお話します。リバーブはディレイの集合体で成り立っています。効率的にコントロールするには、まず大本の残響の在り方を知るべきです。
残響音には、大きく分けると2種類あります。
①反射音が窓、床、壁などにぶつかり、ダイレクトに耳に入り込む「初期反射(アーリーリフレクション)」
②反射音が床、窓、壁などに何度もぶつかって耳に入ってくる残響
一般的なリバーブのパラメーターは、初期反射以外をコントロールして設定することがメインとなっています。
当然これにないパラメーターや、呼び方の違うもの、また省略されているものなど、プラグインやハードウエアには様々な仕様があります。上記の基本的なパラメーターがしっかり理解出来ていれば、大体は応用が利くと思います。
【今月のちょいレア】YAMAHA MT-120
現行機種の名機MT-8に通じる、ナチュラルなキャラクター。現在はディスコンであるが、もし中古で状態の良いものが出ていれば是非、ファースト・ヘッドホンにおすすめ。
【今月のMV】cruyff in the bedroom 「FUZZ ME!!!」
ブリットポップ的メロディーと、シューゲイザーの轟音がセンシティブにクロスオーバーする
cruyff in the bedroom代表曲の一つ。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
Sonic Blew 「 Masquerade 」
ハードロックテイストをフュージョンにぶち込んだ、セミ・ラウド系インストバンドのミニアルバム。卓越した演奏力と、計算されつくしたアレンジに注目。
水鏡 「 水鏡 」
国内を代表する、シンフォニック・プログレバンドの1stアルバム。フランスの大手インディーレーベル「MUSIA」からのリリース。和と洋のテイストの絡みがユニーク。逆輸入盤。
nikiie 「 The swirl of dust 」
ゲス極のベース、休日課長率いるバンドDadalayのボーカルとしても活躍するnikiieのデジタルシングル。エリカ・バドゥがポストロックに手を染めたような、意欲作だ。
RISKY 「 Reborn 」
仙台で活動する、ラウドでメロディアスな正統派ロックバンドのミニアルバム。90年代のアメリカンロックがベースになっており、深みあるボーカルサトルの声が印象的。全国発売中。
paroxtsm 「 paroxtsm 」
福島在住のヒップホップトラックメイカー、兼DJ。海外、特にアメリカでの評価があらゆる面から上がってきている。全国発売中。
今回はドラムのキックやベースの録音で活躍する、少々特殊な低音マイクを2つご紹介します。
【 audio-technica AE2500 】
【 LEWITT DTP640 REX 】
どちらもダイナミックマイクとコンデンサーマイクの一体型仕様となっており、1本のマイクで2ch分収録出来るユニークな作りとなっています。
【 カバーを外したAE2500 】
【 カバーを外した DTP640 REX 】
バスドラ収録用に開発されているようですが、ベース、エレキギター、エスニック楽器全般など、守備範囲はからり広いと思います。
専用の2chマイクケーブルも同梱されています。
【 AE2500の同梱ケーブル 】
【 DTP640 REXの同梱ケーブル 】
次回はこの2本のマイクを使用し、実際にドラム、ベース、エレキギターを録音して比較検討してみたいと思います。
【 大学生バンドのセルフREC:MIX編 】
「レコーディングやミックスで使われる、一番身近なエフェクターは?」と尋ねると、大抵の人が
「EQ、コンプ、リバーブ、ディレイ」と答えるのではないかと思います。
今回は空間系エフェクターの代表格であるリバーブについて、考えていきます。
リバーブは「ディレイ」の集合体です。
リバーブ、といっても「ルームリバーブ」「プレートリバーブ」「ホールリバーブ」「スプリングリバーブ」「ゲートリバーブ」などかなりの種類があるのはご存じのとおりです。
その前に「なぜリバーブをかけるのか」という初歩的な疑問から考えてみましょう。
今まで当連載の中では「マイクの下にタオルや吸音材を敷き、部屋の反射を抑えて」比較的デッドな素材を収録する方法をご紹介しました。
なぜデッドにすることにこだわるのか?
音の反射が多い部屋で録音すると、音の素材がこもったり奥に行きがちになり、ミックス時に前に持ってこられないという状況に陥る可能性が高いからです。(シューゲイザーなど、音楽のジャンル的にわざと狙うこともありますが。)
音素材そのものはなるべくドライに録音し、ミックス時に状況に応じてリバーブをかけて、前後斜めの位置関係をコントロールするのが、昔から行われている常套手段と言えます。
今このコーナーで取り上げている大学生バンドの「4つ打ちダンスロック」は、比較的ドライな音像を狙っているので、リバーブは少なめながらも的確な量をかけていきたいところです。
【 今月のちょいレア: ENSONIQ MR-RACK 】
今や伝説的存在になりつつあるアメリカのシンセ・サンプラーメーカーENSONIQの、フラッグシップ音源モジュール。90年代後半にリリースされ、ファットでタフなサウンドキャラクターは現在でも世界中のトラックメーカーを魅了し続けている。
【今月のMV】S.H.E [ Struggle-Head,Emergence ] / Dear my sun.
ネオアコ調ギターから始まるイントロが特徴的な、オルタナバンドの代表曲。さわやかさと、いかつさがバランスよく同居している。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
magenta 「 全てを許したら 」
Jオルタナから、洋楽寄りのポストロックに転身したキーボード・シューゲイザー・トリオバンドのデジタルシングル。良い意味でサブカル色が強化され、幅広い玄人受けが期待できそうだ。
Rooky Babe’ 「 Smells like ika spirit 」
パロディーを真っ向からアピールする、まじめなエレクトロ・ファンクバンドのミニアルバム。
Zepp東京や新宿BLAZEといった大きな会場でのライブを多数経験し、ライブパフォーマンスもピカイチ。
眠らない兎 「 今宵もランデヴー 」
タイトなリズム隊と豪華絢爛な上モノが有機的に絡む、女性Vo・ギターロックバンドのシングル。独自の世界観を持つ歌声と歌詞との融合が素晴らしい。
合格4号ズ 「 ビューティフルを追いかけろ 」
古くは「RCサクセション、村八分、泉谷しげる」あたりと、最近では「エレカシ、コレクターズ」にも通じるR&Rバンドのシングル。懐かしさの中にも密かなオリジナリティーを感じる。
三日月ゴシップ
青山学院大の軽音部で結成された、セミ渋谷系バンドのシングル。アンニュイさとタイトさが高次元でリンクする、センシティブな雰囲気が感じられる。
毎回セルフRECに関する話題を様々な方向から取り上げるこのコラムですが、今回は「レコード会社などの現場から見たデモ音源」にまつわる話を取り上げます。
先日、(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスの石田裕一氏とお会いする機会がありました。石田氏は現在、同社音楽出版部 営業グループに所属され、ディレクターはもとより大規模イベントの総括プロデューサーなど多方面で活躍されています。
石田裕一(いしだひろかず)氏
略歴:
矢井田瞳の制作ディレクターとしてアルバムやシングルの制作、ライブツアーや各種TV収録などの現場。手嶌葵の出版コーディネイトとして、スタジオジブリアニメ「コクリコ坂からの」アルバム制作に参加。現在は作家チームを取りまとめ、アーティストへの楽曲提供、アニメなどの劇版制作、CM楽曲制作などを取り仕切るとともに、2016年8月よりヤマハがスタートさせたYamaha Music Auditionにおいて、新人発掘及び育成も担当する。
樫村(以下、樫)お久しぶりです、2017年のセミナー講師(注:樫村が講師を務める茨城音楽専門学校で開催したミュージックプロデュースセミナー)をお願いした以来ですよね。
石田(以下、石)約一年半ぶりですね。
樫)ヤマハさんには、毎月ものすごい数のデモ音源が送られてくると思うのですが、それらの音質ってどんな感じなんでしょうか。
石)10年前と比べれば、機材の進歩も手伝って音質のクオリティーは全体的に上がっていると思います。これは他のレコード会社にも共通したことだと思います。
樫)確かに数十年前のカセットMTR時代に比べたら機材の進歩は目まぐるしいし、これからもっと進化が加速するでしょうね。ちなみに送られてくる物で「デモ音源をそのままリリース出来てしまう」みたいなハイクオリティーな物ってありますか?
石)音質面だけで言えば少しはあるかと思いますが…。今は例えば「マキシマイザー(注:別名ブリック・ウォール・リミッター。通常のリミッターとは違い、音声のピークを先読みし音が歪まないようにするエフェクター。)でパツンパツンに音圧を上げて送ってくる人」と「そういった物の存在を知らず、純粋なミックスダウンだけで送ってくる人」の真っ二つに分かれているという感じです。
樫)なるほど。ある程度宅録をやっている人たちであれば、マキシマイザーの多段がけは当たり前になっているんでしょうね。ただ、パソコン内部だけでミックスをやってプラグインに頼りまくっていると、有名なバンドの音源、特に洋楽トップクラスの質感には届きづらいと思います。
石)そうですね。僕も今まで、いろんなレコスタで「洋楽っぽい質感にしてほしい」と言っても、今一つ届かなかった経験の方が圧倒的に多いです。国内のメジャーっぽい音にはなりやすいんですけど。
樫)思うに、例えばマルーン5やチェーンスモーカーズのような洋楽トップクラスの音は、日本人がやっているセルフREC とは真逆の質感であるような気がします。特にスリップ・ノットのようなラウド系は、より格差を感じますよね。
石)確かに、あのナチュラルな立体感とか濃密で豊潤な音は、日本では簡単には出せない。
樫)日本は欧米と比べると電圧が低いから、電源周りから「的を得た強化」を促していかないと、いくら良い機材を導入しても本領発揮出来ないんです。
石)プロが利用するレコスタは、電源を始めとする周辺機器には相当こだわっていると感じます。
樫)完全業務用のスタジオであれば、当たり前の話ですね。しかし僕の視点から見ると、マイクからメイン卓やADコンバーターまでの距離が長すぎたり、パッチベイを含む接点が多すぎて、ProToolsHDXに入るまでに相当なロスが多くなるのでは?と感じています。
樫)この「距離が長すぎたり、接点が多すぎるが故にロスも増える」部分を逆に捉えれば、セルフRECの強みになるとも思うんです。
石)強みとは?
樫)セルフRECならではのコンパクトな環境です。例えばマイクプリ等のアウトボードをすべてブース内に設置して、ブースの中でマイクレベルからラインレベルに引き上げてやる。するとノイズが乗りにくいだけでなく、音質も限りなくワイドレンジになります。さらにマイクケーブルやタップ、電源のパワーケーブルなんかもハイエンドな物を使用して狙い通りのRECが出来れば、目の前で鳴っているようなリッチなサウンドに近づけるんじゃないかな。
石)なるほど(笑)
樫)これからデモ音源をヤマハさんに送ろうと思っている人は、送る前にこの対談を読んで欲しいですね(笑)
【今月のちょいレア】APHEX CHANNEL
真空管マイクプリアンプを搭載したチャンネルストリップ。コンプ、EQはもとより、APHEXのお家芸とも言えるエンハンサーの効き方が素晴らしい。派手な音、アメリカンな感じの音が好きな人は是非チェック。
【今月のMV】 Mr.WANT 「グルーヴィングアドバイザー」
「テクニシャン揃いのレッチリが、シティーポップを奏でている」かのような、ファンキーでおしゃれなナンバー。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
CANDELASTER 「RAINBOW BEAM WAVE」
リアルタイムのエレクトロサウンドを、一度MIX UPした上で独自の感性で再編しているニューエイジ・エレクトロニカユニットのシングル。良い意味で元ネタがわかりにくく、EDMヘビーリスナーにもおすすめ。
天邪鬼 「Late Show」
その名が示す通り、クロスオーバーロックを斜めから解釈した2010年代のニューロックバンドのマキシシングル。ルーツを感じさせながらも、次の展開では全く違うネタで切り込んでくる大胆さが心地よい。
fusen 「夜更かし」
栃木在住ギターロックバンドのシングル。ティーンズバンドとは思えない楽曲の構成力や、音色セレクトのセンスに光るものが多大にある。
V.A 「ULTRA HIGH BEAM」
インディーズ大手レーベル「HIGH BEAM RECORDS」が放つスーパーコンピレーション。当スタジオではフラスコテーションのRECを担当。全国発売中。
Jam en drop 「Be crazy」
80年代アメリカンハードロックに、アルトサックスとバリトンサックスが真っ向から対峙するニュータイプロックバンドの配信シングル。キレのあるVo.に加え、ドラム、ギターもよりソリッドになり、彼ら独自の世界観を作り上げている。
今回取り上げる機材は、DigiTech STUDIO QUAD Ver.2 です。
前回取り上げたDigiTech のTALKERと同じく、90年代後半にリリースされた完全独立4chマルチエフェクターで、当時の価格は定価で8万円でした。
エフェクトの種類は「リバーブ、ディレイ、コンプ、EQ、コーラス、フランジャー、トレモロ、オーバードライブ、ディストーション」といった定番のものだけでなく、ボコーダーのような個性的なものもたくさん入っています。プラグイン以外を試してみたい方にはまさに打ってつけの逸品と言えます。
キャラクターは国産メーカーの物と比べると「全体的に派手」で、いかにもアメリカンといった言葉がハマりそうなモデルです。
とにかく1つ1つのクオリティーが非常に高く、現在使用しても十分通用する実力を持ち合わせています。プラグインではなかなか出せない濃密さと立体感が楽しめ、レコーディングだけでなくPAの現場でも大活躍すると思います。
また上位機種には2UラックのSTUDIO 400というマルチエフェクター(当時価格13万円)があり、レキシコンのPCMシリーズやT.C.electronicのM2000、M3000などと比べても遜色のないハイエンドな機種でした。QUAD Ver.2より出回っていないので、非常にレアな機材と言えるでしょう。
【大学生バンドのセルフREC:MIX編】
「4つ打ちダンスロック」の重要なボトムを支えグルーブを演出するのは、キックとベースだ。前回は「サイドチェーン・コンプ」という「キックの音が入ってきた瞬間に、ベースを自然に少し下げて低音同士のダブつきを回避させる」手法を試みた。
最初よりはずいぶん良くなったのだが、まだ何かしっくりこない。
サイドチェーンも何度もトライしたおかげで、自然な感じに効いているはずなのになぜかキックのアタックが少々不自然に聴こえるのだ。
使用マイクは通常の低音マイクElectro Voice N/D868と、SOLOMON MICS LoFReQ SubMicの2本。それぞれ1トラックずつ使用して録音している。
DAWソフトのN/D868トラックとSOLOMON MICSトラックの波形を比べてみると、波形の山と谷が逆になっており、アクセントを打ち消しあい不自然なアタック感が出ていたことに気づいた。コムフィルターという現象だ。
SOLOMON MICSトラックを少し前にずらすと、波形のピントがしっかり合う音像になり、標準的な4つ打ちの雰囲気が一気に高まった。
次に、3本のマイクを使用しているスネアの3トラック分を検証してみると、スネア裏側のボトムマイクのタイミングが少し後ろになっていた。こちらも波形を前にずらしてみると、EQを使わなくてもブライトな音になった。
またタム、フロアタムの鳴っていない部分の波形も切ることにより、ダンスミュージック的な分離感がより強調された。
【今月のちょいレア】FOSTEX UR-2(生産完了品)
ロープライスなのにハイクオリティーなFOSTEX らしいブランドカラーを継承するマスターレコーダー。AD,DAコンバーターも非常に優秀で、高品位な24bit 96kHzマスターファイルも気軽に作成できる。DAWの内部バウンスによる音質の変化に頭を悩ませている人は要チェック。
【今月のMV】 Andare 「トリックとりっくら」
確かな作曲力、そして等身大かつメッセージ色ある歌詞がより強固に結びついた、彼らの代表曲といえる作品。アルカラのベーシスト下上貴弘がゲストで参加している。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
ニトリヒロヤス 「光と影のうた」
エモさとシックさが絶妙なバランスで共存する、栃木在住のシンガーソングライターニトリヒロヤスのシングル。Radio Berry(FM栃木)のパーソナリティー、The Timersのドラマー、杉山章二丸と結成した「ニトリヒロヤストリオ」としても活動している。
楓 「きみのうた」
福島在住シンガーソングライターのデビューシングル。天然酵母のような優しさに包まれたポップミュージックに心癒される。中音域に独自の倍音が存在する声質と、楽器隊との緻密な絡みが魅力的だ。
川嶋志乃舞 「パンダトニック/CityShake feat.メイビーモエ」
モスクワで開催された日本文化フェスティバル「HINODE POWER JAPAN」に出演、三味線の魅力を全世界に広めている彼女。今回はヨーロピアンエレクトロと三味線を合体させた「パンダトニック」、ホワンVo.メイビーモエをフィーチャリングした「CityShake」ニューバージョンで、アーティスティックな対極性を見せている。
NIKIIE 「kimitoiruto」
ゲスの極み乙女。のBa.休日課長を中心としたバンドDADARAYのVo.REISとしても活動している、NIKIIEのデジタル配信シングル。無国籍風のサウンドが新鮮、かつ新しい音楽に挑戦する意気込みが感じられる。
MONA RECORDS MIX -Happy hourー (コンピレーション)
当スタジオではmusic makes me...の楽曲を担当。ハイソなポップセンスにさらに磨きがかかり、玄人志向の音楽ファンのみならず幅広い洋楽ファンにも響く佳曲となっている。
今回取り上げる機材はDigiTechのレアなボイスプロセッサー「TALKER」です。
ギタリスト、ボーカリストには馴染みのブランドであるDigiTechから90年代後半に発売され、広義で言うところの「ボコーダー」の部類に入りますが、他製品とは一線を画するニューエイジ的キャラクターが個性を醸し出していました。
ボコーダーの原理を簡単に説明すると、フィルターを応用してマイクでしゃべった声を、同時に演奏している楽器(キーボード、ギターなど)でエレクトロ的に「しゃべらせる」エフェクターです。
TALKERはダフトパンクの名曲「One More Time」ではAutoTuneと併用して使用され、98年にリリースされた大ヒット曲 シェールの「Believe」ではサビのロボ声として使われ一躍有名になりました。
【大学生バンドのセルフREC:MIX編】
モニタースピーカーやメイン機材のセッティングがいい感じに決まり、具体的なミックスへ。
どのパートから手を付けるのかは、プロ・アマ問わず様々で迷うところだが、とりかかる曲が4つ打ちダンスロックなので「Vo.Bass.BD.」といった軸となる3点から手をつけることにした。RECの段階で録り音にはかなりこだわっているので、ミックスで「足し算」をする必要はあまりなく、ダブついている成分をEQで少しずつカットする「引き算」中心にすすめられそうだ。
キック、ベース、Vo.のパンはセンターにして、ノンエフェクターで音量だけでバランスをとっていく。キックとベースは単独では狙い通りの音なのだが、1拍目3拍目でアクセントが強くかかる箇所では低音がダブつくだけではなく、各々のアタックが打ち消しあって、少々音が割れているように聴こえる箇所がサビ中心にあることに気づいた。
この現象を回避すべく「サイドチェーンコンプ」という技を試してみる。
れはハードウエアの中級以上のコンプにはある程度備わっている機能だが、最近ではハードウエアだけでなくプラグインのコンプにも実装されつつあり、特にクラブミュージックでは定番の機能だ。手法も一般的にはなってきたが、慣れは当然必要なのでうまくいかない時は「8小節~16小節ぐらいずつ、キックの入るポイントでベースをボリュームカーブ3~5dBぐらい下げて、模範的なかかり方を確認しつつ」チャレンジしていくのが良い。
【今月のちょいレア】 YAMAHA ProR3
リバーブの名機REV5、REV7の後継機にあたり、95年当時15万円でリリースされた逸品。SPX900、1000、990よりもワンランク上の高品位な空間演出が素晴らしい。現在は中古で3万前後で売買されている。プラグインのリバーブに飽きた人には超おすすめ。
【今月のMV】眠らない兎 「regret」
冬をイメージしたシックなバラードロック。バックグラウンドに粉雪が舞っている様が映画のワンシーンのような雰囲気を醸し出している。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター
Whirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
TOLIISOGI 「 THE LOVERS OF UNIVERSE 」
バンド初のフルアルバム。今作からコーラス、パーカッションといった強力なサポートメンバーが参加し、同期音源も一新し最新鋭のシティーポップやクロスオーバーが堪能できる。NulbarichやYOGEE NEW WAVESが好きな人におすすめ。
Mr.WANT 「 喜怒哀楽 」
スタジオミュージシャンを含むテクニシャンが集結した、シティーポップバンドのミニアルバム。甘美な側面とたくましさが最良バランスで両立されている。ボーカルとSAXの絡みが素晴らしく、ギターとベース、ドラムの縦の線の熱量にも圧倒される。
Gottes Holic 「 DE[MISE] 」
妖艶さ、清々しさといったパラドックス要素が真っ向から混在している、NewWaveEDMユニットのシングル。コクトーツインズ、フリーティング・ジョイあたりを連想する、独特の不思議な世界観に満ち溢れている。
やぁ、でくのぼっく。「 僕のサイダー 」
ギターロックを斜めから解釈するような側面を全曲から感じ取れる、ユニークな作品。肩ひ
じ張らず、リラックスして何回も聴けてしまう不思議な魅力に注目したい。
みならいモンスター 「 first contact 」
バンド結成10周年を記念したフルアルバムのベスト盤。今までのシングル曲をリマスタリングしつつ、新曲も収録し聴きごたえたっぷりの一枚だ。2019年3月全国発売。
【お知らせ】サウンドデザイナー2019年4月号59ページ「コンパクトエフェクター特集」にコメントを掲載していただきました。
今回ご紹介する機材はブルーメタリック色が目を引くDBXの2chプリアンプ、786です。
<786 表面>
<裏面>
41回~44回のコラムでご紹介した、DBXプリアンプの「3シリーズ」「5シリーズ」のシルバータイプや「676」のブラックタイプは全てTube仕様ですが、「786」はディスクリート仕様となっており、これらとは違ったコンセプトの商品です。とは言え、DBXの「アメリカンでガッツのあるロックテイスト」は健在で、例えるならば「ファット&ソリッド」という表現がピッタリの逸品です。
特に「ステップアップトランス&AETのパワーケーブル」の組み合わせが秀逸です。
ドラムは全パート、ギター全般、ボーカル、ピアノ、ブラスなど大抵の楽器とも相性抜群です。
この786は、おそらくDBXプリアンプの中でも一番のフラッグシップモデルに位置する、高級なソリッドステートなマイクプリではないでしょうか。
90年代後半から2005年頃まで販売されていたようで、当時の売価は30 万円後半ほど。TubeTechやManley のライバル機種だったように記憶しています。
今でもごくたまに中古品を見かけますが、完動美品で相場10万円前後といったところでしょうか。オーディオインターフェースのプリアンプに限界を感じてきた人には、ぴったりのツールだと思います。
【モニタースピーカー考察】
モニタースピーカーを中心とする「フラットな音像を構築するノウハウ」がある程度出来てくると、健全なMixがしやすくなります。
今まで取り上げてきた【大学生バンドのセルフREC】に当てはめながら「あまり話題には上りにくいが、なにげに重要なTips」をいくつか紹介します。
下図は、45回コラムで取り上げた「ステムミックスをアナログミキサーの各チャンネルに取り込んだセッティング」です。
「バウンスによる音の変化を避ける」「平面的なミックスにならないようにする」ために、敢えてこのようなセッティングをしました。
現在、マルチバンドコンプ系のアウトボードはなかなか手に入りづらいので、代わりに通常のステレオコンプ(中級以上)でも代用可能です。
ミックスの際に一番身近でおなじみなのがEQですが、最初は極力EQ、リバーブ、コンプを使用せず、パンも敢えてセンターに、ボリュームをフェーダーでいじるだけでバランスをとっていきましょう。
その後エフェクターを必要に応じて増やしていき、パンも少しずつLRに振っていくのが、ミックス上達のコツです。
ミックス完成予想図参考例↓
【今月のMV】The Echodek 「DREAM CAR」
JUSTISE、Tahiti80といった仏アーティストにも通ずる、フレンチダンスロックのコアな部分が全方向から感じられる。フューチャーオルタナポップのパイオニアが放つドリームロック。
【今月のちょいレア】CAD MH510
比較的ロープライスでありながら、個性的かつリッチな路線を開拓してきたアメリカのブランドCAD。その上位に位置する、カラフルなヘッドホン。低音の強さが印象的だ。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター
Whirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
平凡ズ 「 7月10日のフィッシュボーン・パーク 」
60年代マージービートに始まり、70年代パワーポップ、80年代モッズ、ニューウエーブ、90年代オルタナ、カントリーなどのフレーバーがバランス良く散りばめられた一枚。2019年2月全国発売。
クラウディールーム 「 COLORLESS / warmth 」
ストライクゾーンに入ってはいるが、良い意味でど真ん中ではないギターロックバンドのシング ル。ルーツがわかりやすくもあり、どこかわかりにくくもあるところに個性を感じるバンドだ。
The TRIGGER. 「 Hare,tokidoki ame 」
少しエモ的な要素もある、ギターロックバンドのマキシシングル。声質、歌詞、曲調と空気感のベクトルが、常に同じ方向を向いて融合している点を評価したい。ステージングも印象的。
みならいモンスター 「 Looking for good song forever 」
近年リリースのペースが早いのに比例して、作品のクオリティーも少しずつアップしてきている。バンドサウンドと同期音源の一体感もより自然になり、三姉妹バンドの真の軸が出来上がりつつあるようだ。
クツマユウキ 「 B/M #2 」
ミッシェル・ガン・エレファントをはじめとするガレージサウンドに、奥田民生系ロックン・フォーク、そしてヨーロピアンなエレクトロサウンドが縦横無尽に融合した、ミクスチャーアシッドロックの決定盤。聴き手を選ばないナイスなアルバムだ。