今、個人的に気になっているアーティストをご紹介します。
NEREUS
A BAND BEYOND THE BORDERS OF JAPAN & AUSTRALIA.
Producer BErgamot Velmail
セルフREC第1回目として「ドラム、ベース(ライン2系統)、キーボードの本番録り」と「仮ギター×2の録り」を行ったが、まずまずの出来で終了した。録り音、演奏ともに合格点ライン。ただ、3曲目(コールドプレイ風BPM103ミディアムテンポ)の落ちサビに、クリックが回り込んでいたことに気づく。幸いにも回り込んだのはボーカルとギターのみの部分だったので、ドラムトラックに回りこんでいたクリック音にボリュームカーブで対処し事なきを得た。
第2回目のセルフRECはこの点を反省し、クリック用のオーディオファイルを作る際ボリュームカーブも緻密に書きこんで対応。今回ベーシックを録音する3曲は先回分より難易度が高く、苦戦することが予想されるためリハスタも4時間多く12時間分を予約した。
今回の1曲目【4/4拍子と4/5拍子が交互にくるポストロック風ギターロック。BPM=183】
コード進行:C→GonB→Am7→G7sus4が中心
クリックとずれるところは少ないのだが、変拍子なので合わせるのがやっと。
クリックパターン:電子音系、アクセントなし、4分音符
又、Dメロで「ギター、キーボード、ボーカル」のみになるところがクリック回り込みが起きやすいので、ボリュームカーブをしっかり書いている。同期なし。
2曲目【4/4拍子、途中テンポチェンジあり、初期レディオ・ヘッド、ブラーなどオルタナ色を感じる16ビート。BPM=126→151→126】
コード進行:Gm→C→F→E♭→F#→F
テンポチェンジの前後がとにかくずれやすいので、その部分を最優先で練習。
ベースが曲中ほとんどオクターブを弾くフレーズなので、ノリをどこまで出せるかが最大のポイント。
クリックパターン:電子音系、アクセントなし、テンポチェンジに応じてオーディオファイルを作りこむ。
3曲目【6曲中、一番スローテンポ。キーボード中心のバラード、6分を超えるバンド最大の難曲。
オアシス、ミスチル、サムスミス風。BPM=75】
コード進行:Em→G→D→A7sus4
バンド全員が苦手とする曲だが、観客からは一番人気があるので録音することに。
クリックパターン:8分音符、アクセント1拍目・3拍目、電子音系、同期なし。
コーラスが全サビに上ハモ、下ハモびっちりと入る。これが大きな問題。
【セルフREC当日】開始時間30分前に集合。予約したリハスタは17畳、マイクスタンド10本とスネアもレンタル。前回と同じセッティングなので手際よく準備が出来て、予定より30分早くRECをスタート。今回はとにかく3曲分のベーシック3リズムを録り終えることが目標で、もし時間が余れば前回分の3曲のヴォーカルかギター録りにすすみたいところだ。
ヴォーカル担当は「体調が良い時に、できるだけ録っておきたい」「自分は、夜明け前に歌ったほうがテンションが上がり調子が良い」と言い、一刻も早く(今回の3リズムを録り終え)ヴォーカル録りにすすみたいらしい。
とにかく2回目となったベーシック録りは【4/4拍子と4/5拍子が交互にくるポストロック風ギターロック。BPM=183】から始まった。
【今月のちょいレア】JOEMEEK JM47
ロープライスながらワイドレンジの単一指向性コンデンサーマイク。高音域がややソリッドではあるが、あらゆるソースに対応しやすい優れモノ。少しブリティッシュな質感が欲しい時に大活躍する。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
S.H.E(Struggle-Head,Emergence)「BUBBLES」
バンド結成10周年、フェス出演、タイアップなど、勢いづくS.H.Eの現時点での最高傑作とも言える通算5枚目となるフルアルバム。オルタナでエモーショナルなギターロックを、モラトリアムテイストでデコレイトした記念碑的作品。TastingHeadsProduction/Brittfordより2016年8月全国発売。
波山「我が街と共に」
北関東を代表する初期パンクバンドのフルアルバム。メンバーチェンジを経て、現在最強のメンバーで幅広く展開中。80’sから90’sのパンク全般と、ブリットポップが好きな人におすすめの1枚。2016年8月全国発売。
Rooky Babe’「Rooky Babe’」
埼玉在住ロックバンドのシングル。邦楽ロックの真髄を追及した、10年代の新しいスタイルが垣間見える意欲作。ライブハウスだけでなく、キャパ1000人クラスの大箱でもライブを展開中。
今後の活躍が非常に期待できる。
Screw-Thred「HOWLING FROM BACKSTREET」
UKパンク、ニューヨークパンクを基調としたパンクロックの真骨頂とも言えるフルアルバム。とにかく密度が濃い。日本のオールドウエーブも取りこんだ、ワン&オンリーな作品。アナログ盤でも聴きたくなる、各楽器の厚い質感が心地よい。
OSRAIL「Please so that your way is peaceful」
男女全員でボーカル、コーラスをとるネオ・デスメタルバンドの渾身の1枚。非常に難易度の高いフレーズを演奏しながら、複雑なメロディーやコーラスを歌いこなしてしまうスキルは見事としか言いようがない。次世代ラウド型のお手本のような作品。
【今月のMV】 ステファニーズ「BIRTHDAY」
神奈川在住のガールズR&Rトリオバンド、必殺のMV。楽曲を引き立てる鮮やかな映像処理や斬新なアイデアが堪能できる作品。
いきなりですが、皆さんはイギリスBBC(国営放送)で1991年から放送されている人気音楽番組『ジュールズ倶楽部』をご存知でしょうか?日本ではCS放送ミュージック・エアで視聴することが出来ます。
(http://www.musicair.co.jp/timet/?rm=detail&id=189550)
この番組は毎回世界のビッグネームが数組出演し、出演者ごとに組まれたステージセットで順番に生演奏を披露していきます。例えばレディオ・ヘッド→アークティック・モンキー→マルーン5→WEEZER→カサビアン→最後にポール・マッカートニーといった具合に。毎回フェス並みの内容の濃さにくらくらしますが、その豪華な番組をさらに盛り上げているのが司会のジュールズ・ホランド。元スクイーズのキーボーディストである彼は、番組内でゲストとのセッションも披露します。ポール・マッカートニー出演回では、名曲「レディ・マドンナ」をポールとグランドピアノ2台の連弾でさらりとやってのけ、コーラスパートまでもしっかりサポートする神業ぶり。レニー・クラビッツ、ストロークス、コールドプレイなどが出演した回でも、まるで正式メンバーかのように自然な、的を得たピアノ演奏で加わっていました。彼の確かな演奏力、そして巧みな話術は大物ミュージシャンをも魅了し、20年以上続く長寿音楽番組となるのもうなずけるものがあります。気になる方は是非チェックしてみてください。
―――さて、前回からの続きです。
1曲目(BPM=170)のモニターバランスと音色チェックがとりあえず終わり、本番に。録り音が最も重要なのは言うまでもないが、レンジを広めに録り、後でダブついた成分をカットしやすいようにしたいところ。MIX時には足し算でなく、引き算から始められるようにすることも目標だ。
非常に演奏し慣れた曲なので、まずは3テイク録音。どのテイクも80点台といったところで全体的に満足できる。雰囲気は1stテイクが一番はじけていて良い評価が集まったが、Aメロのリズムがクリックに対して突っ込み気味なのが気になり、保留。加えてもう3テイク録った計6テイクのうち、5番目が雰囲気もあり安定していて、これにOKを出す。
勢いにのって2曲目のベーシック録り。BPM=158、コードもDm7-G7の2コード進行の繰り返しで、ドラムのチューニングも1曲目とほとんど変えずに行えそう。スネアをブラスの6.5インチに替え、ヘッドはCSコーテッドに。音色チェック後、3テイク連続で録る。全員が得意なタイプの曲なので、勢いのある2テイク目をOKとした。
問題の3曲目、スタジオからメイプルの5インチスネアを借り、ヘッドはピンスト・コーテッドに替える。Em9-A7onE-AonE-EM7という変則的なコード進行なので、ドラムは無難に共通音に当ててチューニングし直す。試しに1テイク録ってみると、音色とチューニングは問題ないものの、テンポが遅い曲のため演奏にこなれた感じがしない。続けて何テイクか録ってみても、曲後半では安定してきても、1コーラス目が全員クリックより突っ込み気味かつバラバラ。編集でどうにかするレベルにも達していない。さらに何回か録っていくが、なかなかOKラインに達しない。リハスタの残り時間は50分。休憩をとり、さらに録ってみる。全員が苦手なAメロを、タイトに合わせるイメージを持って臨む。最後のテイクでドラムが90点と良い出来になったので、ベース、キーボードの数か所のミスはパンチインで修正ということにして、なんとか録り終わった。
最後に練習として、次回録音を予定している変拍子の曲を演奏。各自猛練習が必要なことを実感し、初日のレコーディングは終了した。
【今月のちょいレア】DBX576
1999年発売のチューブ式チャンネルストリップ。当時、定価14万円で発売されたが現在は生産完了。他メーカーを全く寄せ付けない音の厚さが売り。又、EQの効きも強烈で、生音はもちろん打ち込み物でも、この機材を使うと恐ろしくファットになる。足し算のMIXをしなくてはならない時に大活躍。現在は後継機にあたる376、386が現行品。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
no wise「CLOCK UP」
パワーポップ、メロコアのエッセンスが随所に散りばめられたニュースタイルのギターロックバンドの1stフルアルバム。彼らのこれまでの経験をまんべんなく昇華させた、満を持した自信作。現在全国ツアーを行っており、動員も急上昇中。
ライトニングブリザード「OBLIVIOUS」
USラウド系がルーツにあるパワーポップバンドの渾身のミニアルバム。全く妥協をせず制作された今作は、良い意味で聴き手を選ばない。メロディーラインやVo.ケンノスケの歌声も聴きどころの一つ。
DUTCH DADDY「STARLET / MEMORIES」
彼らのこれまでの活動歴の中で、最高傑作とも言える名曲「STARLET」を含む、ライブ会場限定シングル。90年代の渋谷系要素と、最先端のギターロックとの融合がベリーグッド。
田中光 & MASAYA YONEYAMA「PROOF」
オーセンティックかつワールドワイドなヒップホップの新定番。ワールドミュージック、R&B、トリップポップ、ティンバランド系、クールジャズ、ブラジリアンヒップホップなど、真にメルティングポット的な名盤。全国発売中。
BErgamot velmail sole「Post psychedelic cinema」
ブルックリン勢、サンフランシスコ系サイケフォーク、チルウエーブ、UKオルタナ、OZアンビエントといった日本人とは思えない個性的な洋楽要素満載の一枚。全国発売中。
【今月のPV】COMezik「110番」
「ナゴム系」と「オーディオ・スレーブ、ヴァン・ヘイレンといった欧米ハードロック」の要素が合体したガールズ3ピースバンドの代表作。最近では打首獄門同好会、ギターウルフ、つしまみれ、TOMOVSKYなどとも共演を果たしており、勢いのある動向は今後とも見逃せない。
【今月のおまけ】
先日当スタジオでレコーディングを行ったDroogと、楽曲プロデュースのザ・キャプテンズ 傷彦からのメッセージ♥
仮想バンドのセルフRECもいよいよ佳境に入ってきました。ここで設定のおさらいを。
*都内在住、大学の軽音部で1年前に結成。平均年齢20歳。
*Vo.&G、リードG&時々Key、Ba.&Cho、Dr.&Choの4人組バンド。Ba.のみ女性。
*ジャンルはUK要素を取り入れた邦楽ギターロック。
共通の好きなアーティストはアジカン、マルーン5、back number、MUSE、カサビアンなど。
*少し洋楽っぽいメロディー、コーラスワークを重視、16ビートメインのダンサブルな曲調が特徴。
*オリジナル曲は8曲。バンドのホームページはなく、動画サイトにライブ動画を数曲upしているのみ。
*月1~2回ペースでライブに出演。
バンド同士のつながりも増えはじめ、対バン相手や観客から「音源が欲しい」と言われるようになってきたので、初の音源制作に動き出したところ。
リハスタを借りてのセルフREC決行当日。開始時間30分前に皆集合し、予約の24時より楽器、機材の搬入。タイトな音が録れるように、ドラムセットの下にはカーペットを敷きこみ、使わないリハスタのアンプ類は壁側に移動させスペースを確保。今回のセルフRECにはMacProおよびProTools12を中心とした大掛かりなシステムを持ち込むため、セッティング、マイキングにも時間が掛かる。マイクスタンドも、手持ちのものに加えスタジオから10本ほどレンタルした。
一曲目に予定している曲(F-Dm7-Gm7-C7sus4の流れが基本)のキーに合わせて、ドラムのキック、タム、スネアをチューニングする。いろいろなバンドが利用するのが当然であるリハスタのドラムセットなので、一からチューニングするのに非常に苦労した。この時点で予定より30分押している。
一曲目は8ビートと4つ打ちが混じったダンスロック/BPM170。
同期も使用(16ビートアルペジオシーケンス/ストリングス/シンセブラス)ProTools12内に仕込み済み。
クリックは4分音符の電子音系で、一拍目にアクセント有。
まず1テイク目。FURMANキューボックスのモニターバランスを取りながら、ラフに演奏して録音。
ドラム、ベース(本チャン)、キーボード(出来次第により本チャン)、ギター×2(仮、アンプシミュレーター)手が足りないパートは後輩に演奏をお願いした。録音後、各音色を全員で確認する。
ドラムキックの低音が、録ってみると意外に少なく感じるので「イコライザーをかけ低音部分をブーストさせて録る」という話が出る。先輩からは「なるべくMIXまではイコライザーを使用しないほうが良い」というアドバイスがあり、キックのチューニングを少し変更+ビーターをキタノのチタニウムビーターに替える。
←【キタノ チタニウムビーター】
通常のビーターより、バスドラのアタックや胴鳴りとの一体感がくっきりと出て、 立体感のある音像になりやすい。
また、キック用マイクAudioTechnica AE2500(ダイナミック、コンデンサー2ch分のデュアルマイク)のコンデンサー部分の割合も増やした。以上の作戦により、イメージの8割以上の音にはなったのではないか、と全員が納得。
スネアは、5インチのブラスのスネアと6.5インチのメイプルのスネア、ヘッドは共にパワーストローク。曲中の叩き方がオープンリムショットということもあってか、5インチのスネアでは胴鳴りが薄く「もうちょっと胴鳴りが欲しい」という意見が出る。スネア用マイクはTOP:SHURE SM57、AudioTechnica AM25、Bottom:SHURE SM57。各マイクの角度や距離を変えて出音の検証をした。結果、BottomのSM57をSHURE Beta52に変更、TOPの2本のマイクの割合をSM57→3割、AM25→7割にすると結構胴鳴り感が出てきたようだ。
ベースについては、音は素直で聴きやすいが100Hz以下の低音がスッキリしすぎていて物足りない、イメージと違うという意見で一致した。DI(AVALON U5)の電源ケーブルを、付属の物からオヤイデのTSUNAMIに、シールドもWhirlwindに替えてみた。レンジがぐっと広がり先程よりもベース本来の音が出てくるようになった。
確認が終わり、キューボックスのモニターバランスを各自調整しながら2テイク目の作業に移った。
【今月のちょいレア】 Joemeek JM27
グリーンボディーが非常に目を引く、ペンシル型コンデンサーマイク。シンバル系の録りに一番向いている。同タイプの他の製品と比べると、きらびやかな印象の音が録れる。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
Coo「渋谷のあの子」
Coo渾身の両A面シングル。MV、楽曲、アレンジ、演奏、どれをとっても、以前より高次元で昇華しており、今後のフルアルバムが相当期待できる。純ギターロックの名盤とも言うべきキラーチューンを、是非チェックしてほしい。
Omoinotake「InSnumber」
山下達郎、小田和正、ネット・ドヒニー、クリス・レインボウ、アラン・パーソンズ等を彷彿とさせるシティーポップ、AORの決定盤。リズムアレンジやコードのボイシングが前作よりもさりげなく洗練されている。SHAKARABBITS、The Twentiesも所属のK&A期待のア-ティスト。
蒼鷺は死なない「カンショウ」
あらゆる面からエモーショナルな質感を醸し出す女性Vo.ロックバンドのマキシシングル。定番R&Rの要素を含みオールドスクールとニュースクールの狭間を常に邁進しているスタンスには目を見張るものがある。いろいろなアイデアが満載で、聴き手を選ばない存在感がある。
少年パンチ「少年パンチ」
ラモーンズ、テレビジョンあたりのニューヨークパンクを基調とした過激な日本語詞が飛び交う、初期パンクバンドのマキシシングル。硬派で潔い曲調が好印象。ベーシックな音なのに、常にリアルタイムのロックテイストを感じる不思議な魅力の一枚。
レトライター「明星のおとづれ」
サカナクション、テレフォンズをベースに、チャーチズやグライムズの要素も感じられる、エレクトロギターロックトリオのミニアルバム。定番から少し外したエフェクトのかけ方が特徴的。オリエンタルな雰囲気と西洋のエレポップの融合が聴いていて楽しい気分にさせる。全国発売中。
【今月のMV】 The Echo Dek 「She Got High At Night」
もしもプライマル・スクリームが、ドリームポップを作ったら?というような曲。大人気劇団、キャラメルボックスの公演『時をかける少女』(原作:筒井康隆)告知CMのBGMとしても採用された。
先月の冒頭でもご紹介したオーストラリアのバンドBertie Page Clinic(バーティ・ページ・クリニック)が4月8日(金)よりJAPANツアーを行っています。渋谷・浅草・横浜・高円寺の公演では直木賞作家 道尾秀介氏もパーカッション(ボーンズ)でサポート参加されるそうです。
Bertie Page Clinic JAPANツアー
4/8 RUIDO K2(渋谷)
4/9 Café Byron Bay(浅草)
4/10 7th AVENUE(横浜)
4/13 LITTLE CLOVER(大阪)
4/14 MOJO(京都)
4/15 IZNT(神戸)
4/16 CLUB MISSIONS(高円寺)
―――前回、前々回に引き続き、セルフRECにチャレンジ中の大学生バンドのその後です。
セルフREC決行日も近づき、最終チェックに余念のないメンバー一同。ドラム、ベースはもとよりバンド全員が、この一か月間同じ音色のクリックで各自練習を積んできた。しかしREC予定の中で唯一のバラード曲に不安が残る。どうしてもズレやすくぎこちなさが残り、本当ならあと数ヶ月は練習時間が欲しいところだが・・・
バラード以外のREC予定曲の中に「変拍子(4分の5拍子と4分の4拍子がコロコロ変わる)」と「4拍子だが曲中にテンポチェンジがあり、組曲状態になっている」ものがあるため、クリックを曲のサイズに合わせてDAWソフトのオーディオファイルに作りこんだ。
ちなみに練習および本番用に使うクリック音は、よくある電子音系で一拍目にアクセントがあるタイプ。
セルフRECを行うのはリハスタ一室のみなので、当然常に音のかぶりを気にしなければならない。とりあえずDr.(本番)ベース(本番・ライン録り)キーボード(本番)に加えて、Gt.1(バッキング)Gt.2(リード)も仮として同録する。今回は敢えてチャンネル・ストリップは使用せず、Celesonicのマイクプリ(24Bit 48KHz)で録ってみようという事になった。セッティングは下図のとおり。
MIX、マスタリングをプロ業者に頼むことも視野に入れ、DAWはProTools12に決定。仮Voとコーラスは前もってProTools12に録ってあるが、必要なければモニターは無し。同期パート2曲分も前もって仕込み済み。
今回のRECでノルマとしたい3曲のタイプは以下の通り。
• 8ビート / アッパーな4つ打ちダンスロック / BPM170 / 長さ3:55
バンド初期からの曲、演奏もこなれているのでREC1曲目に録音予定。
クリック:4分音符、電子音系、アクセント1拍目
同期3パート有り→16ビートアルペジオシーケンス
→ストリングス
→シンセブラス
• アッパーなアジカン風ギターロック / BPM158 / 長さ4:35
初期からの曲、ライブでも定番。2曲目に録音予定。
クリック:①と同じ
• コールドプレイ風ミディアムテンポ / UKバラードロック / BPM103 / 長さ5:32
最近出来た曲、全員がまだ苦手意識あり。
クリック:8分音符、電子音系、アクセント1拍目と3拍目アタマ
この3曲に加え、後日あと3曲を録音予定。予定通り進むと良いのですが。
続きは次回で。
【今月のちょいレア】Audio Techinica AE2500
これ一本でダイナミックとコンデンサーの2ch分を同時に収録できるすぐれもの。ベースやギター録りにも威力を発揮する、頼りがいのあるマイク。本文中のRECセッティング図ではKick録音用として想定しています。現行品。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
John Nakayama Trio 「Forest Of Darkness」
プロジャズピアニスト、ジョン中山氏率いるトリオの決定盤。オルタナティブジャズの新境地を切り開き、ピカイチの演奏力とセンスがキラリと光る実験要素満載のフューチャージャズとも言える。2016年4月全国発売。
Club’89 「Pool Side」
ルーツにナイアガラ・トライアングルや、はっぴいえんど、シュガーベイブを感じる、これからの活躍に期待も大きい大学生バンド。洋楽、例えばメン・アット・ワークなどの影響も大きく、ルーツ周辺の洋楽への傾倒を深く感じさせる。清涼感たっぷりの一枚。
三田結菜 「ハっピーガールのポジティブレシピ」
スタジオミュージシャン兼シンガーソングライターでもある、三田結菜の初ソロアルバム。路上ライブも動員急増中で、「パステル・ポップ」という新感覚のポップスフィールドを開拓しつつある。ドラムはもとより様々な楽器のマルチプレイヤーでもある彼女の、才能の本質を堪能してほしい。
村松亜紀 「ストーリー」
シルキーな声質とノスタルジックな曲調が売りの、村松亜紀のミニアルバム。メッセージ性の強い歌詞と、透明感のあるピアノのリフはワン&オンリーな存在感があり頼もしい。サポートのプロドラマーの高次元な演奏力と、シンセベースとの絡みも印象的。
THE CARMIN 「Scream the Night Before!」
真っ赤なスーツが良く似合うガレージロックバンドTHE CARMIN。初期の名曲をリメイクし、ライブで人気の曲もふんだんに盛り込んだ自信作。バラエティー豊かな内容は聴いていて実に楽しくライブパフォーマンスも圧巻。全国発売中。
【今月のPV】 Coo 「渋谷にて」
ギターロックの真髄を極限まで追求した彼らの代表曲、攻めの一曲。
来たる4月8~20日、オーストラリアのロックバンド Bertie Page Clinicが日本ツアーを行います。バーレスク、キャバレーカルチャーと70~80年代Ozハードロック要素が融合された、オリジナリティー溢れる勢いのあるバンドです。直木賞作家である道尾秀介氏とも関わりが深く、この日本ツアーでは道尾氏がボーンズというアイルランドのパーカッションで参加するとの話も。
気になる方は是非 http://topmusic.jp/product_info.php?products_id=1212 をチェックしてみてください。
――さて、先月からの続きです。
機材を中心とした環境を、前回に比べ相当グレードアップさせたことに安心しきっていないで、今一度セルフRECの本質を確認すべし!と先輩から喝を入れられたバンドメンバーたち。
録音を「音楽的で有機的」にするためには、物理的な環境が整っているだけでなく的を得た下準備が重要。
• プリプロダクション
普段の「ライブに向けての練習」とは異なり、「レコーディングのための」きめ細かな楽曲の練り上げ作業がプリプロ。バンドメンバー全員が、自分以外の全パートのアレンジを徹底して把握する。レコーディング当日が「曲アレンジの打ち合わせや練習」に化けないように、アレンジを煮詰め完成させ徹底的に練習しておく。
• コーラスは身体に染みこむまで!
そして見落としがちな大きな落とし穴が「コーラス」である。主メロに対するユニゾン(同じ音程で歌うな
らまだしも別音程(ハモリ)が曲者で、REC当日大苦戦するバンドも少なくない。特に上下パートを3度音程でハモる3声コーラスは、曲中に占めるコーラス部分が多いと、とにかく時間がかかるもの。編集でなんとかしてほしい、と言われても、ピッチ直しの作業時間も当然多くかかる。ハモリの量によってレコーディングのトータル時間が左右されることも往々にしてあるので、コーラスパートは時間をかけて徹底的に練習を。各人の能力を見極め、理論にのっとったアレンジを考え、身体に染みこむまで練習する必要がある。簡単そうに思えて、実はハモリには大変な職人技が求められる。高望みはしないこと!
• クリックをなめてかかるな
まともにクリックを攻略しようとすると、半年から一年以上の練習期間がかかると思ったほうが良い。セル
フRECでクリックを使おうと思うのであれば、ドラム、ベースのリズム隊だけでなく全パートが余裕でクリックに合わせられるレベルになるまでしっかりと練習する。
• ヘッドフォンに慣れろ
REC本番ではヘッドフォンを多用するので、普段からヘッドフォン(イヤフォンではなく)で音楽を聴き、ヘ
ッドフォンの音質や装着感に耳を鳴らしておく。
• 楽器のメンテナンス
レコーディング前に、各自信頼できる業者に楽器メンテナンスをお願いしておく。また、一揃いしか自分の楽器類を持っていない場合は、可能であれば知り合いなどから楽器を借りておいたほうがよい。(ドラムの場合はスネアだけでも)メンテナンスをしておいても、当日楽器類にトラブルがないとは限らない。不測の事態でもすぐ差し替えて使えるというメリットの他に、楽器の音イメージが違ったという場合にも有効だ。例えばギターで、自分の持っているテレキャスでイメージが違うと思えば、友人に借りておいたレスポールを試すなどで良い方向に動くこともあるだろう。今回セルフRECで利用するスタジオでは、無料、有料含めたオプションでギター、ベース、スネアを始めアンプ類、エフェクター、ヘッドフォン、パワードモニター、電源タップもレンタル予約しておいた。
• 録っている段階から完成形を見越して作業を
録音していて音が細いと思えば、楽器・アンプ・エフェクターのチョイス、セッティングを疑ってみる。特
にギター、ベースは間にチューナーを挟むと音の情報量が減る=音が非常に細くなる。アンプのチューナーアウトやDIのパラアウトからチューナーにつなぐと、いつでもチューニングが出来るだけでなく音もさほど細くならずに済む。シールドの電流の向きを合わせることも重要。向きがわからない時は最初と逆方向につなぎピント
の合う方を探り、テーピングなど目印をつける。
・・・シールドによっては、このように
アンプ側に差す目印がついているものもある
長すぎるシールドは音質が悪くなるので、長さは出来れば5メートル以内で。録音している段階で、仕上がりイメージの8割以上の音になるように心がける。
• 録りの状態が悪いものをMIXでなんとかしようとするのは厳禁。
「演奏で失敗しても、編集でなんとかなる」という考えで演奏していると、真剣みに欠けた間延びしたノリになり、結果リスナーに伝わりにくい音源になる傾向がある。達人のMIXは足し算ではなく引き算が基本になることも多い。アレンジも同様。参考にしたいプロの音源との徹底比較も、この段階で行うことをおすすめする。
• 普段出来ていないことは絶対にやらない
普段は難なく弾けるフレーズでも、REC本番となると緊張で思いの他弾けないということもある。普段ぎ
りぎりで弾いているフレーズなら尚更。レコーディングでマジック(編集)は使えても、ミラクル(弾けないフレーズでも何百回に一回くらいは出来るかもという考え)は起こりえない。
• メンバー全員でRECに臨む
スタジオを借りず自宅で録音出来てしまうパート(キーボードなど)でも、なるべくメンバー全員が揃った
状態でRECしたほうが良い。一人で録音して自分自身はOKの気持ちでいたとしても、後から他のメンバーからNGが出る可能性もあるのだ。文句を言うほうも言われるほうも気まずい思いばかりが残り、その後のRECへのテンションが下がってしまう。その場で意見を交わしながら、全員が納得して録ったほうが良いものが出来る。また、自宅で録音すると家庭用電源を使用するため、音がフラットになりにくいという注意点もある。
さあ、実際のセルフRECまであと一か月。続きは次回で。
【今月のちょいレア】 Radial CRUSH GARD
ユニークで非常に実用的な商品を作り続けている
Radialの自信作。写真のようにマイクとマイクスタンド
との間に設置して、音のかぶりをやわらげる。ドラムス
ティックで叩かれてもびくともしない、大変頼もしいア
イテム。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
カイザーストロングバーツ「KAIZER STRONG BAHT」
70年代、80年代を彷彿とさせるR&Rパワーポップバンドの初フルアルバム。クラッシュ、ストーンズ、ジェット、イギ―ポップあたりのエッセンスが自然ににじみ出ている。Vo.Keita氏の声質と歌詞が群を抜く個性を発揮。このバンドには聴き手をハッピーにさせる何かがある。
THE FREE MAN「拝啓ポンコツ人間様」
ストーンズVSクラッシュ、meetsブルーハーツとでも言うべき、R&Rパンクバンドのミニアルバム。全体的にオールドスクール系のロックナンバーが多いが、歌メロやギターの音色にも注目してほしい。若手バンドとは思えない軽やかな渋さが良い。リズム隊も横ノリ感が出始めている。
BREAKER THE TV「START WRITER」
まず何と言っても一番の特徴がVo.川井氏の声質だろう。ちょっとハスキーでブルージーな声質は一度聴いたら忘れられない存在感がある。等身大の楽曲を演奏しながら、さりげなく背伸びしているアレンジが心憎い期待のニューカマー。2016年4月全国発売。
GENE「All Ways」
ヴァン・ヘイレンなどのアメリカンハードロックを基調とした、メロディアスロックバンドのシングル。客層選ばない卓越したステージングは必見。洋の東西を問わないユニークなギターリフを是非大音量で聴いてほしい。全国発売中。
PETZ STOMP「ビーフはどこだ」
かつてスネイル・ランプのレーベル“スクールバス”に在籍していた大御所ポップスカバンドの3rdアルバム。90年代から2010年代までの広きに渡るスカフレーバーが、バランスよく散りばめられており、初めて聞く人にも入っていきやすい充実した内容。全国発売中。
UK色プラス、少々オールドスクールを感じるギターロックバンド「DUTCH DADDY」初の全国流通アルバムの第一弾ミュージックビデオ。
この度、当スタジオにAvid Protools HDXとHD I/O 16×16 Digital×3を導入しました。Pro Tools HDとは質感が違うな、と改めて実感しているところです。
――さて、前回からの続きです。
サークル部室でのセルフREC初挑戦は、上手くいかなかったものの学ぶべき点も多かった模様。機材マニアの先輩も交え、1ランク上のセルフRECに向けミーティングに余念がない。先輩はプロ顔負けの様々なREC機材を所有しており、自らのスキルを上げるためボランティアでいろいろなバンドのセルフRECに立ち合い、手伝っている。セルフREC初心者の彼らには大変頼もしい存在だ。
2回目のRECは、それなりに機材のそろっているリハスタを借りようということに。スタジオ選びにあたっては「部屋数、パック料金の有無、常設機材、オプションの内容」そして利用経験から「部屋鳴り、機材メンテナンス具合(特にバスドラ、タムなどのヘッドの種類と消耗度)両隣及び上下階スタジオからの音漏れの度合い」など細部にわたって意見を交わす。結果、通い慣れたスタジオの深夜パック6時間(¥9,800)に2時間プラス(¥4,200)、計8時間で17畳のスタジオを予約することに決定した。「都心の場合、深夜の方が電力供給の関係で音が良い」という話や「深夜帯はスタジオ利用者も少なく、他スタジオからの音漏れも避けられるのでは」ということも考慮したようだ。もちろん、バンドメンバー全員の学校やバイトの都合がつけられることも重要。
前回の失敗を充分に踏まえ、RECスケジュールも時間に余裕を持たせるよう考慮した。
ドラム、ベース、仮ギターを同時に録音し(仮Gt.はLine6などのハードウエアアンプシミュレーターを使用)クリックは内臓のものを使う。仮Vo.は入れない。作業できるのは実質4時間とみて、ドラム、ベースを最低3曲出来れば5-6曲録り終わることを目標にする。
RECに使用する機材は2通り用意しておき、当日の流れでどちらにするか決定する。
■機材①:Mac book Pro + STUDIO ONE(Ver.3) + TASCAM Celesonic US-20×20(オーディオインターフェース)を2台カスケードで同時16トラックREC可能にする。
■機材②:TASCAM DP32(デジタルMTR)を2台同期させ、同時に16トラックREC可能にする。
■マイク:キック→AKG D112もしくはSHURE BETA52、スネア→TOP:SHURE AM57&Audio-Technica ATM23、ボトム→SHURE SM57もしくはBETA 52、タム→ゼンハイザーMD421、フロアタム→ゼンハイザーMD421、オーバートップ→AKG C391B×2、ハイハット→Audio Technica AT4021、ライド→AE3000、アンビエントマイク→AT4050。前回からは比べ物にならないほどグレードアップさせた。
■マイクケーブル:プロヴィデンス、モンスターなどの高級ケーブルを使用。
■電源ケーブル:オヤイデシリーズ。
■アウトボード:Mind Print DTC、TL AUDIO 5052、Joemeek TWIN Qの3台の2chチャンネル・ストリップ(注①参照)で6ch分。残りのchはオーディオインターフェース、もしくはMTRのマイクプリを使用する予定。
*注①:チャンネル・ストリップとは?→微弱なマイクレベルをラインレベルに引き上げるマイクプリアンプと、イコライザー、コンプレッサーが一体化した機材。中にはエキスパンダー、ノイズゲート、ディエッサーまでついている物も。
■ベースREC:ライン録りでAVALON U5を使用、ベースアンプは使わない。
■ヘッドホン:音漏れの少ないAudio Technica ATX900Hを数台。
■その他:リハスタのオプションでFurmanキューボックスをレンタル。
スケジュール、録音環境、そして使用機材も前回とは比べ物にならないくらい厳選し、今回はかなりいけるのではないかとバンドメンバー全員が思い始めたその時、先輩から「ここでもう一度、RECの心構えを再確認したほうがいい」とのアドバイスが。
――――次回に続きます。
【今月のちょいレア:Radial KickStandバスドラムマイク用アイソレーション・マイクスタンド】
先月紹介したトライポッドなど、ユニークで実用的な商品を放つRadialの自信作「kickStand」
(注:画像の赤で囲んだ部分がKickStand)
マイクスタンドの土台部分が商品で特殊スポンジになっており、低音など床からの振動成分全般を分散させ、普通のマイクスタンドを使用するよりもピントの合った音作りが可能。バスドラム用と銘打ってはいるが、ギターアンプ、ベースアンプの音録りにも底力を発揮する頼もしいアイテムです。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。Whirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
Palalaika「Palalaika」
レッチリを軸とし、レッド・ツェッペリン、スライ・ストーン、P-ファンク、ストーンローゼス、ダイナソーJr.など、洋楽のおいしい成分が堪能できる「日本人によるボーダーレスロック」決定盤。ネイティブに近い英語詞の表現力やアレンジ力が秀逸。
あぽろん「あぽろんが咲きました」
マルチプレイヤー兼シンガーソングライターの三田結菜率いるキーボードトリオバンドの最新作。ポップスのつぼを見事に押さえた作編曲力はさすが。スタンダードなJ-POPにカテゴライズされながらも同時のポップ路線を昇華させている。
水鏡「夕掛け」
フランスの名門レーベル「MUSEA」からリリースされた和風プログレとヨーロッパのシンフォニックロックが激しく交差する、水鏡の2ndアルバム。雅なる音の流転とも言うべき丹精に積み上げられた様々な楽器に、少し神秘的な女性Vo.が装飾されたような不思議な世界観を感じて欲しい。日・仏同時発売中。
根木マリサトリオ「Elegance」
真に「エレガント」とも言うべきリアルタイムのJAZZを奏でる、プロジャズピアニスト「根木マリサ」トリオでの1stミニアルバム。カフェのオープンデッキが似合いそうな雰囲気を感じさせながらも、決してBGMにはならない優れた存在感が随所にみなぎる意欲作。肩の力を抜いて聴いてほしい。
Key-m.「SOUL CONNECTION」
国内はもとより海外のプロデューサー、トラックメイカー、MC、DJが深く関わっているブラックミュージックを、幅広く凝縮させた入魂作。忘れかけられていたソウルミュージックの原点が、今ここに存在する。HipHopの大御所レーベル、HEAD PHONE JACK RECORDSから全国発売中。
【PV】THE CREATOR OF「-LIGHT-」
スリップ・ノット、マリリン・マンソン、のオープニングアクトを務めた実績もあるTHE CREATOR OFの真髄を垣間見
ることが出来る作品。
このコラム連載も2年目を迎えることとなりました!今回から、より実践的な内容の新章に入りましょう。
実際にセルフRECを行うにあたり、あらゆるパターンや実例を踏まえ、細かな検証をしてみたいと思います。想定するバンドの詳細は以下の通り。
*都内在住、大学の軽音部で1年前に結成。平均年齢20歳。
*Vo.&G、リードG&時々Key、Ba.&Cho、Dr.&Choの4人組バンド。Ba.のみ女性。
*ジャンルはUK要素を取り入れた邦楽ギターロック。4人共通の好きなアーティストはアジカン、マルーン5、back number、MUSE、カサビアンなど。
*少し洋楽っぽいメロディー、コーラスワークを重視、16ビートメインのダンサブルな曲調が特徴。
*オリジナル曲は8曲。バンドのホームページはなく、動画サイトにライブ動画を数曲upしているのみ。
*月1~2回ペースでライブに出演、バンド同士のつながりも増えはじめ、対バン相手や観客から「音源が欲しい」と言われるようになってきたので、初の音源制作に動き出したところ。
音源制作に取り掛かり始めた彼らだが、何もかもが初めてで「何曲録るのか」「どこで録るのか」といったところからすでにまとまらず。とりあえず「ライブ会場限定で配布するCD-Rを作る、最低3曲出来れば6曲、出来が良ければCDプレスや配信、リード曲のPV制作も考える」という振り幅の広いプランですすめることになった。
「いきなりレコーディングスタジオで録るのは、全てに於いてハードルが高そう」ということで、まずはお金のかからない軽音部サークルの部室でセルフRECしてみることに。(ある程度の防音がしてある約20畳、天井高2.5m、部屋鳴りはデッドというよりはむしろライブ)
メンバー全員がスタンダードなDAWソフトを所有しており、オーディオインターフェースも2 IN 2 OUTのエントリーモデルがある。まずはサークルで所有する12chアナログミキサーをサブミキサーにして、ドラム録りにチャレンジ。同時に2トラックしか録音できない環境なので、この方法がベストだという結論になった。
先輩に教えてもらった知識とネット、教則本などを頼りに見よう見まねでセッティング。マイクはサークルで使っているエントリーモデルのダイナミックマイクを10本使用。
部室を連続して利用出来るのは3時間が限度。3時間でどこまでやれるのか。
あらかじめDAWに仮ベース、仮ギターを内蔵クリックに合わせて録音しておき、それらをガイド演奏にしてドラム録りに取り掛かる。
長年使いこまれたサークルのドラムセットであるため、チューニングで思ったような音が作れない。ドラム録りのための10本のマイクセッティングにも手間取り、あっという間に1時間が経過。特にキックとスネアの音作りに苦戦する。モニタースピーカーを通した音があまりにもチープで細く、いきなりプロクオリティの音は狙えないとわかってはいたもののテンションは下がる一方。軽く2~3テイク録音したがそれ以上は進まず、敗北感を抱えたままその日は終了。
機材マニアの先輩に相談したところ「サブミキサーに何チャンネル突っ込んで、EQで音作ったとしても、所詮インターフェイスのインプットが2chしかないのでは限界がある」と言われる。「EQのかけ録りは、楽器のナチュラルさが失われることが多い」ので部室ではなく、「リハスタの深夜パックを利用し、機材も上位ランクのものを用いて、同時に10トラック以上録れる環境を構築してみたら?」と提案される。
バンド内で反省を踏まえ話し合い、今度は「ドラムとベースを一緒に録った方がノリが出るのではないか?」という意見で一致。DAWには仮ギターと仮Vo.を内蔵クリックに合わせ録っておき、それらをガイドにしながらドラムとベースを録音しようということになった。
――――果たしてこのRECは成功するのでしょうか。続きは次号で。
【今月のちょいレア】
Radial TriPad (三脚マイクスタンド用アイソレーション・パッド)
録音時の床からの振動ノイズを軽減する、音響特性を計算して作られたスポンジ材質のユニークなアイテム。このようにマイクスタンドの足につけて使用します。リハスタなどでのセルフREC時に使用すると、音質が少しクリアになりますよ。
2016年にいろいろな動きを企てているCoo(クー)迫真のレコーディング風景
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。Whirlpool Records(ワールプールレコード)brittford(ブリットフォード)主宰。
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
JUICE&LOVE「50/50」
ポール・ウエラー、エルヴィス・コステロ、ELO、ニルヴァーナ、ウィルコなどを彷彿とさせるPOPロックの決定盤。日本語で歌いながらも多大なる洋楽の匂いがすることろが素晴らしい。2015年12月全国発売。
tribe「それはそれでいい日だった。」
時代の先端を駆け抜ける、神奈川在住ダンスロックバンドのマキシシングル。コード進行と音色の使い方が巧みで、一度聴いたら頭から離れない。キャッチーなメロディー、声質、歌詞も実に良い。
aie「After Hours」
AORとハードコアがクロスオーバーした、オリジナリティーあふれる新感覚のロックテイスト。フェスなどにも出演、有名バンドとの対バンなど話題には事欠かない。
THE JAGUAR「CAN’T STOP!」
ファンキーで渋めのリアルなロック。Vo.しげるのどこか物悲しい歌声は聴き手をメランコリーな気分にさせる不思議な魅力がある。卓越した演奏力にも注目。
山下一樹カルテット「magic hour」
プロJAZZドラマー山下一樹率いるカルテットのフルアルバム。国内屈指のプレイヤーによる演奏が炸裂する。ドリーミーな曲調を、シックに料理出来る手腕は見事としか言いようがない。大人のジャズを率直に楽しんで欲しい。
【PV紹介】marigold/S.H.E
私が客員講師を務める茨城音楽専門学校で開催している『SOUND PRODUCE&PROMOTIONセミナー』今年は10月25日に、perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、capsuleなどの制作に関わっておられる音楽プロデューサー中脇雅裕氏を講師にお迎えして行われました。第一部は中脇氏による講演、第二部は私も加わった対談形式で、中身の大変濃い大充実の内容でした。
前回、前々回と2回に渡りお送りしてきたエンジニア萩谷真紀夫氏との対談、後編です。
樫村(以下、樫)レイテンシーがなくてバランスの良いモニター環境が構築出来たら、次はクリックがポイントかな?
萩谷(以下、萩)クリックをテーマとして取り上げたら、興味を持つ人が結構いるんじゃないですか?
樫)バンドのマルチレコーディングでは必ずクリックを使うと思っている人が多い気がするけど、本当に必要かなぁって思うことがたまにある。
萩)同じくです。
樫)クリックを使ったほうがリズムが安定するのは言うまでもないけど、必死にクリックに食らいつくんじゃなくて、余裕で合わせられるくらいのレベルじゃないとね。演奏が正確でも守りに入った感じになって、結果として、おとなしいこじんまりした音源になる傾向がある。
萩)バンドの雰囲気とか、方向性とか、ジャンル、スキルも含む経験値によっては、かえって使わないほうが味のある音源になることも多い気がします。
樫)アンダーグラウンド系のレコーディング、例えばオールドスクールのハードコアとか初期パンク、R&R、ロカビリー、サイコビリーなんかは、バンドと相談してわざとクリックなしで録ることもぼちぼちあるね。
萩)僕も昔、パンク系のロックバンドでドラムやってたんでわかります。駆け出しの頃、樫村さんのスタジオで録ってもらった時は、クリックなしでしたよね、確か。
樫)ああそうだったっけ、なつかしいね(笑)その音源の勢いは相当あったように憶えてるな。
萩)普段の練習、バンドでも個人でも、クリックをじっくり使った徹底的な練習をしたあとに、本番ではあえてクリックなしで臨むバンドもいます。全員が身体にしみこむまで徹底してクリックと向き合ってるから、相当なグルーヴを醸し出してる。
樫)熟練の技だよね。逆に、クリックを使っててもグル―ヴィーな演奏が出来るバンドは、録っていても本当に気持ちいいんだよね。
萩)こういう場合は、かぶりなしの3リズム一発録りで、後で歌入れしてもノリの良いテイクが録りやすくなりますね。
樫)音楽的でかつ攻めのRECね。プロとアマの差が出る。
萩)同期系のバンドについてはどうですか?僕はワンパートずつのバラ録りで、ノリや雰囲気を出すのって意外と簡単じゃないと思ってるんです。特に自宅録音で、ベースやキーボードのラインものを録る場合。
樫)同期の作り方も含め、一番こだわりたい部分だね。年々ジャンルを問わず、同期を取り入れてるパターンは増えてるから。
萩)ドラム打ち込みの場合まで含め、ライブでも生バンドと混じりにくいんですよね同期って。レベルも本当にピンキリで。PAに頼る前に、よっぽど上手に作りこまないとね。
樫)アレンジとか音色がしっかりしてても、オーディオ化する時に差がつくね。そしてセルフRECにおける第一関門って、録る時の「ディレクション」だと思う。
萩)当然といえば当然だけど、経験値は大きいです。プロの現場を経験してる人がいるのと、いないのとでは差がでますね。作業の進行具合とか、アーティストのメンタルケア、演奏力や録り音の限界の見極め、楽器の状態やチョイスの仕方とか、細かいところなんですけど結果大きな差になる。
樫)本格的なレコーディングを経験しないとわからない点なんだけど。だからこそ、こういう時代でもレコーディングスタジオの存在意義はまだまだあるんじゃないかな。
萩)最近はドラムだけレコスタで録って、あとは自宅で録るっていうのも多いです。僕もやりますけど。
こういうパターンもセルフRECと呼んでよいのか迷いますが。
樫)何にせよ「録り」が良ければMIX、マスタリングも絶対楽になるし、編集も最低限で済むと。
萩)本来のレコーディングの姿ですよね。
樫)可能であればだけど、少しでも有名なバンドのレコーディング現場を見学するのが一番勉強になるね。
【今月のちょいレア】
Symetrix 「528E VOICE PROCESSOR」
90年代前半に発売されたマイクプリ、EQ、ディエッサー、コンプ、エキスパンダーまで装備しているチャンネルストリップ。英国の有名アーティストも本番で使用している、知る人ぞ知る隠れた名機。当スタジオではモディファイしてさらにパワーアップしています。Vo.はもとよりスネア、ギターなどのRECにも効果大。特にコンプとディエッサーの効き方はワイルドさの中にもジェントルな質感が残る、他のどの製品にもないワン&オンリーな特徴を持つ逸品です。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。
レーベルWhirlpool Records(ワールプールレコード)、brittford(ブリットフォード)主宰。
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
niente「unlace」
ポーティスヘッドやチャーチズ、J-シューゲイザー要素が加味された雰囲気のポストロック、ニューウエーブバンドのマキシシングル。ギターよりもキーボードの押し出し感が印象的。
Quartet of Death「Sorrow of Darkness」
北欧シンフォニックメタル+南米デスメタルが合体したネオラウドスタイル。ハイトーンのKOZAWAの存在感がすごい。世界20か国同時発売のラウドコンピレーションアルバムにも参加している。
後藤優子「HIKARI」
仙台在住の女性シンガー。JAZZ、クラシック、ポップスの名曲を、時代を超えてハイモダンに再 現。ソプラノながらワン&オンリーな声質が特徴。SHIZUKA氏の知的なトラックメイキング力も随所から感じられる秀作揃い。
Retorighter「蒸気ランプ」
エレクトロを取り入れたガールズギターロックバンドのアルバム。曲のバリエーションはもとより、大担なシンセアレンジが最大の聴きどころ。サカナクション、テレフォンズ好きにおすすめ。
shabby「それでも、咲くのを待っている。」
定番のギターロックサウンドに、Vo.EHARAの独自の声質と歌の世界観がカレイドスコープのようにカラフルに絡む。初々しさの中に多大な可能性を感じる一枚。無心で楽しんで欲しい。
―――前回に引き続き『神聖かまってちゃん』などのエンジニアリングを手掛ける萩谷真紀夫氏との対談です。
樫村(以下:樫)ただ個人的に、RECにおけるプロとアマの差はまだまだあるなあ、と気づく部分が何点かある。
真紀夫(以下:真)それは何ですかね?だいたい予想は出来るんですけど。
樫)まずは目の前でなっている音を「そのバンドの雰囲気を出しながら、曲調に合わせてどれだけリアルに収録出来るか」ということかな?
真)非常に当たり前のことですが、レコスタで録っても意外と簡単に出来そうで出来ない所ですね。
樫)そう、だからセルフRECではもっと難しくて。機材が使いこなせれば良く録れるはず、と思っている人が多い気がする。
真)僕なんかはProtoolsHD、HDX、高級アウトボードなんかをいろんなレコスタでふんだんに使って作業することも多いんですけど。バンドの理想形をとことん深読みして、ようやく彼らのストライクゾーンに入る感じです。逆にプライベートスタジオでは、樫村さんもおっしゃってたヤマハのAWシリーズを使って作業したりしますね。
樫)録り音と演奏の雰囲気をいい感じで収録するって、ハードルは決して低くないんだよね。ここをきちんとクリアしていかないとMIX、マスタリングなんかの後処理では対処しにくくなるから。
真)録り・MIX・マスタリングの全工程を一貫した流れとしてとらえるべきで、一つ一つを別作業と考えないほうがいいですね。
樫)その方がいい結果を生むことが多いね、基本的には。プラグイン100個差して、100時間MIXしても及ばない部分もあると思う。録り音がなんか違うなぁと思っていながらも、MIX・マスタリングで何とかなるだろうという発想は極力避けるべき。
真)そうです、録りは非常に重要です!
樫)プロレベルの録り音に近づけるには高級マイクプリアンプを最低一台、出来れば複数台用意したいところだね、MANLEY、VINTECH AUDIO、Millenia、TUBE-TECHクラスの。中古でも10万円以上することが多いけど。
真)ADコンバーターと同じくらい重要な「音の入り口」の部分ですもんね。それに加えてマイクケーブルや電源なんかも当然こだわりたい。予算は結構かかるけど妥協できない点です。
樫)あと、録る場所もとても重要だよね。セルフREC前提で考えると、リハスタ、学校の部室あたりが一番可能性として高いでしょう?どこでやるにしても、最低12〜13畳以上の広さと、2.5メートルの天井高は必要かな。反響も少なめの方が取り組みやすいことが多い。ドラムセットの下に吸音マットを敷いたりするのも試す価値はありだね。
真)僕もたまに、リハスタでインディーバンドのRECを手伝うことがあるんです。
樫)機材を持ち込んで録るから、こだわるポイントは決まってるよね。
真)ええ、その場合メインの機材は意外にシンプルで、ProtoolsLeか、ヤマハのAWだったり。電源やヘッドホン周りのモニターセクションは逆にいろいろこだわります。
樫)演奏の雰囲気を出すには、なんといってもミュージシャンが気持ちよくプレイできる環境づくりが第一だからね。プロとアマの差はこんな部分でも出るんだよね。
真)セルフRECだと、レイテンシーも含めて、モニターバランスが取れないで無理やり演奏しているってことも多そうですね。
樫)無理やり演奏してグルーヴとか雰囲気とか味が出るわけがない。オペレーションする人と、プレイヤー用のモニターは、それぞれ個別に取れたほうが良いね。ヤマハのAW2400は、まさに独立したモニターセクションが2つあって、レイテンシーもないし、電源やマイクケーブルにこだわれば音もなかなか良いし。PCよりも使いやすいというバンドマンもいるよ。
真)わかります、僕も2400ではないけどAWシリーズを2台持ってるんで。周辺機器を強化すれば本チャンでも十分通用すると思います。
樫)あと、出来ればモニターセクションにキューボックスも用意したいね。今、あんまり選択肢はないんだけど。
真)モニターの返り方一つで、演奏のダイナミクスも全然変わります。
樫)後処理では成し得ない「素晴らしいテイク」は、こういうことの積み重ねから生まれるんだと思う。
―――次号に続きます!
【今月の逸品】YAMAHA Subkick
非常にユニークな形の、超低音収録用マイク。
バスドラはもとより、ウッドベース、ジャンベ、コンガ、ボンゴなどのパーカッション類の低音成分を収録するのにうってつけ。残念ながら最近生産終了になってしまいました。
個人的には是非、後継機種を出してほしい!
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。Whirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
たなま『はじめの一歩』
ルーツにYUIを感じさせるシンガーソングライター「たなま」満を持しての1stミニアルバム。バックにomoinotakeを従え、シティーポップやAOR、ギターポップ色もさりげなく感じられる好盤。Shakarabitsも所属するNEON RECORDSより首都圏を中心に発売。
after the greenroom『Like a Blanket』
アシッドマンを輩出したNormadic Recordsが放つ、洋楽の匂いを感じるオルタナポップバンドのフルアルバム。Vo.のYAMAMIを中心に全パートがセンス良く、同じベクトルで絶妙に絡む名盤。全国発売中。
蒼鷺は死なない『幸か不幸か』
いなせな女性Vo.を前面に打ち出した、エモ・オルタナ色を含んだロックバンドのミニアルバム。曲のバリエーションが実に様々で「蒼鷺ワールド」をしっかり形成している。椎名林檎や大森靖子あたりが好きな人にもおすすめ。
ムーファ『Syndrome×Syndrome』
曲によってVo.が変わる多面性をもった、神奈川在住のギターロックバンドのミニアルバム。ルーツに少し欧米のR6R、モッズが感じられ、類を見ないキャッチ―なポップテイストを真摯に取りこんだ自信作。
ARUKANATA『Alchera』
ハイトーンボイスが非常に特徴的なエモギターロックバンドのマキシシングル。アンダーグラウンド系から四つ打ちポップまで幅広い内容が純粋に楽しめる。全パートの変幻自在なサウンドスケープも追い打ちをかける、緻密かつまとまりの良いプロダクションがすごい。
月日の経つのは早いもので、この連載も10回目を迎えることが出来ました。そこで今回・次回とゲストをお迎えして、特別対談形式でお送りします。
対談をお願いしたのは『神聖かまってちゃん』のエンジニアリングを中心に、最近では『オワリカラ』の音源制作にも関わっているエンジニア / DJ / サウンドクリエーターの萩谷 真紀夫(はぎや まきお)氏です。
樫村(以下:樫)お久しぶりだね。
真紀夫(以下:真)こちらこそ。
樫:最近はレコーディング雑誌を中心にメディア露出が増えてますます勢いづいてるけど、寝る暇ある?
真:一応ありますよ。
樫:最近の仕事の話を聞いてると、REC、MIX、マスタリングは当たり前で、楽曲提供やPAまでやったり、ギターもサポートで弾いたり本当に大活躍で。
真:いやいや、仕事の種類と時期がいい感じでバラケてますから。たまにパンクしそうになりますけど。
樫:真紀夫くんの場合はスキル、センスだけじゃなくて、人間として柔軟性があるからクライアントが増えるんだと思う。とにかく頼みやすいオーラが全身からにじみ出てる(笑)。
真:そうですかぁ?(笑)。
樫:ところで今、セルフRECをやってる人がプロ・アマ問わず本当に多いよね。
真:年々すそ野が広がっていますよね。アプリでもそれなりのセルフRECが出来る時代ですから。
樫:環境によっては、プリプロと本チャンの差がなくなってきているのは確かだし、演奏のテイクもプリプロの方が良くて採用される場合も、昔より増えてきてる気がする。
真:僕が関わってる仕事も、そのパターンが増えています。
樫:プロのミュージシャンが本気でプライベートスタジオを作ったら、レコスタで録るよりも味のある音や演奏がゲットできる可能性が確実に増えてきてる。
真:そうですね、電源やハイグレードなマイクプリ、モニタースピーカーの環境整備や、部屋鳴り、メインDAWの充実、というポイントを押さえるスキルと予算があれば。あとはマニアックな機材やアマチュア用の機材を好きにモディファイして使う人も結構いますよね。
樫:プロだとそういったポイントをしっかり押さえて、好き勝手やる人は多いね。
真:僕も意外と高価じゃない機材で作業することも多いですよ。
樫:だけど結果として、プロの音になる。いろんな経験を積んで来てる点と、周りにプロフェッショナルな人材が豊富にいるから出来る部分もあるよね。もちろん例外もたくさんあると思うけど。
真:とりあえず僕の周りには、チープな環境でもここをこうすれば悪くならない、といったポイントをたくさんつかんでいる人が多い気がします。
樫:まさに、この連載を読んでる人たちが一番知りたい部分(笑)。
真:でも樫村さんもよく言ってるように、RECはマイクの種類や立て方なんかも重要だけど、その“前”の部分。例えば当たり前ですけど、演奏力、作曲・アレンジ力、楽器の状態やチョイス、配置、チューニング、音作り、部屋鳴り、電源なんかの環境を、あるレベル以上にクリアしていないと。後処理ではどうにもならないことが、まだまだ存在するということですね。
樫:そうなんだよ、今は機材が発達しすぎているから、MIXやマスタリングといった後処理でどうにでもなると思ってる人が限りなく多い。
真:昔よりは確実にツブシが効く部分が増えていて、後処理でやれる幅も格段に向上している部分もありますが。
樫:特にドラムと歌なんかは顕著だよね。
真:数あるプラグインでピッチを直したり、トリガー系ソフトでドラムの音を差し替えたり、波形もずらすテクニックが年々充実してきてますよね。
樫:ただ、個人的にRECにおけるプロとアマの差は、まだまだあるなあと気づく部分が何点かある。
真:それは何ですかね?
――――続きは次号で!
コラム第一回でもご紹介したバンド「marigold」只今、最強のメンバーで新音源を制作中。
【今月の逸品】コンデンサーマイク SE Electronics SE2200aⅡ
予算5万円以下で一押しのコンデンサーマイクは?と聞かれたら、迷わずこのマイ
クをお薦めします!プリアンプ、マイクケーブル、電源環境次第では、20万円以上
の高級マイクと比べても音質的には何ら遜色ありません。コストパフォーマンスが
高い逸品です。実勢価格3万円台でありながら単一指向性だけではなく、無指向性、
双指向性に対応しているマルチパターンの優れモノ。ボーカル録りはもとより、ピア
ノ、アコギ、ドラムのアンビエントなど幅広く対応します。
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
2015年10月25日(日)13:00~ サウンドプロデュース&プロモーションセミナー開催!
今回はperfume、capsule、きゃりーぱみゅぱみゅ、三戸なつめなどを世に送り出した音楽プロデューサー中脇雅裕氏をゲストにお迎えします!参加は無料ですが、参加人数把握のため予約をお願いしています。
予約は、会場の茨城音楽専門学校(茨城県水戸市)まで。
予約電話番号 TEL 029-248-0521(茨城音楽専門学校) 受付時間 9:00 - 19:00 【土・日・祝日を除く】
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
tokage『LOVE THE LIFE』
メジャー出身のSAKI、Eiriを中心に結成された、MTV的洋楽っぽさもあるJ-POPROCKバンドのミニアルバム。透き通る声質に力強さが加味された歌と、楽器の音域の棲み分けが好印象。TV神奈川を始めとするラジオ、雑誌などメディアへの露出も多数あり。全国発売中。
Firmament『空色』
直球爽やか系ギターロックバンドのミニアルバム。ギターのリフをはじめ各パートの音色やフレーズの凝り方が、さりげなく核心をついているのが面白い。リズムパターンや声質と、歌詞との絡み方が絶妙です。
Hello Music『hello hello hello』
天然のボカロとアニソン声が真っ先に耳に飛び込んでくる、女性ボーカルのギターロックバンド。ボーカルエフェクトいらずの独自の質感と、ファンタジーな曲調の絶妙な組み合わせがいい感じ。声優好きの人も要チェックの音源。
BLACK MINDS GROW『DIVE!』
エモロック、パワーポップをベースにしたギターロックバンドのシングル。爽やかさの中に、力強さや頼もしさを感じるストレートなロックを前面に展開。倍音が豊かな歌声と、歌詞の奥深い世界観が売り。はじけるライブも魅力的。
新村けんぞう『シルクハット リアリティー』
ジェリーフィッシュ、チープ・トリック、ポール・マッカートニー&ウイングス、クイーン、ラーズ等ポップスの巨頭に多くの影響を受けているシンガー、新村けんぞうが放つ最新アルバム。洋の東西を問わないポップスの黄金律がぎっしり詰まった自信作は、良い意味で聴き手を選ばない。
S.H.E『ScHrödingEr』
千葉テレビ『応援美女子』エンディングテーマであるリード曲を含む、渾身の4thアルバム。東北屈指の音楽フェス“いしがきMUSIC FESTIVAL2015”にも出演など話題に事欠かない。Tasting heads productionとbrittfordのダブルネームで2015年10月全国発売。