甲田まひるが2024年12月15日(日)に、2ndワンマンライブ「STOP ME」を東京渋谷・WWWにて開催した。以下、その様子をレポートする。
5月24日のバースデーライブ「HAPPY MAPPY DAPPY -23yo-(読み方:ハッピーマッピーダッピー ニジュウサンワイオー)」以来2度めのワンマンは、甲田まひるのわずか半年ぶりにして目覚ましい進歩をうかがわせる内容になった。
バンドメンバーがステージに上がると、背景のスクリーンには甲田が丸の内に赴いて撮影したというショートムービーが流れる。英語で「いま何時? え、大変! もう行かないと! わたしそこ(指さす)で歌うんだから! じゃあみんな、すぐ行くからいい子で待っててね。バイ! You can't stop me!」と、バンドが「Sugar=High」のイントロを奏でるなか(渋谷まで秒速で到達して)登場。ガーリーないでたちがよく似合っている。
3曲目 の「らぶじゅてーむ」のイントロが流れると、早くもフロアから嬌声が上がる。フック満載のこの曲を序盤に配し、最後に「甲田まひるです、よろしく」とひとこと。ある意味ストイックともいえる演出から、同曲で彼女を知った観客に新しい、今の姿を見せようとする気概が伝わるかのようだった。
WWWという会場への思い入れと、そこでライブできる幸せを語って「ついて来れますか?(ウェーイ!)本当に行けんのか?(ヴォェーイ!)」の応酬から「CHERRY PIE」「ごめんなさい」のいわばチューンフルコーナーへ。作曲家としてのスキルとイマジネーションを見せつけるような魅惑的なセットだ。
続くコーナーはアコースティック。まずはギターの中松文吾と二人で、3か月連続リリースの第1弾となった「Honey:)」だ。穏やかなリリックがフォーキーなパフォーマンスに映え、自然と手拍子やメロディのハミングが湧き起こった。続く「Snowdome」では中村エイジのピアノからバンド全員が順次参加し、マーティ・ホロベックはベースギターをシンセベースにスイッチ。中松のエレキギターと竹村仁のドラムがアツいソロを披露する長尺の演奏で魅了した。甲田はその途中で衣装替えのためいったんステージを退き、次の「Everyday」(敬愛するアリアナ・グランデのカバー)のイントロ演奏中に再登場する。この2曲のドラマチックな展開は当夜の最初のハイライトで、フロアの熱気が上昇するのが実感できた。
「Everyday」の後にメンバーを紹介。10代のころから一緒にセッションしてきた仲間たちだという。「みんな、わたしなんかよりいろんなとこで超活躍してるすばらしいミュージシャンなんです。みんなのライブにもぜひぜひ足を運んでください。(中略)本当に長い付き合いで、こうして好きなメンバーと一緒にサウンドを作れるのはマジで幸せだなって思います。ありがとう、みんな」という口吻からは、彼らとの確かな関係に加え、甲田の音楽文化とその担い手たちへの敬愛ぶりがうかがえた。
終盤は「Take my hands~君となら~」「One More Time」「SECM (Sausage Egg & Cheese Muffin)」「M」とラップナンバーの連打でたたみかける。甲田も「すごいね、仁くん」と言っていたが、竹村のドラムのドライブは圧巻だった。甲田のやや硬かった表情もこのころにはすっかり柔らかくなり、特に「One More Time」では音に没入したいい顔を見せていた。
締めくくりはEP『STOP ME』収録曲の3連打。最終曲「STOP ME」前の長めのMCでは、曲ができたときにライブのイメージがはっきりと見えた、と話し始めた。「ひらめきをどれだけそのままみんなに届けられるかが大事」という話は前にインタビューしたときにもしてくれたが、演奏にしろデザインにしろ映像にしろ、ひとりですべてを形にできない以上、他人に「伝える」必要性はどうしてもある。「あきらめそうになることもいっぱいあるんですよ」と前置きした上で聞かせてくれた話は、特に彼女と同世代以下の人たちにはとても大事なことだと思う。
「自分がひらめいたときに『これだ!』って思ったものって絶対に譲っちゃいけないと思うのね。自分のことをわかってくれない人たちに止められる必要はないから。ってことをわかってほしくて、この曲を書いてライブのタイトルにしました。発想って自由だし、それぞれが生み出してるものって全部1コしかなくてすばらしいから、お互い尊重できたらいいなってすごく思ってるんです。そんな『いいね!』って言い合える世界にしていくでしょ? わたしたちの世代が。若い子もいっぱいいるよね? 自分がいいと思ったことをSTOPされないで、貫いていきましょう。約束できる?」
「……というのはウソで、STOP MEって言いやすいからつけたんですけどぉ~」と照れ隠しをしていたが、思いのこもった真剣な言葉である。学校や職場で得るのは難しいけれど、だからこそ大事なメッセージだ。僕はこうしたエンカレッジングなメッセージを発するのはエンタテイナーの務めのひとつではないかとさえ思っている。
前回のワンマンでも思ったことだが、バンドメンバーのミュージシャンシップが非常に高く、アレンジに顕著だったように、甘えや妥協は一切ないが楽しんでいることははっきりとわかる。達者な演奏を心地よく乗りこなして、甲田まひるが自らの魅力的な人柄をしっかり伝えたライブだったと思う。終演直後に話を聞いたら「めっちゃ緊張してたんですけど、お客さんの顔が見えたらみんなすごい温かくって、わたしも自由にできて超楽しかったです」と言っていた。ライブをやるたびにファンが増えるタイプのアーティストだと思う。2025年はさらなる飛躍を期待したい。
末筆になったが、甲田はMCで来年2月公開の映画「ババンババンバンバンパイア」の挿入歌を担当することを発表した。新曲「ナツロス」を映画のために書き下ろした彼女は「漫画と台本を読んで、強烈なキャラクター設定と物語の世界観に引き込まれました。ギャグ要素が散りばめられていて、楽しく曲を制作できました。蘭丸と李仁くんの深い絆が皆さんの胸に響けば嬉しいです」と語っている。
映画「ババンババンバンバンパイア」は2025年2月14日(金)公開。「ナツロス」がどのようなシーンで流れるのか、楽しみにしていただきたい。
文・高岡洋詞
写真・垂水佳菜
【甲田まひるコメント】
挿入歌の「ナツロス」を書き下ろさせていただきました、甲田まひるです。
漫画と台本に目を通した時に、強烈なキャラクター設定と物語の世界に一気に引き込まれました。
ギャグ要素が散りばめられた作品が個人的に好きなので、曲の制作過程がとても楽しかったです。
蘭丸と李仁くんの深い絆を繊細に描いた曲なので、そんなところが皆さんの胸に刺さりますように。
【セットリスト】
01.Sugar=High
02.Love My Distance
03.らぶじゅてーむ
04.CHERRY PIE
05.ごめんなさい
06.Honey:) (Acoustic ver.)
07.Snowdome
08.Everyday - Ariana Grande (Cover)
09.Take my hands~君となら~
10.One More Time
11.SECM (Sausage Egg & Cheese Muffin)
12.M
13.SIDE EYE
14.I LIKE IT LIKE THAT
15.STOP ME
【甲田まひる EP「STOP ME」】
1.STOP ME
2.SIDE EYE
3.I LIKE IT LIKE THAT
【映画『ババンババンバンバンパイア』作品詳細】
作品名:『ババンババンバンバンパイア』
出演:吉沢亮
板垣李光人
原菜乃華 関口メンディー/満島真之介
堤真一
音尾琢真 映美くらら
笹野高史
眞栄田郷敦
原作:奥嶋ひろまさ『ババンババンバンバンパイア』(秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)
監督:浜崎慎治 脚本:松田裕子
主題歌:imase「いい湯だな 2025 imase × mabanua MIX 」(Virgin Music / ユニバーサル ミュージック)
挿入歌:「ナツロス」甲田まひる(Warner Music Japan)
製作幹事:松竹 テレビ朝日
製作:「ババンババンバンバンパイア」製作委員会
制作プロダクション:ダーウィン
配給:松竹
©表記:©2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 ©奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022
【プロフィール】
ジャズ・ヒップホップをバックボーンとして、ジャンルに束縛されていない自由なサウンドを放つシンガーソングライターで、全楽曲の作曲・作詞を自ら手がけている。2021年シンガーソングライターとしてデビュー作品となる1st EP 『California』をワーナーミュージック・ジャパンよりリリース。2023年9月に1st Full Album『22 Deluxe Edition』をCDリリース。そして2024年12月にはEP「STOP ME」をデジタルリリース。アーティスト活動以外にも、俳優、タレント、ファッションアイコンとして多岐にわたる活動を行っている。
【関連リンク】
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