ピコピコ音と生身のロックサウンドのハイブリッド、黒と黄色のコントラストも目に鮮やかなエレクトロ・ポップ・ヴィジュアル系バンド、メトロノームが、19周年記念ワンマンライヴ“しゃーたん&めとたん”を赤坂BLITZで開催した。以下、当日のライブレポートを掲載する。
【ライブレポート】
タイトルがポップ感満載だが、メトロノーム結成19周年その日であるという「めとたん(=メトロノームの誕生日)」とVOICECODER(ボーカル)のシャラクの誕生日が8月であることの「しゃーたん(=シャラクの誕生日)」を掛け合わせた、遊びの効いたもの。2つの誕生日を祝いに来たファンで、会場は溢れかえった。
機材トラブルで開演が遅れ、会場はライヴへの期待と開演が遅れていることへの不安にざわざわとしていたが、客電が消えると歓声が沸き起こり、視線が一気にステージに注がれる。SEが流れる中、メトロノームのライヴではおなじみの機械的なナレーションで、19周年をファンの支えで迎えることができた謝辞が告げられ、続けてそれぞれのメンバーがステージに登場すると、今か今かと開演を待ちわびていたファンの気持ちがブースターとなり、激熱のメンバーコールが投げかけられる。19周年記念公演“しゃーたん&めとたん”が、シャラクの「メトロノームだ!」の雄々しい叫びで幕開けした。
スタートから「RE-SET」のリアレンジver.、「朧」「世界はみんな僕の敵」「空想ヒーロー」とハードで男前の楽曲を会場に叩き込む。ステージに据えられた巨大なLEDに映し出される意匠の凝らされた映像が、パフォーマンスをさらに拡張し、赤坂BLITZをメトロノームの世界に変える。のっけからフルスロットルのTALBO-2(ベース)のリウのベースサウンドは、本人の激しい動きと同様に低く高くうねる。TALBO-1(ギター)のフクスケの指板に向けるクールな視線と、会場に向けるいたずらっぽい笑顔のギャップにファンは狂喜乱舞だ。MCで開演の遅れを謝るシャラクだったが、それを一瞬にして吹き飛ばす灼熱のライヴで会場は笑顔に溢れている。
続けてのゾーンはファンタジックかつダークさも内包した「魔法」「薔薇と紅蓮」「ぞんび君」と続く。「薔薇と紅蓮」は悲痛さが滲むサウンドと歌詞、シャラクの魂から叫ぶような歌声が心に突き刺さる。水を打ったように聴き入るファンの目はまさにステージに釘づけ。粒子の細かいミラーボールの光が場内をくるくると舞い、とてつもなく美麗だ。しかしその後間髪入れずに繰り出される「ぞんび君」のイントロでいやがおうでも縦ノリさせられる。
爽やかさとハードさがカオスのテクノSEから続いて披露されたのは「式神ループ」。この曲はまだリウがメトロノームに加入する前の2000年に、まさかの“MD”で無料配布された楽曲。19周年を迎えて新たにアレンジし直された曲は結成当初からのファンは悲鳴にも似た歓声をあげ、曲を知らないファンは独特の怪しい響きのテクノサウンドを純粋に新曲のように楽しんだ。一気にタイムスリップして2017年へ。最新アルバム『CONTINUE』に収録されている「惨敗生活」「ボク募集中」を続けて披露。ハードロックとも言えるゴリゴリ曲の「惨敗生活」はフクスケとリウのコーラスも重く男らしい。ぐるっと変わってキッチュな遺言書「ボク募集中」はシャラク・ワールド全開のおもちゃのような声色に乗って、すでにファンにも染み着いたコミカルなフリで客席が揺れる。
毎回フクスケに指名されたメンバーが即興でフリを作る「豆腐メンタル」では先月TSUTAYA O-EASTで行われたPsycho le Cémuとの2マンで、この曲にゲスト登場したPsycho le CémuのYURAサマが振り付けた「豆腐を切って好きなメンバーに投げる」フリをシャラクがリサイク…オマージュし、ファンはそれぞれの好きなメンバーに向かってエアー豆腐をたくさん投げた。最新アルバムの曲が続いた後はグッと遡って「確証BIAS A GO! GO!」。LEDに映し出される「GO」と「業(ごう)」の文字に合わせて拳が力いっぱいつき上げられる。
メトロノームのロゴつきの提灯がステージ背面に立体的に浮かび上がると、コミカルなフクスケの煽りの後、会場全員でボンダンス(盆踊り)。祝福ムード満載の楽しい光景が広がった。「プチ天変地異」ではリウが弓でアップライトベースを弾いた後、おもむろに弓を高く投げ上げてから指弾きにシフト。激しく覆いかぶさるように弾き倒し、ロック満載の「プチ天変地異」となった。
メンバーがステージからはけるとほぼ同時に沸き起こったアンコールに応えて登場したフクスケが、ステージセンターのメトロゴ付きのステップに、かっこよく足を置こうとするが完全に空振り、女子のように倒れこむというハプニングで爆笑を起こしながらも、19周年を迎えることができた感謝の気持ちを改めてファンに伝えた。来年は20周年を迎えることに言及し、「来年の8/25も空けとけよ!」と少年のような笑顔を魅せた後、「まだまだ30周年、40周年…と続けたいと思ってるので、よろしく!」と明るく告げ、ファンもはち切れんばかりの笑顔に。
その上、嬉しいことに、DASEINとCASCADEとの趣向を凝らした2マンライヴが11/11・11/12と開催されることを発表。さらに12/10には、今年6月に行われたリウのバースデーライヴ“りうたん”、今回の“しゃーたん&めとたん”に続き、フクスケのバースデー記念ライヴ“ぷくたん”が開催されることも発表。まだまだ発表は続き、渋谷Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにてメトロノーム主催のカウントダウンイベントが12/31に開催されることも発表した。
フクスケに「筋肉1号、リウ!」と呼び込まれ、不本意げに登場したリウは、最近痩せたからと「スリム1号」と訂正して、反撃とばかりに「スリムじゃない1号」とフクスケを指すコント的なやりとりが。シャラクが呼び込まれると打ち合わせなしのキャイ〜ンのポーズに阿吽の呼吸でフクスケがのっかり、高校の同級生であるアピールで会場をほっこりさせた。
アンコール1曲目に繰り出したのは、2000年になんと“デモテープ”で無料配布された曲「村は1cm」のリアレンジバージョン。ファンタジーと近未来感が交差する不思議な歌詞とサウンドは、現在のメトロノームの進化をまとって全く色あせない。さらに排他感と解放感を併せ持つ「三つ数えろ」から、メンバーと会場のヘッドバンギングがシンクロする「気が狂いそうな時に口ずさむ唄」で客席もステージも混沌と化し、その後に贈られた「アリガト」は、実際の歌詞よりもさらに別の意味合いを深くし、叫ぶように高いシャラクの「アリガトーーーーーー!!」は、プライスレスとしか言いようがない。
その後届けられた最新アルバムのリード曲「強くてNEW GAME」でのメトロノームは、その曲名の通りに、昨年秋までの7年間の休止期間は、ゲームでいうところのちゃんと『セーブ』されていて、今はそのセーブデータからNEW GAMEをスタートさせて、さらに進化する旅の途中のように感じさせた。
まだまだ収まらないファンのアンコールによって再び登場したメンバーは「絶望さん」を披露。会場いっぱいのファンによる『絶望でーす!!』の唱和は底抜けに気持ちよく、絶望的なフレーズにも関わらず多幸感が溢れた。
「おっきい会場でやりたいんです。もっとおっきい会場が似合うバンドになりたいんです。“ついて来い”なんて偉そうなことは言えませんが、一緒に、どんどん大きくなってどんどん楽しいことをしたいです。…なんで、よろしく」シャラクがポツポツとたどたどしく、不器用に語る。でも言い切る形で。ちょっと照れ臭そうに、「では次、最後の曲…くるくる回って、今のこと忘れちゃダメだよ(笑)」と言ってからドロップしたのは「φD-SANSKRIT」。メトロノームのライヴ定番の楽曲で、ファンは腕も身体も大きく揺らし、くるくる回り、満員の会場が波打つ中、涙腺が緩んだファン続出で、楽しくも泣き笑いの感動的な赤坂BLITZとなった。曲中にサラッと「ついてきてね」と言ったシャラクの笑顔が眩しい。
全25曲をたっぷりファンに贈ったメトロノーム。力強く客席を煽り、白い歯を見せて不敵に笑うフクスケ、おそるべき身体能力で跳ねまわりながら顔をくしゃくしゃにして笑うリウ、どちらかというとカッコよさが際立つ中でほほ笑むシャラク、3人のメトロノームのこの先を、昔からのファンも、新しくファンになった人も、友だちの付き添いで来た人も、きっと、ずっと見たい、ついていきたいと思わせるに十分すぎる19周年記念公演となったのではないだろうか。
(PHOTO:大塚秀美)
■19周年記念公演「しゃーたん&めとたん」
SET LIST:
1. RE-SET
2. 朧
3. 世界はみんな僕の敵
4. 空想ヒーロー
5. 魔法
6. 薔薇と紅蓮
7. ぞんび君
8. 式神ループ(テクノコーナー)
9. 惨敗生活
10. ボク募集中
11. 豆腐メンタル
12. 解離性同一人物
13. 千年世界
14. 確証BIAS A GO! GO!
15. MATSURI
16. 自分コンプレックス
17. プチ天変地異
18. ボク偉人伝
ENCORE:
19. 村は1cm
20. 三つ数えろ
21. 気が狂いそうな時に口ずさむ唄
22. アリガト
23. 強くてNEW GAME
ENCORE 2:
24. 絶望さん
25. φD-SANSKRIT
■ライブ情報
“テレイコブランディング「CA-DA」”
11/11(土) 原宿アストロホール W/DASEIN
11/12(日) 原宿アストロホール W/CASCADE
メトロノーム presents “ぷくたん”
12/10(日) 原宿アストロホール
メトロノーム presents “COUNTDOWN 2018 -startup 20th-”
12/31(日) 渋谷Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
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