語弊を恐れずにいうと、akutagawaほど捉えどころがないバンドも珍しいと思う。でもだからこそ人を惹きつけるし、個人的にも大好きなバンド。こんなことを書くと、レビューでもなんでもなくなるけど。山形で結成され現在は拠点を都内に移し活動している彼らの、前作『君と僕』からは実に約5年振りとなる新作。今回より新たに自主レーベル“Alpinista”を立ち上げ今後のバンドの意気込みが感じられる今作は、様々な紆余曲折を経た末に辿り着いたこれまでの集大成じゃないかと思う。
壮大な世界観と、繊細ながら芯の強さを持ったサウンド、そして胸をえぐる日本語詞のメロディ、すべてが絶妙なバランスで鳴っている。インディ・ロック/エモと言い切るのは容易いけど、そこに見え隠れするハードコアの精神性はやはり叩き上げで培ってきたバンドのそれ。だからこそ本当に多くの人に聴いてもらいたいし、シーンそのものの起爆剤にもなり得る1枚。