音楽メディア・フリーマガジン

今月のリリース Vol:197

今月のおすすめリリース

『三笑』

Artist : Ett

 Ett(エット)は名古屋にて2002年に結成し、ガットギターと唄による演奏を各地で行う、渓(G.)と西本さゆり(Vo.)の二人。七年ぶり4枚目のアルバム『三笑』を発表。本作収録曲のほとんどは島根県奥出雲町に在る横田相愛教会で録音されていて、歴史ある教会のたたずまいを思わせる音が随所に聴かれます。全体的に落着いた印象ですが、ここ7年間のライブで練りに練られた楽曲が詰まっています。
 ふちがみとふなとの渕上純子さん作詞の「ワルツ」収録。また十数年前に作られたギター渓のソロの楽曲+高倉一修さん(GUIRO)作詞の「lotus」を1stアルバムから再録。
 今回はゲストを迎えず2人のみで、今の演奏の記録を切り取りました。全11曲約40分収録。ジャケットは初回プレス分を特殊紙仕様。表紙には「明けていく空」、裏面には「暮れていく空」の写真を使用し、歌詞カードには今回もいぬんこさんによる三笑図の挿絵あり。お目出たい感じにパッケージしています。

レビュー執筆者:高橋佳介 クーグート(デザイン事務所)を運営し、クーレーベルのデザイン担当。

『Rainbow after rainfall』

Artist : RAINBOW

 新人バンドRAINBOWの新作? というか処女作なのだけれど、規格外の72分1曲という音楽。
 約2年半の歳月をかけた楽曲は、時間の経過も音に含まれている。オープニングとエンディングでは演奏者に心境の変化、もしかしたら表現方法の成長過程までも読み取る事も出来るかも知れません。

 優しく包みこむサウンドスケープは長時間ドライブや夕暮れ時のゆっくりした時間にピタッとハマるんじゃないでしょうか。

 どこにも無くて、どこでも聴ける音楽です。

レビュー執筆者:Life Jam Records 若杉 厚介 TWO FOUR主催のLife Jam Records代表。レコーディングエンジニアとしても活躍中。つまり何でも屋。

『クリームレモン / GOOD MORNING』

Artist : テツコ

 99年、京都で結成され、今年で結成16年目のガールズ・ロックトリオ、テツコの最新曲を収録したシングル『クリームレモン / GOOD MORNING』が会場限定の形でリリースされます。結成16年目と聞いて、かなり貫禄 / 風格のあるお姉さんたちがステージにでーんと登場するシーンを想像される方々が多いと思いますが、そんなイメージとは真逆の、結成2年目位のフレッシュ&ヤングな雰囲気を携えた、正にガールズたちが3人飄々と現れるので、そこは1回ライブに足を運んで、ご自分の目で確かめて頂くことをお勧めします。正にテツコはミステリー。去年(13年)の6月、ガレージ系の老舗“サザナミレーベル”より、1stミニアルバム『キャンディーギター』をリリースし、60Sバブルガムポップ、ソウルフルなギターロック、パワーポップ、80Sテクノ歌謡、NWなど、多面的な音楽性を独特の世界観で披露した彼女たちが、その要素を更に凝縮し、2曲のキラーチューンに落とし込んだこのシングル、明らかにマストバイ! ライブ会場でお待ちしております。

レビュー執筆者:渡邊文武 PTA / SOLID BOND。A&R PRODUCER(テツコ / ミラーマン / クウチュウ戦 / グッバイフジヤマ / THEラブ人間担当)。

『あの街レコード』

Artist : indigo la End

 2010年2月より活動する3人組ロックバンド、indigo la Endがメジャーデビュー作となる3rdミニアルバム『あの街レコード」を4/2にリリースします。
 フロントマン・川谷絵音による歌詞・メロディーが描き出す叙情的な風景が魅力溢れる作品に仕上がっています。
 またミニアルバムを携えたレコ発ツアーも決定しており、4/4の愛知APOLLO BASEから5/14の東京・渋谷CLUB QUATTROまで全国6都市を回ります。デビュー直後の勢いをそのまま感じられるライブになると思います。
 川谷が所属しているもう一つのバンド“ゲスの極み乙女。”も同日にメジャーデビュー作『みんなノーマル』をリリース、こちらもご期待ください。

レビュー執筆者:スペースシャワーミュージック / eninal 森 暁王 川谷絵音率いるindigo la Endとゲスの極み乙女。、4/2(水)にメジャーデビュー盤Wリリースします。

『Echo of Life』

Artist : The Everything Breaks

 預言者が握るハンドルの横で神様が窓の外を眺めている。カーステレオから雷鳴のようなリフが溢れ放たれるトーキングブルーズなフレーズ。
神:お? TEBの『Echo of Life』じゃないか。1stアルバム『So we play loud now!』は70s〜80s punk / popsのflavorがプンとして、儂の様なオールドスクールな人間にはたまらんかったが、新作は全曲初の日本語詩だからかもしれんが、より言葉が入ってきて、melodyの良さが更に際立っているのぅ。
預:マスターピースを約束されたsingleですから。ところでTEBのライブは圧倒的ですよ〜。
神:こんな素晴らしいsingleは300万枚ぐらい売れて、チケットとれなくなるんじゃなかろか?
預:あ…それはないッス。じぶん、一応、預言者なんで。
 ケッ。人生に預言など必要ない。人生には、ユーモアとTEBが必要だ。

レビュー執筆者:カズオポッカートニー 遅咲きながらサラリーのマンとなるも、雑文のお仕事もさせてもろてます。

『Yes, We Love butchers~Tribute to bloodthirsty butchers~“Night Walking”』

Artist : V.A.

 このレビューを読んでいる方の中にはブッチャーズを聴いた事のない方も多くいらっしゃるでしょう。86年の結成以来、実に四半世紀に渡って活動してきている彼らですが、バンドマンや一部の熱狂的なファン、業界関係者以外からはそこまで存在を知られていない、文字通り“孤高”のロックバンドです。昨年、フロントマン吉村くんの急逝を受けスタートしたこのトリビュート・アルバムも今作で3枚目。これまでに35組、5月にリリースされる最終作を含めると、実に47組のアーティストが、それぞれの想いをこめてブッチャーズの、吉村の曲を奏でてくれています。もしその中にアナタが好きなアーティストが一組でもいたら、騙されたと思って聴いてみてください。「イイな!」って感じたら、他のカヴァーも聴いてみてください。「おっ!これも好きだ」って思ったら、今度はブッチャーズのオリジナルを是非聴いてみてください。彼らの残した曲を永遠に語り継ぐ…このアルバムはそんな想いだけで出来ています。Rock’n Roll Will Never Die! ようちゃん、聴こえてる?

レビュー執筆者:日本クラウン 海部幹男 遥か昔『kocorono』というアルバムのディレクターでした。5月にはイベントライブもあります! 詳しくはこちらを→http://we-love-butchers.com/

『neo tokyo』

Artist : bronbaba

 「20歳にして廃人」から月日は流れ。初ツアーで機材車廃車から月日は流れ。同じセットリストで3回演奏のワンマンから月日は流れ。
 メンバーの失踪、ニート、引きこもり、酩酊、就職を経てリリースされた前作『world wide wonderful world』。
 そして今作。2年ぶりに放たれる新作『neo tokyo』。
 不良、爺婆、浮浪者、風俗、酒、自殺、今。シティーコア(その街の深いところ)に生きる不思議な人々とその繋がり。
 日常の異常な光景や自分自身。
 その葛藤や苦悩、曖昧な希望を独自のフィルター(視点)を通し、超現実 / 非現実 / 言葉では説明のできない世界を創造し音に還元した問題作。
 実は美しかったものが醜くて、醜かったものが美しくて、ふとした瞬間の、日常の、人の感情の、世界の、全てがひっくり返る手助けをしてくれる音。

レビュー執筆者:takuto Virgin Babylon Recordsの運営、about tessのギタリスト、world's end boyfriendのサポートギタリスト、ライブハウス新宿Motionの店長としてあらゆる角度から音楽に関わる。

『ヤバスタ』

Artist : アスタラビスタ

 RYO-Z(RIP SLYME)、GooF(SOFFet)、MASSATTACK(SPONTANIA)、YUTAKA(Full Of Harmony)、LITTLE(UL)、DJ ISO(MELLOW YELLOW)、長年に渡りHIP HOP界を牽引してきた豪華メンバー改め、“三宿の呑んだくれ”達が夢の集結! 業界騒然! まさかのフルアルバムをリリース!
 トラック・メイカーにSONPUBを迎え、アクレッシヴなビートと怪しさを纏った「13日の金曜日」。爽やかな南国フレーバーが心地よいウエディング・ソング「嫁ぎーニョ」、彼らの真骨頂とも言うべきパーティー・チューン「北谷グラフィティ(amigo edit)」、男の友情を情感たっぷりに歌った「el requiem」など、バラエティ豊かな全13曲を収録する。ふざけていると思ったら大間違い! オトナたちの本気の“アソビ”にシビれること必至!!!

レビュー執筆者:ASOBIMUSIC A&R 藤井えい子 HIP HOPの“ヒ”の字も知らなかった私が、本作マスタリングで感動のあまり涙、そんな名盤。好物は酒と蕎麦と山と寺。推薦名著は川上弘美『センセイの鞄』。

『Keeper Of The Flame』

Artist : the HIATUS

 初めてこのレビュー枠に登場します。某先輩やら同期やらがこの枠に書いているのをうらやましいと思ってました。はい。やっと登場できました。記念すべきデビュー1発目を飾る作品はthe HIATUS『Keeper Of The Flame』。2年4か月ぶりに放たれたフルアルバムとなる今作は、1年以上かけて制作され、自らのキャリアや、パブリックイメージ、ファンへの気持ち、全部を振り切って全部を新しく受け止めた、本当の意味での「特別な季節」が幕を開けたことを感じさせる1枚。
 と、いわゆるメーカー宣伝的な文章を求められていないことを分かっているので、私の感想を書きます。ELLEGARDEN全盛期にロックキッズだった私はまさに、パブリックイメージをビンビンに持っていました。でも一聴して、いかに自分が浅はかだったか思い知らされました。良いものは良い。この作品は、何かしら思っちゃってる人にこそ聴いてほしい。えらいシンプルなジャケ写からは想像もできない世界が広がっております。

レビュー執筆者:EMI RECORDS宣伝本部 オオトモ 邦ロックと宇多田ヒカルをこよなく愛する金髪腐女子。日夜マンキツにて新しい音楽と新しい漫画を探す毎日。

『enterium』

Artist : pertorika

 以前からpertorikaの音楽作りには非凡なものを感じていて、新譜もその期待を裏切らない出来になっている。
 作曲、アレンジ、演奏の格段の進歩によって、ボーカルの三井君の天性を感じさせる透明感溢れるボーカルの魅力をより引き出す事に成功していて、個人的には「五月雨の頃」なんて何度聴いても入り込んでしまう。
 楽曲は他にもバラードから軽快なアップテンポ、おしゃれなジャズボーカルチューンまで非常に多彩で、巧みに練られたアレンジに乗せられて聴き始めたら一気に最後まで聴けてしまうこの感じは、近年ではダントツである。
 キーボードを含む本格的な編成ならではの醍醐味。それでいてバンドとしてのアイデンティティーも失われないのはさすがだ。各楽曲も良いし、「良いアルバム」としても成立している。うん「良いアルバム」ですね。

レビュー執筆者:三原重夫 ドラマー、パーカッショニスト、ドラムテクニシャン
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