5年前。一人の男が旅先の植物園を散策していました。園内の温室で流れて来たとんでもない透明感と瑞々しさに充ちた歌声。理想の歌声。仰天して植物などどうでもよくなった彼はその曲が流れ終わったタイトルコールを必死で書きとめ、ポケットに納めました。メモされていたのは「清浦なつみ アノネデモネ」。月日は流れてその2年後。かねてよりCymbalsが好きだったという若い女性がSCOTT GOES FORというバンドのライブに赴き、そのバンドのベーシスト(彼は元Cymbalsのベーシストでもありました)に彼女のソロアルバム「十九色」を手渡しました。翌日の午後、彼は昨夜貰ったCDをトレイに乗せてPLAYボタンを。果たしてそこに流れて来たのは。二日酔いも一瞬で吹き飛び、彼は脱ぎ捨てられていたジャケットのポケットを慌ててまさぐり、そこに書いてあったメールアドレスへ連絡を取ったのでした。賢明な読者の皆さんはもうお分かりかも知れません。女性は清浦夏実さん。冒頭の男、そしてベーシストは私こと沖井礼二です。この出来事を偶然と呼ぶか運命と呼ぶかは大して重要な事ではありません。ただ『The Sound Sounds.』という素晴らしいアルバムを作ったTWEEDEESのメンバーであるということの誇らしさを皆さんにお伝えしたくて筆を執りました。是非。
沖井礼二