音楽メディア・フリーマガジン

BRAIN D HEROZ

パンクロックに魅せられた不器用な愛すべきバンド

2009年7月に活動を開始した3ピースパンクロックバンド・BRAIN D HEROZ。数枚の自主盤リリース後、オリジナルメンバーであるベーシストが脱退。しばらくの間メンバー探しに奔走し、2011年9月に新ベーシスト・丸山大貴が加入して現体制となる。
今年に入ってからの彼らの活動には目を見張る。5/23に初の全国流通音源となる1stミニアルバム『BARRIER FREE & TIMELESS』をリリース。レコ発となる全国ツアーを経て、間髪入れずに8/1に2ndミニアルバム『DORK THE FAMILY』をリリースし、再び全国ツアーを敢行。更に、その勢いを止めることなく2012年第3弾プロダクトとなる3rdミニアルバム『HEY! WE ARE SINGING!!』のリリースを11/7に控えており、リリース直後からは今年3度目の全国ツアーへと旅立っていく。
まるで生き急いでいるかのような活動ペースの理由は、その音楽に込められた熱に触れれば伺い知ることができる。“ポップ・パンク”とも呼べる万人に受け入れられやすいポピュラリティを持ったメロディとビート、そして高すぎるほどのテンション。しかし、サウンド面でのエネルギーの高さは一聴すればすぐに伝わってくるのだが、その“聴き易さ”に反して歌詞はオールドスクールなパンクスタイル、2012年という時代に対して上手く適応することができない不器用な人間性を感じさせる。わかりやすい例を挙げると、前作『DORK THE FAMILY』に収録されていた「FxxK Dxxneyland」という楽曲。タイトルだけを見ても、彼らの言わんとしていることがすぐにわかるはず。
そういったバンドの指向性は3rdミニアルバム『HEY! WE ARE SINGING!!』も健在というかますます鋭く、作品タイトルやポップなジャケットイメージ、そして3人のキャラクターが発している“陽”な印象に反して、歌詞には皮肉と自虐と怒り(と笑い)に端を発したメッセージが詰め込まれている。一聴すれば身体が動き、一緒に歌いたくなるほどのキャッチーさを持ったメロディと、ニヒルな視点から紡ぎ出された彼らなりの不器用なメッセージ。そして、メインの日本語詞に時折英語詞を交えて韻を踏むことで、メッセージが強すぎて失速しかねないメロディの疾走感を保っている点には非凡のセンスを感じさせる。G./Vo.猪原の独特なヴォーカリゼーションは他に類を見ない譜割にマッチしており、重すぎず軽過ぎない聴感がある。
更に、作品を重ねるごとにリスナーを巻き込むシンガロング感を増加させているのは、今年のタフなライブ経験の賜物というべきか。聴く者の身体を揺さぶるリズム隊のビートは、ライブハウスでこそ真価を発揮するだろう。そしてPV曲であるM-2「SING!!」に象徴される自然とコールを巻き起こすコーラスワークは、ライブハウスで磨いてきた皮膚感覚を基準にしており、フロアに大きな一体感を生み出すことは必至。3ピースという必要最小限の編成ながら、サウンド全体から高い熱量を感じさせるのは、おそらく短期間で集中的にバンドのアンサンブルやメンバー間のグルーヴを練り上げてきたからだろう。
今年3枚目の全国流通盤となる今作をリリースした後、11/9から全国ツアーへと旅立っていく彼ら。1つ1つの作品、1本1本のライブを積み重ねてきた経験の集大成が、同ツアーの各ライブハウスで発揮されることは想像に難しくない。同ツアーでは、たくましく成長した姿をステージに見ることができるだろう。
BRAIN D HEROZというバンド名には“パンクのヒーローになる”という彼らの願いが込められているという。彼らは今後、いったいどのようにしてその願いを現実へと変えていくのだろうか。
来月号ではツアーまっただ中の彼らへのインタビューが決定。毎日を器用に生きていくことができない若者のリアルな感情を、パンクロックに乗せて不器用に鳴らす彼らに迫る。

TEXT:Takeshi.Yamanaka

 

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